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持続的な価値創造に向けた投資のあり方検討会(第2回)‐議事要旨

日時:平成28年2月25日(木曜日)10時00分~12時30分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

議題

  1. 持続的な価値創造に貢献する投資のあり方とはどのようなものか
  2. 企業(経営者)が、持続的な価値創造に向けて、様々な「資本」を有効活用し、未来に向けた投資判断を行うための方策は何か
  3. 投資家が、長期的な企業価値を判断する視点や評価軸は何か。そのために必要となる情報や対話のあり方はどのようなものか
  4. 上記を踏まえた企業と投資家の行動や対話、環境整備のあり方はどのようなものか

議事概要

上記議題について広く意見交換を行い、下記のような議論が行われた。

1.企業による投資戦略

企業価値評価や企業戦略における企業が採り入れている評価指標や取組みについて情報共有があった。

  • 企業価値評価のKPIとしてROICを用いている。長期的な企業価値を高める要素は、ステークホルダーとの強固な信頼関係の構築、中期財務目標、利益配分の基本方針、資本政策の基本方針、これらが柱となる。利益配分と資本政策の基本方針を公表しているケースは日本ではまだ少ないのではないか。
  • 当社は、「中期経営目標達成に向けた投資計画」として、3カ年度のM&Aを含む成長投資、設備投資、研究開発費の投資額目標値を公表している。
  • 当社は、投資評価の内部プロセスとして、事業部門単位ではなく商品単位で細かく資本コストとリターンをベースに採算性をチェックし、不採算事業からの撤退に関する意思決定を行っている。
  • 人的資本、製造資本、財務資本といった各種資本に対する投資について、様々なKPIを用いて、当社の強みや価値創造の確度を説明するように心がけている。
  • 事業や製品といった従来の企業活動を通じて、ESG関連の課題解決に貢献し企業価値を高めるという考えが、当社の価値創造プロセスに反映されている。

企業戦略における無形資産に関する投資や取組みについて情報共有があった。

  • 持続的成長に向けた知的資産、人的資産、ブランドに対する投資に関する計画や実施状況について公開し、技術投資に対する財務リターンも示している。最近、価値創造に繋がるブランド強化策として、命名権に対して投資を行っている。
  • イノベーション促進に向けた取組みとしてCTOを設置した。CTOのミッションは、コア技術の強化、オープンイノベーションの推進、および先を見据えた新規技術の開発、これら3つである。CTOは技術と知財の両方を統括し、パテント戦略を推進している。
  • 加えて、当社は外国企業を買収によって従来はなかった技術を獲得した。また、外部技術、知見を技術開発に活かすため、コーポレート・ベンチャー・キャピタルの運営し、IoTやインダストリー4.0を重視していくことを表明した。
  • 人材に対する投資として、グローバル人材マネジメントの一環で、グローバル・コア・ポジションを日本人から現地人材へ切り替え始めている。まだ、十分ではないが、この取組みを加速し、優秀な現地人材を登用し、真のグローバルメーカーとなることを目指している。
  • この他、人材に対する投資として、新興国の大学に講座を設置しており、受講した学生に希望があれば、当社の工場に入社してもらっている。この取組みは生産技術管理の重要性を理解するメーカーの責務として、新興国で生産技術管理を担える人材を輩出したい、という考え方に基づいている。
  • 加えて、投資戦略やROICの重要性の理解の促進に向け、社員に向けて、Eラーニングや座学を実施している。

無形資産に対する投資促進に向けた、投資のあり方について意見があった。

  • 企業から投資家に対して投資機会をうまく表現・コミュニケーションすれば、企業と投資家の目線が揃い、質の高い対話が可能となる。そうすれば、人材、研究開発等に関する対話も活発になり、対話の高次元化、ひいては日本企業の発展に繋がるのではないか。

他に、ESG・無形資産等への投資がもたらす効果についての意見があった。

  • ESGや無形資産への投資の長期的な効果は、財務的リターン向上だけでなく、事業のstability向上やリスクの低減により資本コストが低下することによるパフォーマンス向上もあるのではないか。投資家にはこの点を理解いただきたいところ、企業としても上手にディスクローズをする工夫が必要である。

2.受託者責任

ESG等非財務ファクターに関する受託者責任について、米国の動きを中心に、海外の動向に関する情報共有があった。

  • 受託者責任に関する法規制として米国エリサ法(従業員退職所得保障法:Employee Retirement Income Security Act)があり、企業年金関係者に対する義務が定められている。ESG要素が財務的価値に対して直接に関係する場合は「財務的便益」として、ESG要素が重要な分析対象となる、という法解釈が米国労働省より示されている。

それに対して、持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、受託者責任の解釈について意見があった。

  • 投資行動における受託者責任や多事考慮の禁止は、国連のSDGsが示す価値観と異なる議論であり、このギャップを考えるべきである。ESGとは言っても「儲からないものはやらない」という価値判断や価値基準でいいのか、広い視座から、今一度考える必要があるのではないか。

また、海外における受託者責任の位置付けや取組みについて情報共有があった。

  • 豪州では受託者責任は注意義務(Duty of Care)と捉えている。投資行動に注意義務を課さなければならない。
  • 受託者責任に関して、英国の場合、ESGイコール財務課題だと考えている。実質的に金融・財務上の重要事項であれば、ESGも信託法の観点で捉えられるべきと認識している。
  • クライアントの年金基金からの明確・明示的にマンデートを受けて、ESGをあらゆる意思決定に取り込むことが義務化されている。クライアント自身も年金基金としての受託者責任があり、同様な義務を持っているのではないか。
  • 国により解釈は異なるものの、受託者責任として、リスク管理が要件に含まれるというのは根本で共通の部分でないか。デューデリジェンスを行い、企業価値向上に向けた適切なプロセス、長期的なリスク、持続的なドライバーを立証する必要がある。

3.投資家による投資先企業の評価

投資家が行う投資意思決定における評価指標や考慮事項について、投資家から情報共有があった。

  • 企業に対する投資判断においては、事業への資本配分、時間軸の長いプロジェクトに関し先行投資期間、投資回収の開始時期、投資回収規模、競合他社の状況、参入脅威、予測精度、複数プロジェクトの時間分散等が考慮される。企業がこれらの情報を投資家に対してうまく説明できれば、投資家としても投資しやすくなる。
  • 企業の投資活動を評価する方法として、「二倍増テスト」という考え方がある。ある企業の事業規模を2,3年で二倍にするというストレスをかけると、人材、R&D、設備投資等の経営資源のうち、その企業が確保すべき最も重要なものが明らかになる。企業が成長に向けて優先すべき経営資源に適切に先行投資していれば、正しい投資判断を行っていると評価できる。
  • ファンダメンタルの投資家としてより良い投資決定をするため、日本でも国外でも、企業価値の源泉となる知的資本、社会資本、企業価値、企業戦略、長期的な価値創造、社員の定着率、特許といった情報を入手、評価することが必要である。
  • 課題解決に資するソリューションに対する投資を通じ、戦略的な価値創造の連鎖を実現したいと考えている。ソリューションに対する投資は、金銭的リターンに寄与するにとどまらず、社会的な価値創造に資するものであるべきと考えている。
  • ESG等非財務ファクターを考慮せず、投資を行っている日本企業は多い。投資対象企業について、ESG等非財務ファクターに関する素養や能力を有しているのか、また、企業内プロセスや審査体制は整備されているのか、企業評価の一環として確認する必要がある。
  • インベストメント・チェーン上は、企業は持続的な価値創造の主体者、投資家は企業の資本面を支えるファシリテーターであり、企業が担う持続的価値の創造に対して、適切な議論や監督を行うことが求められると考えている。

4.非財務情報の開示のあり方

企業情報の開示に関する取組みや制度が係る問題点および今後のあり方について、投資家から意見があった。

  • 非財務情報については定型化したフレームワークの適用は難しく、ガイドライン程度に体裁や記載内容について、依拠出来るものが有効ではないか。
  • 米国SASBによる開示情報に関するガイドラインを用いて、どのように各資本等のKPIを設定して、投資家と対話をしていくべきかを内部で検討している。
  • 当社は、人材、ITセキュリティ・技術、インターネット・ショッピングモールにおける出店者に対する投資を重視している。統合報告等の定型的な枠にはまらず、開示しにくい。開示方法について、改善の余地がまだあると思っている。
  • 株主総会で扱われる情報は、株主にとって重要性が高く、株主総会に先立って開示されることにより、より良い意思決定に繋がると考えている。
  • ESG等非財務ファクターについては、Materialityの観点から、リスク・エクスポージャー、あるべき対策、リスクの低減、事業機会について、企業としてどのように把握、定量化、管理しているのか説明してほしい。

非財務情報の開示がもたらす効果やメリットについて意見があった。

  • 米国はじめ、社会の風潮として、環境面や社会面に取組んでいる企業を優先する流れが出てきており、ストレートに株価や事業成果に反映される社会になってきた。ESG等の取組みや開示が、具体的にプラス要素になる社会に変革してきているのではないか。
  • 非財務情報の開示により、長期投資家が無形リスクを理解でき、より良い投資決定に繋がる。長期的な時間軸で見ると、持続的な価値創造に繋がると考えている。

より良い企業情報の開示を普及促進していく為の取組みについて、海外投資家より意見があった。

  • 日本企業でもガバナンスに関する良い開示事例があり、それらを特定して、広く発信すべきである。ある日系製薬会社は、取締役メンバーの指名理由等について丁寧に開示しており、我々もこの取組みを好事例として、他の企業に対して積極的に紹介し勧めている。

5.日本におけるコーポレートガバナンス

日本特有のコーポレートガバナンスに関する特徴や問題について意見があった。

  • 当社は、CEO、CFO、CTOが三位一体の経営を実践する体制を敷いている。プロの経営者が少ないと言われる日本企業の場合、こういう役割分担をするチーム運営が向いているのでないか。
  • 日本の大企業は、社長やCEOの任期が6~8年だが、担当役員や部長の任期はだいたい2~3年となっているため、社長やCEOが長期のビジョンを持ち、担当役員や部長に伝わったとしても、実行性がなかなか担保出来ないのではないか。

日本特有の「株式の持ち合い」に対する問題意識や関心が示された。

  • 株式持合いや政策保有株式など、日本的なガバナンスの課題解決が重要であると考える。持合い株を売れば商売が無くなる、ということが事実であれば、外国人投資家が3割を保有している日本の株式市場やコーポレートガバナンスにとって忌々しき事態ではないか。
  • 日本の資本市場の魅力の鍵を握るのは、経営者側の株主を減らすことではないか。経営者側の株主が多数を占めると株主総会は無意味で形骸化したものとなり、東京市場に対する海外投資家からの評価や魅力はあがらないのではないか。
  • 日本企業の株式の持ち合いについては、長期的な価値創造の障害になっているか、推進力となっているのか、寄与しているのか、外国人投資家としては大きな関心事である。

以上

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