経済産業省
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持続的な価値創造に向けた投資のあり方検討会(第3回)‐議事要旨

日時:平成28年3月10日(木曜日)13時00分~15時00分
場所:経済産業省本館17階第2特別会議室

議題

  1. 持続的な価値創造に貢献する投資のあり方とはどのようなものか
  2. 企業(経営者)が、持続的な価値創造に向けて、様々な「資本」を有効活用し、未来に向けた投資判断を行うための方策は何か
  3. 投資家が、長期的な企業価値を判断する視点や評価軸は何か。そのために必要となる情報や対話のあり方はどのようなものか
  4. 上記を踏まえた企業と投資家の行動や対話、環境整備のあり方はどのようなものか

議事概要

上記議題について意見交換を行った。

1.日本と海外における「企業と投資家の対話」の違い

  • 企業と投資家の対話について、日本と海外の違いに関する見解が示された。
    • 米国の場合、長期投資家においては長期の企業価値分析方法が確立し、機関投資家と企業の間で時間軸において共通認識がある為、長期的な観点の質問や話題が中心となる対話が浸透している。また、米国の場合、「社会の持続可能性」と「企業の持続可能性」を峻別し企業が情報浩二し且つ長期投資家もそれを理解している。かつ長期投資家はアセットオーナーの要請から両面を分析することに慣れており、自社内でそのリサーチ要因を確保している。
    • 従って米国の場合、長期投資家がサステナビリティ・レポートやCSRレポートもしっかり読み込んでおり、高いレベルの対話に繋がっている。その為、米国では統合報告等のみに一元化し簡略化しようという議論にはならない。
    • 米国の場合、企業が投資家に対して「既に公開されている情報についてはいちいち聞かないでくれ(It is your responsibility)」とする対話における厳しい姿勢が見られる。
  • また、日本企業による対外的な情報発信方法の問題が提起された。
    • 公開情報が英語でない、就労環境の整備など日本企業にとっては当たり前と考えるようなことが開示されていない、といった理由から、日本企業は外国企業に比べて企業評価結果やESGスコアといった評価指標が高くなりにくい。正当に日本企業が評価される為にも、現状を踏まえて、情報発信方法を改善することが必要ではないか。
    • 日本企業は自社の強みや企業理念等を欧米企業のように積極的にアピールすべきである。企業価値のポテンシャルを全て出しきれておらず、グローバル投資家から誤解されている部分もあるのではないか。
    • 海外投資家から日本企業の情報開示について、「日本の資本市場は世界で一番情報が入手しにくい」と指摘されている。また、企業から情報を得つつリサーチをしようとしても、理解できない観衆もあり、コストと時間がかかり負担も大きくなってしまう為、日本市場ではなく他の海外資本市場に、より惹かれてしまうことになっている。

2.投資家と企業の情報隔壁

  • 投資家が企業の対話を阻む情報隔壁に関して見解が示された。
    • 機関投資家側も、企業同様に事業の現在価値評価、将来予測、成功確率、リスクを考慮するといった共通の考え方のもと、外部からBest Guessを行って分析しようとしているものの、「情報の非対称性」や「エージェンシー・コスト」によって、投資における資本コストや割引率という面で理論的には影響が生じてしまう。
    • 機関投資家として、情報の非対称性による情報隔壁を低くすべく、理論武装や企業から情報を出してもらうといった努力をしている。
  • これに対して、情報隔壁を解消する手段として、企業によるオープンな情報開示の必要性に関する意見があった。
    • 投資家の観点では、企業がより情報をオープンにすれば、情報の非対称性の低減に繋がる。これによって資本コストも低くすることが出来るため、企業のよりオープンな情報開示を期待する。

3.統合報告の現状

  • 統合報告書が投資家に読まれていない現状について情報共有と問題提起があった。
    • 大手の投資家から既に統合報告書に書いてあることについて質問を受け、「その情報は統合報告書に書いてあります」と投資家に対して説明したことがあった。まだ、統合報告書が読まれていないことを痛感し、もっと統合報告書が投資家等に読まれるものにしなければならない、という問題意識を抱くきっかけとなった。
  • また、投資家から企業評価や投資意思決定における統合報告書の利用状況について、実務の観点から情報共有があった。
    • バイサイドのアナリストの実務として、投資対象企業の統合報告書を全て読むことはせず、投資意思決定において、検討の俎上にある時に、判断に確信を持つ為に読む、という使い方をしている。
    • バイサイドのアナリストとして、統合報告書を読む対象は、長期投資の対象となる企業のみであり、業界構造や収益性が芳しくない場合はそもそも長期投資を検討する余地が無いという判断になる。そのような企業よりも、より有望な企業に対する分析にリソースを割きたいというのが実情である。
  • 統合報告書が読まれない原因について見解が示された。
    • 統合報告は、投資家やステークホルダーの様々なニーズに応えていく結果、内容が雑多なものとなっている。長く議論されている点ではあるが、読み手は誰なのかを整理することが必要である。
    • 統合報告書の読み手は投資家であるものの、SRIやESGのコミュニケーションに関しては、網羅性や専門性が必要であり、統合報告書のみではコミュニケーションしきれない為、他のコミュニケーションツールを用いていく必要がある。
  • これに対して、統合報告書がより受け入れられる為、企業が検討すべきポイントや必要な取組みについて意見があった。
    • 海外企業における優れた統合報告書においては、長期投資家に向け、企業の持続可能性を念頭に置いて作成されている。開示される指標の関連性と目標が明確である。また我が国では定性的でかつ曖昧な表現となっている項目もできる限り定量的指標に落とし込んでいる。これは経営手法における明晰性にもつながる問題である。
    • 日本の統合報告書は経営者の思想が鮮明に伝わってくる事例が多くない。一方で、海外の場合、会社の思想が伝わるものが日本よりも多い。想定する読み手が「読みたい」と思わせる方法は何であるのか、日本企業は考えるべきである。
    • 統合報告書等の開示は、ヘッジファンドやアクティビストから長期投資家まで様々な読み手がいる中、企業として、どういう投資家を惹きつけるのか明確にし、その対象に対して、インセンティブとなる情報を掲載していくべきである。
    • 統合報告書を作成する際、株主から意見やニーズをヒアリングし反映することで、毎年改善に繋げている。改善の結果、読み手は徐々に増えているものの、読まない投資家も未だに多くいる為、どうやったら読んでもらえるのか、という検討が必要である。
    • 社会から共感を得つつ、企業が成長し、社会に価値を創造していくといった、非財務ファクターを含めたコミュニケーション方法、事業目標、戦略を構築する際にSASBのガイドラインを参考としている。
    • アナリストとしては、非財務情報は、企業の中長期的な成長力、持続的な成長力の評価材料として使っており、企業も統合報告書の作成においては、このことを意識してほしいと思う。

4.非財務情報の開示方法

  • 非財務情報の開示におけるフォーマット等の定型の導入によって起こりうる「形骸化」に関する懸念が示された。
    • 日本の国民性を加味すると、非財務情報を開示する際のフォーマットを導入すると、資本市場における対話やエンゲージメントが形骸化してしまう恐れがある。特に日本の場合はこの傾向が強いことは留意すべきである。
  • 非財務情報の開示方法としての統合報告書のフォーマットについて、中堅企業や中小企業にとっての潜在的なニーズについて、見解が示された。
    • 立派な統合報告書を作成できるのは、資金的・資本的に余裕があり、リスクマネーの必要性が高くない大企業が大半である。よりリスクマネーを必要とする中堅企業や中小企業は、大企業のように統合報告書を作る余力は無く、このような中堅企業や中小企業にとっては、統合報告書のフォーマットのようなものも必要なのかもしれない。
  • 非財務ファクターの企業戦略に対する落とし込みの問題について見解が示された。
    • 事業計画や中期経営計画に対して、財務と非財務の両ファクターを落とし込む際、特に非財務ファクターについて、経営層がその内容に確信を得られるレベルに至らない未成熟なケースが多い。もっと事業計画や中期経営計画において、実感や実態がはっきりと見えるまで、財務と非財務の両ファクターをしっかり落とし込む必要がある。

5.投資判断における過去の取組みに対する評価

  • 将来予測のみならず「過去」の取組みに対する評価の重要性について、企業から見解が示された。
    • 事業ポートフォリオの入れ替え時に、過去の評価、現在の評価、加えて、将来のあるべき姿を一連の流れとして説明するようにしている。過去に対する評価が無いと、このような将来の取組みは語ることが出来ず、企業として過去の取組みを真摯に見つめ直して評価し、将来に繋げていくことは重要である。
    • 業績が目標に対して悪い場合、「なぜ達成できなかったのか」という事後評価を行うことに加え、「達成できなかったことに対して、こういった策を打っている」という姿勢や対策を明確に説明できないと、投資家の信頼は得られない。
  • それに対して、企業評価や投資判断における、企業の過去の取組みや評価の重要性について、投資家から見解が示された。
    • 過去の取組みに焦点を当てるか否かは、タイミングや状況によって異なるのではないか。例えば、長期計画の未達が考えられる場合に、「このような状況の中、会社側では、どのように当初の計画を位置付けているか」という話をすることがある。
    • 過去の失敗を含めたトラックレコードが企業内に整備されていれば、業績が悪くても、しっかり説明出来る為、資本コストが下がって評価が上がることに繋がり、投資家としても有りがたい。特に長期の投資をするロング・オンリーの投資家はこの傾向がある。
    • 過去のM&Aや固定資産投資に関する成功や失敗も含めた過去の取組みに対する評価について、企業から情報提供してもらうと同時に、投資家として問題提起することによって、将来の蓋然性を高めることに繋がる。

6.財務・非財務ファクター以外に企業評価において考慮すべき要素

  • 企業評価におけるDNAや規範(Discipline)の位置づけや評価について見解が示された。
    • ある自動車メーカーは創業時のDNAに立ち返って、「何をやるべきなのか」を考え直した上で戦略を打ち出して、結果的に素晴らしいパフォーマンスを出したが、財務情報や非財務情報とは異なる「経営のエッセンス」があるのではないか。
    • 企業戦略の礎として、最終的には企業のDNAや規範(Discipline)に行きつくのではないか。自動車メーカーの事例も、社長が有限なリソースの中、企業創業時の規範(Discipline)に立ち返って、企業がやるべきことを明確に整理したことが要因ではないか。
    • 企業戦略における非財務ファクターに対する取組みや、事業の優先度を検討する際に、企業のDNAという根本に立ち返って考えなくてはいけない。当社はDNAを徹底的に振り返って、その上で、事業を通じた貢献と成長により、事業拡大の起爆剤にしようと試みている。

7.日本と海外のアナリストの違い

  • アナリストの体制や分析方法に関して、日本と米国等海外の違いについて見解が示された。
    • 米国の場合、日本と比べてかならずしも企業自らの発信情報が豊潤であるわけでない。それに対しモザイク情報(周辺情報)は多く、優秀なアナリストはモザイク情報を活用して効果的に企業評価を行っており、企業の開示情報に過度に期待や依存をしていない。なお、モザイク情報とは例えばハイテク産業において日々更新される速報性があり優れた情報媒体の存在があるということである。またアナリスト・投資家にそれらに対する咀嚼能力があるということでもある。
    • 米国のアナリストの発言力や対話力が非常に強い。アナリストのカバレッジが専門領域ごとに分割されており、日本と比べ、厚みのある分析を行っている。米国のアナリストが複数人で担当する専門領域の範囲を、日本のアナリストの場合は1人で担当しなければならない点は考慮しなければならない。
  • 投資家における専門性を持ったアナリスト増員の取組みと現状について紹介があった。
    • 投資家の内部でも、高度化・専門化する分析領域に対応していく結果、領域別に専門性を持ったアナリストを設置するケースが増えているが、そのアナリスト間の横連携が課題であると認識している。
  • 日本のアナリストの質を向上させる為、資格制度の見直しに関する意見があった。
    • 対話力の高い米国ファンドマネジャーやバイサイドアナリストとも、日本企業は対話をしなければならないわけであるから、米国と日本のアナリストの分析力の差は深刻な問題となるかもしれない。日本の投資家もそれを認識しなければならない。日本のアナリストの質を向上させる為、日本のアナリスト資格制度について、試験科目や資格制度そのものを変えていくことを議論しても良いのではないか。

8.今後の論点案

  • これまでの検討会を踏まえ、今後更に議論すべきという論点案について提案がなされた。
    • 投資撤退(Divestment)が世界で話題になっている。受託者責任の観点からも議論が盛り上がっており、日本の投資家や企業から意見できると面白いのではないか。
    • 海外投資家を交えて、日本の資本市場や日本企業に関して、海外から見て悪い点はどこか、という議論をする機会はあっても良いのではないか。外国の長期投資家の定着と受入に向けて必要な取組みについても議論してはどうか。

以上

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最終更新日:2016年4月14日
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