経済産業省
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CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)(第4回)‐議事要旨

日時:平成28年9月30日(金曜日)8時00分~9時50分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

出席者

神田座長、青委員、石田委員、江良委員、大杉委員、大場委員、大宮委員、翁委員(9時45分途中退席)、神作委員、小林委員、澤口委員、武井委員、寺下委員、冨山委員、松元委員、御代川委員、柳川委員(9時00分途中退席)、竹林参事官、田原課長
(欠席:伊藤委員、岩井委員、川村委員、後藤委員、佐久間委員、藤田委員)

議題

取締役会の役割・機能について

議事概要

はじめに、本日の資料・議事等の公開について、資料2記載のとおりとすることについて委員の了承を得た。
次に、事務局より資料3・4の説明を行い、続いて、石田委員より、資料5の説明が行われた。その後、討議を行った。討議の概要は以下のとおり。

  • 【小林委員】2点述べたい。
    1点目は、事務局のご説明で、取締役会でどんな討議をするのかということについて言及があった。私が今所属している会社、社外取締役を拝命している会社、以前に社外取締役をやった会社は指名委員会等設置会社なのだが、必ずしも取締役会だけで全てを決めているわけではない。
    中期経営計画など、取締役がコミットし、非常に強い関心をもつべき戦略的な将来計画、あるいは、必ずしも取締役会での決定事項ではないものの、足元の危機的兆候とか非常に微妙なリスク要因など、取締役が把握しておくべき重要なアイテムはたくさんある。執行は良いことは言うが悪いことは隠したがるものだから、社外取締役の立場から見た場合、ひょっとしたらかなり悪い方向に行くかもしれない案件などを聞く場として、非公式な取締役評議会、連絡会などを最低月1回ぐらいは開いてくれないと、取締役会の本来の機能であるデシジョンメーキング自体がスムーズにいかない。公式の取締役会ばかりで議論していたら時間も足りなくなってしまう。そこで、私はこれら非公式な会議体も重要視すべきだと思っている。コンプライアンス問題や保安安全は、メーカーの場合は特に、取締役が監督すべき重要なポイントだと思う。
    2点目として、私の感覚では、「取締役相談役」などもってのほかである。取締役だから株主へのアカウンタビリティーはあるけれども、そもそも相談役になってまで取締役でいるほうがかえって問題だという気がする。相談役、名誉顧問、特別顧問等いろいろな名前で存在しているのかもしれないが、CEOたる者、「先輩は戦犯なのだ」というぐらいの強い思いを持っていなければならない。いつまでも「自分を選んでくれた人だから」などと言って遠慮している時代ではない。ただ、何らかの制度的な抑えが必要だとしたら、この相談役はこういうテーマを担当していると情報開示させることに絞ったほうがわかりやすいかと思う。あとはかなり個別の人間的な事情もあるので、規制のしようがないかもしれない。
    先輩が戦犯というのは少々言い過ぎたが、CEOというのはそのくらい自分が確立していないと、どうせ大した会社にはできないだろうと思っている。
  • 【大杉委員】顧問・相談役の件について、簡単に意見を申し上げる。
    まず、ISSが相談役について定款で定めることに反対推奨するというのは非常に納得感があり、多くの機関投資家も普通反対するだろうと思ったのだが、そのことではなく、背景にある現在の日本企業の相談役とか顧問という慣行についてどう思うかという点について、先ほどの石田委員の意見に7、8割賛成だが、現時点ではちょっと留保をつけておきたい。
    企業によって相談役とか顧問の実態はかなり異なり、専用車があるとか専用の個室があるというような会社ばかりではない。そして、相談役を置くことにそれなりのメリットがあるという話は、一般論として先ほど石田委員はおっしゃっていたが、そこにビジネス上の合理性があったり、何よりも気持ちよく辞めてもらうために次の席を用意しておくというような話も聞くので、一般論として相談役という慣行をとにかく廃止すべきだというと、少々強過ぎるかなというような感触を持った。
    私としては、各企業において真剣に制度の存置とか内容について検討していただくことと、要点については投資家に開示とか説明をしていくということで、何か日本のガバナンス改革を妨げないような程度に透明化していくということがよいと思っているので、趣旨としては石田委員がおっしゃったことにほとんど賛成だが、少しだけ留保をつけさせていただきたい。
  • 【冨山委員】相談役の話をすると、私が過去、いろいろ企業再生にかかわった案件で、相談役が役に立っていることは1回もなかった。はっきり言って全部害悪。残念ながら、それが現実である。現経営者が本当に相談をしたいのであれば、別に相談役でなくてもよい。OBに本当に尊敬できる先輩がいれば個人的に相談に行く。結論からいうと、会社の相談役である必要は全くない。
    ただ、先ほど大杉委員が少し言われたように、諸般の事情でいきなりなくすのが大変なのであれば、少なくとも相談役にいくら給料を払っているのか、秘書がついているかどうか、個室があるかどうか、車がついているかどうか、経費をどれぐらい使えるかを株主に対して全部開示すればよい。それでもなりたい人がなればよい。私はそう思うが、それは相当恥ずかしいから、そうすればそういう制度はかなり減ると思う。これは別に顧問でも何でもいい。全部開示してしまえばいい。
    基本的には元CEO、元社長、元代表取締役の人が会社に顧問・相談役で残るときには、ある意味ではもともとの役職からの派生でなっているわけだから、ちゃんと開示すればいい。自分がそれだけの役割を果たしているなら開示されても別に恥ずかしくないはずだ。私も開示してもらって結構である。だから私はそれでいいような気がする。
    次に、資料4の10ページで監督か、モニタリングかの話があったが、どこからこの議論が始まったのかよくわからない。やや講学的というか、学者っぽい議論のような気がする。カネボウの再建をするときに、やや実験的な思いもあって、カネボウ化粧品は委員会等設置会社にして、本体は監査役会設置会社のままにした。そうすると、さっきの小林委員の話に少し重なるが、指名委員会等設置会社は取締役の数が少ないのと、付議事項が少な過ぎて、細かいことの報告を受けないとよくわからない場合がある。そこで取締役評議会のようなものを実は結局作った。要は取締役会の執行マター的なことを自分が知っていたり、その議論にかかわっていることによって監督が充実する部分というのは、現実経営として存在する。
    極めて大きな方向性の議論、何を決定するかということと、何をモニタリングするかは少し違う次元の問題。
    取締役が関わって意思決定することは確かに大きな方向性の議論かもしれないけれども、その判断材料をどこで手に入れているか。現実経営の世界では、些細なことであっても、やばい兆候、端緒というものがあるわけで、現実経営に関わっている人は、そういう端緒をつかむ努力をしている。例えば月1回で監査役会設置会社側の取締役会の中にいたほうが、そういう端緒が多いので、この2つの概念は、私はあまり対立概念ということにはならないと思っている。
    むしろ仮に監督機能ということに純化して特化する議論をするのであれば、ここの鍵は圧倒的に人事権に尽きる。日本国の三権分立にしても、三権分立の基本は、人事権でお互い牽制し合っている。それと同じことであって、監督機能を充実させるのであれば、会社のフォーマットの問題よりは、実質的に誰が人事権を持っているかのほうがはるかに効くと思う。仮に監査役会設置会社であっても、例えば、指名諮問委員会がちゃんと機能しているオムロンがそうである。オムロンは社長指名諮問委員会をわざわざ別に作っているが、その指名諮問委員会というのは、今の社長を決めるときに、創業株主家である立石家から2人と社外2人で構成されており、この4人で100%決まる。それが存在していると、圧倒的な監督力を持つ。もっと言ってしまうと、実際、私自身、取締役会に出て何をチェックするかというと、取締役会の場では社長だけでなくカンパニー長も出てきて説明するから、社長及びカンパニー長が大丈夫かということを毎回いろいろな議論をしながらチェックしているわけで、指名委員会があれば、そこのレビューをする。そうすると、例えばさすがにあれはだめなのではないかという話が指名委員会のときに出る。そこが最大の監督であるし、それがあるから説明者は緊張する。人事権がなかったら何を言ったって監督権は機能しない。
    だから、私は上の部分の議論は会社のフォーマットにかかわらず、実効的な問題として指名委員会なり指名諮問委員会がどれだけの力を持っているかということに全て収れんすると思っているので、あまりフォーマットの議論にこだわってしまうと、本質からずれていってしまうような気がする。
  • 【松元委員】資料4の10ページの方向性の整理について、矢印の(3)が若干気になっている。(3)の方向性はCEO権限集権型に向かうということである。資料の細かいところを読んでいくと、CEO権限集権型に向かうというだけではなくて、それをやるときには取締役会の監督機能もあわせて強化することが重要ではないかというようなことが書いてあるのだが、資料の図だけみると(3)が望ましい方向性の1つに位置づけられているように思う。これまでのほかの委員からのご指摘を聞いていると、望ましい方向性として、CEOの権限を強め、かつそれに伴ってCEOを監督するための取締役会の監督機能を強化する方向があるという形で、パッケージで出ていたと思うので、CEO権限集権だけという意味での(3)だと必ずしも望ましいとはいえないのではないかという疑問がある。
    もしかするとここを点線にすればいいのかもしれないが、誤解のないように整理していただけるといいのではないかという感触を持った。
  • 【大宮委員】資料4の10ページだが、弊社の歴史等を考えてみると、BとAの間くらいで、よりBに近いところにいたかと思う。よく言われているのだが、昔は工場が各地にあり、そこの工場長を所長と呼んでいたが、それが一番偉かった。2番目が事業本部長、3番目が神輿に乗った社長というような形態であった。
    例えば、単一の事業をやっているところはもう少し違うと思うが、非常に多い事業体を抱えているコングロマリットと称されるような会社は、大概、キャリアパスの問題もあって社長が全部をつかみ切れないということがあり得るので、実際に事業をやっている人たちの意見を一番尊重して、そこが決めてきたものに対してほとんど反対ができない、反対するツールもないというようなことがあるのではないか。そのツールが何かというのが、この間ご紹介した戦略的事業評価制度である。外の目で見る制度を入れたのは、社長の権限を強くするためのツールが要ると考えたためである。
    実は、今の社長に代わったとき、呼称をCEOに変えた。これは権限を集中するという意図である。監査等委員設置会社に移ったのも、経営の形を少し変えて、中身が変わってきているものを内外に示そうという意図でもある。弊社は今、どちらかというとCに近い格好になっていると思う。
    監督とモニタリングという視点からすると、社外取締役が取締役会で論議している内容を精査している最中だが、取締役会の議題をかなり戦略的なものに絞ってきている中で社外取締役に期待している機能は、重要な戦略的決定に主体的に関わっていただくことが1番目の機能である。それから、執行側に任せていいものは任せた上で、それを後押しするというか、しっかりやりなさいと賛同してくれるようなスタイルでの関与が2番目の機能であり、3番目は、ほとんど報告も要らない、やってちょうだいと執行側に完全に任せて関与もしないというような形でお願いしている。
    次に、冨山委員が言われた、監督は人事権だというのはその通りだと思う。CEOに権限が非常に集中すると暴走する可能性もあるから、それを抑えるために指名等の委員会を任意で設置していろいろトライしているのだが、権限を非常に強くしていくということで、Cのエリアに入ってきた結果、これからはCEOの暴走にストップをかけるような機能が会社には要るのではないかと思う。
  • 【神作委員】先ほど小林委員、冨山委員から、取締役の決議事項が少なくなると、監督するための情報が足りないので、取締役会の外の会議体ができるというご趣旨のことを教えていただいたが、その会議は取締役会で行うことはできないのかという単純なご質問をさせていただきたい。
    取締役会は、意思決定だけではなく監督機能を果たすのも重要な任務だが、取締役会ではない協議会とか別の名前がついた会議体が設けられるということは、取締役会とはメンバーが違うなど、取締役会ではできない事情があるのか、教えていただきたい。
  • 【小林委員】非常に単純に言えば、取締役会で決定はしないけれども、取締役が早目に知っておかなければいけない執行レベルのアイテムは数多くある。極端なことを言えば、それを抽出して正式な議事録を作るか作らないかの問題である。取締役会は確実に正確で正式な議事録を作成するが、もっとざっくばらんに、リラックスして内情を議論する、あるいは執行の担当者にもっと出てきてもらって、社長ではない立場から生の話をしてもらう機会も必要だ。しかし、やはり正式な取締役会だといろいろな縛りがあり、そう簡単にいかない。そういう意味で、非公式な会議体と正式な取締役会というツーステップを設けている会社は、結構有効に機能しているのではないかと思う。
  • 【大宮委員】私は取締役会でできるようにすべきではないかと思う。先ほど申し上げた、事業所長が一番偉いというBの形態から今変わりつつあると思っているが、重要案件だけを取締役会で扱うということになってきていて、その中で特にリスクという視点が経営の中の非常に重要な部分を占めるということもある。
    弊社は客船で大変な損失を出した件もあって、リスクというものを取締役会にどうやって早目につなげていくかという論議がかなり行われているので、社外取締役の人に下部機関に入ってもらうということも、やり方としては非常にいいやり方だと思うが、なかなか忙しい人もいて十二分に入り切れないということになると、取締役会を月に1回くらいの頻度でやるのであれば、事前の予兆も含めて、なるべく早くに出して自由闊達に論議ができるような形に取締役会を変えていくというのが非常に大事ではないかと思う。取締役会の頻度が2ヶ月に1回だと難しい気がするが。
  • 【小林委員】それに関して、取締役会議長は会社のことを相当詳しくわかっているはずだが、社外取締役が取締役会議長を務めている場合は常勤ではないので、最終決定をかなりしっかりしたフォーマリティーのあるところでやればよい。
    一方、常勤の監査委員や社外取締役を議長とした取締役評議会や取締役連絡会のような会議体を、取締役会とは別の議長の下でやればよいのではないか。社内取締役でさえもそのような会議体である程度勉強しておかないと、重要な決定といってもなかなか簡単にはできないと思う。最終的な理想形としては、1日全部使うくらいじっくりやるのがいいのかもしれない。
  • 【大宮委員】今おっしゃった、取締役会の議長が社内出身者か外かということで大分違うというのは、感じとしてはよくわかる。
  • 【小林委員】それから、本当に実務的なことを言うと、社外取締役は皆多忙であり、取締役会は出席義務があるから絶対に出席するが、非公式な評議会のようなものであれば時として出席できないことがあっても後で資料は読める。加えて、常勤の監査役がしっかり執行をウォッチしていて、これはやばいぞというような端緒を見つけだす。要するに、取締役会でどんなアイテムを議論するか決めるほうが現実的にはよっぽど重要である。そういう意味で、評議会のような会議体が私は必要かなと思っている。
  • 【寺下委員】資料4の22ページのところで重要な点がある。1個、日本で抜けているところがあって、そこを強調したい。コーポレートガバナンスを所管する部署というか、取締役会事務局をどこに置くかというのはすごく重要な問題で、欧米の概念でカンパニーセクレタリーという位置づけがあり協会もできている一方、日本だとセクレタリーというのは秘書というイメージになってしまう。取締役会事務局の機能とか位置づけは、色々な組織体を作るにしても極めて重要なので、この議論はどうしても一緒に並行して行っていただきたい。なぜかというと、今、法務に置くのか、経営企画に置くのか、色々な部署に置くのかというのは率直に言ってばらばらになっていて、会社の中での主軸がばらばらであるがゆえに、しっかりと物事が進んでいかないという場合もあるから、欧米におけるセクレタリーという法の番人のようなところを皆さんで議論していただいて、研究会の中でいい事例をケーススタディーとして出していただきたいというのが1つのお願いである。
    もう1点が、先ほどの相談役の件である。全体的にCEOとか社長の時代にもらっている報酬が少ないので、相談役になって引き続きもらおうというのが率直なところだと思う。これは大体間違いないところだと思う。そこでせっかく経産省がこの委員会でRSを作ってくれたわけだから、そういうものの導入の仕方のようなことも色々な例として出すことによって、相談役制度の見直しが具体的に進む方策を示すことが肝要である。以上2点お願いする。
  • 【御代川委員】まず、前回、当社は相談役・顧問制度がないという説明をしたので、少し説明させていただく。(制度を廃止した)当時のトップが言っていて、私もそうだと思うのだが、やはりこれからの時代は社会に貢献するために再就職しやすい道を作るべきだということである。社外役員の方を探したときに、日本の場合はどうしても高齢の方が多くなってしまう。70代を過ぎた方よりは、できれば60代の方で企業経営をされていた方に社外役員としてアドバイスをいただくほうが非常にいいと思う。
    現実に私どもの会社でトップだった方は、いろいろな業界で社外役員に就任しており、それはある意味、経験を活かして社会に貢献できているということ。私はそういう方向に行くことが非常に大事だろうと思う。
    もう1つ考えると、日本では報酬の後払いとしての相談役・顧問への就任がみられ、本来であれば時価で払うべき報酬を後で払っていくということで、逆に企業トップの方を拘束してしまうというようなこともあると思う。その点もつけ加えさせていただきたい。
  • 【柳川委員】いくつか重要な論点が出ていると思うけれども、ある種の形式と実態の違いであるとか、法的なものと文化的なものとの違いとか、このあたりのところが1つの鍵のような気がしていて、議論の中でもその2つがちょっとオーバーラップしている部分があると思う。
    今の相談役の話にしても、相談役はある種の制度として認めていいかどうか。例えば、今の定款で入れるかどうかという話と、実質的に相談役が存在するかどうかという話とは多分ちょっと違う話で、ご指摘のところはそういうところがきれいに出ていたと思うけれども、もう少し根本的な話をしたい。目上の人が何らかの形の自主的な権力をもってしまうことの源泉は、相談役という肩書きがあるかないかではないのだろうとすると、そこを本質的に変えるには別の仕組みが必要かもしれない。もしお金を払っていることや、部屋がついていることを変えればそういう文化的な背景が変わるのだとすると、そういうところに大きな影響があるということなのだろうと思う。先ほどのように、実質的には給料が後払いだという話も、かなり法的なものと実質的なものとの乖離なのだと思う。
    もう1つ、監督と執行の分離の話であるとか、取締役会の法的な役割の話とかというのもかなり大きなポイントだと思っていて、事務局資料4の10ページの図は一応実質的なものを書いたものだとお話しになっていた。そこは、私は大事なポイントだと思う。
    先ほど冨山委員がおっしゃったように、執行と監督の分離というのは現実的になかなか難しいというのは、おそらく実態としてはご指摘のとおりなのだと思う。では、そのことと法的な部分、あるいは仕組みとしての設計をするときに、そういうところをどのような形でつくっていくかということはまた別の問題で、ある意味で実質的に混在しているからこそ、制度としてはかなり分けたような制度にしておくという作り方もあるだろうし、実態として合わせるというところもあるのだと思う。
    先ほど大宮委員から、神輿に乗った社長は3番目ぐらいの権力だというお話があったけれども、これもまさに実態をあらわしている話で、法的にはCEOが決められるはずなのに、決められない。そういうものを、神輿に乗っているという意味でいいのだと思ってCEOの権利を法的に考えるか、そうでないかというのはすごく大きい話だと思う。
    その点に関して一言だけ申し上げると、先ほどの取締役会で何を決めるかという話で、社外取締役が議長をやっているようなところだと、もう少し別の会議体を作って議論しないと実質的なところが進まないというのはとても重要なご指摘だと思う。それを問題だと考えるか、そういうものだと考えるかであるが、ある意味で法的なところで権利を作ってきた人からすると、実質的に取締役で色々なことを決めると決めたはずなのに、それが別のところに移ってしまうとすると、それはある種の問題だと考えられる。
    そういうものだと考えるのも1つの割り切りかもしれない。実質的には別のところで動いていていいということである。ただし、フォーマリティーを持った議事録が残るところでは、きちっと社外の人がトップになり、社外の人がかなりいるところで最後に議論をするところに意味があると考えるかどうかというところも1つの大きな論点のような気がする。
    ある意味で、そのような形の割り切りの取締役会を制度的に考えるのか、もう少し別のものを考えるのか。その裏側には事務局資料4の10ページのところの、実質的にどんなものを目指すのかという話と、それにあわせてどんな形の制度的な仕組みを用意するのかということを分けて議論したほうがいいかと思う。
  • 【江良委員】2点申し上げる。1点目は、先ほどから話題になっている顧問と相談役についてである。これについては我々もさまざまな場で、基本的には望ましくないという考えを申し上げていて、自社に残るのではなく、他の会社に行かれて、社外役員としてご活躍いただくということが望ましいという点に賛同する。
    ただ、既にさまざまな意見があったが、顧問・相談役という制度は名称も多様だが、その実態も各社によってかなり異なり、我々としても個別の企業と話し合いながら対応を検討している。例えば、ある会社の制度については問題視して廃止を求めたケースもあるし、一方で、対外的な活動を重視し、そういった活動が実態として認められる場合については問題視しないということもあった。この点については、きめ細やかな考慮が必要ではないかと思っている。
    どのようにしたら社外役員としての採用がさらに進むのかと考えると、一番決定的に欠けているものは、その方々が取締役としてどういった活躍をなさってきたのか、どういった観点から発言されてきたのかという働きぶりについての情報が限定されていることである。招集通知をみても経歴、取締役会出席回数のほか、数行程度の発言内容の要旨くらいしかない。一緒に働かない限りわからない部分もあるとは思うが、こういった働きぶりに関する情報がもう一段充実すると投資家にとっても有益だし、他の会社にとっても社外役員を選ぶ際の1つの手がかりになるのではないかと思っている。
    2点目は、まさに柳川委員がおっしゃった点で、取締役会で何を決めるのか、役割をどう考えるかということだが、多くの会社と議論すると、実質的な経営判断や議論については、取締役会外のさまざまな委員会、例えば経営会議等の会議で実質的に質疑が行われているケースも多く、法的権限と実態がかなり乖離しているという印象がある。そういった前提に立つと、取締役会の役割だけお聞きしても、その会社のガバナンスの実効性がわからない場合があり、本当にきちんと議論がされているのか不安になるケースもある。そのため、実態と法的権限を分けて考えて整理したほうが議論に資するのではないかと思っている。
  • 【大杉委員】まず、先ほどの、相談役・顧問に関する発言の補足である。私が基本的にはそういう制度に対して好意的でないにもかかわらず、全面的に廃止しようという議論に乗れないと考えている1つの理由は、前々回の会議で私がプレゼンテーションをしたときにご紹介したが、2000年代初頭に上場会社で取締役数の削減が進んだときに、それは業績の改善につながっていなくて、むしろ業績を改善させないように機能したということに関して、内田交謹先生の実証研究がある。そういうことに照らすと、社会的に非常に強い批判の風潮とかを作りすぎてしまうと、改革が進みすぎて本末転倒になるというシナリオがあり得るというようなことが念頭にあった。そして、不透明な形での相談役は良くないという点は、少なくともこの会議ではコンセンサスがあると思う。
    次に、先ほどから、事務局資料4の10ページの4象限の図の話をめぐって議論がされているが、今後、この研究会で議論していくときには、法律上のフォーマルな取締役会を議論するよりは、取締役会に付随する様々な非公式の会議体も含めた上で、全体としてどのようなことを目指すべきか、どのような機能を果たすべきかというような議論が出発点になるのではないかという印象を持った。
    大切なのは取締役会というフォーマルな場で何をやっているかというところではなく、実質的にみて、リスク情報が早い段階で社外の取締役に伝わっているかどうかという仕組みである。また、取締役会で意思決定をするというのは、ビジネスの流れの一部分を切り取っているだけの部分であって、会社によってはやはり取締役会は意思決定機関だという文化が強い会社もあれば、あまりそれにこだわらない会社もあって、どちらのあり方も尊重されるべきだと思うけれども、経営とか監督という観点からみると、大もとの戦略をつくって、それを計画に落とし込んで、しかしそれがうまくいっているかどうかのフィードバックもしつつという広い意味でのPDCAが大事で、それは広い意味での取締役会とか付属の会議体で社外取締役を交えてやっていく必要があるというのがガバナンス改革の本質部分であろうと思う。
    付言すると、会社法362条4項が、いわゆる監査役会設置会社という伝統的な機関設計においては、重要な業務執行の決定は取締役会でなさなければならず、これを下位の機関に委任することはできないということを定めているが、現時点から振り返ると、このルールが日本企業のガバナンス改革の足を引っ張って、取締役会改革をやりづらくしたのではないかという問題関心を持っている。今回、CGS研究会でやっている議論については、あまり法律がこうというような議論はしないほうがいいのかなという気がしている。
  • 【大場委員】色々な委員の方から様々な論点が示されているが、私からは、投資家の立場からみたときに何が課題なのかというようなことでご意見を申し上げたいと思う。キーワードは2つである。
    1つは、総括検証である。本日の会議では取締役会における議論が行われていて、相談役制度とか色々なご指摘はあるが、結局のところ何が足りていないかというと、日銀の政策の検証みたいなものだが、経営の評価の検証が行われているかどうかということが非常に不透明だということである。最初に申し上げたが、投資家からみたときに、多くの企業において持続的な企業価値の向上が図られていない。それについて、何が課題なのかということをどのような形で取締役会が評価するのかということがものすごく重要である。コーポレートガバナンスを強化することを目的としてこの研究会で議論が行われていると思うが、それは何のためにやっているかというと、持続的な企業価値の向上のためにやっているはずである。それがなぜ果たされないのかというと、相談役制度が課題なのかもわからないが、そういう会社ばかりでもないと思う。従って、そこについて取締役会が評価をしなくてはいけないと思う。
    もう1つはディスクロージャーである。今の話の続きで、経営の評価がディスクローズされると投資家と経営者の対話が非常に進むのではないかと思う。また、どのような形でディスクローズされているかということについて、ベストプラクティスとなる企業があれば、それを共有化するという作業が行われると、持続的な企業価値の向上に向けた具体的な伸展が図られるのではないかと思うので、そういう観点で議論が進むことを期待したい。
  • 【神作委員】先ほどの大杉委員のご発言と関係するが、形式と実態の問題について一言申し上げたい。社外取締役は定義上形式により決まっており、近時のコーポレートガバナンス改革の中心は社外取締役の活用にあると理解している。社外取締役が働く場所は取締役会である。そうすると、形式に寄り過ぎだと言われるかもしれないが、社外取締役にガバナンスで一定の役割を果たしてもらおうという方向で議論がなされてきた中で、形式とか形態の問題も決しておろそかにせずに議論する必要があるのではないかと思う。
  • 【青委員】今のご発言と関連があるのだが、資料4事務局説明資料の10ページ「各社の取組の方向性の整理」の模式図について。Bの象限のところで、取締役会の監督機能よりも個別の業務執行の決定を優先するように見える記載があるが、取締役会は監督機能を果たしたり、経営の中心として機能するのが基本的な位置づけと思う。Bの形態であったとしても、取締役会によるガバナンスがきちんと効いている必要がある。今後、表現されるにあたり、取締役会の監督機能が不要という受けとめ方をされないようにご留意いただければありがたい。
    次に、相談役についてであるが、各委員からもご意見が出ているが、社外取締役の人材のプールという点は、今後の取締役会のガバナンスシステムを考えるにあたって非常に重要なポイントかと思うので、各委員のご意見に賛同したい。それから、相談役の存在が、CEOが思い切った判断をする際の制約になるということがあるのであれば、その点については十分に見直しをする必要があるという観点から考えていくべきではないかと思う。
  • 【冨山委員】元法律家だったので、あえて制度論を少し語りたい。
    資料4の10ページのチャートについてだが、私は機能の固有性をちゃんと考えるべきであると思う。
    業務執行をするのは取締役会でなくてもよく、例えば経営会議でよい。取締役会が持たなければいけない固有の機能は明らかに監督機能である。なぜなら、ほかに監督機能をやるところはないからである。
    経営会議のトップはCEOあるいは社長で、それに対して監督機能をきかせようとすると、もし取締役会でなければ、それは相談役等の人がやるしかなくなってしまうからああなってしまうわけで、つまり機能の固有性を考えたときに、表の上か下かというと上に決まっている。下は、監督機能にどこまで執行機能を兼ねさせるかどうかということでしかない。
    これは、会社法上、代表取締役の任命権を取締役に与えているから。議院内閣制でいえば、取締役会は国会の位置づけになっている。国会が総理大臣を選ぶことによって内閣を牽制して監督をしているわけで、これと同じである。
    だから、ここは制度論でちゃんと整理したほうがいいのだが、この講学構造をごちゃごちゃに議論して分類をしているから、時々、監督機能は取締役にないなどというとんちんかんなことをいう経営者が出てくる。くどいようだが、監督機能を持った上で、執行機能を兼ねているような取締役会はあるかどうか、どこまで執行機能をとりこむかというのが正しい定義である。
    次に、実質の議論として、先ほどの相談役の議論に戻りたい。相談役の持つ影響力というか、実質的な心の呪縛の源泉は人事権である。なぜ相談役が現社長に力を持ち得るかといえば、相談役がその人を社長にしたからである。その連鎖が延々とあるから、お前は誰のおかげで社長になったと思っているのだという心理作用が暗黙かつ強烈に働くし、その中で30年、40年働いているから親子関係のようなものになり、そこから自由になれというのは人情として私は無理だと思う。
    ということは裏返して言うと、社長と会長と相談役が相談して社長人事を決めているケースが現実には多いが、それをやめ、本当にガチで、例えば現社長と指名委員会なりがちゃんと一緒になって議論するということになっていけば、自然に呪縛は解かれていく。
    実際の事例を申し上げるが、今、オムロンの社長は山田氏で、49歳のときに、ごく若くして社長になられた。前任の作田氏はすごく立派な社長で、すごく力を持っていた社長である。大方の予想は作田氏の院政になるというものだったが、作田氏自身がそうならないように考え、実際は先ほど申し上げた本当にガチの指名委員会でやっているので、ものすごい勢いで求心力が山田さんに移っていった。そうすると何が起きるかというと、作田氏はオムロンの会長であったが、そこに力を注ぐよりも、ルネサスの再建に向かった。ルネサスの一番苦しいときに行って、あそこまで立て直したのは作田氏であるが、まさに社会貢献であり、そういうところに自分のエネルギーを使うようになる。
    だから、人事、特にトップ人事の連鎖を実質論としてどうしていくのかというのは、制度論で全部は規制できないけれども、少なくとも指名委員会等々、あるいは指名諮問委員会の役割によって、相当状況を変えられると自分の経験で思っているので、そこはぜひ議論の中に入れてもらえるとうれしい。
  • 【石田委員】資料4の10ページの4象限の話について。特に小さな会社の人たちと話して感じるのは、コーポレートガバナンス・コードが導入されて初めてガバナンスについて取締役会で議論するようになった会社が多いことだ。そのような場合、取締役会による監督とは何を意味するのかについてあまり考えたことがなく、現実問題として取締役会の機能にどのように落とし込むか、何をどう変えればよいのかが見えず、困っている会社が多いと思う。そのようなときに、考え方のフレームワークを提示できるので、このような図は意味がある。いきなり監督型というと警戒する人が多いと思うが、まずは考え方を理解して、あとは個社が手探りで自分たちにあう形を見つければよい。そのような道筋を与えるという意味では、10ページの絵はいいのではないか。例えば、いきなりBからCに飛ぶのは抵抗を感じる会社は多いと思うが、Bの中でも(2)という小さなものもある。これならできるか、という感じで、企業の方が安心できるのではないかと思う。
  • 【澤口委員】2点申し上げる。先ほどの取締役会評議会の議論を聞いていて思ったのだが、多分、アメリカの取締役会だとエグゼグティブコミッティーが比較的近いのかなと思う。私の理解する限りでは、チェアマンと委員会の委員長やCEOが集まって取締役会の準備をするというコミッティーである。いずれにしろ、取締役会の議論をするためにはコミッティーのところも視野に入れて議論したほうがいいかと思った。
    2点目は、難しいと思うのだが、取締役会の議論は外に情報がなかなか出てこない。それから、ここで議論していても、皆さんの経験での議論に限られてしまうので、なかなか客観的な議論がしづらいかと思っている。可能であれば、米国の取締役会はモニタリング・モデルといわれるが、取締役会自体でどういう議題で審議が行われているのかとか、そういう情報がなかなか外に出てこないので、そういうのも議論の素材にさせていただければいいのではないかと思う。
  • 【翁委員】3点申し上げる。まず、資料4の10ページの表だが、やはり先ほど石田委員がおっしゃったように、置かれている企業のポジションとか、製造業か非製造業か、グローバル企業かドメスティックな企業かということによって、選んでいく体制も相当違ってくると思う。特に製造業などでみると、売り上げの圧倒的なシェアが海外になっていて、海外投資家の比率もすごく増えているので、日本の投資家ももちろんそういう方向になってきているけれども、やはり監督機能の充実ということが非常に求められてきているのと思っている。その意味で、やはり社外役員のダイバーシティーということが非常に重要になってきている。もちろんバックグラウンドとか、海外の人がどのぐらい入ってくるかとか、年代もどうなのか、恐らくそういったダイバーシティーなども意識して企業価値の向上を目指していくということがこれから求められると思うし、同時に監督機能の充実を図っていくためには、しっかりした執行体制がどのように図られているかということがみえてくるということも、とても大事だと考えている。
    次に、今のご意見とも少し関係するが、先ほど資料3で指名委員会等設置会社のご説明があったが、実際にどんな議論が行われているのかをちょっと知りたい。指名委員会等設置会社でなくても任意で指名委員会や報酬委員会が作られているが、単に作っているだけではないか、実質的にどういう議論が行われ、または行われようとしているのかといったことも少しサーベイしてみる必要があるように思う。
    最後に、先ほどから情報共有がとても有益だというような議論が出ていて、私も社外役員を務めている会社が幾つかあるが、やはり取締役会以外のところでの事前の説明とか情報共有は極めて有益だと思っている。ただ、一方で、先ほど大宮委員がご指摘になったように、本当にそれで取締役会で実質的な議論ができるということが担保されるような形でそういう会議を運営していただくことが極めて重要だと感じている。
  • 【小林委員】先ほどから相談役についての議論が大分多かったが、明確に監督と執行を分けて、CEOが執行の全責任を持ち取締役会が監督機能を果たすという会社において、以前CEOとして執行をやっていた取締役会長がいたら、今のCEO、社長は極めてやりづらいと思う。だから、相談役以前の問題で、会長が早く監督に専念して、社外活動にエネルギーをぶつけるようにしないとうまくいかない気がする。そうすれば、社長は非常にやりやすいはずだ。会長というある意味で中途半端なあり方も議論の俎上に上げるべきではないかと、議論を聞いていてかなり感じた。
    それから、指名委員会の運営の実態は会社によって相当に違うのではないかと思う。本気で独立した社外委員だけでやっている会社もあれば、社内委員のほうが多い中で、かなり詳しくデータを共有しながら1年間かけてしっかり議論していく会社もあるだろう。この辺を調査したら面白いと思う。
  • 【武井委員】まず、事務局が作られた資料4の10ページの絵について。私はこういうまとめ方をしていくことは良いことだと思う。
    なぜなら、どうしてもガバナンスの話は制度論から入りがちとなるが、さっき大場委員のおっしゃった「どうやれば持続的な成長に適うのか」という観点とは違う関心から制度論は作られるときがあって、どれかの機関設計にすれば持続的成長に適うという単純な話ではない。ガバナンス改革となると、制度論に合わせる形式的な対応が起きやすいが、実際、先ほどの取締役会の決議というテーマにしても、取締役会の場で何を決議すべきであるかとか、社外取締役の方がいる場でどういったことを議論すべきかといった問いは、大場委員がおっしゃった持続的成長に必要な経営評価機能や監督機能ができるかという問題と対応して考える必要がある。そこで資料4の10ページの図は、法制度の用語から離れて、違う形で持続的な成長のことを考えようという取り組みだと私は理解したので、これはとても有益な試みだと思う。X軸、Y軸をどう作るか色々な議論があるかもしれないが、ぜひこの試みの延長をしていただいて、ガバナンスの実質化のために色々なことをやっていただきたい。
    また取締役会というのは法的な境界線であって、取締役会で何を議論するのかという法的な問題よりは、取締役が全員集まっている場でどういった議論をしたら良いのかが大事である。仮に社外取締役の方を含めて全員が集まっていても、「ここまでは取締役会、ここまでは取締役会でなく事実上の会合」という形で時間帯を分けている例は、日本に限らず欧米にも結構ある。どうすれば議論が実質化するのかという観点から考えているほうが意味があってかつ現実だと思う。取締役会についての法的な議論から離れた議論をすることには意義があると思う。
    第三に、先ほど大宮委員からのお話にもあったが、特にリスク管理であったり、不祥事の芽などというものは、現場で利益相反が生じがちなので、ある程度上の層のかたがきちんと関与して監督機能を発揮すべきである。「取締役会をモニタリングモデルにして、取締役会で議論すべき事項を減らす」というステレオタイプなリアクションが、こうした監督機能に必要な情報まで取締役会に入らないことに至ることがあって良いのか、日本的には考えないといけない。
    第三に絡むが、第四に、これまで日本の企業は、監査役会設置会社を採用していれば、会社法が取締役会で何を議論しろということを決めてくれていたので、企業は自分で考えなくても、ある意味、業務執行事項は何でもかんでも取締役会でやるという法律から与えられた形でやっていた。そこで今回、いざ取締役会の議論すべき事項を分けましょうとなったときに、何を残すべきかといったところを思考中という段階であると理解している。
    そこで監督といったときに、先ほど冨山委員も言われたが、人事権を適正に行使するために取締役会に入れておかなければいけない情報はいろいろとある。監督権の前提となる情報を入れるためには、付議であれ、議論であれ、どういったことを取締役会で審議すべきなのかということをもう少し考えるべきであって、会社法上はこれだけの部分しか取締役会で決めなくていいといっているからこうするといった自律的意思のない話でなく、人事権の行使のために必要な情報は何なのか、それをさらに意思決定という形で取締役会で決めるのか、それとも付議や審議の形で扱うのかというような色々な考え方があるのだという視点を提供していくことが、この研究会としてガバナンスの実質化という観点からよいかと思う。
    例えば中期経営計画をつくるにしても、経営会議とかマネジメントが決めたことを再度取締役会に意図もなく繰り返し付議しても、あまり実質的効果がない。監督する側には情報がないものだから、ああそうですかと追認している現象があれば、そこを今回のガバナンス改革の中で一番に直していったほうが良い、一例である。経営評価の前提となる中期経営計画などをきちんとどういう形で社外者の方が関与するのかというのも大きな論点である。この手の個別の代表例を踏まえて、企業が今まさに取締役会のあり方を変えようとしているタイミングで、どういう視点で変えたらいいのかということを実質的に考える助けになるような整理を提示できたら良いと思う。
    第五に、図について1点だけ細かいコメントを申し上げる。資料4の10ページのX軸、Y軸について、冨山委員からのコメントを聞いて私も思ったのだが、Y軸の監督機能という言い方が少々誤解を生むのかなという気もしている。冨山委員のコメントを踏まえて、もし変えるとしたら、この部分は、取締役会で意思決定している事項が多いか少ないかという象限とするのはどうか。どの象限でも上場企業に必要な経営評価機能、監督機能は変わらないはずだと思うので、監督機能が多い少ないという言い方をするよりは、取締役会で意思決定していることが多い少ないというのがX軸で、そのときに必要な監督機能はどうなるのかなというようなY軸にしたほうが、冨山委員のコメントに対応できるのかなと思った。
    最後にいろんな方から意見が出されている顧問・相談役についてだが、いろいろな弊害を惹起している例があるのかもしれないが、悪い例のほうが外に報じられやすいという特徴もあるわけで、ブラック・オア・ホワイトでいいか悪いかを議論をするのは良くないと思う。たとえば今後、先ほどの監督権・人事権を行使していくとなったら、社長にどんどん辞めてもらわなければいけない時が増えてくるかもしれない、そのときに競業避止という観点から会社に残ってもらうというメリットもある。そういう現場の知恵までおかしいと断じてしまうのもおかしい。また、そのかたがいることで会社がいろいろな不協和音を起こさないで一つにまとまっているとか、ガバナンスが効いているといった事例も少なからずあると思う。良いか悪いかの単純論は難しいと思う。今回もし何らかの整理をするのであっても、どういう場合は弊害を起こす、どういう場合は良いなどといった視点の提供のほうが良いと思う。
  • 【大宮委員】大場委員、石田委員のご意見等を聞いて考えると、会社の内部のガバナンスをどのように向上させるかという視点で、取締役会をどうすべきかとか、社外取締役にどういう形で機能してもらうかというようなことが非常に大事だと思うけれども、投資家の目からみたときの先ほどの総括検証とディスクロージャーという視点からは、この辺もすごく大事だと思っている。例えばどういう形のIR活動をやるかとか、統合レポートみたいなものが最近色々な会社で随分充実してきていて、あの中にはCSRも含めて、社外取締役がこういう形で会社の経営にかかわっているというようなことも載っているのも色々あるようだ。ディスクローズという観点からは、内部で一生懸命やっていることを外部にどう伝えるかということも非常に重要だという感じがする。
    そこで、統合レポートか何かを一度リサーチして、どういうことになっているかということも少し調査してみたらいいのかなというような感じがする。大変大事な外部への発信のツールだろうと思う。それによって、ガバナンスという視点からは、内部だけではないような形でのフィードバックがどこか得られるはずだから、その辺も非常に重要かと思う。
  • 【冨山委員】資料4の10ページは確かに大事なスライドで、Bは仮に国で例えると、事実上王様がいない。総理大臣はいるけれども、ほとんど権限がない。それで、監督機能がないということになると無政府で、成り行きでやっているという状態である。各部門の部門長がみんなそれぞれにやっている成り行き経営である。Dは先ほど松元委員が言われたように、要するにとんでもない独裁国家である。
    もし仮に沿革的に下から上に日本の会社が来ているとすると、これでうまくいったということは、よっぽどいろいろな条件に恵まれていて、要は無政府であろうが、独裁国家であろうが、うまくいってきてしまった日本の経済ということになってしまう。ひょっとしたら経産省が立派なのかもしれないけれども、とにかくそういうことである。
    制度論的に言ってしまうと、取締役会の固有の権能は、監督と呼ぼうが、モニタリングと呼ぼうが取り締まることにあるのだとすれば、むしろ議論の発想は制度論的には逆転したほうがいいと思っていて、要は監督、モニタリングの実を上げるために、取締役会において個別の業務執行の決定にどこまで関わるべきかと命題を置きかえると、実はいろいろな議論が見えてくるような気がする。
    私も、そして多分小林委員も思っていたのは、武井委員の議論ともかぶるが、指名委員会等設置会社で形式論的に取締役会の決議事項を減らすことにこだわり過ぎると、監督の実が上がらなくなることがある。かといって、取締役界が細かいところにどんどん分け入ってしまうと、監督の域を超えて執行の側に回ってしまう。執行の側に回り過ぎてしまうと、自分で自分を監督するという構造上の矛盾に社外取締役の人も陥ってしまう。
  • 【神田座長】私も感想を2点ほど手短に述べさせていただきたい。
    まず、今冨山委員がおっしゃったことを私が学生時代にどう習ったかというと、BとかDで誰が監督しているのかというと、同僚の目、従業員の目というように習った。それはともかくとして、澤口委員からもご発言があったと思うが、私は米国では、取締役会は監督はしているが業務の決定はしていないと思う。そこを我々はもう一度確認して、日本はそういうスタイルがいいのか、よくないのかというのは、冨山委員が先ほどから繰り返しおっしゃっている点を含めて、重要な点かなと思った。
    あまり図を議論し始めるときりがないが、取締役会の監督機能と意思決定機能というのは相反するわけではない。それぞれ強弱があるとすると、4つの組み合わせがあると思う。行くべき道として弱・弱は良くないが、強・強というのはありうると思う。それは、今は(2)であらわされていると思うが、矢印はもっと上まで行って、しかし意思決定もするというものである。矢印はこの図だと書きにくいと思うが。
    次に、別の点だが、私は大場委員がおっしゃったことは非常に重要だと思っていて、大宮委員がおっしゃったこととかぶるが、先ほどから相談役がいるとどうだとか、人間関係はどうだとかの指摘があったが、私は実態の話としてそのとおりだし、それは何も会社の組織だけではなくて、どの組織でも似たような面はあると思う。
    最近、テレビのニュースをみていると、誰のための都政なのかという名言があるが、議論にあたっては、一体誰のための経営なのかという視点が大事だと思う。日本では、投資家とか株主のためという視点があまりになさ過ぎた。そういうあたりをどうしていくのかという中で、組織論、実態論と制度論を議論していく必要があるし、そういうことを大宮委員も先ほどおっしゃったと思うが、ウチ・ソト意識が非常に強い社会なので、株主、投資家はソトだというのは改める必要がある。
  • 【大杉委員】冨山委員と神作委員のご発言に関連して一言ずつコメントしたい。
    制度論としては、取締役会固有の権能は監督だという点に共感するが、会社法は取締役会固有の機能は意思決定というようにしてしまっており、その点は先ほど神田座長がおっしゃった通りだが、とにかく会社の業務執行の決定は取締役会が行うというのを機関設計に関係なく入れた上で、それをどこまで委任できるかというので、機関設計によって差を設けているという条文のつくりになっていて、意思決定をやったからといって監督ができなくなるわけではないけれども、実務家の意識は、やはり法律によってある程度決まっている部分があるのかなというものである。
    もう1つは、先ほど神作委員からいただいた話は、社外取締役が法律概念として形式的に決まっていて、彼らが参加できるのは、法律上は取締役会というフォーマルな会議に限られるので、そこで何をやるかということをある程度明らかにしないと、取締役会改革というか、ガバナンスの実効性を確保することにならない。つまり実質が大事だとしても、形式もある程度大事というお話だったかと思うけれども、そのご指摘に対しては異論はない。
    この点に関連して少し抽象的な話をさせていただくと、会社法の役割は何かというときに、最低限の土台の上に各会社の工夫が乗っかるというときの土台を提供し、箸の上げ下ろしには文句を言わないという考え方と、少なくとも上場企業や大企業に関しては、会社法によってある程度規律することが重要なのだという考え方とがあり得て、日本は伝統的に後者だった。その前提としては、株式の持ち合いが強固で、投資家による上場会社経営者に対する規律を求めることが非常に困難だという認識があったと思うけれども、スチュワードシップ・コードなどができて、今、急速に市場との対話が普及しつつある。そのときに今の会社法、例えば重要事項は取締役会で決定しなさいというような条文を読み返してみると、過剰規制ではないか。もう少し投資家による規律に任せて、会社法は従来型の規律から徐々に撤退して、インフラ型、土台型の考え方に向かうべきではないかと私は個人的に思っている。

以上

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最終更新日:2016年11月15日
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