経済産業省
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持続的な価値創造に向けた投資のあり方検討会(第1回)‐議事要旨

日時:平成28年2月9日(火曜日)16時00分~18時00分
場所:経済産業省本館17階第1特別会議室

議題

  1. 持続的な価値創造に貢献する投資のあり方とはどのようなものか
  2. 企業(経営者)が、持続的な価値創造に向けて、様々な「資本」を有効活用し、未来に向けた投資判断を行うための方策は何か
  3. 投資家が、長期的な企業価値を判断する視点や評価軸は何か。そのために必要となる情報や対話のあり方はどのようなものか
  4. 上記を踏まえた企業と投資家の行動や対話、環境整備のあり方はどのようなものか

議事概要

上記議題について広く意見交換を行い、下記のような議論が行われた。

1.投資家のエンゲージメント

  • コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの施行の影響として、投資家のエンゲージメントに関するポジティブな変化が見られるとの認識が示された。
    • コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの施行の影響として、企業から「単なるバリュエーション(価値評価)にとどまらず、長期的な企業価値評価に繋がる対話が増えた」、「施設の見学会参加、施設の見学会に関する要望が増えた」、「事業の中身に加え、経営面の資本政策に関する質問が増えた」といったポジティブな意見が寄せられている。
  • これに対し、投資家の企業に対するエンゲージメントの形骸化を指摘する意見もあった。
    • 「政策保有株の取扱、配当、自社株買いに関する紋切り型の質問が増えたのではないか」、「スチュワードシップ活動上の社内手続きとして経営者との面談が必要だという要求がある」、「質問そのものが目的となっている投資家がいるのではないか」といったネガティブな声や、「短期的な投資リターンや利益拡大以外の手段によるROE改善を求める声が強くなった気がする」という企業からの意見があった。
    • 投資家の、企業に対するエンゲージメントが形骸化している兆候が見られる。企業や経営者との対話・面談、紋切り型の質問などを実施すること自体が目的化していないか。日本では企業風土や社会風潮のため、対話が形骸化しがちであり、その防止が重要と考える。単に配当政策や目標ROEに関する質問を用意し、それを企業に対して質問するだけでは「投資家としてのエンゲージメントを果たした」とは言えないのではないか。
    • 対話が促進されていくと、企業と投資家がお互いの形式要件を満たすための「対話の持ち合い」に流れるリスクがある。インベストメントチェーンにおいて、それぞれが責任と役割を果たす中で、お互いをチェックし合うことが必要である。
    • アセットオーナーとして、委託運用機関によるスチュワードシップ・コードに関する取組みの質(クオリティー)の評価に配慮している。クオリティーを評価する一つの方策として、発行体である企業に対するアンケートを行っている。

2.企業側の情報開示における取組み

  • また、日本における統合報告等の情報開示の現状について、情報過多であるという指摘と、その情報の投資家にとっての有益性に疑問を示す意見があった。
    • 日本企業で統合報告を出す企業は増加したものの、統合報告書上に情報が溢れすぎており、その企業が統合報告書で伝えたいメッセージが定かではない場合が多い。
    • 日本企業の場合、アニュアルレポートやCSR報告書といった情報開示が、企業内の別々の部門によってそれぞれ行われる傾向にある。このような体制でESGやCSRに関する取組みが、きちんと戦略に組み込まれ、企業価値向上に繋がるものとなるのだろうかという疑問がある。
    • 企業に関する情報量が過去より格段に増加しており、投資家側は情報の取捨選別をしなくてはならない。また、企業に関する情報量の増加に対して、投資家の情報処理能力が追い付いていない可能性もある。
  • これに対し、企業の社内体制整備の必要性や、ステークホルダーを意識した体制整備が重要であるとの見解が示された。
    • 当社の場合、かつては組織内に広報部とCSR部が存在し、それぞれアニュアルレポートとCSRレポートを作成していたが、「コーポレートコミュニケーション部」に統合した。統合報告書の作成において、コーポレートコミュニケーション部のみならず、経理部や株主対応している総務部も交えてワーキンググループを作って対応している。色々なステークホルダーを考慮した上で、どのような発信を企業から行うことが一番良いのか考える取組みを行っている。
    • 企業として情報発信するにあたって、米国型のチーフ・コミュニケーション・オフィサーのような機能を目指している。単なるスポークスパーソンではなく、統合報告書の記載内容(ビジネスモデル、事業戦略、経営計画等)について、エビデンスを以て、具体的に語れるレベルになる必要がある。企業としてこのような体制を整えなければ、投資家と質の高い対話を行うことは難しい。企業側は「開示の内容」や「対話のあり方」を議論する前に、人材や体制の整備が必要である。
    • 企業において情報発信を担う部門が、企業戦略を策定する事業部門等と協働する形が望まれていると感じている。統合報告を誰が担うのか、という機能の議論ではなく、情報発信を行う主体としてどうあるべきか、情報発信を担う部門として考える必要がある。
  • また、投資家にとって望ましい非財務情報とは、企業価値創造プロセス、あるいは企業戦略の説明を補強するものであるとの見解が示された。
    • 投資家が欲しい非財務情報・ESG情報は、企業価値創造プロセスや企業戦略の説明を補強するものである。また、企業戦略の進捗を示すKPI(Key Performance Indicator)も重要な要素である。
    • 情報開示や質の高い対話の推進をするのに、例えば全上場企業における改善を目指すのか、それとも変革に挑戦する200、300、500社といった相当数の会社だけでいいのではないかという戦略的選択肢がある。効果的で現実的なのは、ある種のモーメンタムが生まれるティッピングポイントに達する数を目指していくことではないか。その中で、投資家が共通してフラストレーションを抱えている事象の絞り込みや、明確な成果として「変化が起きた」という有効事例がもっと見えてこないといけないと考えている。
  • この他、非財務情報の開示については、フォーマット化など形式的なルールを作ることは問題ではないかとの指摘があった。
    • 非財務情報の開示について、非財務情報の性質上、フォーマットなど形式的なルールを作ることは問題ではないか。非財務情報の開示については、各社で取組みが異なって然るべきであり、企業間で比較できないものである。また、開示方法にこそ、企業や経営者の思想が表れているべきではないか。

3.投資家に求められる対話の姿勢

  • また、投資家に求められる対話の姿勢について、中長期投資家としての立場や考え方を企業側に伝え、視点を合わせることが重要であり、企業と投資家の双方にとって実のある対話、高い次元の対話ができることが望ましいとの意見が示された。
    • 投資家から見て企業による開示の外形標準や形式は整っているものの、そのクオリティーについて関心や問題意識がある場合、やはり企業と直接会って対話しないと確認できないと考えている。
    • 企業にとって「この投資家と話して良かった」と思われるような、実のある対話が必要である。
    • 中長期的な投資を前提とする投資家として、企業に対して、「持続的な利益成長と企業価値の向上を期待して投資をしている」ということを伝えた上で、企業との対話に臨んでいる。その結果、企業との視点がずれずに、維持することが出来ていると感じている。
    • 高いレベルの対話は、企業と投資家双方にも高い次元の意見を求められることになり、投資家と企業の真剣勝負になってくる。
    • アセットオーナーとして、運用機関に対して、企業の対話のツールとしてコーポレートガバナンス報告書や統合報告書をよく読んでエンゲージメントに臨むよう、メッセージを出していきたい。
  • また、セルサイドアナリストのあり方に関する議論が必要ではないかとの見解も示された。
    • 企業と投資家が変わろうとしているなか、企業と投資家を仲介する、証券会社のアナリストの責務は何なのか、変わる必要はないのか、そういった議論が必要なのではないか。証券会社の投資戦略部の出すレポートは、企業側も非常に参考になる内容が多く、アナリストの分析力との間にギャップを感じるときがある。また、欧米と比べても、日本のセルサイドアナリストの現状は遅れをとっていると感じる。
  • 他、統合報告など企業による情報開示が進んだ場合、敢えて会いに行かない、信頼することもエンゲージメントの一つの形ではないかとの見解も示された。
    • 企業から適切に情報が開示され、投資家に対して企業に聞くべきところが無く、経営に集中してほしいと感じられる場合には、投資家から会いにいかず、「信頼すること」も投資家のエンゲージメントの一つではないか。

4.非財務情報の投資判断における活用

  • 非財務情報の投資判断への活用に関して、非財務情報・ESG情報等は長期業績予想に活かされてこそ有用ではないかとの認識が示された。
    • 非財務情報を活用した投資のあり方は、非財務情報・ESG情報等を長期業績予想に活かして投資を行う「統合型」、および、業績予想一期または短期業績予想しか行わない「合体型」、計2種類に類型化できる。後者の「合体型」は短期しか業績予想を行わないため非財務情報・ESG情報等を入手してもその活用が難しく、前者の「統合型」が、持続的な価値創造に資する非財務情報・ESG情報の活用方法であると考える。
    • 投資家側の運用戦略も多様化している。「統合型」と「合体型」は、どちらが良い悪いではなくて、運用手法によって使い分けることが重要ではないか。
    • 機関投資家は、受託者責任の視点から、投資リターンの最大化という目的を果たすために、非財務情報やESG情報を評価・活用するべきである。
  • これに対し投資家から、そのパフォーマンスの優位性が不明である状況では、一般的なポートフォリオにおいて、投資判断に非財務情報・ESG情報等を考慮するのは難しいとの意見があった。
    • ESGを重視する会社への投資パフォーマンスに、中長期的な優位性があるかどうか不明であるため、ESGに特化したファンドではない一般的なポートフォリオにおいて、非財務情報を考慮していくことは難しい。その中で小型ファンドや専門ファンドを通じて、ESGのパフォーマンス優位性を評価することを試みている。
    • 投資家にとって、バランス・スコア・カードのように、非財務情報が企業戦略や財務指標とどのようにリンクして、最終的に企業価値の向上に繋がるのか、明確に道筋が記載されていないと、投資という観点では消化しにくい。

以上

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最終更新日:2016年4月14日
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