経済産業省
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産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会)(第5回)‐議事要旨

日時:平成27年11月30日(月曜日)14時00分~16時00分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

議題

  1. 開催挨拶、趣旨説明
  2. プレゼンテーション
    (1) 株式会社富士通総研 長堀様
    (2) 株式会社Orb 妹尾様
  3. 自由討議

議事概要

1. 既存金融機関とFinTechベンチャーのITシステムに関する現状および相違点

(1) 既存金融機関のITシステム

i. 日本の既存金融機関におけるITシステムの特徴
  • 邦銀のITシステムの特徴として、各種プロダクトやサービスの処理が、基幹システムで集中的に処理されるという指摘がなされた。
    • (1)各種プロダクトやサービスの処理が、基幹システムで集中的に処理される中央集権的・密結合の構造、(2)オンラインでのリアルタイム処理、(3)信頼性を最重視、の3点が特徴である。
  • 邦銀ではシステムコストの7割が保守に充てられ、新規サービス開発のための投資は3割に留まるとの指摘がなされた。
ii. 米国の既存金融機関におけるITシステムの特徴
  • 米銀のITシステムの特徴として、各種プロダクトやサービスごとのシステムが緩やかに連携するという指摘がなされた。
    • (1)プロダクトやサービスごとにシステムが構築され、それらが連携する疎結合の構造、(2)バッチ処理、(3)顧客情報は一元的に管理されてはおらず分散、の3点が特徴である。
  • 米銀では新規サービス開発のための投資はシステムコストの6割に達するとの指摘がなされた。

(2) ベンチャー企業のITシステム

  • ベンチャー企業のITシステムは、特定のサービス提供のために必要な機能に限定して開発されるため低コストでの開発・運用が可能との見解が提示された。
  • ウォーターフォール型の開発ではなく、柔軟かつ高速にシステム開発を行う点が特徴的であるとの指摘がなされた。

2. 新たなサービス・システム等の導入にあたっての課題

(1) アーキテクチャの課題

  • 邦銀のシステムは新たなサービスやシステムを導入しにくいアーキテクチャであるとの見解が示された。
    • 既存システムを維持したまま、アプリレベルの開発のみで新たなサービスを提供する場合、コストが極めて高くなってしまう。
  • 密結合のアーキテクチャのため、システム改変には全体を捉えられる人材が必要だが、現在の邦銀のシステムは巨大なため、そのような人材は限られるとの指摘がなされた。

(2) 既存金融機関の開発姿勢の課題

  • 自前主義のため、クラウドの利用に消極的であるとの見解が示された。
    • 既存金融機関では計画どおりの処理量が実現することを前提にしているため、処理量の変化に柔軟に対応できるクラウドのメリットが理解されにくい。

(3) 社会的要請・顧客の意識に関する課題

  • 日本では、銀行や取引所のシステムは、トラブルがゼロであることが社会から求められているため、信頼性の高いシステムを開発する必要があるとの見解が示された。
  • 顧客は、金融サービスは無料であるとの意識が強く、リテールビジネスの収益性が低いため、既存金融機関が新たなサービス・システム等を開発するコストが捻出しにくいとの指摘がなされた。

3. 新たなサービス・システム等の導入にあたっての課題解決策

(1) アーキテクチャに関する課題解決の方向性

  • 少額決済等に特化した疎結合の第2の基幹システムを構築し、既存システムと連携させることが有効との見解が示された。
    • 新技術や新サービスを導入しやすい領域を見極め、取り組むことが現実的であろう。
    • コストの効果のバランスに照らすと、リテールでの少額決済に限れば新技術を活用したシステムを開発する余地があるのではないか。
    • 少額決済について「第2基幹システム」をFinTechベンチャー企業にも開放することは、銀行を通じて多様なサービスを顧客に提供することにつながるため、銀行が顧客を繋ぎ止めることにも貢献するだろう。
  • 第2の基幹システムをFinTechベンチャー企業も利用する場合、既存金融機関・FinTechベンチャー企業の双方にメリットがある仕組みを作ることが不可欠であるとの見解が示された。
    • 既存金融機関は既存システムに多大な投資を行った結果として顧客を獲得しており、新たなシステムのみ安価にFinTechベンチャー企業に開放することは、FinTechベンチャー企業が一方的に得をする形になるため現実的ではない。
  • 一方、基幹システムを抜本的に見直すことが望ましいとの意見が示された。
    • 金融EDI構想が長期間停滞しているのとは対照的に、新規にシステムを開発したEC業界では、商流・金流情報を一体的に通信させることが実現できており、抜本的に新しいシステムを開発することの有効性が示唆される。
    • 現行システムでは全体を把握できる人材が不足し、予期せぬ事故が将来発生するおそれがあるため、疎結合の基幹システムを作ることは避けられないと考える。
  • 金融機関におけるITシステムを分散コンピューティングシステムで実現する場合、一貫性を重視したシステムが適切との意見が示された。
    • 分散コンピューティングシステムでは、一貫性(データが一意に確定するという性質)、可用性(故障するとシステム全体が機能しなくなるポイントが存在しないこと)、分断耐性(ノード間のネットワークが分断されてもシステム全体が複数に分断されない性質)という3つの性質のいずれかを重視する必要がある。ビットコインのブロックチェーンでは可用性や分断耐性を重視しているが、金融機関が利用するシステムでは、一貫性を重視したシステムが適切と考える。

(2) 既存金融機関の開発姿勢に関する課題解決の方向性

  • 既存金融機関ではベンチャー企業との連携を試みる等、従来の開発姿勢が変化しているとの見解が示された。
    • 基幹システムについては従来通りウォーターフォール型で開発し、フロントシステムではアジャイル開発をするという2スピードアーキテクチャの考え方が浸透しつつある。
    • 新規参入者に収益性が高い領域を奪われるリスク、および、顧客接点が減少するリスクに対処するためには自前主義では限界があり、異業種やベンチャー企業との連携方法を模索している。
  • 既存金融機関とFinTechベンチャー企業が連携し成果を生み出すには、技術・ビジネスの実証実験を数多く行うことが重要との指摘がなされた。
    • その際、英国におけるSand boxのように、規制当局も含めた実証実験が有効であろう。

(3) 金融システムの信頼度に対する各プレーヤーへの社会的期待ギャップの調整

  • FinTech企業と銀行では、求められるシステム要件、信頼度が異なり、サービス提供に当たってフェアな条件となっていないため、今後は、FinTech企業に対する規制等のあり方や、顧客の期待値を変えるような働きかけも必要であるとの意見が提示された。

以上

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最終更新日:2016年1月18日
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