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持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会(第1回)‐議事要旨

日時:平成28年8月24日(水曜日)14時00分~16時00分
場所:中央合同庁舎 第4号館12階1208特別会議室

議題

  1. 持続的な価値創造につながる投資(無形資産等)のあり方
  2. 企業における長期投資の判断、評価(ESG 投資等)のあり方
    価値創造につながる投資(無形資産等)促進に向けた課題や方策
  3. 投資家が、中長期的な企業価値を判断する視点や評価のあり方。そのために必要な情報や対話のあり方、そのような長期投資を促進するための課題や方策
  4. 企業と投資家の行動や対話やコミュニケーションのあり方
  5. 上記を踏まえた環境整備等、政策対応の方向性等

議事概要

上記議題について広く意見交換を行い、下記のような議論が行われた。

1. 議論すべきESG・無形資産の認識の共有の必要性

ESGと無形資産について、本研究会で議論すべき認識を整理し、共有するべきであるという意見が示された。

ESGに関する認識

  • ESGの各要素は、投資家の観点から見ると、投資と効果発出までのタイムラグが異なるため、「ESG」を一つの単語でワンセットのものとして議論することは正しくないのではないか。ガバナンス(G)はタイムラグが短く、環境(E)と社会(S)はタイムラグが長い。また、一口にESGといっても、利益を生むESと生まないESが存在している。
  • 社会(S)は、雇用・人権・人材育成・地域社会との関係等、非常に多面的に企業価値への影響が考えられる。その為、ESGという言葉で語ることによって、むしろ失われる、拾われないものが出てきて、それらの長期投資との関連性が見えなくなってしまう。
  • ESには財務的目的のものと、ESそのものが目的のESがあり、それらを分けて考える必要があるのではないか。「持続的成長に向けた投資」としては、持続的な生産性向上に繋がらないESGへの投資は、該当しないのだと思う。
  • EとSとGが同質で不可分なものとして語られるのは、議論を誤った方向へ向かわせる危うさをはらんでいると思う。実際にPRI署名機関に対する調査結果によると、機関ごとにEとSとGで対応や取組状況に温度差がある。
  • 受託者責任の観点から、財務的便益(エコノミックバリュー)を切り口としてESGを理解する必要がある。ERISA法のESGに関する解釈においては、財務的便益が少なくともニュートラルな範囲までであれば、機関投資家がESGを考慮して銘柄選択したとしても受託者責任には反しないとされる。
  • ESG投資は、ダイベストメントなど非財務的目的が投資を制約する主張まで含み多岐に渡るので、受託者責任を負う機関投資家として、具体的にどう咀嚼して行動していくかは極めて難しい問題である。
  • 現在ESGとして議論されているものには、事業会社にとって直接的に利益をもたらすESG活動だけでなく、自社の利益は超越した、自分達には直接的に利益をもたらさない慈善事業、社会貢献的なところまで、求めているものがあると思うが、投資家が実際にどうみているのか整理をしておかないと、投資家が事業会社のESGを評価するポイントを、事業会社側が誤解する恐れがある。ESGは、まさに「衣食足りて礼節を知る」の礼節だと思っており、社会貢献に一歩踏み出している企業に投資家が注目することもあるだろうが、そこで投資家が誤ったリードをすると、本来やるべき企業活動がおろそかになるのではないか。
  • ESGには、慈善事業の側面と、長期収益に結び付ける側面との2つの方法があるが、ここに出席しているようなメインストリームの投資家にとっては長期収益に結び付ける考え方が重要であり、一般的と認識している。また、ESGについて、このような考え方(方向性)の統一はできるが、機関投資家ごとに運用フィロソフィーが異なるのと同様、詳細な部分までの定義を統一することは難しいのではないかと思う。
  • ESGありきで長期投資できるか、というロジックには違和感がある。10年とかの長期間投資をするためには、財務的数字の見通しの難しさを、企業固有の定性的特徴(非財務情報)から補完する必要があり、その中にESGが含まれている。長期投資の判断に必要な企業固有の定性的特徴(非財務情報)をESG的に整理するという考え方であれば違和感はなくすっきりすると思う。
  • ESへの投資で言えば、投資をした企業の価値だけがあがる投資と、社会的価値があがる投資があるが区別は曖昧である。言い換えれば、社会に存在するだけで価値のある資産と企業が所有して初めて収益を上げることができる資産、と整理できるのではないか。

無形資産に関する認識

  • 各資本は性質が異なるため、単純に並列に並べるのではなく、企業の所有権の有無等の特性も踏まえて類型化すべきではないか。例えば、R&Dやソフトウェアと違い、人とかブランドなどの所有権などが確定しないものは、タイムスパンによっても価値をもたらすか否かは変わってくる。

所有権が確定する無形資産は、企業価値上昇に貢献するという意見が示された。

  • 企業の所有権が確定している無形資産は、企業価値の上昇に貢献することが、日本の上場企業については一定程度実証されている。

2. 投資家の視点

投資家から日本の株式市場における企業価値評価に関する課題について意見が示された。

  • 日本の株式市場はPBRが1倍割れの銘柄が上場企業の多くを占めるという状況が長年続いており、これは正常な株式市場ではあり得ない状況である。日本企業の株価には、現在の企業価値が正しく反映されていないということであり、日本市場の構造的な問題だと思うが、根本的かつ最大の問題である。長期投資のために将来の評価等に関して議論する前に、まずは現在の評価の問題を議論すべきではないか。

ESGに取組む企業に対するインセンティブの仕組み作りに関して意見が示された。

  • 企業価値評価上、ESGの特にガバナンス(G)は「アメとムチ」のムチである。一生懸命取り組んだ結果が株価に反映されなければ、本当の意味でのインセンティブが湧かない。今後は日本においても、ESGに取組む企業に資金が流れる仕組み作りも必要ではないか。

投資家による企業価値評価上の情報収集の方法について情報提供が示された。

  • アナリストが定量分析や定性分析を行う際の情報源として、基本的に会社の公式発表や公開情報が用いられる。追加的に工場見学等、企業の取組を把握するための独自の取組を行って情報を得る。
  • 財務情報の裏に隠されている非財務情報を認識・理解して、企業価値分析へ応用することが、アナリストとしての差別化要素として位置付けられている。

企業による積極的な情報提供が好ましいという意見が示された。

  • アナリストはオフィシャルな企業情報以外はレポートに書いてはいけない、という方向に向かっているため、非財務を含め、企業から積極的な情報提供が行われることを期待している。
  • 統合報告書内の非財務情報のみならず、実際は企業における価値創造プロセスの背景にある色々な情報が、企業価値に影響する非財務情報である。
  • 企業評価上、企業のリスク対応に関する情報の重要性が増している。統合報告書の中に、リスク対応に関する情報が記載されることが望ましい。

非財務情報に関する評価について実務面の課題に関して投資家から意見が示された。

  • ESGの取組に慈善事業の色合いがあっても、収益予測や中長期の価値に結び付くものは株式評価において考慮する。また、将来発生するリスクの観点を事前に把握するという観点で重要となる場合もある。
  • ESG投資で難しい点は、時間軸と潜在的な影響が不透明な点である。例えば、環境に悪い活動が行われていても、今年すぐに顕在化するとは限らない。
  • 投資家の中に非財務情報を重視する動きが出ている。しかし、一方で四半期決算により投資家からの四半期ベースの収益予想の要求があり、アナリストが長期的視点で非財務の考慮ができない構造となっている点が問題である。
  • 目先の収益よりも長期投資という観点で考えた場合、四半期決算ではなく、年2回の決算が好ましい。
  • 投資家と企業の間には情報の非対称性が発生するため、アクティブ運用している会社にとっては、未来を描けるアナリストから提供される情報をしっかりと活用するか否かで、運用成績の格差が出てくる。

3. 企業の視点

企業側が考える投資の形態について意見が示された。

  • 有形資産や無形投資といった分類では考えていない。製造設備の能力増強投資や研究開発投資等の「財・サービスの価値を上げる為の投資」と「ブランドイメージを高める為の投資」の2つに類型化して捉えている。
  • 無形資産としてブランドを意識している。製造業の場合、製品のスペックだけで勝負し続ければ、よりハイスペックな商品を他社が出した時に簡単に負けてしまう。長期的視点からもそれは好ましくなく、ブランドを確立することで、スペック勝負だけでない、違う次元での勝負にすることができる。

以上

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最終更新日:2016年9月15日
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