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持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会(第6回)-議事要旨

日時:平成29年1月10日(火曜日)15時30分~17時30分 
場所:経済産業省本館17階国際会議室

議題

  • 持続的な価値創造に繋がる投資(無形資産等)のあり方
  • 企業における長期投資の判断、評価(ESG投資等)のあり方。価値創造に繋がる投資(無形資産等)促進に向けた課題や方策
  • 投資家が、中長期的な企業価値を判断する視点や評価のあり方。そのために必要な情報や対話のあり方。そのような長期投資を促進するための課題や方策。
  • 企業と投資家の行動や対話やコミュニケーションのあり方。
  • 上記を踏まえた環境整備等、政策対応の方向性等。

議事概要

1. 企業と投資家の行動や対話やコミュニケーションのあり方

対話・コミュニケーションの状況と環境について意見が示された。

  • 2つのコードが導入された今、建設的な対話・エンゲージメントの必要条件は企業側の自発的な情報開示である。この2~3年で統合報告の数が増える等、企業の努力は進んだ一方で、対話の質を高めるための努力は、一部の企業と投資家を除き進んだとは言えず、一般論としては、対話の「質」は全く深まっていない。
  • 対話環境は今後大きく変化していく見込みである。情報管理規制の強化等により、諸外国の例のように、企業の情報発信が「後退」する可能性が高い。
  • 欧州のMiFIDII(第2次金融商品市場指令)等により規制が厳しくなる中で、投資家が必要とするレポートや情報を提供するアナリストの役目が大きくなる。非財務情報をベースにした長期投資に関するレポートや情報の価値が高まる。
  • パッシブ運用の比率が高まることが見込まれる中、投資家やアナリストは「目利き力」を持って、企業の定性情報を評価・活用していくことが求められる。しかし、投資家やアナリストの「目利き力」の育成は十分に進んでいるとは言えない。
  • 株式市場の健全性に鑑みても、アクティブの投資家が短期的なトレードをすることは必要であるが、かといって長期的視点によるR&Dをさせない等、短期の株価だけを意識して企業の長期的な価値を破壊するような議決権行使等はやめてほしい。

インデックスに関する問題点について意見が示された。

  • TOPIX銘柄数は2000社もあり、この数の企業を相手にそれぞれの企業に関する深い理解に基づく建設的な対話をすることは実務上困難である。また、過分散により分散効果が低減している。TOPIXはダイナミズムが無く、企業価値毀損企業を多く含んだ資本市場を表象しており、長期投資に向かない。
  • 組入銘柄の新陳代謝率について、米国S&P500の6~8%と比べて、TOPIXは2~3%と低い水準にとどまり、新陳代謝が起こらずにダイナミズムを欠いている。結果として、TOPIXのインデックスとしてのクオリティーが毀損されているのではないか。
  • 業種分類について、長期で成長する企業はアメーバのように立ち位置を変えているため、必ずしも固定的に1つの業種に定まらない。業種分類が実態と合っていない可能性について留意する必要がある。

長期投資の考え方について、長期投資家より意見が示された。

  • 長期投資家として、「売らない」ことを前提に投資を行っている。本当に良い企業であれば、企業価値の増大で利益を上げることができる。他方、日本の資本市場は「安いときに買って、高いときに売ることが株式投資」と捉えられている。

長期投資家が求める情報について意見が示された。

  • 長期投資家が求める基礎的な情報は、企業理念・フィロソフィー、儲かる仕組みとしてのビジネスモデル、および、その結果どうなったか、この3点である。これら基礎的な情報については企業が任意で発信やアピールすべきである。
  • 財務情報のみでは企業を評価することはできない。これまで長期投資家として、経営者との対話、国内外の工場見学などを地道に続け、非財務情報を集めてきた。
  • 求める情報のまとめ方については、FRCが示すビジネスモデルの程度感がちょうどいいと思っている。
  • FRCの議論の中で、企業文化と価値観について、「一部の投資家しか関心を持っていない」という調査結果となっているが、個人的にはもっと重要性が高いと思っている。
  • 将来の企業価値に結び付く定性情報こそが重要である。対話環境を改善するに当たり、企業側がしっかりと発信し、受け取る投資家側の理解に繋がるのか、この点が重要である。
  • 定性情報と定量情報をきちんと融合させた形で整合的に説明し、持続的な企業価値の向上に結び付けているということが説明できることが重要である。例えば人材やR&Dといった無形資産を、どのようにキャッシュフローに結び付く形でビジネスモデルを考えているのかを「見える化」しての整合的説明が望ましい。

投資家が求める開示について意見が示された。

  • 色々な開示要請があるが共通点はサステナビリティである。そのサステナビリティに上手く絡め、本質を見失わずに本当の企業価値を説明するためには、FRCのレポートにあるような、ビジネスモデルを起点に、そこからストラテジー、プリンシパルリスク、KPI、報酬に至るプロセスを示すことが重要で、この順序も大事である。
  • ビジネスモデルの前に、「経営の価値観」を示す必要があるのではないか、ビジネスモデルはコアとなる価値観を如何に動かすかを示すもの、と捉えている。
  • 投資家の関心はリアルタイムに変わる。仮に、統合報告書で価値創造プロセスがある程度開示されてても、それは基礎情報にとどまっている。その時々で変化する企業に対する投資家の関心事が書いてあるわけではないので、企業はこれを対話で解決せねばならない。
  • 定性情報と定量情報をきちんと融合させた形で整合的に説明し、持続的な企業価値の向上に結び付けているということが説明できることが重要である。例えば人材やR&Dといった無形資産を、どのようにキャッシュフローに結び付く形でビジネスモデルを考えているのかを「見える化」しての整合的説明が望ましい。
  • ESGをリスクなのかオポチュニティなのか等、投資家間で意見が違って良いと思うが、その意見形成がインフォームドでなければならない。まずは投資家がインフォームドに判断できるようディスクローズはしてほしいと思う。

開示における課題について意見が示された。

  • 開示の要請が高まり、様々な団体から開示のガイドラインが発せられ、企業の開示も素直にそれらに従った形式の開示が急速に増えている。それが投資家の投資判断に役立つ内容ではないものであることが、非常に懸念するところである。
  • 人材に関する開示を例に取ると、人を一番大事なものの一つとして財務の「財」を使って人財と書いているが、肝心のその企業にとって相応しい人材像や、それをどう見つけるのか、というビジネスモデルに結び付けるための情報が書かれておらず、形式上の開示が進むことを懸念している。

2. 環境整備等、政策対応の方向性等

ガイダンスの対象・利用者について意見が示された。

  • 対象は企業の長期的成長に関心を持つ人全てではないか。企業経営者や投資家、あるいはその他ステークホルダーかもしれない。
  • 投資家については、投資手法や判断軸が異なるが、その多様性に留意しつつ、企業の長期的成長に関心が強い人に響くようなガイダンスとすると、多くの人にとって有益なものとなるのではないか。

ガイダンスの目的・用途について意見が示された。

  • SDGs等で社会課題に対する企業への要請が高まっているが、それに企業としてどう向き合うかは経営者固有の信念であり、コアとなる経営の価値観がビジネスモデルの前にあるはずである。このコアの価値観を考えさせるための、ガイダンスのようなものが必要なのではないか。
  • 企業に対して、投資家の視点を示すもの、また、長期投資を惹きつけるための投資家とのコミュニケーションのあり方を示すものが良いではないか。ディスクローズのためではなく、企業が長期的な価値創造について考えるためのツールであるべきである。それが共通の言葉として開示に繋がればよいのではないか。またその開示を見て投資家が考え、突っ込んで質問したくなるようなフレームワークを作ることが重要ではないか。
  • ガイダンスはプリンシプルベースのような、企業に考えるよう促すものが良いのではないか。企業向けであれば、特定の情報を強制的に開示させるものではなく、持続的な企業価値の向上のために何をして、何を開示するかを、企業自らに考えるよう促すものが望ましい。
  • 単年度の開示内容だけでは企業のことを正しく理解することはできない。単年度という視点に捉われず、複数年かけてじっくり伝えていく「長期的な視点による開示」という考え方を示すガイダンスやツールが求められているのではないか。
  • 開示ルールが整備され、形式が揃った情報が並ぶと、投資家としては企業を深く評価するためには「質」に入っていかざるを得ないが、形式が揃えば揃うほど「質」の差は見えにくくなる。「質の見せ方」にフォーカスすると、企業と投資家の双方にとって良いツールとなるのではないか。
  • 対話環境の変化に伴って情報発信の後退が見込まれている中、どのように「情報発信の後退」を防ぐか、という視点が織り込まれることを期待している。
  • 企業は投資家の求める情報をどのように発信していくのか、投資家は企業から発せられる情報をどのように分析・活用していくのか、企業と投資家の双方の理解とチェックが重要である。

ガイダンスに盛り込むべき内容について意見が示された。

  • 特にBtoCの企業においては企業の無形の価値はブランドバリューに大きく影響されるがブランドバリューの評価は難しい。その価値を評価する指標や伝える術があれば、投資家と企業の対話がスムーズになるのではないか。
  • SDGsに賛同する企業が多いが、SDGsは全てが株主価値に結びつくわけではないので、投資家としては企業がCSVの観点でSDGsを経営に組み込んでくれることを期待しており、その投資家としての期待を示すことは、企業の経営にとっても有益ではないか。
  • アセットオーナーから運用会社へベスト・イン・クラスのスチュワードシップサービスを求めており、運用会社からはベスト・イン・クラスのコーポレートガバナンスを企業に求める。そういったトップランナーを後追いする水準とすれば、使い勝手のいいガイドラインとなるのではないか。

既存の国内外のレポートやガイドイラン等について意見が示された。

  • ROEを軸とする共通のメッセージや示した伊藤レポートが参考になるのではないか。例えば、企業と投資家双方に対して、持続的成長に繋がるESG・無形資産投資について、共通の言語や意識合わせに繋げること期待している。
  • ビジネスモデルの開示については英国では戦略報告書が開示手段として定まっている。日本でも開示に関するガイダンスを出すのであれば、その開示をどの媒体に反映させるのか特定する必要があるのではないか。任意且つ自由度もあるアニュアルレポートや統合報告が良いのではないか。
  • 英国FRCが提唱するビジネスモデルの開示方法は長期投資家が求める情報が入っているが、例えばSDGsとの向き合い方について悩んでいる企業は多いので、そういったレベルまで踏み込んだ、FRCの提唱するものよりも少し細部に至るものであると良いのではないかそういう意味ではSASBのスタンダードも参考となるのではないか。

ガイドラインに関する議論に対する指摘・懸念や留意事項について意見が示された。

  • ビジネスモデルの前に経営としての価値観があるはずである。例えばSDGs等で社会課題に対する企業への要請が高まる中、それに企業としてどう向き合うかは経営者固有の信念である。このコアの価値観を考えさせるための、ガイダンスのようなものが必要なのではないか。
  • 明らかにガイダンスを作るべき時期に来ている。但し、ひな形的なガイダンスは形式的な取組を闇雲に助長することに繋がり、百害あって一利なしであるので、対話の質を高めるための指南書的な内容とする必要がある。
  • ガイダンスで定められる開示項目について、可もなく不可もない程度の情報を埋めるだけという開示であれば、長期投資家として欲しい情報ではない。
  • ガイドラインは時期尚早ではないかと思っている。基本的な考え方や原則だけ示して、具体的なところは個々の企業に考えてもらう形というのがいいのではないか。【形式論を押し付ける内容ではなくて、企業自身が考えることを促すものが良いのではないか。
  • ガイドラインの内容が細かくなりすぎないよう注意すべきである。日本企業は「型」に沿って答えることは上手だが、中身に魂を入れることは必ずしも上手いとは言えない、という特徴は留意する必要がある。

求められるインデックスについて意見が示された。

  • 100~200程度の銘柄であれば、投資家が対話することも現実的に可能な規模となる。特に流動性の高い銘柄で構成されるインデックスであれば、取引コストも低く抑えることができる。
  • ポートフォリオ構築上の留意事項として定性情報が重要である。定量情報は過去の情報であり、将来のキャッシュフローに関する示唆に繋がらない。

企業価値の創出における非財務ファクターに対する考え方について意見が示された。

  • ESGは長期的にキャッシュフローに繋がる必要条件の1つにすぎない。ESGを満たさない企業は当たり前にして除外する、という考え方が妥当ではないか。
  • 企業活動が社会に反する場合、長期に持続せず、DCF(ディスカウント・キャッシューフロー)モデルが適用できない。結局、長期投資においてESGというのは当たり前に調べなければならないファクターではないか。
  • ESGはネガティブな要素として捉えている。ESGの取組状況をもとに企業を選択して、長期的にインデックスを上回るリターンが出るか否かを研究したとしても、おそらく、ESGの有意性を証明できないのではないかと思う。
  • ESGはリスクのみならず、オポチュニティとしての要素もあると思っている。英国FRCのビジネスモデルレポーティングにも、ビジネスモデルのインプットとしてカルチャーやステークホルダーとの関係が挙げられている。
  • SRI(社会的責任投資)とESGの違いが良く理解されずに議論されているが、SRIは市場に評価されなかった経緯がある。ESGとSRIの共通点と相違点についての整理をすることで、持続的成長に向けた投資とはどういうものかを理解してもらい、機関投資家が受託者責任を果たす上で何が必要かを明らかにできるのではないか。
  • 無形資産比率が高いポートフォリオは超過収益率が高くなるという調査結果がある。しかし、リスクを伴うことがポイントである。無形資産は有形資産に比べてリスクや不安要素が多く、それだけ高い収益率を要求するからではないか。

PBR(株価純資産倍率)を軸とした分析について意見が示された。

  • PBRは結局Equity Spreadと紐付いている。Equity Spreadは有形資産投資であっても資本コストを上回るリターンがあればプラスになりPBRは上がる。
  • 良い企業はBPS(1株当たり純資産)が積み上がっていく。そのような企業を株式市場は評価せざるを得ない、結果として、株価が上がる。
  • 将来のEquity Spreadが高ければPBRは高くなり、無形資産のリターンが評価されるのであればEquity Spreadの拡大につながる。

人的投資に対する評価について情報共有があった。

  • 企業経営者の立場からすると、人材の資質や企業風土は、定量的に表しにくいものの、企業のパフォーマンスを計る上で重要なファクターである。
  • 企業のマネジメントや企業風土を評価する際、経営陣の経歴・略歴や業績から相応しいか否かを評価できるのではないか。投資家の判断においても、企業のトップと対面で面談を行う背景として、この考え方に基づくのではないか。
  • 例えば経営者の評価等について、十分な経験値がある投資家やアナリストであれば、経営者の評価も自信を持ってできるが、経験値が乏しい場合、おそらく自信を持ってできない。企業側として、このような経験値が乏しい投資家やアナリストにも適切に理解してもらうための情報発信が望ましい。
  • 経営者の選任について、日本企業は選任された人物と選任理由のみが示されている。海外企業は、企業のビジネスモデル、戦略、また、直面している経営課題に紐付けて、どのような人材が求められるか、という選任のクライテリアが先に示され、そのうえで、クライテリアを満たす人材と選任理由が示されている。これは投資家の視点と考え方に合致した開示となっている。
  • 人材への投資金額を書いたところで、ビジネスモデルを実行する過程でどういう人材が必要なのか整理されていない限り、いくら企業として財を投じても長期的な価値の創造にはつながらない。また、このような数字がいくら開示されても意味を持たない。

ブランド投資に対する考え方について情報共有があった。

  • 投資家として、ブランド価値を利益マージンで評価する。証拠が明確ではない場合、企業に対してどのようにブランド価値を確認できるか聞いている。
  • ブランドについて、サービス産業生産性評議会が毎年発表する顧客満足度調査のランキングはベンチマーキングとして利用できるのではないか。

以上

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経済産業政策局 産業資金課

最終更新日:2017年2月9日
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