経済産業省
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コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会(第14回)‐議事要旨

日時:平成27年4月17日(金曜日)15時30分~17時30分
場所:経済産業省本館17階第一特別会議室

出席者

神田委員、阿部委員(代理 小畑様)、江良委員、大杉委員、大場委員、国井委員、澤口委員、静委員、島岡委員、関委員、武井委員、田代委員、寺下委員(代理 松永様)、濱口委員、広瀬委員、竹林オブザーバー、油布オブザーバー他

議題

研究会におけるこれまでの検討の概要と今後の進め方について

議事概要

はじめに事務局より第9回研究会以降の検討と企業ヒアリング結果の概要を紹介した後、今後の進め方について討議を行った。概要は以下のとおり。

1. 取締役会上程事項について

  • 「重要な業務執行の決定」として取締役会で扱う必要のあるものは実務的にはかなり限定することができることを研究会の見解として示してはどうか。ガバナンス・コードでは、どの機関設計の会社の取締役会にも共通する役割・責務として、経営戦略等の議論や経営の監督等に言及しているが、実際に社外取締役に話を聞いてみると、決議事項が業務執行の決定に偏り過ぎているために、経営戦略決定や監督の議論ができないという声が多い。中には取締役会で議論できないために別に会議を設けるという本末転倒なことになっている会社もあるようだ。監査役会設置会社が大半である現状を踏まえると、「重要な業務執行の決定」の範囲について、過度に保守的な解釈がなされているという側面もあるのではないだろうか。
  • 取締役会の役割については色々な考え方があるとしても、従来型の取締役会付議事項については多少絞っていく必要があることは間違いない。ガバナンス・コードで主語が「取締役会」となっているものは25箇所もあり、それ以外にも取締役会で議論すべきと思われるものがある。ガバナンス・コードの多くの項目をコンプライするためには取締役会の議事量がかなり増える。弁護士会のガイドラインは、一つの解釈論に過ぎない。そのガイドラインのベースは平成4年時点のアンケートの結果で、関連する判例も平成6年に判決が出たもの。当時は社外取締役も少なく、コーポレート・ガバナンスについての議論も余り進んでいない状況であった。この研究会で、解釈論として、現在の状況にあった見解を示せるのではないか。なお、平成4年時点のアンケート以降、企業の総資産規模と付議基準の比較を網羅的に調査したものはない。
  • 企業の法務担当者としては、トップマネジメントに取締役会付議の要否を説明する際、数値的なよりどころが弁護士会のガイドラインくらいしかなくて困っている。ガイドラインの影響力は大きいと思う。他社に聞いてみても、多くの会社が弁護士会のガイドラインを参考にしている。ガイドラインのアップデートや、研究会での新たな見解の提示があれば、実務への影響は大きいと思う。
  • 正しい判断ができる者が決定するべきであり、上層部が判断した方がよいか下層部が判断した方がよいかは、企業毎に状況も異なる。権限委譲がうまくいかないと、上層部の承認が得られず、いい案が潰れてしまうこともあるのではないか。法律論としては、各社で、善管注意義務にしたがって合理的な上程事項を定めるべきであると思う。例えば、総資産の1%という数字だけで考えるのは、現時点で考えると、本来あるべき法律論から逸脱している。
  • 日本企業の多角化が進んだことにより、個々の意思決定については、取締役会よりも各事業部門のトップのほうが正しい判断ができる可能性が高い。法律論としては、内部統制システム、各部門に対する事後的な評価などが、合理的に運用されていることが重要。そのような点を考慮要素に入れて、取締役会で行うべき決定の範囲が増減するという解釈をしていくべきである。
  • 実務的には定量的な基準は分かりやすいはずである。総資産の1%基準は適切ではないと言い切ってしまうと、かえって混乱するかもしれない。そうは言っても量的な基準は古いので、そのままでは良くない、という問題があることは確かである。ではどうすればよいかを、この研究会で議論すれば、何か言えるかもしれない。
  • 昔は、経営判断を、社長に一任してしまうのではなく、取締役会で決めることで牽制するという発想だった。今の取締役会は経営判断を社長と現場に委ねており、取締役会では決めないという発想だと思う。それをどう評価していくかということかと思う。この点は会社が株主と対話して決めることであろう。
  • ガバナンス・コードは非財務情報を含む統合報告のプラットフォームである。企業がきちんと魂を込めて対応すれば、投資家の求めている非財務情報の開示は行えると思う。ガバナンス・コードの補充原則4―1(1)で、決議事項についての取締役会と経営陣の行う意思決定の範囲の棲み分けについての考え方の提示、補充原則4―11(1)で知識・経験・能力のバランス、また多様性と規模に関する考え方を定めることについての要請がある。これらは2つとも開示対象であるため、各上場会社は年末までに開示しなければならないが、そこでどの程度戦略性のある説明ができるかが重要。特に長期のリスクマネーの提供者はガバナンスについて関心が高く、中長期のリスクに企業がどのように向き合っているかに関心がある。リスクは多種多様であるため、それを取締役会の多様性でどのようにカバーしているかということ。その意味で、多様性は重要な積極要件。独立性要件は消極要件、多様性要件は積極要件だと思っている。どのような多様性が必要か、企業が考え方を示していくとともに、その上で多様性のある取締役会で何を議論していくかということが中長期のリスクテイクやリスクの管理を考える上で必要である。ガバナンス・コードの記載は相互にリンクしている。取締役会の付議基準についても、今までの巷の基準等は独立社外者がいる取締役会で議論すべき事項なのかという視点が入っていない。戦略的な多様性をもって招き入れられた独立者を何故入れているのかという観点を入れた方が、独立社外取締役を含んだ取締役会の上程事項の解釈としてもよいと思う。監査役会設置会社では法律上の縛りがあるものの、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社等では自由に、プリンシプルベースで自分で考えられる。どういう事業リスクがあるのかを示すことが必要で、そこまでやってはじめて攻めのガバナンスにつながる。ガバナンス・コードを踏まえた攻めのガバナンスを支える法的解釈についての新しい考え方を整理する必要があると思う。なお、攻めの経営判断を行うのはあくまで経営陣の自律であって、取締役会の役割は自分が「攻める」というよりそうした自律を支える役割であると考えられる。
  • 独立者の多様性が積極要件だという点については懐疑的な意見も強い。企業によってその必要性はまちまちであり、また「多様性」という概念自体が多義的であり、混乱しているのではと思う(ガバナンス・コードでは、原則4-11で取締役会が全体として知識・経験・能力をバランスよく備えていること、原則2-4で女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保がうたわれている。用語法には慎重であるべきではないか)。
  • 多様性が積極要件にならないという指摘は、指している多様性の意味が違うことから来ているのだと思う。確かに重要なのは形式的な多様性でなく、当該企業の今後の中長期の企業価値向上にあたって生じる各種の事業上のリスクに対して、どういう多様性を経た議論をしていることで適正なリスクが取れる体制になっているのか、そうした会社の経営戦略と結びついた多様性にこそ意味がある。その意味で議論に齟齬はないように思う。

2. 社外取締役について

  • 経営から独立して行う行為は業務執行に当たらないという見解を研究会として示してはどうか。上場規則では、例えば、大規模な第三者割当や支配株主との取引について、独立性の高い人の意見を入手するよう求めており、このために社外取締役や社外監査役の意見を使う企業も多い。社外取締役の職務として、MBOの値決めが業務執行なのか、という例があるが、今回ガバナンス・コードでは株主との窓口や社内通報の窓口等、取締役会への参加以外の役割も期待している。そのような役割がいちいち業務執行に当たるかどうかを毎回問題にすることはきわめて非効率である。
  • 社外取締役の業務執行性については、社外性を失うというスタンスの論文はあまりなく、業務執行性が議論になる行為について、業務執行に当たらないとする見解が大勢を占めている。社外取締役の行動を抑制しないような解釈を打ち出して行くことが好ましいと考えている。
  • 業務執行性については、今は非業務執行役員が本来法律で強制されている理由である利益相反解消のために必要な職務執行を行うことが「業務執行」概念で阻害されるという論理展開は、非業務執行役員を置いている意味をなくしてしまう本末転倒な状況である。非業務執行役員がなぜ会社の中長期の戦略に必要なのかという目的から離れない解釈が必要。業務執行概念の解釈が先にあるのではなく、非業務執行役員がなぜ必要なのかということが本質。柔軟な業務執行概念の解釈を示していただければと思う。
  • 攻めの経営が叫ばれる今日の状況を勘案すると、社外取締役も、リスクをとって経営陣に申し入れることを行わなければならないと思う。例えば、企業にキャッシュが有り余っている状況があれば、社外取締役が実務的な対応を求められる場面が出てくるだろう。また、社外取締役が一般的になってくると、社外取締役間での意見の相違をどう扱うかという問題が出てくる。中には過度に保守的な人もいるかもしれない。例えば、ドイツでは、内部統制システムを導入する際にリスク管理だけではなく、ビジネスチャンスに関するオポテュニティ管理という概念を取り入れているようだ。実情について聞いて見ると、企業によっては表面的に対応しているところもある一方、戦略的な内容に踏み込んだアドバイスをしているというところもある。こうした内容は、最終的にはアニュアルレポートに記載される。そこが一つのヒントになると思うのだが、例えば、社外取締役の攻めのガバナンスにおける役割についての開示記載があってもよいと思う。日本の株主には、「あの社外取締役は必要なのか」と言う人がいて、彼らに対する説明を行う上では、攻めの面でどういう役割を果たしていくべきかについて、ガイドラインのようなものがあればよりアピールできると思う。
  • 攻めの経営を助け、サポートするのが社外取締役や監査役の役割。あくまで「攻め」るのは経営者。先の例でいうと、資金に余剰があるときにその使途を社外取締役が決めるかというとそれは違っていて、あくまで決めるのは経営者。その際、攻めの判断がされるようにサポートするのが社外取締役や監査役だと思う。
  • 社外取締役の役割・責任の明確化は今後議論が深まった上での話になろうが、社外取締役の選任に関連して、彼らの質をどう測定するかという議論は今まで不足していたように思う。株主が社外取締役の選任議案を判断する場合、どうしても世間一般に出回っている形式的な情報に依存することが多い。どうすれば実質的な情報を株主が入手できるか、あるいは評価機関を設けてその評価結果を株主が利用するのか、このあたりは議論の余地があると思う。社外取締役の仕事ぶりをどう評価するのか、大変なことだが、今後人数が増えていくときに、一定の質の担保を考えることは非常に重要と思う。

3. 適切な責任軽減について

  • ガバナンス・コードでは、経営者を結果責任から解放して適切なリスクテイクを促す、と記述してある。ガバナンス・コードに会社が誠実に対応することで、経営者への責任追及が困難になるということを研究会の見解として示してはどうか。
  • D&O保険と会社補償について、現行法でできることの考え方を整理した指針を出して欲しい。適切なリスクテイクを支える攻めの指針を是非考えてもらいたい。
  • プロジェクトを進めるにあたって、当然のことながら経営者も最終判断の際は非常に慎重になる。その背景は、取締役の負っている法的責任の重さによるところがある。社外取締役の役割にも共通する観点かと思うが、攻める決断を行う経営者の背中を押すような法的責任の軽減と、補償や保険の充実という双方の観点の良い組み合わせを可能にできれば、経営者もより一層前向きな判断をできるようになると思う。そうした点を整備いただけるとありがたい。

4. 役員報酬について

  • 日本の社長は権限をふるうことができ、かつ誰からも監督をうけないことが最大の役得であり、報酬は二の次だった節があるだろう。海外は監督されてPDCAサイクルを回していく、みんなで幸せになるようにしていく代わりに、高い報酬を得られる。それは日本でも可能とは思う。海外と全く同じようにするということは、日本の上場企業では厳しいと思いながらも、みんなで幸せになれる明るい未来を示していただきたいように思う。

5. 検討の視点等

  • なぜ取締役会で持続的な企業価値の向上について議論が深まらなかったか、という問題は重い課題である。上場企業の場合には株価動向が一つのわかりやすい指標。一部の企業を除き、中長期的に株価は低迷していた事実がある。そうした中、どのようにして現状を転換していくかということが、より深く本来取締役会で議論されるべきであったのではないか。いわゆる「六重苦」が原因であると言われることがあるが、大半の企業が低迷する中でも、実績を出した会社が数百は存在する。その違いは何か。取締役会がリードしたのか、経営者が独自の戦略をもって状況を打破してきたのか。取締役会の評価が価値創造に向かって行けていたのかどうかということを問題提起し、議論していく必要があるのではないか。
  • 企業にとって、株価や業績は目的ではなく、結果であって、あくまで良い物を作る、良いサービスを提供することを目的としていたということがあると思う。最近の文脈で言えば、それができたのは株式市場のプレッシャー、すなわち投資家との対話がなかったということではないかと思う。その点は日本の一つの特色。
  • 株式市場のプレッシャーがなかったのは、ひとつには持ち合いにより、株式市場自体が機能していなかったから。その状況はまだ変わっていない。株式市場のプレッシャーを働かせる代わりに、社内にいる社外者を活用するということだが、そもそも社外取締役が少数であるなかで取締役会における監督機能をどこまで果たせるのか。きれいな説明はなされるだろうが、結果は厳しいものになると思う。今回ガバナンス・コードに持ち合いについての記載が入ったのでこれに対してもいろいろな説明がなされると思うが、中身のない説明で終わらせないために、具体例をあげて、どういう説明なら理解できるのか、許容できるのかを、この研究会で議論してはどうか。
  • これまで取り上げられた論点について、全てを取り扱うのはなかなか難しいので、うまく取捨選択して、しかし基本的な観点を外すことなく進めていくべき。

以上

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最終更新日:2015年7月6日
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