経済産業省
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持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会(第7回)-議事要旨

日時:平成29年2月6日(月曜日)15時00分~17時00分 
場所:経済産業省本館17階国際会議室

議題

  • 今後の政策対応等の検討
  • ガイダンス策定について

議事概要

1. 持続的な価値創造につながる投資(無形資産等)のあり方

  • 研究開発投資について意見が示された。
    • 狭義の有形固定資産の情報のみならず、企業内外の投資、R&D、M&A等を総合的に考慮しないと企業価値や体質は分からない、と企業経営者の共通の声としてあった。
    • 研究開発の投資効率について、短期的な営業利益に貢献することは間違いないが、長期的な基礎研究の貢献度合いは実は分からない、という企業経営者の声が多い。海外企業の基礎研究分野におけるベンチャー企業や大学との連携等が進んだのも、自社で抱えていた基礎研究の効率性が経営者から見えづらくなったという背景があるのではないか。
    • 研究開発の領域として、従来の自前主義から、オープンイノベーションへ移行する動きも欧米に比べて日本企業は遅れている。
  • 人材投資について意見が示された。
    • 企業経営者として、企業価値の構成要素として物理的な資産よりも人材が重要である。企業活動において経営者はシェフ、中間管理職は調味料、一般従業員は素材、企業風土はキッチンの環境であり、相互に作用と補完し合うことで、企業価値やパフォーマンスが決まると考えている。どこが最も重要であるかは見定めが難しいのだが、ここに客観的な物差しや指標があれば、投資家の投資判断に繋がるのではないか。
    • 社内の研修プログラムや留学制度といった内部人材に対する投資のみならず、外部人材の獲得も人材投資として考慮され、この両方が公平に評価に組み込まれることが必要である。
    • 日本企業は雇用の安定性を前提とするため、投資効率性の追求と矛盾が生じる。企業戦略の転換において、海外企業は新たな人材を外部から調達し、日本企業は訓練・教育で対応するため、効率性の面で海外企業に遅れをとる。
    • 人的投資が企業評価に組み込まれると、企業間の違いが表れるかもしれない。他方、ダイバーシティの活用等の議論もあるが、人的資本に対する投資効率に関して、共通の議論の土台すら無い。
    • 人材を意味する英語表現として、ヒューマンキャピタルとヒューマンリソースがあり、それぞれ意味が異なる。前者はその時点で存在する人材、後者は人材の能力、知識、技能といった資本(キャピタル)として捉えている言葉である。
    • 海外は人材をヒューマンキャピタル、日本はヒューマンリソースとして捉えている。あるビジネスモデルに必要な能力が手元の人材(ヒューマンリソース)にないとすると、ヒューマンキャピタルを獲得し、その能力を調達する。日本企業は手元の人材(ヒューマンリソース)を生かそうとするため、新たな領域に展開する場合、習熟に時間がかかる。
    • 人材をキャピタルで捉えることは、報酬と成果が紐付いた業績連動型の投資と考えることであり、必要に応じて流動化できることが前提である。
    • 人材投資の効率性について、人材の流動性の問題が絡んでくるため、長期雇用を1つの強みとして活用してきた日本企業にとって難しい問題である。日本企業がグローバル化する際、最初に直面する問題である。海外市場に展開した際、M&Aで人的資本を獲得・活用することの効率性は非常に重要と感じた。
    • グローバル競争下で日本人・男性・新卒・終身雇用を前提にした従来の日本的な人材戦略は成り立たなくなる。投資家と対話する際、サステナビリティに絡めてダイバーシティ等に触れるものの、投資家はピンときていないようだ。
    • 社外取締役の観点から、企業のサステナビリティ実現のため、経営トップ、それに次ぐ階層をサクセッションプランニングとして、どう鍛え上げていくか、この点が重要である。
    • 人材投資は投資家として注目している。その際、企業のビジネスモデルと人材の雇用・活用法が整合しているか否かを評価する。たとえば、「従業員が一人前になるまでに要する時間」を質問している。
    • 長期的に時間をかけて熟練度が高くなるほど、付加価値が増えるという前提で長期雇用しているはずだが、ミスマッチが起きている企業も少なくない。ミスマッチに気付いているか否かを見定めるため、議論の俎上にあげることがある。

2. 今後の政策対応等の検討

  • 日本における長期投資の状況について意見が示された。
    • 「日本は長期投資を行っていない」という受け取られ方をすることがあるが、日本の機関投資家はパッシブ運用、インデックス運用が中心であり、十分に長期投資をしている。問題は、長期投資の成果が出ていない、という点である。
    • 根本的な市場構造について、稼ぐ力の向上、PBRの向上、PBR1倍割れの解消、これらを目指すうえで、企業のインセンティブが不足している問題を追求していく必要がある。
  • 議決権行使について意見が示された。
    • 企業としては投資家による議決権行使に対して関心があるため、投資家の実務としては議決権行使を対話手段として使っている。
    • 企業の個別事項に反対票を投じることがあっても、将来的な価値やパフォーマンスを見越して持ち続けるという判断をすることもある。
    • 機関投資家の実務として、議決権行使によって、企業と投資家の有効な対話やエンゲージメントに必ずしも繋がっているわけではないという問題がある。株主総会は特定の時期に集中しており、特にインデックス運用する投資家は実務として議決権を機械的に行使せざるを得ない実情がある。
  • 個別開示について意見が示された。
    • 個別開示により、機関投資家の説明責任が高まるのではないか。
    • 機関投資家による議決権行使と投資判断は必ずしも連動せず、「ねじれ」が存在しているのではないか。対話の場でも投資家の意図が見えないように感じる。
    • 議決権行使の個別開示は本来、議決権行使結果を受けて、それがエンゲージメントに結び付いてアセットオーナーからアセットマネージャー、企業に対する何らかの啓発に繋がることが重要である。
    • 個別開示に関して、「反対票を投じているにもかかわらず、株式を保有することは矛盾ではないか」、という誤解がある。原則として、企業を総合的に評価し、株価が上がる見込みがあれば売却しない。投資家の実務として、企業に十分でない点があれば、その点に対して反対票を投じることがあり、外形的に「ねじれ」と映ってしまう。同時に、賛成票を投じても、必ずしも投資家として全面的な賛成の意を有していない場合もある。
  • 政策保有株について意見が示された。
    • 企業自身が「稼ぐ力」を高める必要が無い状況を自身で作り上げている。政策保有株削減と叫ばれながらも、銀行、保険会社、大手メーカーも上場企業株を未だに相当持っている。取引継続の要件として保有を要請するケースも多い。
    • PBR1倍割れの要因として、政策保有株の存在がある。市場の政策保有株主の構造を変えないと、機関投資家が求める市場全体のリターンは上がらないのではないか。
    • 政策保有株主は融資、保険、取引の維持・拡大を目的としており、本研究会で議論している稼ぐ力、PBRや企業価値の向上を目的としていない。本来、株主が求めるべき目的と異なる目的を持つ株主である。
    • 政策保有株主が減らないと、対話の実効性が上がらない。議決権行使について、政策保有株主と企業の対話は、融資、保険、取引の維持・拡大に関するものであり、本来求められる対話とは異なる。
    • 企業が継続的に取引をしている株主がどの程度いるのか、開示されることが好ましいのではないか。
  • 企業が上場する意義について意見が示された。
    • PBRが1割れの銘柄が多い資本市場において、経営者に対して「なぜ上場しているのか」について明確にしておくことが必要である。上場そのものが目的化しており、結果として、いわゆる上場ゴール狙いの企業やゾンビ企業が多い。
    • 投資家に帰責する面もあり、投資家がそのような企業をインデックスに使っていることも問題である。
  • リスクの捉え方に関する違いについて意見が示された。
    • 海外投資家や長期投資家は、企業がリスクや問題点を認識していることを評価する。他方、日本の投資家に対して解決策なしにリスクや問題点に触れると、「解決策は何か」を問われ、答えられないと投資家からマイナス評価を受けてしまうから、それなら開示しない方がましだと企業は感じている様に思われる。
    • 「リスクや問題点を認識することに意義がある」ということを投資家から企業へ発信しないと、解決策が無いなら出さない方が良い、と企業が考えてしまい、開示を控える動きに繋がってしまう。
    • 中長期的な観点から、ビジネスが先細りするリスクや事業機会が喪失するリスクについて、企業として、どのように認識しているか、企業開示を通じて発信することを投資家として期待している。
    • リスク認識そのものよりも、認識されているリスクが企業価値創造に関係あるか無いかと言う問題が投資家にとって重要である。
  • 企業価値創造におけるSDGsについて意見が示された。
    • 長期の価値創造ストーリーにおけるSDGsとして、短期的には選択的・重点的にSDGsに取り組みつつも、やはり、究極の狙いとして、日本の企業と投資家が一緒になってSDGsの実現に向けて、取り組んでいくことが必要なのではないか。

3. ガイダンス策定について

  • 求められる制度や仕組みの方向性について意見が示された。
    • 大企業や有名企業であっても、長期的な横ばい、もしくは下向きのトレンドになっている傾向があり、このような企業に対して、成長曲線の軌道に繋がる戦略を改めて考えてもらうことに繋がる制度や仕組みを期待している。
    • 持続的に企業価値を創出する企業によるインデックスなり、企業価値創出を促す仕組みは必要ではないか。その際、日本企業の良さを考慮することが望ましい。このような企業は人材や資本を惹きつけることができるようになる。
    • ESG等の非財務ファクターを資本市場の投資家が企業価値にプライスインするプロセスが必要である。
    • 企業を動かすため、企業評価上で差をつけ、企業が改善に動くインセンティブとなる制度や仕組みが必要ではないか。
  • 求められるガイダンスについて意見が示された。
    • 開示・対話に先進企業ほどしっかり取組んでいない企業に対して、より高次の開示・対話に向けた取組を促す仕組みが求められているのではないか。ただし、箸の上げ下げを示すものではなく、企業として自発的に考えることを促すものが良いのではないか。
    • 企業側が発信したい情報と投資家が知りたい情報にミスマッチがある。ミスマッチに対する解決策となるガイダンスが良いのではないか。
    • 海外発のフレームワーク等の仕組みは沢山あるものの、企業としてしっくりこない。日本企業の現状を踏まえて、且つ日本的な経営の良さを意識しつつ、日本発の仕組みを作ることは意義がある。
  • ガイダンスに対する懸念事項や留意事項について意見が示された。
    • ボリュームについて、長過ぎると読み手の関心を失うため、コンパクトにする必要がある。
    • SASBが広く受け入られる背景として、具体性が担保されていることが理由である。具体性と汎用性のバランスが重要である。
    • 企業が開示したくない情報を強制してしまうネガティブサイクルに繋がる可能性もあり、規制面の動向も意識しつつ、何かしらの工夫が必要である。

以上

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経済産業政策局 産業資金課

最終更新日:2017年4月5日
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