経済産業省
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CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)(第1回)‐議事要旨

日時:平成28年7月1日(金曜日)8時00分~9時55分
場所:経済産業省本館17階第1特別会議室

出席者

神田座長、青委員、石田委員、伊藤委員、岩井委員、大杉委員(9時30分退席)、大場委員、大宮委員、翁委員(9時30分退席)、神作委員、後藤委員、小林委員(9時45分退席)、佐久間委員、澤口委員、武井委員、寺下委員、冨山委員、藤田委員、松元委員、御代川委員、柳川委員、竹林参事官、田原課長(代理:染谷補佐)
(欠席:江良委員、川村委員)

議題

研究会で検討すべき論点について

議事概要

はじめに、本研究会の公開・資料の取扱いについて、『「CGS研究会」(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)について(案)』(資料2)記載のとおりとすることについて委員の了承を得た。
次に、事務局より「事務局説明資料」(資料3)について説明した後、討議を行った。討議の概要は以下のとおり。

  • 【佐久間委員】経団連の経済法規委員会企画部会長としての立場で参加するので、経団連企業の圧倒的な多数を占める監査役会設置会社を主に念頭に置いているが、ただ、議論は決して型にはめる議論ではなく、どういう形であれ、個々の企業が実態や環境に応じて工夫しながら最適なコーポレートガバナンスを実現していくことが重要。形ではなく、実際にどうするかということが非常に重要。従って、この研究会での議論も、型にはめるという議論ではなく、選択肢を増やすなど、多くの企業にとって少しでも役に立つような指針ができることが重要であり、それを期待している。
  • 【大杉委員】指針という言葉は色々な意味があり得て、既にコーポレートガバナンス・コードという指針が上場会社に適用されて、実際に日本企業がそれで苦労し、努力している状況。この研究会では、それと並び立つようなものを作ってもあまり意味はなく、コーポレートガバナンス・コードと内容的に整合的でありながら、しかし、各企業における取組を踏まえ、企業の活動実態を他の企業にも共有したり、基本的な考え方を具体的な行動に落とし込んでいく部分が見えたりするようなものが作られれば良いと感じている。
  • 【冨山委員】金融庁でも似たような議論をしているが、経産省として行う議論として大事なのは、第4次産業革命が起きてしまっているということ。私はオムロンとパナソニックというエレクトロニクスの会社の社外取締役を務めているが、少なくともエレクトロニクス業界においては、過去20年間の中でものすごい勢いで意思決定のスピードが速くなってしまった。要するに、かなりスピーディかつドラスティックな判断を年がら年中やらないと生き残れないという現実が起きてしまった。ご案内のように、いくつかの会社は事実上消えてしまったわけで、これと同じようなことがかなり多くの産業を包み込むことを覚悟しなければいけない。そうすると、従来の日本企業の意思決定のスピードとダイナミズムで生き残っていけるのかというのが根本的な問いである。
    コーポレートガバナンスの議論というのは、コードの前文で定義されているように、どうすれば重要な意思決定を適時かつダイナミックにできるかという問いであり、それゆえまさに攻めのガバナンスなのであるから、CEOの問題もそこに収斂すると思っていて、内に向かって強いCEOを作ることが大事。今はデジタル革命で日本企業はやられっぱなしなので、ここでもう一回やられてしまったら日本の産業界は焼け野原になってしまう。そういうことを考えると、かなりダイナミックで強い意志決定ができる組織体を作らないといけない。内に向かってのCEOの権限を強めるとともに、いざとなったらクビを取る仕組みの緊張感がダイナミズムとして必要であり、そのことをより産業論的に議論した方がいいと思う。いわゆる形式論的制度論になれば、金融庁や法務省の議論と被ってしまうので、この研究会での議論はそれとは区別されるとよい。
    その脈略でいうと、もちろん会社の個別性事情はあると思うが、過去20年間、今の会社の現状に合わせてきた結果、今のような状況になってしまっているので、現状を是認してはいけない。現状に対して、もっと懐疑的で、もっとプレッシャーをかけていかないといけない。放っておいたら自分たちのペースで現状維持的になる。特に日本企業は、基本的に新卒一括採用と年功制であり、非常に同質的な集団で非常に強固な共同体を作っているため、これが強みの源泉になる一方、非常にドラスティックな「あれかこれか」の意思決定を年がら年中しなければならない環境においては弱点にもなり得る。そういうふうに考えると、ガバナンスの在り方は、とりわけ第4次産業革命という脈略においては、どちらかというと企業の今の実情に配慮する必要はないと思っている。あえてこの研究会では緊張感をもって、企業側あるいは経済界側の意見と、それに対する他の意見がぶつかる方がおもしろいと思っていて、個人的には大いに紛糾する研究会を期待している。
  • 【寺下委員】気をつけなければならないのは、産業界もそうだが、機関投資家も陥っている問題として、合成の誤謬の問題がある。機関投資家は、自分たちが少数株主なので、反対しても何とかなるだろうということで無責任にトップ選任に反対票を投じているが、そのトップがもし本当に選任されなかったらその代替がいるかどうかということまで判断した投資行動が行われていない状態である。これは日本の産業界にとって決して良いことではなく、単純な欧米からの流れが来て、例えばROEの形式基準だけでアウトにしたら、その会社のトップがいなくなって明日から経営できるのかという問題まで来ている。この研究会では、本質的なところをもう一回叩き合わせていければと思う。本質的なことというのは、例えば、企業価値とは、株主共同の利益の確保というところから大きな流れが来ているが、本当にそれでいいのかどうか。他方、そうは言っても、冨山委員の言うように、このままでは一網打尽にアウトになる状況の中で、断片的にいろいろなものが進んでいるが、どうしても合成の誤謬に陥って、結果論として非常に悪いものに陥る可能性もある。そのため、この研究会で、経済産業省を中心にして、有識者や法務省、金融庁で、全体のバランスを考えながら討論が進められれば良いと考えている。
  • 【武井委員】この研究会の提示した論点5つは、いずれもボードの強化が共通軸だと思うが、ボートの機能についてはまさにコーポレートガバナンス・コードの第4章でも書かれているところである。株主が役員を選ぶことになっているが、直接民主制でやっているといろいろな問題が起こりうるところではあるが、そうした中で間接民主制的な部分としてボードがしっかりしないと、企業の中長期的な持続的成長性を確保する環境が整備されない面がある。日本ではいろいろな意味でマネジメントボードと株主との対話があったが、中間のスーパーバイザリーボードがそれほど強く見えてこなかったところがあるので、それを見直していくことが続いているのだと思う。今回の一連のテーマも全て、ボードにどうやって魂を入れるか、強くするかについて、実際に競争力を強化している企業実務の知恵を入れて、外に発信する大変重要なタイミングだと思っている。間接民主制的な発想を強めていくというのは、法制を含めたいろいろなテーマが多々あると思うので、そういった点の実務論がこの研究会で議論できればと思う。
  • 【澤口委員】この研究会では、社外取締役や社外取締役が一定の割合を占める取締役会が得意でないこと、あるいは期待すべきでないことについてもしっかり議論していきたいと思う。社外取締役も当然万能ではなく、業務執行者と比較すれば事業についての情報は限定的であるため、そういう社外取締役を前提として、あまり期待すべきでない役割を期待すると、あるべき姿にならないのではないかと思うので、その点についてもぜひ議論したいと思う。
  • 【小林委員】経営の現場にこの10年間、最初の9年間はCEOとして、今は監督の立場で携わっているので、その実感を伝えられればよいという思いでこの研究会に出席したい。私は今、三菱ケミカルホールディンスの取締役会長を務めているが、昨年3月まで東京電力とジャパンディスプレイの社外取締役も務めていた。昨年9月からは東芝の社外取締役で指名委員長に就任している。三菱ケミカルホールディングスが指名委員会等設置会社に移行したのは昨年6月、取締役の人選については、外国人のCTOを取締役にしたのが一昨年、女性を社外取締役として招いたのが昨年であり、以前は監査役設置会社で極めて古い体質の会社だった。社外監査役は弁護士と公認会計士で、両者が1年を通して一言も発言しないことをよしとするような文化だったのが正直な実態だ。それをここ2,3年で急激に変えてきたつもりである。社外取締役を経験するまでは、会社は私のものというか、社外の人間に会社のことがわかるはずがないという思い込みがあったが、自分が複数の社外取締役をやって、さらに自社のガバナンス体制も変えてみると、いかに今までの固定観念がひどいものだったかということが非常によくわかった。
    一方では、旧来のアメリカ的な発想の、ROEの数値だけを見た機械的な企業評価には疑問を持っているし、そもそもマーケットでアナリストなどがどういう形で企業価値を判断しているのかについても疑問がある。会社は「3軸経営」があるべき姿だというのが私の持論で、ROEなどの資本効率を追求して儲ける軸と、社会にイノベーティブなテクノロジーを提供する軸と、CSR実践やCO2排出削減など環境問題の解決によって社会貢献する軸の計3軸に沿ったベクトルの合成値が真の企業価値であるという確信を持っているので、企業価値の本質といった点も含めて議論できればなお有意義だと思う。日本企業が当然日本の文化を背負っている中で、それでもなおグローバル競争を勝ち抜くためには、どういうガバナンスが最適なのかという議論をしたい。
  • 【後藤委員】最近の日本のコーポレートガバナンス改革について、攻めのガバナンス、日本企業の企業価値や日本経済全体を上向きさせようという観点でなされているものであって、サーベンス・オクスリー法のようなスキャンダル対応ではない点が特徴だということを海外の研究者に説明すると、それは非常におもしろいと言ってもらえる。もっとも、社外取締役や独立取締役を1人や2人置くとどうやって企業価値が上がるのかと聞かれると、そのあたりから説明の歯切れが悪くなってしまう。このメカニズムについては、統一的な説明が示されているというよりは、様々な観点が併存しており、論者によって力点の置き方が異なっているように思われる。
    1つは、事務局資料にもあるとおり、いわゆるモニタリングモデルをとって、株主の観点から経営者が十分に利益を上げていないという場合には解任をするという説明がありうる。また、この説明とは少し違うかもしれないが、先ほど冨山委員が言ったように、解任するというよりはCEOの権限を強くすることが大事なのであって、そのアクセルを強くする分、ブレーキを強くするのだという説明が別の発想としてありえて、これはむしろ権利を濫用した場合に介入するということになるのかもしれない。ただ、そうすると、解任するのに社外取締役が1人や2人いて何とかなるのかというと、社内取締役の議論の触媒になることもあるのかもしれないが、制度的な保障としては弱い。では、取締役会の過半数を社外取締役にするかというと、そこまでなかなか踏み切れないというのが今の日本の現状だと思う。
    やや異なる観点として、これも冨山委員から、日本企業は社内者を中心とした同質的な集団であって、しがらみなどがある中で、たとえば工場の閉鎖といった厳しい決断を行なうことが困難であったという話があった。そのような決断を後押しするために社外取締役による外部のプレッシャーをかけるということもあるのかもしれないけれども、それは個別の経営判断の中身に近づいてきて、典型的なモニタリングモデルが想定していたものとは少し違っているようにも思われる。
    また別のところで、これはたしか武井委員が書かれた論文だったかと思うが、社外者の経験を経営に生かして、アドバイスをしてもらうというのも十分有益であるという観点も示されている。
    これらは全て排他的なものではなくて、それぞれに納得できるところはあるが、全て合わせて聞くと、結局社外取締役や独立取締役にどういう役割を期待しているのかがよくわからないということになる可能性があると思われる。会社によっても状況によっても違うのかもしれないが、この点をもう少し自覚的に整理する必要があると思う。
    それとの関連で、これはこの研究会に私が期待しているということでもあるが、社外取締役に期待される役割がいろいろ言われている中で、社外取締役が現実に何をやっているのかというところが、まず現状の把握として非常に重要ではないかという気がしている。この研究会の論点4というところで「社外取締役の役割について」というスライドがあり、その1つ目の点で、どういう役割を果たすべきかという「べき論」があり、その2つ目に質・量の向上のためにはどのような取組みが必要かという話が書いてあるが、その二つの間に、今どうなのか、というのが本来入るべきではないかと思う。この研究会に経営者の方々がたくさん委員として参加しているので、その経験を踏まえて、また、もし可能であれば、他にも企業はいっぱいあるので、そこがどうしているかということの現状把握も行った上で、議論をしていければいいのではないかと思う。
  • 【神作委員】2点発言させていただく。1点目は、後藤委員の発言の結論部分と非常に近いと思うが、例えば、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードが実際に施行、適用されているという変化があり、独立社外取締役を選任している上場会社の比率はここ数年急激に増加している。また、会社法との関係では監査等委員会設置会社という新しい会社のガバナンス形態をとる上場会社が大きく数を伸ばしている。このように、日本のガバナンスは、少なくとも形式的あるいはルール・コードの側面では大きく変わっているように思う。しかし、コーポレート・ガバナンスの実態がそれによってどのように変わっているのかわからないところが多いので、例えば、社外取締役あるいは任意の委員会を含めてどのような形で社外取締役がガバナンスという観点で貢献しているのか、会社としては社外取締役にどのようなことを求めているのか、ということなどについて、この研究会で教えてもらえればと思う。
    2点目は、経営トップの権限を集中して迅速な意思決定をするというのは当然一つの大きな方向性としてあるが、ガバナンスという観点から取締役会を中心に経営トップをどのように良い方向にコントロールしていくのかという点が非常に重要であると思う。従来の議論は、取締役会に社外の者を入れていきましょうということで、現に少なくとも形式的にはずいぶん発展してきたと思うが、今後はその中身を問われるようになってくる。つまり、独立性というだけでは必ずしも十分ではなく、社外取締役に求めているものは具体的に何であるのか、取締役会に求めていることは何であるのかということを、多様な観点から、取締役会の在り方を見ていくことになるのではないかと思う。独立性というのは多様性の中の一つにすぎず、そのような意味では、独立性の議論をさらに展開させて、多様性という観点からその中身を豊かにしていくことが重要であると感じている。
  • 【翁委員】この分野に非常に関心を持っていると同時に、いくつかの社外役員をやっていて、実際にいろいろな場面に遭遇していろいろな問題意識を持っているので、ぜひこの研究会でいろいろな意見を言えればと思っている。最初に言っておきたい点としては2点ある。
    1点目は、今回のコーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードを入れたことによって、かなり日本企業の行動や取締役会の活性化というような方向に少しずつ変化はしてきているけれども、やはり重要なのは、この第4次産業革命や急速なグローバル化といった中で、どうやって企業価値を上げるという方向にこのコーポレートガバナンスの改革が結びつくかという観点から議論することだと思う。どういうふうに強いCEOを後継者として選任していくかということが一つの大きなポイントだと思うが、そういったことや、そのほか取締役会の活性化がどう企業価値の向上に結びつけられるのかという観点から議論に参加できればと思う。
    2点目としては、私が社外取締役を務めている会社では、任意の指名委員会から法定の指名委員会に今まさに移ったところなので、社外役員の役割や、どうやってCEOを選んでいくのか、どうやって報酬を考えていくのかということを本格的に議論する大きなきっかけになっている。役員報酬に関して、グローバル企業になっていくときに、日本企業が、海外の企業の役員をどうインセンティブを付けながらマネージしていくのか、また、全くインセンティブの付け方が違う中で、どういうふうに役員報酬体系を投資家に示していくかということが非常に重要な論点になってきていると思う。これから特にグローバル企業の経営といった点で見たときに、これらの論点をどう考えていけばいいかということについてもこの研究会で検討できればと思う。
  • 【大宮委員】日本企業の国際競争力が非常に大きな懸念となっている今、政府が企業のガバナンス面からいろいろな配慮をしてもらえることは大変ありがたく、この研究会はまさに時宜に適ったものだと思うので、この研究会を通じて新たな提言が行動に移されて、日本企業全体の国際競争力の強化に資することを願っている。
    個人的には監査等委員会設置会社に属している会社の立場として貢献できればと思う。当社は、非常に古典的な企業で、日本の高度成長時代には日本の中の市場だけを見ていればよかったという時代から、海外に出て行かなければならないような状態になっていて、ここで大変な競争に晒されている。グローバル企業としての生き残りをかけて各種の改革、特に経営のスピードが非常に重要ということで、これを追求してきた。特に最近は海外の巨大企業、例えばGEやシーメンスと直接対決するような場面が非常に増えてきており、その中で特に問題となっているのは、相当な金額と、長期的な先行投資を要するものが非常に増えてきて、その意味でリスクが非常に高いということである。こういった事業環境の中で、経営改革の一つとして、経営の執行と監督の分離を進めて、ガバナンスの向上と意思決定のスピードアップの両面を図らないといけないことになってきた。株主等との関係、すなわち企業統治の観点と、内部的な業務執行の観点の両面から改革を進めてきたが、去年に監査等委員会設置会社へ移行したことがこの両方に大きな影響を与えて、大きな区切りになった。まだ過渡期なので課題はあり、例えば取締役会の論議をどのあたりに集中したらいいかということの取捨選択を、社外取締役の意見を聞きながら行っている最中である。制度自体が割と柔軟性を持っていることもあるので、その中で一番良い形態に早くしていこうと進めているところである。私は取締役会の議長をやっているが、取締役会の運営に関しては日々悩むところが多くあり、限られた時間の中で何を議論したらいいのか、社外取締役の意見をじっくり聞きながら、今改革を進めている。
  • 【大場委員】この研究会には投資家の立場に立っている委員が少ないので、投資家の立場から意見するのがこの研究会での私の役割かと認識しており、その観点で意見を述べたい。
    1点目は、冨山委員の意見と重なるが、マーケット、つまり株式市場は、日本企業全体を大変厳しく評価しているのではないかと思う。これから大変になるということではなくて、既に大変な状況になっていることをマーケットは示唆しているのではないか。日経平均で、現在の株価水準は、プラザ合意の次の年の1986年の株価水準であり、30年成長していないことをマーケットは示唆している。世界各国の株式市場を検証しても、30年前の水準に留まっている国はおそらく日本だけではないかと思う。ある意味これが研究会のテーマかもしれない。この現状からどうやって脱却するかということについて、投資家、上場企業、市場を提供する立場から、それぞれの課題を検証すべきではないかと思う。
    まず、上場企業の課題として、両コードが制定されたことを背景として、投資家と企業の対話が以前にも増して相当進んだと思うが、正確に言うと、進んだ企業と全く進まない企業の両方がある。全体として表現するのは難しいが、強い問題意識の企業は、目先ではなく中長期的にみたときの企業価値が意識されている。企業評価は中長期的にみることが非常に大事だと思っており、両コードの副題にも「中長期的な企業価値の向上に向けて」と書いてあるのはそういう意味ではないかと思う。その観点でいうと、中長期的に企業価値を向上してきたのか、破壊してきたのかということについての総括が優れて行われている企業と、全く関心がない企業があり、それが鮮明になっている。将来に向けて、自ら抱えた資源をどう活用して企業価値の向上に邁進するかというストーリーを示すことが非常に大事だと思うが、そういう観点でのレポーティングは極めて限られた企業に留まっているのではないかと思う。そういうことが多くの上場企業に拡大していくことが課題ではないかと認識している。
    次に、投資家の課題として、日本の投資家は、あまりにも全銘柄に投資することが多いと思っている。インデックス運用とETFは、大事な手法ではあると思うが、全世界と比較するとあまりにもウェートが大きすぎる。何が問題かというと、指数を見て企業を見ない投資家が多いということ。投資家はその点をもう一度検証し直す必要があるのではないかと思う。昨今、株主総会の時期を迎えて、社長の信任が高いか低いかが新聞等で報道されるが、そもそも社長が信任できない会社に投資しているのはどういうことか、このこと自体が既に矛盾しているのではないかと思う。
    最後に東証の課題として、上場会社が増えることはある意味では良いことだとも思われるが、21世紀に入って、増えているのは日本以外にはあまりなく、世界的にはむしろ絞り込まれているのが実情ではないかと思う。上場会社が増えてインデックス投資をやっていくと、お金の有効な活用が本当に実現していくのか。これはもう一度検証する必要があるのではないかと思う。日本再興戦略において重要なテーマとなっている好循環社会を作るという基本理念と矛盾しているのではないかとさえ思う。上場企業の退出基準をどうするかという運営も非常に重要になっているのではないかと思う。
    2つ目は、社外取締役の役割が大きなテーマとなっているので、その点について一言だけ。当社は、投資家として上場会社と対話して持続的企業価値の向上に資する意味で、質の高い対話をする立場なので、自身がしっかりとしたガバナンス体制を取る必要があるということで、業界に先駆けて複数の独立取締役を導入している。そのときに独立取締役にお願いしたミッションは2つある。1つは、持続的企業価値の向上に向けて何が課題なのかという観点で常に意見してほしいということ。もう1つは、当社は運用会社であり、金融庁の金融行政方針の一つのキーワードにもなっている、フィデューシャリー・デューティ宣言というのを当社はいち早く出しているので、我々が決めている利益相反の規定や、報酬の決め方や、従業員の評価といったものが、フィデューシャリー・デューティの観点からみて的確かどうかということについて意見してほしいということ。この2点を社外取締役の課題、ミッションとしてお願いしている。
  • 【岩井委員】監査役会設置会社の当社は、取締役会は代表取締役CEOの監督機能を担うということで、社外取締役4人、社内取締役3人という緊張感のある体制で運用している。取締役会の役割は、長期的な会社存続のためのビッグピクチャーをいかに描けるかということだと思う。当社の場合、「VISION2020」という2020年のビジョンを2014年12月に発表し、それに向けて、その改革をさらに加速するために何ができるかということを議論している。その改革は、新幹線のごとく時速300キロメートルのスピートで突っ走る一方で、1分間で止まれるブレーキを有する、ということを合い言葉に議論している。
    当社の取締役会の場合は、決算取締役会を除くと月1回が原則で、3時間から4時間をかけて議論しているので、議題をどう絞っていくかが一つの課題となっている。
    また、2016年1月から、グローバル・ヘッドクォーターという本社機能と、リージョナル・ヘッドクォーターという、アメリカ、ヨーロッパ、中国、アジアパシフィック、トラベルリーテイル、日本の計6地域(機能)にそれぞれ地域本社を置き、その地域本社のCEOに現地の経営を任せるという体制を本格施行している。つい最近発表したメーキャップブランドの買収に関しても、アメリカの地域本社のCEOが自ら動き、グローバル・ヘッドクォーターの魚谷CEOがそこに密接に絡み、スピードをもって進めているため月1回の取締役会の報告では足りないので、それに関してはCEOが取締役会メンバーに対して逐次進捗状況を報告することで説明責任を果たすとともに、取締役会はそのプロセスを注視するという体制を敷いてやってきた。そのような体制を敷いているということで、社外取締役は対立構造のように捉えられがちかもしれないが、我々の場合はどうやって一丸となってCEOを信任するかという体制で進んでいると捉えている。
    ただ、今回の議題にもある社外取締役の役割のあり方といったところは一つの議論になろうかと思う。また、当社の現在のCEOは当社にとって初めて外部から登用した人間であるので、CEOの後継者計画をどういうふうに作るか、今のCEOの次をどう考えるのかといったことも取締役会の非常に大きなミッションになっているので、この2点について議論を深めていきたいと思う。
  • 【伊藤委員】この研究会で2つのアングルを入れてほしい。アングル(1)は、具体論、現実論、実践論をいれてほしい。アングル(2)は、取締役会やCEOのテーマが今回フォーカスポイントとなっているが、もう少し広めの視点を入れた議論をしてほしい。
    アングル(1)の中で、例えば現実論で言うと、指名委員会は、任意の指名委員会であっても、やりようによってはかなり機能する。もっとも、一定の条件を満たさないと機能しないところがあり、そのあたりの現実を踏まえた具体論が必要だと思う。実践論という点では、私の体験でいうと結構大変で、私が関わった最近の事例ではいろいろな機会に色々な人から意見が寄せられたが、「やっと日本のガバナンスが動いた」、とか、「暗黒のガバナンス時代が長かった日本にやっと動く兆しが見えてきた」という感想も寄せられた。私個人として一番嬉しかったのは、当該取締役会があった日の夕方に、「日本が救われた日だ」というメールを受け取ったこと。いずれにしても、そろそろ実践論の話をしないと、ガバナンスの仕組みの整備だけではなかなか難しくなっているのではないかと思う。
    アングル(2)については、取締役会の議論だけに集中してしまうと、狭い議論になってしまうのではないかと思う。私自身の体験を踏まえると、ガバナンスというのはある意味では対話である。社外取締役とCEOとの対話、社外取締役間の対話、CEOと機関投資家との対話、社外取締役と機関投資家との対話、社外取締役と大口長期株主である創業家との対話というような、いろいろな局面をはらんでいる。伊藤レポートでも対話ということを大いに推奨したが、具体論となると結構難しい。平時において機関投資家とどう対話するかということと、ある種の有事になってから機関投資家とどう対話するかということは、実は具体論としては大変難しいテーマである。社外取締役という立場でみたときに、様々な投資家やステークホルダーとの対話をどうやって実践したらよいのか。場合によっては、機関投資家からのある種のプレッシャーが取締役会に投影されて、それがある種のムーブメントを作るということだってある。大場委員のような大変クレバーで穏健な投資家と対話するのみならず、そうではないタイプの投資家とどう対話するかというようなことが非常に重要であるし、現実にここ何件かのケースはそういった問題が現実に噴出していると思うので、そういう視点も入れてほしい。
    それから、こういった研究会のメンバーはガバナンスに関心があるところが出てくるが、そうではない企業のガバナンスをどう高めるか、いつも悩む点である。この研究会の委員の発言だけで判断してしまうと楽観視しすぎるかもしれないので、実は現実はもっと厳しいという目線も持っておいた方がよいかと思う。
  • 【石田委員】最近は社外取締役の数が増えているが、社外取締役と話をすると、社外取締役に期待される役目をどのように捉えるかには様々な考え方がある。この研究会がもし何か日本企業に価値をもたらすならば、どのように社外取締役が実際に動いているのかという事例から抽出される経験則といったものではないかと思う。
    よくガバナンスの議論をするときに、形式か実質かという議論がよく出てくる。実質が大切、と言われてそれを否定する人は少ないだろうし、何か全てが丸く収まる感じがする。しかし、実質が何を意味するかは、人によって見方はバラバラでまとまらない。この研究会で実際に社外取締役や企業からヒアリングをすると聞いているが、その際に一番理想なのは失敗事例のヒアリングではないかと思う。良い事例だけを聞いても、感心することはあると思うが、それが行き過ぎると英雄の凱旋論みたいになってしまうのではないかと思う。
    あと、悪いことはすぐわかるが、うまく機能しているものは、その良さがなかなか認識されないことがある。地下鉄の運行を例えに使うと、皆が地下鉄は時間どおりに安全に運行することが当たり前だと思っていて、少しでも遅れると怒るのだが、よく考えてみると実際にあれほど大きなものを時間どおり安全に運行するというのは大変なことである。社外取締役や社外監査役が機能しているというのは、地下鉄の運行が上手くいっているということと似ていて、つまり何も問題が起きていないということであるが、一度何か問題が起きたときには、社外取締役がいるのにどうしてこういう問題が起きたのかと言われてしまう。つまり、悪いときは誰の目にも明白で、良いときにはそれがわからないということが起きる。
    また、例えば、世の中がこれからは中国だ、と盛り上がっている時期に、ある会社の社長が、これからは中国にもっと投資しようと舞い上がってしまって、ある中国企業を買収するのだと夢中になっているとする。周りの社内の取締役はまずいなと思ってもそれをなかなか止められない中で、たまたま社外取締役が少し待ったらどうかと一言つぶやいて、それで社長が我に返って少し待ってみたところ、その1か月後に実はその中国企業は大変な簿外債務を抱えていて倒産したという記事が新聞に出たとする。この場合、社長はほっと胸をなで下ろすわけであり、社外取締役が機能した事例で実質があるけれども、このような実質は外からはわからない。社長にとっては、それは言いたくないだろう。このように、会社にとって、社長にとって恥ずかしい経験と、そこから抽出される経験から、日本企業の多くの社外取締役が今悩んでいること、つまり社外取締役として選任されたはいいが、何を期待されるのか、についてヒントを与えてくれるのではないかと思う。事例を聞くときに、いかに失敗事例とか、企業の人が言いたくないことを言えるかというところが重要かと思う。
  • 【青委員】東証としてもガバナンスについてはできる限り前向きに動いていくように日々努力しているところである。事務局資料でも東証の発表が採用されており、以前は2名以上の社外取締役を選出する上場企業が十数%しかいなかったのが、ここに来て8割近くになっているという状況にあるということで、かなり外形的な面については進展してきているところである。
    もっとも、我々はこういう数字を出しているものの、形式さえ良ければいいということは全く考えておらず、形式と実質の両方が上手く進んでいくことが大事だと考えている。外部の社外取締役を入れて、株主の代弁者としての声を上手く活用していくことで、中長期の企業価値向上ということに結びつけていくような、そういったワークの仕方が各企業において行われることが非常に大事だと考えている。ただ、そうした会社の持続的な成長と中長期の企業価値向上ということに結果としてつながるには結構時間がかかるので、それをどうしていったらいいのかということの議論がこの研究会で進んで、他のところでの取組みとあいまって良い形で動いていけばよいと考えている。
    なお、事務局資料の中で気になった点が1点あり、「長期投資を促進していく」という言葉が資料の中で出てくる。中長期の企業価値をしっかり見据えて投資をしていくということでもちろん書かれていると思うが、ともすれば、長期で保有してさえいれば企業価値についてあまり関心のない人も、長期投資を促進するという言葉で読み込めてしまう面もある。ここのところは、やはり中長期に企業価値をしっかりと見据えて企業と同じ方向を向いて投資をしていくということを促していくという方向で認識をしながら、こうした議論をしていければと思っている。
  • 【柳川委員】ガバナンスの問題は、形式か実態かということが混在しているので難しいが、形式や制度論をどうするかという話と、足元の実態をどう動かしていくかという話と、それに加えて、さらにコードの先の、本質的に成長力を上げるような、狭い意味でのガバナンスを超えた、あるべき経営論みたいな話と、大きく分けると3つの話があって、これが混在しているので、それを整理していくと建設的な議論ができるのではないかと思う。いずれもかなり重要な話であるので、そのあたりが検討できればと思う。
    それぞれについて個別に言うと、まず足元論では、どういうふうに底上げしていくかというのがこの研究会の大きな課題だと思う。コードができて制度は整ってきたが、実態として動かすと難しい面がある。取締役会と執行経営陣の役割分担をどういうふうにしていくのかという点について、なかなか今までの日本ではそういうことをきっちりやってきた会社が少ないので、個々の会社で具体的にどの辺でどう切り分けていくのかについてはまだまだよくわからないところなので、プラスティスを積みかねていってそれを整理していくことは非常に大事だと思う。
    もう1つは、そういうところだけではなくて、実はこういうガバナンスの話は、ある意味で会社全体のコーポレート・カルチャー、あるいは従業員の考えている経営陣というイメージなども本質的にかなり関わってくるのだと思う。そういう意味で、経営陣だけではなくて社内全体の意識改革あるいは仕組みづくりというものを伴わないと、なかなか上のほうだけの改革でも実態は変わらないところだと思う。ここも急ピッチで進んでいる会社の話は聞いているが、変わっているところは変わっているけれども、変わっていないところは変わっていないというところが十分あるので、やはりそういうところにどういうプラクティスを伝えていくかということが重要なのではないかと思う。
    それからもう1つ実態論でいくと、何人かの委員から指摘にあったように、ある意味で実態の変わり方に関して十分投資家に情報が伝わっているかというと、いろいろな意味で伝わっていない部分があって、逆に経済学でいうところの「情報の非対称性」が高まってしまっている。過度の期待という面も含めて高まってしまっている面もあるので、投資家に対してどういうふうな情報提供をしていくかというのは、ある意味で、今これだけ制度論が整備されてきたからこそ重要な面が出てきていると感じている。
    その面でいくと、これは制度論の話だと思うが、今の日本のコーポレートガバナンスの実態あるいは変化の実態をどうマーケット側に正しく伝えていくかというのは、制度のやり方としても少し考えてもいいような気がしている。現状は、監査等委員会設置会社とか、こういう枠組みはできて、どの機関設計を選択しているかはわかるけれども、実態としてどこまでガバナンスの改革がこの会社は進んでいるのかというのは、なかなか外側からは見えにくいという面がある。この種のところの実績の情報開示をどういう形でやればいいのか。投資家から変な悲観的な見方をされても困るし、変な楽観的な見方をされても困るという中で、お互い正しく実態を把握することが中長期的な正しい企業価値の評価になると思うので、ここは少し実態論、制度論としての何かやり方があり得るのではないかと思っている。
    3番目として、あるべき経営論という話でいけば、冨山委員や翁委員が指摘していたように、ある意味での強いCEOと、だめだったらきちんと責任をとらせる裏側としての強い社外取締役というセットは、やはり成長力を高めていく上ではとても重要なことだろうと思う。ただ、これも社内全体あるいは社外全体の意識がそういう方向にそろわないと、特別に権限をCEOに与えればよいというものではないので、そういう面での意識改革が必要だと思うし、ある意味でそういう意識改革をするためにこそ、この研究会で何らかの提言を出していくということが重要なことかと思う。
    最後に、やはり政策のツールとして、政府ができることは、法律を変えたり制度を変えたりすることである。最近は、法律や制度だけではなくて、コードを決めてコードで動かしていくものも出てきているところ。その意味では、政策が持っているツールは基本的には形式論、制度論のところに留まっていて、コードを含めた意味で、外側の制度を動かして、何とか実態を変えてもらおうというのが政府側のこういう政策ツールである。もっとも、ガバナンスの話になってくると、そこだけでどれだけ頑張って動かしたところでなかなか実態がついてこないというところからすると、少し幅広い意味での実態に対する提言であるとか、こういう実態を作ったらより良い形になるのではないかということを提言していくことが必要である。それは別に政府が強制するわけではないので、強制力はないが、やはりあるべき姿をきちんと示していくというのは、こういう変化の激しい時代においては重要な政策のあり方なのではないかと思っている。
  • 【御代川委員】当社は本年度から社長と私が取締役会のメンバーで、社外取締役が4人という6人体制で取締役会を構成している。当社は11年前に藤沢薬品と山之内製薬が合併してできた会社であるが、合併当時の取締役会は8名で社内6、社外2だった。この11年間で逆転して、社外が3分の2を占める取締役会になった。次回の研究会ではこのあたりを紹介させてもらえればと思っている。もっとも、現状の取締役会で満足しているわけではなく、より実効性の高い取締役会に変わっていかないといけないと思っているので、この研究会で勉強して会社に持ち帰り、より良くしていきたいと考えている。
  • 【松元委員】2点ほど述べる。
    まず、この研究会で話し合いをすることになっている検討対象であるが、モニタリングボード型のコーポレートガバナンスに興味をもつ会社が増えてきているというところで、いかにモニタリングボード型で機能を充実させていくかということが主眼だと理解している。しかし、そもそもモニタリングボード型とマネジメントボード型の両方があり、果たしてモニタリングボード型の方がより良いかというと、その結論は簡単には出せないし、出すこともできないのかもしれない。日本の会社が皆モニタリングボード型がすばらしいと思っているかというと、必ずしもそうではなく、多くの会社は監査役会型に留まっている。もちろん監査役会型の会社が全てマネジメントボード型というわけではないが、やはりそこはまだ皆がモニタリングボード型がすばらしいと必ずしも思っているわけではないのではないかという点がある。最近、監査等委員会設置会社に移行している会社は非常に増えているが、法定の指名委員会まで入れている完璧なモニタリングボード型がどのぐらい増えているかというと、それほど多くない。先ほど伊藤委員の話にもあったが、この研究会のメンバーとなっている会社はかなり先進的な会社であり、日本全体の会社の現在の状況ということを考えると、そもそもモニタリングボード型に移るとどんな良いことがあるのかといったことまで、もう少し視野を広げると、より多くの会社に役に立つのではないかというような感じがしている。研究会のメンバーになっている会社には、マネジメントボード型からモニタリングボード型に移行している会社も多いかと思うので、そもそもどこが変わって、どこがどういうふうに違ったのかといった点について、重点的に教えてもらえればありがたい。
    2点目として、個人的には社外取締役の人材確保という点が気になっている。コーポレートガバナンス・コードができたり、あるいは東証の基準があったりする中で、日本の会社は基準があれば守るので、ものすごい勢いで社外取締役が増えているが、ただ、あまりにも増え方が急激なので、果たしてこれは本当に役に立つ社外取締役が入っているのだろうかというような疑問があり、また、どうやって社外取締役の人材を確保していくのかという点が気になっている。人材バンクのようなものを作るのかという話もあるかと思うが、そうすると、その前提として一体どういう人が社外取締役にふさわしいのかということを、もう少し検討する必要があるのではないかと思う。例えば、法律家や大学教員が社外役員に入っている会社もあるが、具体的にどういうふうに役に立っているのか必ずしも十分に説明されていない。会社が欲しいのはどういう人材なのかということを率直に聞いた上で、その人材をどうやって増やしていくかということを検討できればありがたい。
  • 【藤田委員】私が最後なので、各委員の話を聞いていて感じた感想という形で意見を述べたいと思う。前提になるような話が2つほどと、もう少し具体的な話が1つ。
    まず1つ目の前提になるような話として、この研究会に来る前は、主要な検討項目を見ていて、監督の話をやるのかと漠然と思っていたが、やはり監督だけ取り上げるという視点は良くなくて、もう少し視野を広げておかないといけないということである。取締役会の監督機能や、あるいはさらに具体的な中身としてのCEOの選定の仕方といった話以前の話として、例えば取締役会の意思決定をどのぐらい迅速にさせるかとか、その裏返しとして、迅速な決定をさせるかわりに何か事後的な監督を強化するかといったバランス論が当然あるわけで、それを抜きに監督のところだけ取り出して議論してもいけないのだろうということである。そして迅速な意思決定という話にしても、例えばCEOに権限をどの程度集中させるかについては、業界によって、あるいは企業によって温度差があるので、その程度のいかんによって監督機能のあり方も変わってくるだろうということで、そういったバランスを考えなければいけない。また、監督というときも、取締役会による監督だけが全てではないから、全体のガバナンスの中で取締役会の監督権能というのを考えなければいけない。ガバナンスのシステムの中で、監督機能が意思決定のあり方とどういうバランスになっているかという話と、ガバナンスシステム全体の中での取締役会の位置づけといったことを意識してほしい。
    もう一つは、投資家との関係という指摘があった。極論すると、投資家が強く、投資家によるコントロールが働いていれば、内部の組織がだめなら勝手にその会社が淘汰されるだけだという議論もあり得なくないけれども、この場では、さすがにそういう議論は誰も前提としていなかったと思う。おそらくそれだけだと機能しないことがあり得るという前提なのだろう。確かに機関投資家の行動に期待するといっても、期待どおりではないようなところもあるかもしれない。ただ、他方で、機関投資家が変われと言って変わるかといったら、これを変えるのはガバナンスの改革より難しいと思う。長期的には投資家のあり方が変わってほしいというのは当然あり得る目標かもしれないが、ガバナンスの議論では一応は当面の投資家の行動を想定することになると思う。その場合、難しい投資家との対話といった視点があったと思うが、投資家からの一定の独立性、もう少し限定するなら特定の投資家からの一定の独立性というのは、ある意味重要な要素なのかもしれない。ただ、それを達成したいからといって、会社法を改正して株主の権利をみんな剥奪してくださいというわけにもいかないので、独立性を確保できるような内部的な体制とは何なのか、取締役会改革の後でもそういう視点があるのかもしれない。対話というと弱く聞こえるが、ある意味投資家と対決できるようなガバナンスという視点も必要なのかもしれない。
    以上が基本的な視点の話であったが、既に本日の議論で対立、あるいは少なくとも温度差が見られた点としては、形式と実質という話と、あとはどこまで自発的努力に委ねるかという話の2点があったように思う。しかし両者は密接に関連している。形式と実質の話として、情報の偏在があるときに何かメッセージを伝えるツールとしての「形」という視点はもちろんあるが、自発的努力に任せられるかといった視点ともこれが結びついていることを指摘しておきたい。ガバナンスについて実質を重視するとすれば、目標は何をしたいかということ、どういう機能がなければいけないかということを指摘するに留めるということが一つのあり方になる。例えば、「CEOに権限を集中して意思決定の迅速性を高める、そのかわり監督は強化しなければいけない、監督という意味は不正行為の摘発だけでなく業績を上げられなかった場合は責任をとってもらうことであり、そのための仕組みを強化する」というのは、立派な実質論ではあるが、では「あとはこの実質が達成できるように各企業で頑張ってください」で終わってよいかという話である。これが形式か実質かというところである。実質だけというのであれば、ここで終わっても良いわけであるが、そこに出てくるのが、もう1つの視点の、自発的努力でいいかということである。自発的努力で全部できるというのであれば、この実質論だけ明示すればそれでいいのかもしれない。しかし、もし任せたらうまくいかないという視点があるのだとすれば、そこで留まると不十分だということになる。強制の仕方もいろいろある。法律で強制するものから、取引所のルールにするというのもあるし、さらにはもう少し弱いものとして、いくつか基本的な考え方を実現するための選択肢をかなり具体的に示した上で、あとは市場の圧力で具体的な選択を迫るというやり方。いずれのやり方をするにしても、形式を伴わないと現状を変えさせるという力にはならない。もしそうだとすると、実質の議論はもちろん必要だが、それだけで留まったら十分ではないことになる。
  • 【法務省】この研究会では、取締役会の役割や機能あるいは社外取締役の役割等について議論されると聞いている。改正された会社法が施行されて、その後に企業で実務上どのような取組みが運用されているのか、特に社外取締役の選任等が進んでいる中で取締役会はどのような役割・機能を担うようになってきているのか、社外取締役にどのような役割が期待されるようになってきているのか、もちろん会社法改正時に講学上整理されてきたところはあるが、実際上はそういった講学上のものとは違う面などもあろうかと思うので、そういった点について勉強させてもらいたいと考えている。
  • 【金融庁】金融庁でも、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議をやっており、この研究会の委員の一部の方に出席していただいている。連携できる部分については連携できればと思う。
  • 【神田座長】この研究会の委員構成は、企業経営者の方々、投資家サイドの方々、社外取締役の経験が豊富な方々、学会関係の方々という構成になっているので、このメンバーならではの議論を行い、このメンバーならではの提言なり成果物を出して、そしてそれが政府の政策とも整合して日本の社会や経済に貢献できればと考えている。また、次回以降は、ぜひ議論を闘わせるようなこともできればと思っている。
  • 【佐久間委員】日本は、会社法上、監査役設置会社においては重要な業務執行の決定を取締役会でやらないといけない。これが決定的にアメリカの制度とは違う。アメリカの場合は、取締役会で決めなければいけないのは総会議案、配当、取締役の欠員の補充だけであり、重要な業務執行の決定を全てCEO以下に委任できる。この点が全く日本とは違う。その関係で、資料3の10頁目について、日本と米国の取締役会の回数と時間を比較しているものについて、数値は正しいのだと思うが、これを単純に比べる意味はない。日本の場合は約85%が監査役設置会社であるため、取締役会で全ての重要な業務執行を決めないといけないので、月1回は最低開かないと普通の会社では回らないことになるから、この回数を単純に日米で比較することはできないだろうと思う。
    また、モニタリングかマネジメントかという話について、監査役設置会社であればモニタリングとマネジメントの両方を監査役会含めて行うモデルに決まっている。
    もう1点、スピードを速めるのは極めて重要だが、監査役設置会社だとスピードに追いついていけないのかというと、そういうことは全くない。これは各社の工夫でできる。例えば、国際入札などで世界の他の会社と時間を争う中で、単純に一生懸命働いて、それに合わせて取締役会のスケジュールを組むことで対応できる。もしスピードに追いついていけなければ、競争に負けるということ。資本主義の国だとすれば、ある大枠は決めるにせよ、あとはまさに競争ということだと思う。コードができて、それを非常によく活かしている会社とそうでない会社があるという話があったが、それはまさに競争を表している。コーポレートガバナンスが何のためにあるかというと、競争力を高めるためにやっていることなので、それをやらない企業は市場から消えていくということもあるのだと思う。
  • 【冨山委員】今年の株主総会で残念だったことがある。昨年、オムロンの社外取締役として反対を推奨していた議決権行使助言会社があったが、去年から何も変わっていないのに、なぜか今年は賛成に転じた。私は51%の賛成で選任されればよいと思っている。
    この研究会の議論のスコープを広げた方がいい。やはりガバナンスなり企業経営というのは、別に執行部だけで作るわけでもなければ取締役会でやるわけでもなくて、すべてのステークホルダーの共同作業である。そういう意味でいうと、ガバナンスの制度が整備されてくると、その反射として機関投資家や助言機関のクオリティーが問われざるを得なくなる。そのレベルが低いと、やはり直接民主制を安易に信用してはいけないとなってしまう。機関投資家の場合、今まではやや無責任野党でよかったが、今はいろいろな権限が付随してきたので、責任与党としてちゃんと真面目にやってもらわなければ困るというところがある。そういった意味合いでいうと、機関投資家あるいは助言機関などの議決権行使者というのは、株主共同の利益に関して責任を負っている。日本においても支配株主に対してフィデューシャリー・デューティを課すべきだと思っていて、それに反対している人がいるが理由は何度聞いてもよくわからない。個人的な推測として、日本は親子上場している会社が多いため、親会社が立場上ややこしくなるのが嫌だからかもしれない。しかし、それはおかしい話であって、支配株主であっても、フィデューシャリー・デューティを少数株主に負うことが世界の常識になっているので、株主権の行使がどうあるべきなのかということについて、それも本来この議論のスコープに入ってくるべきだと思う。
    それからもう一つ、今度は執行部の問題。伊藤委員からも指摘があったが、やはり決定的に執行部の役割は重要である。例えば指名委員会は、諮問委員会だとしても、それが本当に活きるかどうかは執行部の姿勢次第である。オムロンは監査役設置会社で、先ほど佐久間委員が言われたパターンでいうとマネジメントボードとモニタリングボードのハイブリッド型であるが、実態はもう80~90%モニタリングボードである。要するに、執行的側面は10~20%。これは実は、重要決定事項の解釈でどうにでもなる。おそらく1対9から9対1の間で、会社法上、フレキシビリティーは持っている。これはやりようの問題で、それは個々の企業で選べばいいと思っているが、特に実効的にそれがどう機能するかということに関しては、裏返しにその幅があるということはやり方次第であり、特に執行サイドの立ち位置が非常に重要である。オムロンのケースでいうと、あくまでも社長指名は諮問であるが、オムロンの経営室は社長指名諮問委員会の決定がまず100%通り、それと違う決定はあり得ない。これはもう慣習法的にそうなっている。実際的な法源は、かなりの部分はやはり慣習法であって、その組織の中で慣習的に認知され、正当性が認められたものが現実的には法となっていくので、この私的自治の世界で考えると、やはり実質においてどういう慣習が作られていくかということは極めて決定的な意味を持つ。それを作っていくのは取締役会だけではなくて、執行部と一緒に作っていくわけなので、やはり執行部の役割というのはここでかなり議論したほうがいいと思う。
    それから、少し実践論的に発展すると、先進的なことをやっている会社と、かなりの数の静かな何もやっていない会社がある。これがあるのはよく私もわかっているが、この実質と形式の議論でいくと、先進的な会社については別に形式の議論をしなくてもどんどん先を見てやっていくので、はっきりいってこういうところでされた議論は全然意識していない。自分たちでもう10年先を考えている。オムロンは10年先に生き残っていくためにガバナンスの形はどうあるべきなのかということを常に議論している。そういう会社はそれでいいと思う。問題は、その他大勢、サイレントに何もやらない連中をどうするかという問題で、これについて私はやはり形式が効くと思っている。とりわけ、今回のコーポレートガバナンス・コードで改めて思ったのは、やはり日本の会社は横並びだと感じた。あれだけコーポレートガバナンス・コードのときに賛否の分かれる議論があって、かつ、コンプライ・オア・エクスプレインになっているのに、ほとんどコンプライにする。議論の当時に、あれだけ社外なんか絶対いませんと言っていたのは、どこにいったのだろうという感じで、どこかから社外取締役がわっと沸いて出てきて、各社がきちんと揃えている。やはり形式論、特にちゃんとした法律にならなくても、ある種のフォーマリティーをもったルールが日本では効く。私は、残念ながら、とあえて言いたいのだが、あれだけ反対していたのだったら、エクスプレインにすればよかったと思う。個人的に、エクスプレインする会社は、明確な経営的哲学や意思をもっているので、そういった会社は買いだと思う。ただ、現実にほとんどがコンプライしてしまったということは、所詮大半の会社がサラリーマン的横並びでものを決めているということなのだと思う。裏返して言えば、やはりこの形式というのはそれなりに効くということ。そういった意味合いでいうと、今回の議論の中で、現状のコードで十分なのか、あるいは現状整備されている制度で十分なのかという形式論も一部議論する必要があると思う。
  • 【大宮委員】広い議論をした方がいいという意見が出ていたが、そのとおりだと思う。ガバナンスと意思決定の迅速化という視点について、当社も昔から非常に苦労している。例えば事業を子会社化して事業会社を作れば、そこでの意思決定は、本体に置いてあったときよりも迅速になるはずである。しかし、逆にガバナンスをどう効かせるかという視点から苦労するところであり、子会社化してかえって遠心力が働くことでどこかに行ってもらっては困るので、その求心力を得るための施策を何らかの形で社内に取り込まなければいけない。取締役会の話以前に、どのように組織を設計するかということに絡んでいると思うので、議論するテーマがガバナンスと意思決定の迅速化という視点からすると、そういった点も含めた議論をすると非常に良いのではないかと思う。

以上

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最終更新日:2016年9月28日
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