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持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会(第2回)‐議事要旨

日時:平成28年9月26日(月曜日)13時00分~15時00分
場所:経済産業省本館17階第1特別会議室

議題

  1. 持続的な価値創造につながる投資(無形資産等)のあり方
  2. 企業における長期投資の判断、評価(ESG投資等)のあり方。価値創造につながる投資(無形資産等)促進に向けた課題や方策
  3. 投資家が、中長期的な企業価値を判断する視点や評価のあり方。そのために必要な情報や対話のあり方。そのような長期投資を促進するための課題や方策
  4. 企業と投資家の行動や対話やコミュニケーションのあり方
  5. 上記を踏まえた環境整備等、政策対応の方向性等

議事概要

1. 企業によるESG・無形資産投資

企業が採るべきESG・無形資産投資のあり方について意見が示された。

  • 投資判断は全て自社の企業価値を向上させるかを判断基準にしている。当社の場合、寄付などの活動も全て、企業価値が将来的にプラスになるかどうかが判断基準である。
  • 企業特有の強みを活かし、ESGやSDGs等社会の要請にコミットしながら、価値を創造することで持続的な経営をしているのか。これを評価する評価基準があると、企業側としてより積極的にESGにも取り組めるかもしれない。
  • 日本企業の持続的な価値創造を実現するため、6つの資本にアクセスし、それらを維持・育成し、競争力に繋がるよう有効活用するビジネスモデルへの変革が求められている。
  • 例えば無形資産である人材(人的資本)の能力が十分に発揮されていない時に、ガバナンス(G)が機能することでうまく発揮されるというように、無形資産の収益力を補完するのがESGの役割ではないか。そういう視点で見るとCSRとESGを一緒くたになっている現状を整理できるのではないか。

2. 企業と投資家の対話

開示やIR等を通じた「対話」の強化の必要性について意見が示された。

  • 株主や投資家が求める誠実な経営の実践と持続的な成長の達成を両立する経営力・マネジメントシステムを強化してこなかった結果、日本企業はバブル崩壊以降長い間、低リターンに甘んじてきたし、IR等の対話を積極的に行ってこなかった。
  • 「伊藤レポート」や2つのコードの導入を契機としてえ、資本コストを上回るリターンを稼ぐことの必然性については十分に浸透した。一方で、経営情報開示やIR等を通じた対話は、資本コストを低減する効果および株価のボラティリティを抑制する効果があるが、この点が日本企業の経営者には十分認識されていない。

対話によって得られる効果について意見が示された。

  • 企業の経営情報(企業理念、長期の価値創造ストーリー、無形資産・知的資産等のコアコンピタンス)の自発的な開示が、建設的な対話やエンゲージメントの必要条件である。
  • ESG・無形資産に対する評価が良い企業は、そうでない企業と比べ、株価や資本市場の評価が上昇する傾向がある。そのため、ESG・無形資産を通じた持続的な成長力を示す企業が増えれば、日本の資本市場全体が成長していくのではないか。
  • ESGを含む非財務情報はキャッシュの創出に繋がるほか、ベータ値を下げる効果があると考えている。

対話における現状と課題について意見が示された。

  • 日本企業の経営者はIR等の対話が果たす経済的な効果(資本コスト低減および株価ボラティリティの抑制効果)を具体的に認識できていないことが、持続的な成長に向けた経営力強化の制約になっている。
  • 企業にとって、ESG等に関する投資家の評価の視点は関心の高いところ、そういった投資家の視点を開示していくことは大切なのではないか。
  • 企業の長期的価値とESGを結び付けて開示する企業が増えている。他方、例えばビジネスモデルの変化などの企業における大きな変革を、非財務情報と関連させながらタイムリーに開示をしていくという意識は、まだ不足しているかもしれない。
  • 投資家との対話においては、四半期報告等の「短期」の話に終始することが多く、自社の価値創造ストーリーを非財務情報も絡め体系立てて話しをするような機会は少ない。
  • 企業は長期的に社会で存続するための成長を維持するために何をすべきかの視点で、ESGを経営・戦略に組み込んでいくべきである。また、投資家はそれをどのように評価するか、どういった情報が必要かを明確にすべきである。
  • 投資家は企業を調査する時にESGから入ることはしておらず、オーソドックスに、その会社がどのような活動をしてそれがどのような価値を産んでいるか、どのように競争力を付けているか等を見ている。
  • ESG等非財務情報に関する指標が乱立しており、どれを指針として用いてよいか分からない企業は多い。また、調査によっては、開示の有無だけが基準となっていたり、業界ごとの特性・違いが加味されていないなど、正当な評価を受けられるのか不明なものもあるため、開示に積極的になれない企業もいるのではないか。

投資家から企業との対話において注目している点や考え方について情報共有があった。

  • 企業の長期業績予想において、ESG要素の効果を加味しており、経営に対するポジティブな効果が期待できる企業に対して高い評価をしている。
  • ESG評価機関のデータをそのまま使うのではなく、「長期業績予想に重要なもの」という観点で評価しており、その際、ESGと無形資産を厳密に分けていない。ただし、投資家によって、ESGと無形資産の区分や定義は様々である。
  • 財務会計の観点だけで、会計上投資となるか否かではなく、管理会計の観点で無形資産の投資を捉えることにより、本当の意味で投資という感覚が生まれ、より本質的な意味での無形資産投資の議論に繋がるのではないか。
  • 無形資産を資産化する場合、償却期間や投資回収を適切に設計、モニタリングすることにより無形資産投資に対する評価や進捗管理が容易になる。投資家に対する説明も容易になるのではないか。

よりよい対話に向けた企業に求められるIR体制の在り方や、IRの役割について意見が示された。

  • 投資家が企業に求める情報は、グローバル経済からインベストメントチェーンの動向、ESGに至るまで多様化している。このようなニーズに応えられるよう、専門性を発揮できるダイバーシティを担保したIR体制が重要である。そして、求める専門性に応じて社外からも人材を獲得してプロ集団を作り上げるのが理想的である。
  • 日本企業にはプロフェッショナル人材を適正に評価するシステムが確立していない。プロ人材のリプレイスメント・コスト(再調達コスト)を念頭に評価するという考え方が、専門性の高い人材を確保するために必要である。
  • IRオフィサーの役割は、IRを通じて得た示唆や自社の過大をストレスに伝えることはもちろんのこと、経営陣に役員クラスの勉強会の機会を提供し、そして企業価値評価の方法論や株主や投資家との「対話」のあり方についても啓発することも重要である。

3. 投資家の視点について

投資家として企業に期待することについて意見が示された。

  • PBRはPERとROEによる関数であり、投資家はPBRとROEを関連付けて捉えている。
  • 企業価値はROEスプレッド(ROEと資本コストの差)で決まると考えており、目標株価もROEスプレッドで決めているケースがある。企業による投資判断において、ROEと資本コストの双方を意識することが必要。
  • 投資家はROEが資本コストを上回るタイミングを「投資のチャンス」と捉える。投資家としては、利益率、回転率、レバレッジに絡めつつ、非財務情報を通じてROEを高めていくストーリーが開示されることを期待している。
  • PBRとROEの相関はROE8%が境目となる。ROEが8%を上回ると、ROEとPBRの相関が強く、反対にROEが8%を下回ると明確な相関が見られない。
  • PBRはROEから持続可能成長率を控除した分母と資本コストから同じく持続可能成長率を控除した分子に分解できるので、ROEを上げるか、資本コストを下げることで高められる。その視点でESG・無形資産を考えると、ESGは資本コストを下げる効果、無形資産はROEを上げる効果が期待の中心となる。
  • PBRを国際比較すると、日本企業のPBRは分散が小さい。日本企業の経営として、差別化が進んでいないことを意味する。

日本の株式市場に対する問題点が示された。

  • 日本企業のPBRが欧米企業に比べて低い状況が長年続いている。欧米企業の場合、PBRが1倍割れとなれば、経営陣は退任を迫られ、買収のターゲットとされる可能性も高くなる。一方、日本は安定株主が多く、そのような圧力や脅威が少なく、日本の株式市場は本来求められる機能が弱まっているのが、この要因なのではないか。
  • ESG・無形資産とPBRの関係について、低いPBRの場合、無形資産の活用が悪いために有形資産の価値が落ちていることを示している。有形資産の回転率や収益率が下がり、結果的にPBRとして表面化しているのではないか。
  • 諸外国と比べ、日本の資本コストとROEのスプレッドが小さいのはROE、とりわけ売上高利益率の低さに起因することが確認されているが、その要因としては(1)株主が要求している利益水準が低く、企業が利益率の低い投資を選択していること。(2)新陳代謝が促されず収支性の高い企業が成長しにくいこと。(3)預金保有が多く、積極的な活用されていないこと、これら3つが考えられる。
  • 日本は、投資家も企業も積極的な投資ができないのは、(1)リスクを取るインセンティブが少ないこと、(2)市場に新陳代謝を促す機能が少ないこと、これら2つが要因ではないか。

以上

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経済産業政策局 産業資金課

最終更新日:2016年11月11日
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