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持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会(第4回)‐議事要旨

日時:平成28年11月10日(火曜日)15時00分~17時00分
場所:経済産業省本館17階第1特別会議室

議題

  • 持続的な価値創造につながる投資(無形資産等)のあり方
  • 企業における長期投資の判断、評価(ESG投資等)のあり方。
    価値創造につながる投資(無形資産等)促進に向けた課題や方策
  • 投資家が、中長期的な企業価値を判断する視点や評価のあり方。そのために必要な情報や対話のあり方。そのような長期投資を促進するための課題や方策。
  • 企業と投資家の行動や対話やコミュニケーションのあり方。
  • 上記を踏まえた環境整備等、政策対応の方向性等 。

議事概要

1. 企業と投資家の行動や対話やコミュニケーションのあり方

企業と投資家の対話のあり方について意見が示された。

  • 投資家として、定量情報よりも、その定量情報の経営判断上の織り込み方や経営上のストーリーといった定性情報を重視しており、長期戦略等を通じて投資家に発信してほしい。また、投資家にどのように評価してほしいのかも伝えてほしい。定量情報は、定性的な情報がなければコンテクストが分かりづらく、投資家として評価しづらい。
  • 企業におけるESG・無形資産に関する管理体制、経営戦略との紐づけ等について、KPIとして示されることが、投資家にとって望ましい。
  • 企業の競争力の源泉となる要素は企業や業種ごとに異なるため、ガイドライン等で定型的に示すのは難しく、企業と投資家の「対話」を通じて把握・特定することが必要ではないか。
  • 無形資産や無形資産投資は外部からは見えづらい。新技術やブランドの創出・取得に繋がる研究開発、M&A、提携に関する情報について、企業から積極的に投資家に対して発信してもらうことが望ましい。
  • 投資家として、投資対象の時価が投資後どのように変動しているか、付加価値の創出にどのように繋がっているか正確に把握することが難しい。開示が進歩すれば、投資家にとって、無形資産に対する理解が容易になるのではないか。
  • 企業のESGへの取組みが将来的な利益に繋がるかを評価することは難しいが、例えば企業の全体戦略にESGへの取組みが組み込まれ、戦略を達成するために必要な取組みであるか否か、という整理によって評価ができるのではないか。

企業評価におけるESG・無形資産に関する本音と建前について意見が示された。

  • 情報開示やIRに積極的でなく、ESGの取組みも見えない企業が、バリュエーション上は高く評価されているケースが現実にある。スチュワードシップ責任の観点から、このような企業に投資をして本当にいいのか、疑問に感じるところがある。ESGや無形資産を含めたバリュエーション、投資判断の在り方について、本質的な議論をするために、建前抜きで、本音で議論する必要があるのではないか。

2. 環境整備等、政策対応の方向性等

開示に関するガイドラインの案について意見が示された。

  • 企業が採用するか否かは任意でいいと思うが、長期投資家としては「投資家に向けた開示」の企業向けガイドラインがあると望ましい。
  • ESGや無形資産に関する開示のガイドラインについては、ESGや無形資産に関する評価は非常に個別性が強いため、業種や企業規模などを丁寧に考慮したものである必要がある。
  • 企業や業種ごとに個別性が強い個別事項について、ガイドラインを発出することは不可能である。他方、パームオイルや気候変動等の環境問題はグローバル投資家が厳しく見ており、企業にとってはレピュテーションリスクがあるし、取締役会や経営陣のダイバーシティを重視する投資家もいる。したがって、SDGsでの人権や環境課題といったグローバルアジェンダのような部分についてガイドライン化し、グローバル投資家の視点の共有を図ることには意義がある。

無形資産銘柄について意見が示された。

  • 健康経営銘柄等の公認の銘柄に選定されることが企業にとってインセンティブとなるのであれば、例えば、『無形資産銘柄』といった取組も、企業による無形資産投資等の取組を盛り上げるために有効ではないか。
  • 企業として、ある銘柄に選定されるか否かという点よりも、その銘柄の評価基準によって自社の状況が確認できることには意義がある。

ESGと企業価値の関係性について意見が示された。

  • ESGへ取組みが優れている企業が、そうでない企業よりも企業価値が高いのは、間違ってはいないのだと思うが、それはESGの取組みが企業価値を上げたのではなく、本業を通じて短期的に利益を上げられる企業が、次に長期的な発展を実現するためにESGの取組が必要となる、ということではないか。ESG投資がより浸透していった時に、投資をしてもらうために「本業をないがしろにしてでもまずESGだ」という風潮とならないか、懸念している。
  • ESGの取組は、企業活動の“リトマス試験紙”と捉えることができる。ESGに適切に取組む企業は、本業も適切に取り組んでいると推測できるため、投資家が安心して投資できるという因果関係ではないか。企業としてはそこを理解し、まずはきちんと本業で利益をあげた後、長期的な観点からEやSの活動をしていくべきである。
  • 成熟した社会において、企業は、企業価値向上と社会活動と環境活動を両立させることに積極的にチャレンジしていくべきと考えている。

3. 企業と投資家による中長期的な企業価値を判断する視点や評価

投資家の視点から、ESG投資の捉え方について意見が示された。

  • 企業活動におけるESGの重要性が高まる中、投資家として企業活動を見極めるためにESGの取組を適切に評価しなければ、長期投資を行うことはできない。
  • 長期的な業績成長が見込める企業は環境、社会、ガバナンスに適切に取組んでいる。ESGと株価の相関も確認できることから、投資家として、ESGの取組を改善してもらうよう対話やエンゲージメントを行うことが重要と考えている。

投資原則の考え方について意見が示された。

  • 企業を、株主にとっての価値を追求する「株主主権型」、多様なステークホルダーの利害を調整する「ステークホルダー型」に分類した場合、ステークホルダー型企業を前提としない場合、ESG投資が企業価値に繋がる根拠を見出すことが困難である。
  • 投資家としては株主主権型ありきではあるが、長期的な観点では、株主主権型であっても株主以外のステークホルダーのことも十分正しく理解することが必要になってくる。
  • 長期的な視点のもとでは、「株主主権型」と「ステークホルダー型」が追求する株主価値とステークホルダー価値は矛盾しない、という研究結果がある。

ESG・無形資産投資の解釈について意見が示された。

  • サステナブルインベストメントや責任投資を達成するために見るべきファクターとしてESGが用いられたが、昨今は「ESG投資」という言葉が曖昧なまま使われているのではないか。
  • アセットオーナーとして、過去のデータを見る限り、ESG投資で超過収益を上げることができるというコンセンサスには現状至っていない。一方で、少なくとも中長期の投資家から見た場合、ESGの要素はリスクファクターであるという認識にはコンセンサスがあると思っている。
  • ESGの議論が進み、企業と投資家双方がESGを企業の持続的価値向上に重要なファクターと認識し始めれば、株式市場がそれをプライスインしていくようになり、結果としてESGが企業価値にとってのプラスのファクターである、と証明されていくのではないか。現時点では、長期のテールリスク低減を図るための視点と捉えるのが現実的ではないか。
  • 企業のESG活動と比べて、無形資産への投資は、それが欠けた時にネガティブなマイナス要因に繋がりうるものの、その予測がしにくい。例えば、人材への投資をしていなかったことがどれだけ将来の利益に影響したかを測るのは非常に難しい。その意味で、ESG活動と無形資産投資を一緒くたに捉えることは危険ではないか。
  • 成長に資するファクターとなるケースもあるが、ESGはリスク要因や制約条件として捉えた方が理解しやすい。企業評価の基本は、長期的かつ継続的に、健全な利益成長が可能かどうかを調べていくことだが、健全な利益成長を実現するために何が欠けているのか、企業を分析する際、ESGというファクターを絡ませることでより分かりやすくなる。
  • 生産性に直接に寄与するか否かという観点で無形資産投資とESG活動を区別できるのではないか。ESGの説明が難しい理由は、生産性に直接寄与しないため、どういうプロセスを経て企業価値の向上に繋がるかが不透明であるためではないか。
  • 日本の人材投資の低さの要因の1つに、終身雇用の慣習があると思う。海外ではその慣習がないから、良い人材を確保しておくために企業側は研修を充実させるが、日本では人材流出の危機感・リスクが低いためそういったインセンティブが働かなかったのではないか。
  • 現代の日本企業には、新入社員の頃から経営人材の育成まで、かなり体系立った人材育成の制度の下で、費用を投じている企業もあると思う。また、終身雇用だからこそ人材育成のために投資するという観点もある。
  • 労働環境に対する投資や教育等の人材投資といった投下金額のみで捉えられないものが存在する。投下資金とパフォーマンスの関連性という捉え方により、本来あるべき企業の投資の捉え方が狭められてしまうのではないか。
  • 投資家がリスクファクターとしてESGの観点で捉えているものと、SDGsやCSVの議論でビジネスのオポチュニティーの観点で捉えているものは、リスクとオポチュニティーと正反対の観点であるにもかかわらず、それぞれ実は同じことをバリューと捉えているのではないか。

ESGにおけるガバナンス(G)の位置づけについて意見が示された。

  • 投資家と企業の間に情報の非対称性が存在する中、投資家が企業に安心して経営を任せるためには企業が適切なガバナンスを持っていることが前提となる。そういう意味で、GがE、Sに並列されるのは違和感があり、Gは投資家にとって重要なファクターと言える。
  • E、S、Gが並列されることへの違和感を説明し、ESGを正しく理解するためには、“ES through G”(ガバナンスを通じた環境面や社会面の取組)と捉えた方が適切ではないか。

4. 国内外におけるESG・無形資産投資のマクロ動向について

マクロ的な観点からESG・無形資産投資の国際動向に関する情報提供があった。

  • 近年の政策は雇用や株価の面で成果が見られるものの、民間消費や民間設備投資は、過去の回復期に及ばない。特に民間設備投資が伸び悩んでいる。
  • 経済の成長要因を国際比較すると、日本は投資の寄与が低く、資本蓄積率の差が出ている。他方、生産性や労働の寄与は特段低いわけではない。
  • 企業の投資活動は多様化しており、機械や建物に対する投資を含む従来型の有形固定資産に対する投資が減る一方で、M&Aを含むその他資産が大きく伸びている。

日本企業による無形資産投資の概況、その課題について情報共有があった。

  • 日本企業による無形資産投資について、無形資産投資/GDP比率や無形資産投資/有形資産投資比率は主な欧米諸国と比べて低い水準となっている。
  • 日本企業による無形資産投資のうち、研究開発投資の規模は低い水準ではない。他方、人材投資の規模がバブル崩壊以降は縮小している。人材投資はIT投資を補完するはずだが、日本は諸外国と比べて人材投資とIT投資の相関が小さい。
  • 日本の無形資産投資が国際的に出遅れた要因として、IT革命の時代に日本が不良債権を抱えていたことが挙げられる。当時、日本企業に新事業立上げや人材投資の余裕は無く、特にIT領域等の技術革新が進んだ領域で遅れを取った。
  • 米国において有形資産投資を無形資産投資が抜いた2000年頃、日本では未だに製造業が強く、有形資産投資によって収益を上げようとする傾向が強かった。
  • 人材投資は特にサービス業に影響する中、日本と韓国は人材投資額が小さく、サービス業の生産性の低さに繋がっている。サービス業の比率が高まれば、生産性や成長率の低さが、日本経済全体の成長率の低さとなる。
  • 人材投資や組織改革を怠ったことにより遅れが広がると、後になって人材投資や組織改革を行っても、企業の収益率を高めることが難しくなる。この場合、M&A、外部との提携、自前主義からの脱却、アウトソーシングが企業にとっての選択肢となる。

以上

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最終更新日:2016年12月13日
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