経済産業省
文字サイズ変更

株主総会のあり方検討分科会(第5回)‐議事要旨

日時:平成27年1月23日(金曜日)15時00分~17時00分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

出席者

(株主総会のあり方検討分科会委員)
尾崎座長、岩崎委員(代理 尾嶋様)、岩田委員、江良委員、澤口委員、島田委員、高山委員、武井委員、田中委員、鶴岡委員、永池委員(代理 中川様)、中川委員、松井委員、松本委員、安井委員、山田(治)委員

議題

  1. 本分科会のテーマに関する全般的討議
    • 持続的な企業価値の創造に向けた企業と投資家との対話を促進する観点から、望ましい株主総会プロセスのあり方について
    • その他
  2. 個別テーマについての追加的検討等

議事概要

意見交換における主な発言は以下の通り。

  • 座長より、「基準日のあり方」「実質株主の取扱いおよび早期Web開示」「対話におけるセーフハーバー」に関する投げかけの後、委員間で議論。その際の概要は以下のとおり。

基準日のあり方

  • 株主総会開催日程について、現行の会社法上、一定の期間内に株主総会を開催すれば良く、決算期から3ヶ月以内に定時株主総会を開催しなければならないこという規制はない。
  • 現行の実務において、決算期から3ヶ月以内(3月決算会社の場合、6月末まで)に定時株主総会を開催しているのは、定時株主総会の議決権の基準日を決算期としていたため。定時株主総会の基準日を決算期としなければならないという規制もない。このため、決算期より後の日付を基準日とすれば、6月末以降に株主総会を開催することは可能と考えられる。
  • この点については、会社法(商法)の解釈としてはかなり前から指摘されてきており、『実務相談株式会社法』では、「利益の配当は必ず決算期現在の株主に対してしなければならないのではなく、また、定時株主総会の議決権を行使することができる者は決算期現在の株主でなければならないものではないから、決算期から株主総会までの期間は3ヶ月以内とする必要はない。」と記載されている。
  • 問題があるとすれば、証券取引法上(現・金融商品取引法)の規制、税法の規制が問題となる可能性があった。
  • かつて、証券取引法の規制で、有価証券報告書提出会社は決算期から3ヶ月以内に有価証券報告書を提出しなければならず、その中で、「定時株主総会に報告」または「その承認を受けた計算書類および事業報告」の添付が要求されていたため、決算期から3ヶ月以内に定時株主総会を開催する必要があった。しかし、現在では内閣府令が改められ、「有価証券報告書を定時株主総会前に提出する場合は、定時株主総会に報告しようとする計算書類・事業報告またはその承認を受けようとするもの」を添付すれば足りることになった。このため、現在では、金融商品取引法は、定時株主総会の開催日程の制約ではなくなっている。
  • 法人税法上、内国法人は決算期から3ヶ月以内に確定決算に基づく申告が義務付けられている。原則は決算日から2ヶ月以内であるが、法人税法上の75条の2の要件を満たす場合には、1ヶ月延長し3ヶ月以内に申告することができる。上場会社は会計監査人設置会社であるため、定款の定めに基づき会計監査人の無限定適性意見があること等の要件のもと、取締役会の決議によって計算書類を確定することが可能であるため、事実上は、法人税法の規制も定時株主総会の開催日程に対する制約にはならないと考えられる。
  • ただし、会計監査人の無限定適性意見が得られない場合や、監査役監査報告において会計監査報告が相当でない旨の個別意見を含む意見が付された場合、取締役会限りで計算書類を確定することができなくなる。この場合、定時株主総会で計算書類の承認を受けなければならないが、この場合、法人税法75条の2第1項の「やむを得ない事情があると認められる場合」に該当するかが問題となる。
  • 法人税法では、災害程度の例示しかない。例えば、取締役会で確定できない理由が、意図的な粉飾等が会計監査で露呈した場合に無限定適性意見が得られなかった場合は、恐らく、「やむを得ない事情があると認められる場合」にあたらないと考えられる。
  • 他方、取締役の善管注意義務違反に基づくものではなく、取締役は適性に計算書類を作成したと過失なく信じていたが、会計監査人等との意見の不一致により、適性意見を得られなかった場合は、「やむを得ない事情」ありと認める余地があると考えられる。
  • もっとも、監査役等との意見の不一致等により、会社法上、計算書類が確定しない場合においても、計算書類自体は作成されていることから、実務上、税務署に税務申告し納税した場合において、税務署側で受け入れないということがあるか考えた場合、受け入れないということはあまり考えられない。したがって、実際には、この問題は、さほど深刻ではなく、株主総会開催日に係る大きな障碍にならないのではないと考えられる。
  • 法制上の問題以外に、決算期を定時株主総会開催の基準日とすることについて、3ヶ月しかない問題と3ヶ月もあるという2つの問題がある。
  • 決算期から定時株主総会の開催日までが3ヶ月しかない問題とは、決算と監査に要する期間を考えると、定時株主総会の招集通知から総会日前の期間である招集期間が2~3週間程度になり、議案の精査、検討に十分な時間をとることができなくなるということである。
  • ただし、仮に招集期間を長くしても、議案の精査の程度が今とあまり変わらないのであれば、2~3週間から1ヶ月に伸ばしてもメリットが無いのではないか。この点については、総会実務がどのように変わるかに影響を受け、投資家がどのように行動することを予定しているかを問う必要がある。
  • 前回の本分科会で提示された、ACGAからのレターによると、議決権行使の期間が短いと、いわゆる「リスクベース」のアプローチをとる機関投資家に影響を与える。このような投資家は、数百の企業の株主総会のうち、リスクの高い40-50社に着目し、議案を精査するアプローチをとっている。問題を生じさせる可能性のある株主総会議案があるケースにおいては、投資家は企業に明確化を求めるが、通常は、明確化するための十分な時間がない。そのため、投資家は、議決権行使アドバイザーにより依存することになる。もう少し時間があれば、リスクの高い議案について、単にアドバイザーの意見に従うのではなく、議案を精査し、場合によっては企業と対話し議決権行使するという意見と考えられる。
  • 基準日から定時株主総会開催日までが、3ヶ月もあるという問題は、株主総会時点において既に株主でない者が議決権を行使し、株主総会開催日時点で株主である者が決算日において株主でなかったことを理由に議決権を行使できないことにある。本来、意思決定に利害を有するのは株主総会時点で株主である者であるが、利害を有しない者が議決権を行使することで株主総会において意思決定が不適切なものとなる可能性がある。この点について、どの程度深刻な問題であるかについて株主の意見を聞く必要がある。
  • ACGAのレターやGlobal Investorsのレターによると、議決権の基準日と総会までの期間は最大3週間以内とする必要があると提案されていることから、投資家側も期間が短い方が良いと考えているのではないか。
  • 改革の方向性について、議決権を持つ株主が招集通知を受け取ることが現在の実務であるが、この方法を維持しながら改革するという選択肢と、議決権を持つ株主と招集通知を受ける株主を別とすることを認めるという選択肢があり、前者はアメリカ型、後者はイギリス型と整理している。イギリス型は、イギリス以外のヨーロッパ諸国、例えば、フランスなどもイギリス型に近い。
  • アメリカ型の場合、3月決算を前提とすると、5月末を議決権の基準日として招集通知を発送し、7月中に定時株主総会を開催する。この場合、招集通知発送時点から定時株主総会開催日まで、1ヶ月以上の期間を確保でき、基準日から株主総会開催日までの期間は2ヶ月以内となる。5月末を基準日とすると、その時点から招集通知を発送するまでに時間がかかるが、5月末であれば総会議案は決まっていることから、議案のWeb開示を行うことで、議案の精査期間を2ヶ月程度確保することができる。
  • 抜本的に改革する場合、イギリス型が考えられる。イギリスでは、議決権の基準日は、招集通知は総会開始時間の48時間前となっている。このため、議決権を有する株主に招集通知を発送することができず、招集通知を発送する基準日と議決権行使の基準日が異なることとなる。
  • Global Investorsのレターでは、総会日と議決権の基準日は最大3週間前とすべきと提言しているが、3週間前を招集通知の基準日とすると、招集通知発送のための十分な期間が確保できないことから、招集通知の基準日と議決権行使の基準日は異なることを前提にしているのではないか。
  • 招集通知を受け取る株主と議決権を行使する株主は乖離しない方が良く、招集通知発送の基準日と議決権行使の基準日を短くすればするほど、乖離しないこととなる。招集通知の基準日と議決権行使の基準日を異なる日に設定した場合、実務を変えるだけでなく、法制も変えなければならないと考えられる。例えば、招集通知発送後に株主となった者が、株主総会資料を入手し、議決権行使を行うにはどうすれば良いかが問題となる。この場合、個別株主通知を会社に対してしたうえで、会社に請求して招集通知を入手するといったことが考えられる。これは、煩瑣な手続となる恐れがあるが、招集通知を電子提供する実務が浸透すれば、可能になるのではないか。
  • イギリス型の場合、議決権行使の基準日は、総会開始の48時間前のため、株主の議決権数が確定する前に議決権を行使させることになる。これにより、票の喪失(lost voting)という問題が起きることが指摘されている。
  • 例えば、ある株主が110個の議決権を行使したが、基準日時点の議決権数は100個しかないという事態が起こる。この場合、個人株主のように名義株主がイコール実質株主である場合、100個の議決権に対して100個の議決権を行使することから問題無いが、機関投資家が信託銀行等を通じて株式を保有し議決権を行使する場合、議決権の不統一行使が行われることがある。例えば、賛成に60票、反対に50票を行使した後、実際の議決権は100票しかない場合の処理が難しいという問題が生じている。
  • 招集通知を受けることが、「株主としての権利の行使」といえるかどうかに疑義があるとすれば、その点を明確化するための法改正が必要かも知れない。
  • 剰余金の配当の基準日についても、議決権の基準日と同様、決算期と一致させる必要はない。現在の実務の問題として、基準日時点において株主であった者が、総会日時点で株主でなくなった場合、株主総会日から3ヶ月も前の株主に配当を行い、その株主に支払う配当議案について議決権を行使させる結果、過剰な配当議案が承認され、会社の財産基盤を危うくする可能性がある。問題点として、「総会の意思決定の適切性が害される恐れがある」ということにまとめられる。
  • この問題について改革するとなると、配当の基準日と株主総会の議決権の基準日を揃えるか、別とするかという選択肢がある。諸外国の状況を見ると、必ずしも揃っているわけではないことから、揃えることは必ずしも論理必然的ではない。仮に揃えないとすると、例えばアメリカ式に5月末にする、または、イギリス式に総会の直前にするということも考えられる。これは、基準日の設定に関する現行実務を決算期からずらすというだけのため、比較的分かり易い。
  • 仮に、5月末を基準日として7月に配当決議を行う場合、現在の配当支払実務に3ヶ月程度かかるとすると、配当決議の直後に、配当を支払うことができないことになる。しかし、現行法下では、取締役会決議又は株主総会決議で配当の効力発生日を定めることとなっており、8月下旬でないと配当が支払えないのだとすれば、効力発生日も8月下旬にすれば問題ないと考えられる。
  • 配当の基準日を議決権の基準日と別にすることも考えられる。例えば、アメリカ式であれば、議決権の基準日を5月末、配当の基準日を定時株主総会が終わった後の7月末に設定する。
  • 現在の実務では、3月末日が配当の基準日であるため、実際の配当額が分からないうちに、配当額の予測に基づき、株式の売買が行われることになるが、配当基準日後に予測よりも多額の配当提案が決議されると、投資家が不測の損害を受ける可能性がある。
  • 配当決議後に配当基準日を設けると、配当の額が分かっていることから、不測の損害を被るという問題が無くなる。この配当基準日は、配当決議後に株式の売買を行う日数を確保する必要があることから、最低4営業日後以降に定めることが考えられる。
  • 投資家が、配当額の不確実な状態で取引を行うことに、どれほどのリスクを感じているかは確認しなければ分からないが、投資に付随する他の不確実性と同様に許容できると考えているなら、あえて配当基準日を議決権の基準日と別に、決議後に設ける必要はないかもしれない。
  • 以上の議論を前提とした場合、議決権の基準日も、配当の基準日も、基本的には会社法を変える必要はないと理解している。
  • (質問)仮に、議決権の基準日をイギリス型に変える場合、招集通知を受けることを「株主としての権利の行使」といえるかの疑義を明らかにするため、会社法を改正する必要があると理解してよいか。また、招集通知後に株主となった者が株主総会資料を入手する仕組み、あるいは議決権行使する仕組みを整えるため、電子化という形で対応する場合、法改正の必要性があるという理解で正しいか。
  • (回答)・会社法制を変えるとすれば、イギリス型にして議決権を行使する株主の確定とは別に、招集通知を受ける株主を確定する基準日を設定すること、および、招集通知の発送時点で株主でない者が議決権行使を行う際の手続きを定めることの2点において、立法が必要とされる可能性がある。
  • 仮に現在の会社法が何らかの制約となっていないのであれば、実務的にどのような価値判断に基づいて現在の運用になっているかという点に議論を集中すればよい。従前の実務では、決算期と議決権行使基準日ないし配当基準日を揃えているが、そこにどういう合理性があるかにつき、この場で確認、検討していけばよいのではないか。
  • (質問)分配可能額は、効力発生日の分配可能額を超えてはならないと考えられるが、先の効力発生日を設定すると、分配可能額を超えてしまうリスクがあるのではないか。
  • (回答)分配可能額規制は、効力発生時点を基準とすることから、決議直後に配当する場合と比べるとリスクがある。ただ、分配可能額計算は、基本的には期末日の計算書類における財務状況を元に算定されることとなり、その後に行われる損益取引は分配可能額規制に影響はなく、資本取引で影響が生じる程度と考えられる。このため、現実には、それほど大きなリスクは無いと考えられる。
  • (質問)会社法では剰余金の配当を行い、翌期末に損失が出る等で純資産が毀損した場合、欠損填補責任を負うことになるところ、定時株主総会決議に基づいて剰余金の配当がなされた場合には欠損填補責任は負わないこととされている。この点、現在の会社法は、例えば、8月又は10月に配当が行われることを想定していると考えられるか。
  • (回答)現行の会社法上、配当後、期末に欠損が生じる場合、役員が責任を負う可能性があるが、定時の配当の場合、明示的にその責任を排除している。
  • 3月決算の会社で、たとえば10月に配当を支払った場合、10月時点で期末に欠損が生じるかどうかは分かっている可能性がある。その一方、事業年度末日の剰余金を元に期末の分配可能利益が算定されることから、債権者は、その時点の剰余金を元に配当が行われることを想定することができる。このため、定時の配当がかなり遅い段階で行われた場合の債権者保護をどこまで図る必要があるのか、という価値判断は必要かもしれない。
  • 現行法下では、期末の欠損填補責任は、株主全員の同意があれば免除できることから、欠損填補責任は、債権者の利益のためにあるのものではないと考えられる。このため、債権者のために期末の欠損填補責任を負う必要はないのではないか。
  • 議決権行使基準日と配当基準日は論理的に一致する必要性はないが、基準日が分かれると、少なくとも株主宛の書類等の発送コストがかかるのではないか。
  • イギリス型を参考に、現行法上、株主総会の2日前を議決権行使の基準日にしても、株主を確定できず、それで総会を開催し決議を行っても良いか、株主総会に出席している人の議決権を全てカウントするか等、実務を考慮する必要がある。さらには、配当基準日を分けるとした場合、実務がワークするかどうかを落ち着いて考える必要がある。
  • 一方で、基準日自体を、3月末に設定する必要性があるかを検討することには実益があるのではないか。
  • 人事異動についても、社外取締役が増えてきた場合、6月の人事異動と経営陣の人事異動を一致させる必要もないのではないか。
  • 配当についても、委員会設置会社では既に5月に配当を行っており、定時総会の決議を経る必然性はなくなりつつあるなかで、ワークする範囲内で基準日をずらすというのは一つの考えではないか。
  • 配当と議決権の基準日を分けた場合、コストが増加するだろう。たとえば、印刷物の関係において、3月決算で6月の株主 総会を前提とすると、6月の株主総会後に、総会決議通知と配当関連書類を同時に発送するが、株主総会の開催日が7月以降にずれることで同時に送付できず、別々に行うこととなる可能性があり、発行会社の発送コストが増加することとなる。
  • Web開示をしても、狭義の招集通知は必要となると考えられることから、郵送のコストだけでも、大規模上場会社では数千万円単位の費用がかかり、完全に問題が解決するわけではない。
  • イギリス型で議決権行使の基準日を分けることにはハードルがあるが、一方で3月末に基準日がずっと鎮座していることが合理的なのか、基準日を動かすことが本当に実務上不可能なのかについては、検討する余地がある。

実質株主の取扱い及び早期Web開示

  • 選任議案のような、人事に関する情報は、大半の上場企業において決算短信に添付しており、議案発送以前に取締役会で決定した事項を開示していることが多い。最近では、期末近くに人事異動を行う会社も増えている。
  • 非財務情報の整理をして、ESGに係る情報を統合し、アニュアルレポートを統合レポートに移行する動きがある。実務的には、財務情報に係る実務を行い、その後、有報に係る実務を行い、最後に、ESGに係る整理を行っていることから、(3月決算の場合)統合レポートは夏過ぎから秋ぐらいに作成することが多い。全てを一気に、一定期間で先行して作成することは難しいことから、結果的に、リリースのタイミングをずらすということを考える必要が出てくる。
  • 非財務情報については、日本企業においても、グローバルな基準のダウ・ジョーンズのサステナビリティ・インデックス等に合わせていく仕組みを構築しつつあり、法的な部分より、投資家サイドの要望に応えて開示していくような姿勢に変わってきている。
  • 実質株主の出席について、基本方針を定めていない会社が圧倒的に多い。平成26年の調査では、基本方針を定めている会社のうち、A(出席は認め、質問、議決権等の株主権行使も認める)、B(出席は認め、質問、議決権等の株主権の行使は認めない)、C(出席を認めないが、別室での傍聴を許可)というように、何らかの形で株主総会を見せるという会社を足すと、18.1%となる。認めないケースのDは、16.8%であり、何らかの形で出席を認める会社が多いと考えられる。
  • 実際に実質株主から、出席の申し出があったケースは、平成26年の調査で37社と実態としては、少ない。
  • 申し出があった会社は、37社と少ないことから、実質株主の期待しているところ、何を目的としているかについては、分からない部分がある。出席する場合も、傍聴だけのケースもあれば、議決権行使まで行いたいというケースもあり、何を希望するかにより実務上の対応も異なってくる。
  • 見学のみを希望する場合でも、実質株主であることの証明・確認が事前に必要かと思われるが、見学であれば、会社によっては簡便な確認で済ませることも考えられる。
  • 一方で、実質株主が議決権行使を行うことを前提とする場合、実質株主であることの確認に加え、委任状も必要になると思われる。発行会社側の負担として、実質株主が事前に議決権を行使していると、当日出席分に振り替わることとなるため、事前行使を撤回するための減算処理が必要となる。このため、事前に議決権行使している場合は、行使した議決権の数、議案ごとの賛否内容を証する書面の提出し、減算する必要がある。
  • 実質株主が複数の口座で株式を保有している場合は、各口座について証明書類が必要となる。
  • 実質株主が総会に出席するということであれば、可能であれば事前に名義を顕名にすることも検討することで、いろいろな負担が少なくて済むのではないか。
  • 実質株主の出席、議決権行使を認めるかについては、IR、投資家に対するサービスの問題にとどまるものではなく、法的な問題が発生する。上場会社がその点について、どこまで意識しているか、多少懸念がある。
  • 実質株主が代理権を得ないで傍聴のみを希望する場合は、傍聴を認めるか否かは会社の裁量の問題。その反面、議決権行使は認めてはならないということになる。
  • これに対して、実質株主が代理人から議決権を受けて議決権行使する場合、会社法上は代理行使を認めなければならない。その際に、事実上、すべての上場会社は定款で議決権行使の代理人の資格を株主に限定している。ここでいう株主とは名義株主を指し、実質株主は株主として取り扱われないが、実質株主が名義株主から議決権を受け、議決権を行使しようとする場合、会社が代理行使を認めることが定款に抵触しないか、代理行使を認めないことが会社法に抵触しないかについて考慮する必要がある。
  • その際、実質株主が1株でも名義株主であるかどうかにより違いが生じる。1株でも名義株主であれば、代理人としての議決権資格を認めなければならない。これは、サービスの問題ではない。
  • 一方、定款で代理行使を株主に限っている場合において、実質株主が株式を1株も保有していない場合、代理人の資格がないことから、代理行使を認めてはならず、仮に認めると定款違反となる。
  • この点、会社法学において、定款条項を多少会社に都合よく解して、会社は代理人資格のない者による代理行使を認めることもできるし、認めないこともできるという解釈をしている学者もいるが、判例はそういう考え方ではなく、定款に抵触する場合には代理行使を認めてはならないというのが判例の立場であると理解している。
  • 定款の合理的解釈としてどう考えるかについて、判例は、代理人資格を株主に限定しているのは総会のかく乱防止を目的としていることから、例えば法人株主がその法人の使用人に代理権を与えるというのは総会のかく乱防止の恐れがないということで、それは定款の規定に抵触しないという解釈になっている。
  • したがって、一つの解釈は、実質株主が名義株主から代理権を得て議決権を行使するのは、実質株主は実質的には株主の利害を持っていることから、これが議決権を行使するというのは決して総会のかく乱になるものではないと考えるのであれば、そもそも定款の規定の適用外ということになる。そのような解釈はとり得ると考えるが、仮にそのような解釈をとるのであれば、名義株主が実質株主から代理権を得た場合には、そしてそれが証明される場合は、議決権の行使を認めなければならず、会社に裁量の余地はない。
  • 現状は法解釈が不明確なため、各社の対応が分かれることは仕方ないが、これは決してIRの充実度をどの程度測るかというような会社の裁量が広く認められることではない。
  • この問題について、作成する報告書では、法律問題でもあるということを意識した記載を行い、そのための議論をしなければならない。
  • コーポレートガバナンス・コード(原案)において、「信託銀行等に代わって」とあるが、委任状方式をとるということが書かれていると考えられる。コーポレートガバナンス・コード策定に係る有識者会議では、実質株主の出席を認めなければならないとも認めてはならないとも整理しておらず、法律判断に関する議論は行われていないと考えられる。
  • アメリカの取引所では、個人向けに議決権を行使する際のQ&Aが掲載されている。現在議論されている施策の中で、手続の周知の仕方についても工夫する必要がある。
  • 実質株主の参加を認めたい企業にとっては、やはり解釈論上の疑義を最初から抱えたままで対応するのはなかなか難しい。この点は、この検討会の中でどのような意見を出すかという話と関連するが、例えば以上の疑義を解決するための一つの方法として、企業の定款の書き方を再検討することが考えられる。
  • 議決権行使の代理人資格を制限する定款規定は、昭和30年代ぐらいにはすでに存在する古いものであり、まだ総会屋が跋扈していたころから使われている。そのため、株主総会への実質株主の参加を認めるか否かといった新たな状況を前提とした場合、古い定款の解釈で対応するというのは、無理があるように思われる。報告書に示す意見においても、そのような問題があるという指摘があってよいのではないか。
  • 問題を解決するための可能性としては、定款のあり方をもう一回見直すことが考えられる。この点については、全株懇での対応も検討してもらうことになるかもしれない。
  • 法的論点の整理は先ほどのご指摘のとおりである。
  • 株懇の雛型の定款の書き方とかまで変える話は、大きすぎると考えられる。ほとんどの機関投資家が、株主総会に出席したいとは言っていない。現在の定款の解釈の中で、株主総会の攪乱も考慮しつつ実務を行えば良いのではないか。
  • 名義株主により実質株主として証明された 者から議決権行使を求められた場合、どこまでこれを認めなければならないのか、その合理性について検討する必要がある。
  • 株主名簿に名義を記載していない機関投資家は、なぜ株主名簿に名義を記載できないのかという点、正当な理由の内容についてもちゃんと詰めて調べておく余地がある。株主名簿に載っていない人が、なぜ機関投資家なら出席出来るのか、個人株主との平仄をキチンと採らないと、かえって世の中が混乱するし実務は到底回らない。
  • 実質株主であることの証明書を求めるという件については、総会の何日前までに、実質株主が株主総会への出席・議決権行使の希望を出すことが必要かなどについて、会社側の実務的な負担も考慮しながら検討する必要がある。
  • おそらく、株懇を含めて何らか議論されると思うが、いつまでに、どの程度のものがまとまるか、会社側はじめ関係者の関心は高いと思う。
  • 実質株主からの総会出席の要請を受けた企業の割合が低いとの報告だが、一方で、前回の分科会でも議論されたACGAからの意見書にもあるように、機関投資家が株主総会に出席しようとしても、株主として認識されないため出席が困難な状況にあり、このような現状をふまえて実質株主が出席できるような対応を望むという声がある。
  • 程度の議論もあるが、現にこういうケースが生じた時にどう対応すべきか、ある意味でセーフハーバーや解釈でこれだけできるのかなど、問題提起はできるのではないか。
  • 例えば、コーポレートガバナンス・コードの補充原則を実現させようとする場合、詰めなければいけないアイテムや事項をここで提示しておくとよいのではないか。

対話におけるセーフハーバー

  • 株主との対話の観点から、前倒しで開示する等、いろいろな対話の方法があるのではないか。適時開示事項は決まった方式があり、前倒しの開示とであれば、セレクティブ・ディスクロージャーの問題も恐らく起きず、あまり問題がないと思われる。
  • 議案決定前に、どのような対話が許されるか、議案決定前にどのような対話を行うことが考えられるか、どのようなエンゲージメントがあるのかといった、望まれる形を示すことが考えられる。
  • 例えば、取締役候補議案の場合、社内取締役候補があると、候補者のうち社長に誰が就任するのかという話に繋がり、この結果、適時開示事項に繋がることから、経営者側がリスクと感じるのではないか。この結果、重要な議案について、平時の対話はできなくなるのではないか。
  • このため、「どこまで話してもよいか」「どこからは話してはいけないか」「どういう範囲でどういうルールであればセレクティブ・ディスクロージャーの問題にもならず、インサイドの問題にもならない」というセーフハーバー、一定のコンセンサスを持つ必要がある。このセーフハーバーを作った結果、株主と発行体との間の対話が担保されていくという進め方が必要ではないか。
  • スチュワードシップ・コードを策定した際に、今の法律上の論点整理を発表している。現状の法律の枠組みを超えたものではないが、今後の議論の参考になるのではないか。
  • どのような形でセーフハーバーをつくるかを考える場合、一つはインサイダーによる情報伝達が問題になる。この点については、既に、金融庁のQ&Aなどで一定程度明らかにされていることから、何を話すと違法な情報伝達になるのかについての参考になるものと考えられる。
  • 金商法では、インサイダーによる情報伝達に刑事責任を認めるに当たり、利益を得させる目的が必要とされており、目的犯になっている。そもそもこの規制が念頭に置いているのは、増資インサイダーであり、その対象はある程度クリアである。このことからすると、会社側と通常の投資家とのやりとりであれば、インサイダーの情報伝達の射程には入らない、といった議論の方向性があると思われる。
  • セーフハーバーを検討するにあたり、インサイダーの問題に加えて、株主公平原則への考慮が必要と考えられる。投資家サイドのニーズ等、いろいろな側面から議論をする価値があるのではないか。
  • スチュワードシップ・コードの検討会議における、インサイダー取引規制に関する議論の中で、エンゲージメントはかなりの部分、インサイダー情報を得なくてもできるという意見が多数を占めていた。むしろ、大量保有報告規制(5%基準)への抵触の問題が議論されていた。その結果、インサイダー取引との関係では、エンゲージメントに際して仮にインサイダー情報を得ることになった場合は、取引はしないという整理が行われた。
  • インサイダー取引規制は、根本的には開示がなければ取引をしてはならないという原則のため、情報を得ることそれ自体が違法というわけではない。会社法上の株主平等原則も、株主たる地位を利用して利益を得た場合には、平等原則違反あるいは利益供与という問題が出てくるが、単に会社との話し合いの中で他の株主が得ない情報を得たというだけの場合、その株主がほかの株主の得ない利益を得ているわけではないことから、ただちに株主平等原則違反とはならないのではないか。
  • 大量保有報告規制のほうが、投資家によっては大きな問題と考える人が多い。機関投資家が5%以上の株式取得した場合においても、重要提案行為を行わなければ、月2回程度の開示を行えば足りるが、重要提案行為は株主総会議案に限られず、かなり広い。
  • エンゲージメントをする投資家が5%以上持つこと場合もあるが、原則どおり5日以内の開示を要求されると、形式的共同保有者の保有分などを調べることになり、国際的に投資していると現実的に間に合わず、結果として、重要提案はできないということに繋がる。根本的な点として、日本法のもとでの機関投資家のための特例報告制度はかなり厳しく、特例に当たる場合でも月2回というかなり頻繁な開示を要求されるのであり、この開示規制を遵守しながら、加えて「5日以内の開示」まで要求する必要があるのか考えてはどうか。

その他

  • 基準日の設定に関連して、配当の受け取りタイミングということでは、長期の運用の視点で考えれば、6月末でも7月末でも配当を受け取ることができれば、特段問題はなく、新しい手順が問題なく行える状況になれば足りる。
  • 一方、投資信託においては、定期的なキャッシュ・フローを求められることが多いことから、配当金額を重要視している部分もあると考えられる。このため、配当の受け取りタイミングンについては、具体的な金融商品のスキームを考慮して、慎重に判断していく必要がある。
  • 中長期の投資家の立場からは、権利基準日と配当基準日がそろっていなければならないというニーズは無いと考えられる。
  • 実質株主である機関投資家の総会出席の議論に関連して、機関投資家が1株でも(1)株主名簿に載せない理由なり(2)載せられない理由を確認したい。実質株主である機関投資家に総会出席等を認めるルートの精査に当たって、先ほどの個人株主との平仄の観点から、実はこれまで巷でも詰められてこなかった重要な点だからである。
  • 海外の投資家が日本株に投資する際、既に出来上がったシステムの上で日本株を保有することになる。グローバルカストディアン、サブカストディアンという既に構築されたシステムに従って株を保有することから、名前を隠すことが目的ではなく、その制度を使った結果として、実質株主として名前が出てこない仕組みになっていると理解している。
  • 例えば、財産を保有する形でなく、あくまで指図をする形となる、委託者指図型投資信託であれば、実質株主と名義株主がずれることになる。外国もいろいろな投資規制に従って投資をしていることから、運用業者の中には実質的にその株主になれないということがあるのではないか。
  • 日本の機関投資家も株主名簿に出てこないことがある。恐らく既存の制度のスキームに従って株を保有した結果なのではないか。制度的、法律的な制限があるのかどうか、確認する必要がある。
  • 投資信託、投資顧問とも、名義を信託銀行とするスキームでビジネスを行っており、ルールとして、一般の機関投資家が顕名化できるかは、確認する必要がある。
  • 通常、機関投資家は複数のアカウントを持っているため、どのアカウントで表に出すのか、全てか、1つかという議論に繋がる。
  • 制度的理由、投資システムが名簿に実質株主の名前が記載されない前提になっていること、株主名簿に記載することで非効率性を生むこと等が株主名簿に名前を記載しない実質株主を生む要因となっていると考えられるが、そのような論点を整理すると、名義を一株も有しない、実質株主に対して、会社はどのように株主総会出席のための手続を行うか収斂できるのではないか。

以上

関連リンク

お問合せ先

経済産業政策局 企業会計室

 
 
最終更新日:2015年4月3日
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.