経済産業省
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コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会(第9回)‐議事要旨

日時:平成26年12月15日(月曜日)17時30分~19時10分
場所:経済産業省本館17階 第一特別会議室

出席者

神田委員、阿部委員、砂川委員、石田委員、江良委員、大杉委員、大場委員、尾崎委員、国井委員、黒見委員、澤口委員、島岡委員、関委員、武井委員、田代委員、寺下委員、広瀬委員、藤田委員、古本委員、坂本オブザーバー、油布オブザーバー他

議題

今後本研究会で議論すべき主要論点案について

議事概要

はじめに事務局より、本研究会で議論すべき主要論点案などについて説明した後、討議を行った。主な討議内容は以下のとおり。

I 主要論点案について

(1) 取締役会の役割について

  • 我が国では、取締役会は業務執行の決定と取締役の業務執行の監督の2つの役割があるとされ、取締役会で具体的な業務執行の決定に関して議論することがガバナンスだと思われていた。取締役会の役割は業務執行の監督であり、そもそも取締役会で多くのことを決定させることにはなっていない。取締役会でできるだけ決定することでガバナンスをきかせるという従来の考え方そのものが問われるべき。
  • 監査役設置会社においては、重要な業務執行を取締役会で決定しなければならない。実務上、重要性の基準は、弁護士会の基準等に従って、総資産の1%超としている。しかし、例えば、アメリカの会社が相手の取引では、交渉開始から契約締結まで非常に期間が短いこともある。取引ではスピードが要求される一方で、すぐに取締役会を開くことが難しいので、大変苦慮している。
  • 事業のポートフォリオの数が少ないとオペレーション型の取締役会でも回る。他方で、総合家電のような所だと、すべてを取締役会に上程することは難しいので、執行側に権限を委任することになると思う。各社ともそれぞれのカラーに応じて最適なガバナンス体制となるように努力しているので、各社の判断を尊重しステレオタイプ的なまとめにすべきではない。
  • 取締役会に上程しない場合、実務上、社長決裁か事業部門長決裁のどちらかになる。社長決裁のときは、常務会や経営会議といった法定のものでない機関で決定し、取締役会ほどではないが一定の手続と審査が必要となる。事業部門長決済のときは、意思決定は迅速であろうが、事業部門長はプロジェクトを推進する立場なので、事業計画をそのまま進める方向になりがちであり、委任のバランスが難しい。社外取締役導入の理由の一つが外の知見を入れることにあることからしても、事業部門長に一任できる範囲は自ずと限定的になると思う。各社、それぞれが特性を考慮して決めるべきことであり、そうした認識の下で在り方が論じられればよい。
  • 監査役会設置会社であっても、特別取締役による取締役会決議を利用すれば、重要な財産の処分及び譲受けと多額の借財を取締役会全体で決議する必要はない。このような規定が会社法にあるのに、それを使っている会社は少なく、その理由を明らかにすべき。
  • 日本企業の稼ぐ力の低下の原因は、まず現場からのアイディアが上に上がるときに保守的な内容になること。もう一つは、不採算部門からの撤退が遅いこと。事業ポートフォリオを常に見直す役割を取締役会の中に置くべきということかも知れない。取締役会や社長がリスクテイクすることを阻害するような要因は今の会社法ではそんなにないはず。最高裁の判例でも、取締役の積極的な経営判断については事後的に誤りだからといって法的責任を追及されることはないと判示していると理解している。

(2) 適切な役員報酬の在り方について

  • 会社法上の伝統的な報酬規制は、無駄遣い防止が目的。適切な人が適切な報酬を得ているかという観点は、伝統的な報酬規制は全く対応していない。
  • 各社の工夫でインセンティブ型報酬の導入が進められている。問題は決め方と納得感。これまでは世間の相場や同業他社を見て決めるのが主流だったが、各社独自の考え方があって良い。ただ、社外取締役や監査役といった業務執行に関わらない役員の報酬は、インセンティブ型はなじまないので、定額で良いのではないか。
  • インセンティブ型報酬は、成果に応じた報酬を約束すれば経営者は業績や株価を上げようとするという、いわば目の前ににんじんをぶら下げるようなものだと説明されることが多い。しかし、日本の上場企業の場合、株主に対してコミットしていることを見せる点により大きな意味があると思う。社外取締役の報酬は定額であるべきか否かは諸外国でも議論があり、アメリカのように社外取締役が従業員より何倍も多くもらうのを是とするかはともかく、節度のあるインセンティブ型報酬を認める考え方はあってもよく、それを封じる必要はないのではないか。
  • 社外取締役の役割によっては、インセンティブ型報酬を社外取締役に付与しても良いのではないか。
  • 社外取締役の貢献の度合いは企業によって異なる。例えば、企業内の不祥事が起こった時、社外役員も相当量のエネルギーを投入するが、完全に固定額だと、予期しない労働力の投入が報われなくなる。報酬を時間当たり単価だけで定めるのは乱暴だが、事後的に投入された労働力が報われるような仕組みについて議論して欲しい。
  • 報酬が経営者のインセンティブというより、株主にコミットする姿勢を示す目的の方が現状は多い。日本は内部昇進者が経営者になる。英国や米国と比べて大きく状況が違う。それを踏まえないと、納得性の点で実のあるものにならない。
  • かねてから言われているとおり、日本全体での役員報酬額倍率(対従業員倍率)に関する開示が足りない。

(3) 保険等による適切な責任軽減について

  • 代表訴訟の萎縮効果もゼロではないと思うが、経営者の責任と果敢な意思決定の直接の因果関係はよく分からない。ただ、方向性としては、責任の軽減は果敢な意思決定に繋がると思う。
  • 10年ほど前にD&O保険の約款を見た時、「認識ある過失」の場合には保険金を払わないと書いてあった。法制上は「故意重過失」が使われており、約款の用語ではどの場合に保険が出ないのか分かりにくい。今は普通約款も直されていると思うが、法律上の責任軽減をしてもなお残る部分をカバーする保険の在り方も考えていく必要があると思う。

(4) 社外取締役の役割と責任の明確化について

  • 取締役は取締役会に上程されているか否かを問わず、あらゆる事項について監視義務を負うというのが伝統的なルールとされてきた。しかし、そもそも取締役会も開催されていないような会社において独断専行した代表取締役を監督しなかったケースで取締役会に上程された話ではないという言い訳を認めないというコンテクストでの判例の作り出したルールである。今は内部統制システムがあり、各取締役の役割分担が合理的に決められているというときに、裁判所がそのような役割分担を尊重していいかということはまったく別問題で、単純にすべての取締役がすべての事項について監視義務を負うというのが会社法上のルールだというわけではない。
  • 社外性の判断基準に関し、何か基準なりガイドラインがあると分かりやすい。資料に例示として書かれているMBO交渉における値決めを行った場合には、社外性を失うとは思わないが、根拠がはっきりしない。
  • ガバナンスというと、コンプライアンスや監視のイメージが強い。しかし、監視だけで良いのか、もう少し違うファンクションを発揮してもらって良いのではないかという観点もある。監視だけなら監査役もいる。取締役会を純粋なモニタリング型にして、経営を執行役員に任せるところまで一気に移行した方が制度設計上素直ではないかという議論も出ている。社外取締役が本当に責任を負っているのかという議論もある。
  • 各企業の特色によっては、社外取締役が不要だと考える企業があってもよいと思う。ただ、実際に社外取締役を入れてみると、取締役会の運営や説明の仕方が変わった。
  • 各分野の専門家である社外取締役の選任に際して、競業や利益相反の問題、経営者の出身会社と取引があると独立性の問題が出るなど周辺事情に左右されるので、候補者の選定が難しく悩んでいる。
  • 独立社外取締役の役割として、監督機能は当然果たさなければならないが、リスクを取って執行陣に申し入れることが良いのか。経営で一歩踏み出すときに、どう安全に自信を持って一歩踏み出せるか、そういう仕組み作りがあればよい。投資家も言いっ放しではなく責任を持つことが重要。
  • 日本の上場企業は約3500社あるのだから、例えば社長の任期を5年だとすると、毎年約700名が引退する計算になる。これは相当な数であり、社外取締役候補の人材プールになり得るのではないか。

(5) 社外取締役を構成員とする委員会の活用について

  • 株主代表訴訟の最大の問題点は、株主全体の利益を考えたときに無駄と考えられる訴訟を早く終わらせる仕組みがないこと。現行法上は非効率的な訴訟を早くやめさせたくとも、止めるすべがない。訴訟委員会のようなものを作っても、裁判所が裁量的に代表訴訟を終結させるような権限がなければ解決にはならず、最終的には法制度で手当てしないといけない。

(6) 社外取締役の選任を踏まえた監査役の在り方について

  • 監査役は、会社法の改正やコーポレートガバナンス・コードの議論などで脇に追いやられていた。監査役は日本独自の仕組みとはいえ、強力な権限もあり、現にほとんどの会社が採用している。社外取締役と同じようなレベルで書き込むことが必要。
  • 社外取締役を「攻め」として、監査役はどうか、という問題の立て方は、監査役を「守り」に押し込めようとする雰囲気が感じられるので、もっとニュートラルな表現をすべき。
  • 取締役会の役割、社外取締役の役割、監査役の在り方は、同じ話だが、側面を分けて議論しているように感じる。日本の上場企業の98%は監査役会設置会社だが、海外投資家からは理解されにくい。日本の稼ぐ力の低下が監査役制度にあり、委員会設置会社と違って経営陣への権限委譲がやりにくいからリスクが取れない、という論調もある。しかし、監査役会設置会社と委員会設置会社の制度は、一定の手当をすれば、実際の機能はそれほど違いがないと思う。

II 今後の検討の方向性等について

今後の検討の視点について

  • 単に法的な問題点を議論するのではなく、「稼ぐ力」や「攻め」の経営といった、日本企業全体の価値を高めるような視点で議論すべき。
  • 役員の評価は、株主総会で役員の選解任という形で最終的に株主が行うが、その役員が適任か、「攻め」の経営をやっているかを投資家としてどのように評価するのか。評価の実効性に繋がるので、議論の対象にしてもよいのではないか。
  • 今般の会社法改正やコーポレートガバナンス・コードなどは、実務を行っている会社の人間から見ると、相互の関係をどう考えればよいか。一つ一つを見ると有意義だが、その点を総合的に考えた議論も必要だと思う。
  • 日本経済に対する期待を踏まえ、今のガバナンスに対する問題に色々な角度から鋭く切り込むべき。
  • コーポレート・ガバナンスの話をする際、対象は暗黙の前提で上場企業になっているが、非上場企業も頑張らないと日本経済は良くならない。この研究会で直ちに中小企業まで対象とするのは現実的ではないが、その認識は常に持っておくべき。

研究会での検討の意義について

  • 主要論点(案)に記載されている事項は、会社法などの伝統的な考え方の一部が現在では適切でなくなっていることが露わになっているもの。従来の考え方の前提が、世界的なコーポレート・ガバナンスの潮流とずれている。個別の論点ごとに、何がずれているかを確認するだけでも意味がある。
  • それぞれの論点に根源的な問いがあると思う。例えば取締役会の役割について、効率性を高める場面でリスクを取るときにどう関わるのか、内部統制のレベルアップをはかるべきという議論も出てくるだろう。社外取締役の役割についても、監視義務だけにとどまらず、MBO等を含めどこまで積極的な行動を取るべきなのかという問題提起だと思う。監査役についても、今後社外取締役が増えてきたときにどう役割分担をするかを含め、期待すべき役割を正面から議論すべき。いずれにせよ、挙げられている論点については、的確な問題提起だと思う。

検討の背景について

  • 最近コーポレート・ガバナンスの議論が活発である理由として、グローバルに見て相対的に日本企業の評価が落ちているということが前提になっているのではないか。問題の所在は、長期の株価低迷等、非常に多岐に渡っているので、共通認識を持つためにも何が原因と認識すべきかを議論しても良いと思う。

コーポレート・ガバナンスの発信の在り方等について

  • 昨今のガバナンスに関するルールの変化について、経営者に理解・納得してもらうことが重要だと感じている。エビデンスの提示など、理解が得られるための方策についても検討が必要。社外取締役の役割を理解するのに、現役の経営者に他社の社外取締役をしてもらうことはプラスだと思う。日本の経営者はほとんどが従業員出身なので、なかなかグループ外企業の経営は経験がない。会長になってから社外取締役を兼務する人は多いが、それでは遅い。
  • 国民の支持が得られるように言葉を選んだ方が良い。日本再興戦略では「稼ぐ力」となっている。他方、海外のファイナンスの本では、利益を上げることを「クリエイト・バリュー」と書いている。結果として、海外では利益を上げると褒められるが、日本では、儲けすぎはよくないという価値観が出る。持続的な成長に向けて利益を上げることに対して、国民の支持が得られるように、適切な言葉があれば理解が得られやすい。
  • 海外の投資家は、日本のガバナンスが悪いという漠然としたイメージを持っている。しかし、よく聞いてみると、それは仕組みの問題ではなく、結果が出ていないことに対する不満であり、そこに尽きる。そもそも収益力が低いかという議論もあるが、形より効果に注目したほうがいい。
  • 20年前に米国機関投資家のガバナンス部門のヘッドから、独立取締役はいないものの、役員報酬額、代表者の恣意的な権力踏襲の排除の慣習等世界的にみて日本のガバナンスが優れている点は多々あると指摘された。その後、ガバナンスの議論は今日に至るがこの間のグローバル同業比較においても、長期的(Sustainable)という点で、競争や変化の対応において優れた日本企業も多いことが実証されている。コーポレートガバナンス・コードはよくできており、今まで怠っていた(コーポレート・ガバナンスについての)株主への対話や発信の在り方などを進めることで改善は進むと期待している。しかし、昨今のROEの数字だけの議論に引っ張られて日本企業のコーポレート・ガバナンス=経営統治は悪いという前提で議論を進めるべきではない。長期的(Sustainable)という点も取り入れ、良い点、悪い点を冷静に議論することが重要である。

資料の表現について

  • 従来、コーポレート・ガバナンスの目的について、国内ではコンプライアンスの確保といった観点が主であったが、世界的にはむしろ企業の効率的な経営を支えるメカニズムとの理解が主流。「攻め」や「果敢」という言葉よりは、「効率的な経営」を実現するためのコーポレート・ガバナンスの在り方検討と位置づけた方が適切ではないか。その観点から見ると、とりあげられている各論点案は外れているものではない。
  • 「攻め」と「守り」は二分できるものではない。コンプライアンスは「守り」新たな事業は「攻め」という前提のようだが、「攻め」の中にも「守り」がある。一件投資を誤ると数件の投資から得られる利益を失うこともある。「攻め」についての議論でも「守り」への考慮も必要。

以上

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最終更新日:2015年1月14日
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