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持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会(第5回)-議事要旨

日時:平成28年12月5日(月曜日)13時00分~15時00分 
場所:経済産業省本館17階第1特別会議室

議題

  • 持続的な価値創造につながる投資(無形資産等)のあり方
  • 企業における長期投資の判断、評価(ESG投資等)のあり方。
    価値創造につながる投資(無形資産等)促進に向けた課題や方策
  • 投資家が、中長期的な企業価値を判断する視点や評価のあり方。そのために必要な情報や対話のあり方。そのような長期投資を促進するための課題や方策。
  • 企業と投資家の行動や対話やコミュニケーションのあり方。
  • 上記を踏まえた環境整備等、政策対応の方向性等。

議事概要

1. 企業や投資家のESG・無形資産投資の実務

投資家の視点から無形資産に対する評価のあり方について意見が示された。

  • 無形資産を単独に捉えて評価をすると、本来あるべき企業評価から乖離が生じる。企業価値は様々な角度から総合的に評価されるため、無形資産を単独で評価すべきではない。
  • ESGは重要であるものの、ESGだけが切り出されると投資家にとって分かりにくい。企業と対話する際は、「ESGが成長戦略にどういう形で落とし込まれているか」を聞くことにより、断片的に見えた取組も、中長期的にどういう企業価値向上を意図した取組であるのか等を把握・理解できる。またESGよりも、CSVのコンテクストで説明をした方が、投資家としては分かりやすく、評価しやすい。
  • 持続可能性という観点から、企業の長期的な経営能力の強さと、CSRはじめ多面的な価値や企業活動の要素を経営戦略に紐付けて明確にして、情報を発信すれば、投資家も受取りやすいのではないか。

ESG・無形資産とビジネスモデルの紐づけに関する実態について情報共有があった。

  • インタンジブルズがどのように直接的または間接的にビジネスモデルに影響を及ぼすか、企業自身の理解や検証が不足している。その結果、投資家とのコミュニケーションも十分なものとなっていない。

企業側から投資家やアナリストに対する期待について意見が示された。

  • 投資家やアナリストから投資戦略的視点で働きかけられることにより、企業側の学びに繋がる。投資家やアナリストからそうした対話を通じた示唆を与えられることで、企業の開示レベルの向上にも繋がる。
  • 投資家やアナリストはインタンジブルを考えながら評価をしている一方で、アナリストレポートに評価について触れられていない。この点が改善されると、企業のインタンジブルズに関する意識や考え方の向上に繋がる。

ESG・無形資産の評価上のビジネスモデルとの紐づけの重要性について意見が示された。

  • ビジネスモデルを中心に据えてESG・無形資産を考慮・評価することで、企業のファンダメンタルズの評価との乖離を防ぐことに繋がる。このような「統合的な考え方(Integrated Thinking)」でESG・無形資産を捉えることが望ましい。
  • ビジネスモデルの理解無くして、中長期の企業価値の評価・分析はできない。ESG・無形資産に関する情報は評価・分析上の定性情報として活用される。

ビジネスモデルとの紐づけにおけるボトルネックと留意点について意見が示された。

  • ESGを経営戦略やビジネスモデルの一環として評価することが重要である。一方で、経営戦略やビジネスモデルを深く理解するためには時間とコストが掛かる。例えば、パッシブのように、投資先企業数も多く、個別企業の評価において、時間と労力を費やしにくい投資手法の場合、ボトムアップ・リサーチを重視する投資戦略と同じレベルを期待することは現実的ではない。
  • ESG評価の質と範囲を深掘りすればするほど、評価できる企業数は狭まる中。そのため、どのような程度感を念頭に置くかによって、ESG評価の重要性、アプローチや手法は大きく変わる。この点を整理した上で議論することが重要ではないか。
  • ESG・無形資産が如何にビジネスモデル上で価値創造に繋がっているかという情報は投資家として関心は大きい。ただし、その裏付けや根拠が不明確である場合は評価しづらい。

ビジネスモデルとの紐づけに関する開示の好事例について情報共有があった。

  • 企業の非財務ファクターとビジネスモデルを紐付けた開示の好事例として、ビジネスモデルを明確化し、それを継続するための戦略、戦略の進捗、必要なインプットとアウトプットの関係性やKPIを説明しているケースがある。

投資家の評価期間の違いを考慮することの必要性について意見が示された。

  • 無形資産投資やM&Aにおいて、投資家の投資期間の違い、およびそれに基づく視点の違いを考慮することが重要である。例えば、短期投資家にとって、将来的な実現性は意味がなく、一方、長期投資家は回収期間を長く見ることができる。

長期投資における「撤退戦略」の重要性について意見が示された。

  • 将来の実現性が不確かな場合、「撤退戦略」が重要となる。長期投資家としては、経営戦略において事業をどのように展開し、どのような条件で撤退するのかを含め、ストーリーで説明してほしい。
  • 企業が新規事業をはじめようとする際、投資家としては撤退の条件やルールの有無、また社外者である独立取締役に対してどのように説明し理解を得たのかを確認する。例えば、新規事業で撤退が難しい事業は社長直轄に置いて、いざという時は社長の責任で止める、という事例があった。

アナリストヒアリングや関連調査の結果に基づいて、投資家にとってのESGの捉え方について意見が示された。

  • 日本のアナリストや投資家はESGを「お堅い、綺麗ごと」という受け取り方をしている一方で、企業の信頼性、持続性、クオリティ、定性情報の重要性、リスクの中でもダウンサイドリスクに繋がる、という意見も見受けられる。これは企業のファンダメンタルに関する戦略や投資とESGを別物として捉えているということではないか。
  • アナリストはESGや無形資産といった言葉に踊らされず、実質的な面を見ている。ポイントはビジネスモデルや成長戦略と結び付かなければ意味がない、という点である。ESGや無形資産といった言葉から入るのではなく、実質をベースに検討し、どのような当てはめ方があるのかは結果論に過ぎないとすることが正しい分析のあり方ではないか。
  • 投資家から見たとき、ビジネスモデルに関連する情報として、企業の文化(Culture)とか価値観(Value)についてはあまり関心が高くない、という英国の調査結果があり、これがある種の現実である。

投資家の視点から、対話における企業に対する期待について、意見が示された。

  • 企業分析においては、その企業の歴史や背景を知ることが重要であるが、経験の浅いアナリストがそういった部分を知るのには限界がある。会社側がアナリストに対して、過去の経営戦略と経営陣の考え方、その歴史的な推移と変遷といった定性情報について対話を通じて触れることにより、企業のガバナンスに対するアナリストの理解を深め、深いエンゲージメントに繋がる。
  • 無形資産投資と収益性との関係については企業と投資家が一緒に考える必要がある。当方も、投資家として、経営トップとのミーティング、あるいは会社の経営陣に対してレクチャーを行う機会を設けている。

2. 人的資本に対する投資について

企業における人的資本に対する投資や取組、考え方について情報共有があった。

  • 当社の場合、経営人材の確保が成長のカギとなる。単線のキャリアだけでは経営の知識、ノウハウ、経験は出来ないため、この点を意識した人材育成を図っている。計画的なキャリアパスやOJTを重視するほか、新しい知識を取得する方法として、Off-JTを拡充させっている。
  • 人材に対する投資である「報酬」については、従来は年功序列型の賃金体系であり、職階に比例して年収が上がった。今では職階が上がるほどベースの上昇幅が小さくなり、変動幅が増える体系となっている。
  • 経営者報酬について、諸外国と比べると日本企業の経営者報酬は低く、日本においても、収益に応じた報酬を、もう少し柔軟に考えて良いのではないか。ただし、日本は固定比率が高く、諸外国と比べるとリスクを負った報酬体系になっていないという違いに留意する必要がある。
  • また、経営者報酬の短期比率と長期比率について、現状では短期比率が高くなっており、今後は長期比率を高めていくことが必要ではないか。

投資家による人的資本やその投資に対する評価の実務について情報共有があった。

  • 企業の人的資本について、企業と対話する際は、企業の人口構成(人口ピラミッド)に触れる。リストラ等により人口構成が歪な企業もあり、企業の中長期計画と人口構成が整合しているか否かをチェックしている。
  • 人材投資については、企業が採る経営戦略によって投資すべき人材は異なる。そのため、教育や採用が経営戦略と照らし合わせて、意味があるか否かを議論する。
  • 人材投資について、グローバル企業と対話する際、グローバル人材を惹きつける力を持った競合企業と比べても、魅力的な体系になっているかどうかを評価している。また、グローバルに通用できるよう、人事体系の平等性や競争性を如何にバランスさせるか、という点について対話を行っている。
  • 人的資本について、企業にとって重要な人材を「ドライバー」として特定し、そのポテンシャル人材の獲得、リテンション、スキルアップ、他社による引抜防止、さらに長期では後継者育成が重要と考えている。
  • 企業の経営人材の選定について、日本の大企業のような内部昇格型の場合、将来の経営幹部候補生の育成策として、局面ごとにプログラムが設定されているかどうかをチェックする。一方、オーナー系や外部人材を経営陣に迎える企業の場合、目の付け所が異なる。このように経営人材の人選は企業ごとに違うため、投資家としての評価上は、パターンを分けて、対話において扱うか否かを決める。
  • 投資家として、各職階の人材の能力やポテンシャルをどのように見極めているのか、経営幹部候補生に対する集中的な取組は何かという点等に関心がある。ただし、これらの情報は文章化が難しく、企業との対話の中で情報を得ている。

人的資本に対する投資に関する対話のあり方について、意見が示された。

  • 多くの企業は、教育体系が統合報告書に形式的に載っている程度であるが、形式的な情報のみでは内容が不明確でよく分からない。このような点についても、企業とのエンゲージメントで触れていくことが、今後は短期志向な質問よりも重要になっていくのではないか。
  • 特定の人材が持つ個人的能力に頼り、後が続かないというケースがよくある。人間力をいかに会社全体として高めていくか、そのための教育体系、組織体系、後継者育成について、対外的に示してもらえると安心感に繋がるのではないか。

人的資本の投資に関する分析の一環として、企業経営者と業績に関する分析の取組について情報共有があった。

  • 過去から現在に至るまでの経営陣とその実績をベンチマークして分析している。その企業にとって必要なアクションを議論する材料として用いている。
  • 企業が直面する課題や社長の選任・解任の透明性が高まれば、投資判断の材料情報となり、その結果、株式市場においても効果が見える可能性がある。
  • 日本の社長交代を資本効率の面から分析すると、社長の交代が企業のROAやROEの上昇に繋がっていない。日本企業の場合、社長交代によって、株主価値を高める経営改革の改善に十分に機能しなかった、という仮説に繋がっている。

3. 研究開発に対する投資について

投資家による研究開発に関する対話の実態について情報共有があった。

  • 研究開発投資について、対話でもその内容などが十分触れられないことが多く、アナリストとしては財務数値を調べるしかなかった。
  • 研究開発について、自社の取組内容を把握している経営陣はいるが、他社の取組内容を把握している経営陣は少ない。
  • Intrinsic Value(本源的価値)を評価する際、機関投資家が独自に使う財務モデルでは投資先候補企業の研究開発費をオンバランス化している。これは横比較のためとかR&Dを重要なOperating Asstとして捉えてCFROIを推定するため等の目的で、欧米ではかなり使われている手法である。

投資家による研究開発に関する対話の実態について情報共有があった。

  • 特許公表情報をビッグデータとして分析・俯瞰図化することにより、何に注力しているかが分かる。この分析結果をエンゲージメントにおいて用いている。
  • ビックデータを交えた分析の企業へのフィードバックで、企業トップの危機感・刺激に繋がり、対話が活性化するケースがある。また、特に他社が何をしているかを全体感として把握することができる点も、企業トップの関心を生む。

4. ブランドに対する投資について

企業におけるブランド投資に対する考え方について情報共有があった。

  • 当社の場合、ブランドに対する投資としてプロスポーツに参入した。その狙いは、企業としての格と知名度の向上だった。
  • ブランドは「超過収益力」と捉えており、集客効果の拡大等を通じて企業価値の向上に資すると考えている。
  • また、同時にブランドは「顧客へのアイコン」、「企業の社会的ミッション」、また、「従業員の羅針盤」と捉えており、事業の方向性にも大きく影響するものであり、当社として「投資」と位置付けている。

ブランド投資の効果について情報共有があった。

  • ブランド投資によって、認知度や信頼性の向上、ブランドランキングの向上、取引先企業の信頼の向上、消費者に対するサービスの向上、各種事業の売上・利益の拡大、ひいては株主に対する配当といった株主還元に繋がった。
  • 投下資本に対して、結果として得られた広告効果、ユーザ数や出店数の増加による増益効果やブランド効果の方が圧倒的に大きかった。

ブランド投資に関する投資家との対話について情報共有があった。

  • 当初は参入の是非に対する質問や懐疑的な声も多かった。とりわけ短期投資家はブランド投資に対して、明確な結果が出るまでは非難が多かった。企業としては、結果が出るまでは、何度も同じことを投資家に対して説明をするしかない。
  • 投資対効果が見えてくると、ブランドの重要性について、投資家やアナリストによって理解され、質問されることも減った。

投資家による企業のブランドに対する評価上の考え方について情報共有があった。

  • ブランド投資について、企業の投資が最終的にブランドの構築に繋がるか否かを判断することは難しい。結果が出て、初めてブランドということが分かる。
  • 競争力維持の観点ではブランドは大事であるが、一方、ブランドは「信頼」であり、価値の毀損するリスクが高い。そのため、企業のブランドの価値の視点から、ESGといったリスクファクターが重要となる。

以上

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最終更新日:2017年1月6日
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