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持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会(第3回)‐議事要旨

日時:平成28年10月4日(火曜日)15時00分~17時00分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

議題

  1. 持続的な価値創造につながる投資(無形資産等)のあり方
  2. 企業における長期投資の判断、評価(ESG投資等)のあり方。
    価値創造につながる投資(無形資産等)促進に向けた課題や方策
  3. 投資家が、中長期的な企業価値を判断する視点や評価のあり方。そのために必要な情報や対話のあり方。そのような長期投資を促進するための課題や方策。
  4. 企業と投資家の行動や対話やコミュニケーションのあり方。
  5. 上記を踏まえた環境整備等、政策対応の方向性等 。

議事概要

1. 企業や投資家のESG・無形資産投資の実務

企業評価や投資判断における企業と投資家の視点や実務について情報共有があった。

  • 企業のファンダンメンタルを評価する際、「他社との差別化要素」および「その差別化要素の持続性」は重要な評価ポイントの1つである。
  • 投資の際に、その企業の本業と関連性のあるESG要因を考慮すると、パフォーマンスにポジティブな影響があると認識しているが、全ての企業に共通する、投資に有効と思われる、ESG要因はおそらく存在しないため、業種特性やビジネスモデル等をきちんと考慮する必要がある。企業としても自社固有のマテリアリティ(重要性)と合わせて投資家へ伝えることが重要である。
  • ESG情報のうち、ES課題への経営陣の姿勢、対応体制等が出来ているか、またそれが適切に開示されているかを含めて、特にガバナンス(G)を重点的に見ている。
  • ESGだけを見ても差別化要素やその持続性はわからないが、既存の財務分析や投資分析と組み合わせることで、企業評価の精度や質の向上に資するのではないかと考えている。
  • 企業経営者も差別化に繋がるか否かで投資判断をするのだと思うが、などその差別化に繋がる、自社にとって重要な要素を明確に出来ていない企業も多い。
  • ESGに関連する投資手法として、伝統的投資における組入れ(既存のファンダメンタル投資上でESGを考慮)、サステナブル投資、およびインベストメント・スチュワードシップ(対話や議決権行使にESGを考慮)がある。さらにサステナブル投資はネガティブ・スクリーニング、ESG投資、インパクト投資で構成される場合があり、多様である。
  • ESG関連銘柄に対する投資において、既存の関連インデックス、健康銘柄やなでしこ銘柄における選定状況、さらに定量的な選定基準を加えて抽出された銘柄をユニバースとして用いている。
  • 様々なリスクに目配せできる企業はデフォルトリスクが低い、という仮説を持っている。非財務情報とパフォーマンスの関係から、与信・投資の判断において、非財務情報を考慮することに一定の有効性はあると個人的に感じている。

M&Aの観点から日本企業の無形資産が評価されていない状況について意見が示された。

  • 無形資産は性質的に定量評価しづらいが、無形資産が顕在化するきっかとけとしてM&Aがある。日本はM&Aの規模も件数も相対的に小さいため、無形資産が評価される機会が少なく、それがPBR等の指標に影響している可能性がある。

ESG情報に関する情報開示の環境として望ましいルールについて意見が示された。

  • ESG情報の開示について企業が過度に保守的にならぬよう、遡及的な訴訟からESG情報を開示した企業を守るセーフ・ハーバー・ルール(免責条項)を設けることが必要ではないか。

企業価値と直結する非財務情報の位置づけや評価について意見が示された。

  • いわゆるCSR的な課題との向き合い方は、CSVのような攻めの部分だけではないのではないか。例えば企業不祥事のような事態に対してどう企業経営をしていくか。企業の倫理観とも言えるような、どんな企業になろうとするのか、何のために存在するのかというところから考える必要がある問題ではないか。
  • 企業に社会の要請に応えながら経営を持続させる力があるかを見極めるため、社会の課題を自社の新たなビジネスモデルや新事業に展開していけるのか、技術のみならず、組織力、ブランド力等を見て評価することが必要ではないか
  • 非財務情報のうち、例えば研究開発の内容を見たり、先を見据えてマザー工場を維持しているか否か、また、ダイバーシティそのものの推進目的ではなく、人材不足への対応・対策としてダイバーシティが機能しているのか等、目線を変えると無形資産として見えてくるものがある。

情報量の拡大状況、投資家の対応状況について情報共有があった。

  • 投資家が扱うデータ量が爆発的に拡大する中、投資家側の情報処理能力も向上しており、近年はビッグデータを使った分析等も投資判断に活用されつつある。ただし大切なのは取捨選別で、投資判断に何が重要なのかというアルゴリズムを作るのは人間であり、いわゆる目利き力をどう高めるかは技術の活用とは別で重要なポイントである。

2. CSR・CSVについて

企業経営におけるESG投資およびCSR投資について意見が示された。

  • CSRは「社会の一員としての義務(企業活動の前提)」、「社会貢献としてのCSR(支出、コスト)」、「企業戦略としてのCSR(投資)」に類型化できると考える。この3つの類型はビジネスによって異なるものであり、どのように企業価値に結び付くのかを認識し企業経営に組み込むかは、個々の企業の判断である。投資と捉える場合、新たなビジネス・チャンスなど将来のキャッシュフローに直接結びつくものもあるが、むしろ、企業活動を支えるインフラ投資と理解すべきかもしれない。
  • 企業経営者として、投資判断においては、自社のブランド価値や企業価値が向上するかどうかに基づいて意思決定を行っている。そういった意味で、ESGもCSRも「企業戦略としてのCSR」と位置付け、投資として認識している。
  • B to C企業はB to B企業に比べ、消費者や社会からの評価を投資判断上でより重視する必要があるため、結果としてESGやCSRが企業戦略とより密接に絡んでいると言えるのではないか。
  • 企業にとって「社会貢献としてのCSR」は「企業戦略としてのCSR」と比べ、リターンの不確実性や発現時期が異なるものの、最終的にリターンに繋がる点は共通なのではないか。
  • 企業経営者としては、研究開発投資は、将来の財務的リターンや企業価値の創造に繋がることを期待している。他方、ESG投資については、直接的な経済的ベネフィットを期待するわけではなく、それが社会や投資から評価されるなら有り難いが、社会の中で誠実であるための企業文化を作り、ひいてはそれが社員のモチベーションに繋がることを期待している。

CSRに関する課題や注意点について意見が示された。

  • 解釈と混同(社会貢献としてのCSR、企業戦略としてのCSRの混同等)、効果の評価基準、効果の不確実性、これらが課題である。そのため、CSRに関する基本方針、戦略、実行、情報発信、評価を紐付けるバナンスの視点が特に重要となる
  • 日本企業を対象とする実証分析によると、CSRやESGの取組みの指標(CSP)は企業パフォーマンス(利潤性)と正の相関が見出されているが、リスクとの負の関係はさらに顕著であり、リスク・プレミアムの低下を通じて資本コストを引き下げているという結果も得られている。一方で日本企業は大企業やパフォーマンスの高い企業であっても、CSP awarnessが低い企業が少なからずある。海外投資家や外国人株主がCSRやESGの取り組みを促進しているという結果も得られており、日本企業特有の構造的問題が非財務への認識を鈍らせている可能性がある。

共通価値、CSV(Creating Shared Value)の概念について情報共有があった。

  • 日本では「三方よし」の概念と似たような概念として整理されがちだが、CSVはあくまで経済的価値創造と社会的価値創造の両立を目指すものであり、社会的価値創造(課題解決)を目的とし結果として経済的価値が付いてくる「三方よし」とは目的と手段が逆転した概念である。

3. 企業と投資家の対話やコミュニケーションのあり方、環境整備

企業による情報開示における課題について意見が示された。

  • 事業環境、ビジネスモデル、企業理念を考慮しつつ、エクイティ・ストーリーのように、企業価値に対する重要なファクターを整理することが必要である。【市川委員】
  • 特に上場して長年あるいは公募増資も何年もしていないような場合、自社の企業価値に対する重要なファクターやストーリーが整理できず、見失っている企業が多いのではないか。

ESG・無形資産に関する情報開示のあり方について意見が示された。

  • エクイティ・ストーリーの整理に向けては既存の開示ツールの活用も一案である。例えば、有価証券報告書上の「対処すべき課題」の項目について、「持続的な企業価値に関する情報を書くことが望ましい」、といった指針により関連情報の開示を促すことも有効ではないか。
  • ESG・無形資産に関する情報の公開・開示については、企業が内発的に取組むためのインセンティブとなるような、きちんとその企業の価値向上に資するような使われ方をすることが重要であり、逆に弊害が出るようなことがないよう留意すべきでる。

企業と投資家の対話・コミュニケーションにおける改善点について意見が示された。

  • 企業は出せる情報、出しにくい情報、出せない情報を選別していて、投資家が長期的に企業価値に関わるような情報として欲している情報との間にミスマッチが生じていると考える。
  • 企業毎の違いや個別事情もある中、まず、投資家サイドから求める情報を整理して提示してはどうか。これを参照して、企業が出せる情報は何かを検討してもらう形が具体的かつ効率的ではないか。
  • バイサイドの投資家であれば、ESGの専門部門も配置されており、アンケート等を通じて、どのような情報が欲しいのかを整理することが有効でないか。

明確な言葉・概念の必要性について情報共有があった。

  • 国際的な議論においても、ESG、CSR、CSV等の曖昧さが未だ残る用語について、そろそろ正確な言葉の定義が必要ではないか、という流れになっている。
  • CSRという単語自体は認知度も上がったが、具体的な共通理解に繋がらないため、当社ではCSRと呼ばず、サステナビリティと呼ぶことにした。これにより、企業の持続性に関する取組であることを示している。

既存フレームワークや指針に関するこれまでの経緯について情報共有があった。

  • 従来の情報開示システムは、機関投資家が持続的な企業価値を評価する上で必要な情報が不足している、との声の高まりからIIRCが始まった。
  • IIRCの統合報告フレームワークの開発においては「長期的な視点に基づく価値創造(Value creation over time)」、「フレキシビリティ」、「鳥瞰的な視点(Holistic View)」、これら3要素が意識されている。
  • IIRCにおける議論においても、業種別に多様な課題のKPIを設定していくべきかとの議論もあったが、コンサルテーションの結果が企業、投資家双方からのネガティブな反応が多かったため、フレームワーク最終化の段階ではその選択はとられなかった。

ESG・非財務情報の開示に関する課題について、投資家や有識者から意見が示された。

  • ESGに関する格付けやスコアリングは、その根拠である情報特性、情報の集約・単純化がもたらす影響について、適切に理解・注意して利用することが必要である。
  • 企業間で統一性の無い公開情報や自己申告情報に基づいて算出されるESGデータはバイアスが存在するため、投資判断における参照情報としては、正確性や公平性に難があり、利用可能性について疑問が残る。
  • 投資家の実務として、膨大な数の統合報告書を分析することが現実的に難しく、ESG・無形資産に関する情報について効率的な分析ができていない。

フレームワーク・指針の必要性について企業と投資家から意見が示された。

  • 定性的な非財務情報について、フレームワーク、指針やインデックスにより、企業による開示の基礎が形作られていくことに投資家にとして期待している。
  • 企業特性、ビジネスモデル、地域、文化、社会制度、法令等の違いを考慮しつつ、開示・報告に関する一貫性のあるフレームワークが望ましい。
  • ESGに関するアンケートに回答する際、企業側として「よく見せよう」という気持ちが働いてしまう。より公平性を保つため、業種やビジネスモデルの違いは考慮する必要はあるものの、一貫性を担保出来るフレームワークや指針は意義があると企業として感じている。
  • 持続性に関連した投資を行う企業が継続的に評価される仕組みが必要であり、ESG指数がそのきっかけとなることを期待している。
  • 日本企業が開示しないことにより、結果的に評価面で損をしているケースが散見される。標準的な開示事項をフレームワークや指針を通じて示すことは、日本企業が適切に評価されるために意義がある。

業種別のフレームワーク・指針の必要性について意見が示された。

  • 米国の機関であるSASBのガイドラインは多くの欧州企業に利用されており、業種別の非財務情報開示に関するガイドライン対する期待やニーズは存在すると言える。
  • 標準化と柔軟性(多様性)のバランスを慎重に考慮しながら、一定の標準性のあるフレームワーク等、何かしらの共通項に沿った議論ができる環境が必要ではないか。

以上

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最終更新日:2016年11月11日
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