経済産業省
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株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会(第3回)‐議事要旨

日時:平成28年2月2日(火曜日)16時00分~18時00分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

出席委員

尾崎座長、石田委員、江良委員、大崎委員、小木曽委員、藏本委員、櫻井委員、澤口委員、高山委員、武井委員、永池委員、中川委員、野村委員、堀田委員、堀之内委員、古本委員(代理:村田様)、安井委員、弥永委員、山田委員

議題

  1. 集通知関係書類の電子提供について
  2. 諸外国における株主総会プロセスの電子化の現状について
  3. 株主総会関連の適切な基準日の設定について
  4. 自由討議

議事概要

意見交換における主な発言は以下の通り。

1. 招集通知関係書類の電子提供について

  • 本研究会において、先進国の中で、我が国のように郵送で全ての資料を送らなければいけない国は多くないということが明らかになったのではないか。企業の負担を重くしないよう、少なくとも定款で定めたような場合については電子的な方法で送付することを認めてよいという環境が整っているのではないか。
    情報が欲しい株主にとってみると、現在の会社法が要求している情報のレベルは、少な過ぎると感じることもあり、逆に会社側からみると、郵送費用や印刷費用を考えると、紙面の都合上制約せざるを得ない面があると思う。企業は、定形郵便で送ろうというインセンティブはどうしても働くため、紙ベースをやめることができれば、本当は開示したいと思ったことを開示できるのではないか。もちろん、必要な情報を削っているとは思っていないが、必要とまではいえなくても有用な情報を開示するインセンティブを損なわない制度は、やはり必要ではないか。特に、アニュアルレポートが分量的にも非常に多く開示されているのは、一人一人の株主に全部郵送しなければいけないという仕組みではないからこそ可能となっているのだと思う。
  • 電子的に書類を送る範囲を更に拡大してよい環境が整ってきているのではないかという全体観に関しては同意。格段にインターネットの普及が進み、その利便性が理解されている中で、インターネットをフルに活用するような制度を入れていくことは、原則的には正しい方向だと思う。
    電子化にあたって幾つか注意すべき点がある。まず、現状の制度のもとで、招集通知等の電子提供の採用がほとんど進んでいないことについて、電子提供に承諾しない株主を「面倒なので承諾していない」と決めつけるのは適当でなく、株主がみずからの意思で承諾していないという可能性もあるのではないか。すなわち、安易に、一定期間返事をしないことをもって電子提供に承諾したことにすることは、とりわけ個人株主の主体的な意思を極めて軽視した株主軽視の思想に基づく発想ではないか。
    前回の事務局資料において、アメリカの企業は、大口の個人株主には書類を郵送しているケースがあり、その目的は「議決権行使率の確保策」と書いてある。これはアメリカの企業も議決権を確実に行使してもらうためには郵送の方がよいと判断しているという現れではないか。それを前提にすると、単純に郵送をやめて電子化することは、企業は議決権を行使しなくても良いという価値判断しているという意味になるのではないか。
    検索の容易性など、電子化のさまざまなメリットが事務局資料で記載されているが、株主がそのメリットはすばらしいと思うのであれば、なぜ個別に電子通知に同意しないのか。そのようなメリットを理解できないほど個人投資家はリテラシーが低いと考えるのか、もしそのように考えるのであれば、そのようなリテラシーの低い人たちに強制的に電子送付してよいのか。
    以前、アメリカの個人投資家は、招集通知というものを受け取ったこともなければ議決権を行使したこともなく、基本的には全部ストリートネームによる保有で、ノミニーである証券会社が投票していたため、自ら個別議案への賛否を記入することができない世界が前提になっていた。その後、SEC規則が改正され、招集通知の実質株主への送付義務が導入され、個人株主は投票内容について詳しく知ることができるようになり、さらに、電子行使の環境(proxyvote.com等)が整備されたため、個別の議案について賛否を個人株主が表明しやすくなった。他方、日本は既に、はがきによる議決権行使を通じて賛否を表明できるため、米国とは出発点が全く違う。大事な点は、米国のように電子化したときに何かがadditionalに加わることであって、今までの利便性が失われるような制度にしたのでは、対話の促進につながらないのではないか。
    制度設計としては、一部の書類のみ電子化の対象外になる現行制度の合理性は余り感じられない。定款変更等々の手続を踏めば、送付すべき書類は全て電子化できるということで、制度としては構わない。他方、電子化は義務化ではなく、個人投資家との対話を大事にする会社であれば安易な電子化には走らないという前提で制度化を進める必要があるのではないか。
  • 電子化の世界的な流れを踏まえ、電子化の方が情報はより充実するという点に賛成。対話の促進という最終ゴールに向けて、電子化がどれだけ対話を促進できるのかという観点から積極的にとらえていくべきではないか。
    現状、株主が電子提供に同意していない理由は、決して嫌がっているのではなく、電子化のメリットがわかれば潜在的に同意する可能性はあるであろう。あるいは同意をとるというステップに気づいていないといった別の要素もあるのではないか。
    世の中の流れを見ても、マイナンバーの制度の電子私書箱、日本郵便の招集通知についての電子送付サービスといった話も出ているため、これらの流れも踏まえて議論すべき。
  • 個人投資家からは、電子化により情報を高度化してほしいという声が多く聞かれる。総じて電子化には歓迎の声が多いが、議決権行使については、電子投票は大変手間であり議決権行使書だけは紙で欲しいという人と、電子投票で問題ないという人に分かれる。他方、前者についても、米国のように議決権行使が一括サイト上で行うことが可能になれば、それで十分という声があった。
    デジタル弱者の問題について、最近はネット口座を開設するシニアの方も増えているため大分解消しているが、解決策の一つとして、口座を開いている証券会社からデジタルを選ぶか紙を選ぶかという申請ができるなど、証券会社のサポートを前提に解決できる点もあるのではないかという声があった。
  • 会社が対話促進のために電子化を活用するという意思さえあれば、電子化のメリットは活かせるのではないか。他方、現在安定均衡している世界から変更すればするほど、企業側はメリットを感じないため、電子化は進まない。現行制度からどうメリットが変化するのかという点を慎重に考える必要がある。
    現行制度は、2つの世界からできている。ルートAは、法律で電子化する範囲を決め切っている世界で、ルートBは株主の意向を踏まえて定款変更をすれば電子化できるという世界である。ルートAは、招集通知、参考書類、事業報告、計算書類、監査報告など、全ての書類を含めて電子化できる世界であるが、事前の個別承諾と事後の書面請求権という個別株主との個別対応が生じてしまうことから、それが故に2%程度の企業しか活用していない。ルートBは、多くの企業が利用しているが、電子化の対象は参考書類、事業報告、計算書類の「一部」となっており、定款変更は定足数の3分の2以上の賛成という高いレベルの多数決をするにも拘わらず、会社法が電子化できない範囲を決めている。
    今回の改正では、ルートBの利用率が高いという現実も踏まえ、先ずはルートBについて参考書類、事業報告、計算書類等の全部の電子化を定款で決められるように改正すべきではないか。会社法が電子化してはいけないと制度で決めている世界について、見直しが必要ではないか。少なくともルートBの書面請求権等の個別対応が発生しない世界を大切にすべきである。ルートBのベースにあるのは情報開示の拡充であり、本研究会の趣旨とも合うのではないかはないか。企業は、それが個別承諾であれ書面請求権であれ、各株主との個別対応が生じることになったら、総会実務の観点から電子化を推進する動機が失われる。
    なお、ルートAの書面請求権のある世界と、ルートBの書面請求権のない世界とを混線させたような制度改正は行うべきではない。「定款変更をすれば電子化を進められるが、書面請求権が付いてくる」といった制度改正は行うべきではない。
    書面投票制度は他の国にない日本の株主総会制度の大きな特徴であり、個人株主の議決権行使を損なわないという観点と株主総会の現場での本人確認という観点でも重要なので、議決権行使書を廃止する改正はすべきでないように思う。日本の場合は、海外よりも総会の定足数の要件や出席要件が厳しく、諸外国よりも総会の決議範囲が広いという面もある。
  • 電子提供を考える前提として、個人株主は議決権行使に対するインセンティブが一般的には低く、大多数の個人株主からみると、招集通知の封筒から議決権行使書を引き抜き、何も書かずにポストに入れるというアクション自体、大きなハードルがあり、経済合理性も必ずしもあるともいえない。
    したがって、現在の定足数や総会の決議要件を維持したまま制度を作る場合には、結果としてハードルが少しでも上がると議決権行使が低下するという形になるため、これも視野に入れる必要があるのではないか。
    また、中長期的にみると、対話促進の観点や情報提供の充実の観点も踏まえ、最終的には全プロセスの電子化が不可避ではないか。株主総会の電子提供に軸足を置いた研究会が開かれ、これだけの労力とコストが投下されるという機会は貴重なので、この機会を活用して1歩、2歩前に進むべき。
  • 会社の立場から言うと、株主からの要請のオプションが増え、会社との間で往復が増えれば増えるほど、オペレーションミスの発生する可能性が確率論としては必ず高くなる。株主との大事な対話の機会だと考えている会社からすると、起こしてはいけないミスであり、非常に緊張状態も高まる。
    さらに、決算を含めた監査の作業などもあるため、複雑性の最小化については考慮いただきたい。
    検討にあたっては、たとえばイギリスでは2人以上の株主の出席で定足数を充足可能であり、また、アメリカでは定足数は日本に近いが(元々はストリートネームによる株式保有が中心であった等、諸外国と比べて定足数及び総会決議の範囲等、総会の要件が違うことも考慮する必要があるのではないか。
  • 招集通知の電子化の関係について、電子化の導入・情報の充実という方向性については、大きな違和感はない。ただし、デジタルデバイドの問題は慎重に検討していただきたい。
    現在でも、東証に電話をかけて株価の照会をする個人投資家の方も存在する。
  • 電子化を促進するという方向で考慮いただくとしても、デジタルデバイドの問題との関係もあり、現行制度で認められている権利である書面請求権を株主から奪うようなことについては慎重に検討いただきたい。
    ルートA、ルートBというような整理あったが、現行制度は株主が事前に承諾していたからこそ一部について事後に書面請求をすることができなくなるとか、あるいは提供すべき情報が一部に限られているからこそ書面を提供する必要がなくなるとか、その全部を株主が書面請求できなくなるということについては一定の慎重な配慮がされていると理解している。書面請求権を定款自治というような範囲で決めて本当にいいのか、定款自治、多数決に委ねることで少数株主から書面を請求する権利を奪ってよいのかということを議論いただくことが重要なのではないか。
  • 招集通知は、便宜性が高い形で提供していただきたい。具体的には、Webでみなし開示された注記表等が東京証券取引所のウエブサイトに載っておらず、会社のウエブサイトにのみ掲載されている会社もある。そういう状態が出てくると、必要情報を集めるにも大変な労力がかかってしまうため、どういう電子化の形態をとるにしても、ここに行けば同時に全部必要な書類が取得できるというものが望ましい。

2. 総会プロセス全体の電子化・プラットフォームの必要性について

  • 個人株主にも、OB株主のように特定の銘柄のみをもっている方もいれば、ネット証券などにアカウントをつくっている極めてネット・リテラシーが高い方もいる。現状、個人投資家の電子投票がマイナーな理由は、これは機関投資家においても同様であるが、会社ごとで電子投票を採用する企業とそうでない企業がいたり、情報の開示場所やフォーマット等が統一されていないことにあるのではないか。定款自治という名のもとに会社ごとに個別対応をしている場合には、ユーザーサイドである株主からみると、極めて面倒な部分を押し付けられている面がある。事務局が海外事例を紹介してくれたように、関連情報などの一元化されたポータルあれば話は変わってくるのではないか。
    機関投資家の議案検討時間の拡大が必要な理由の1つは、非定型的な議案については、実態をよく考えて行使判断しなければいけないことにある。直近3月株主総会の会社でも、極めてクリティカルな株主提案が出ている企業もある。
    また、会社提案の場合であれば、提案者たる会社とのやり取りを通じ、この議案の真の目的は何なのか、その株主にとっての効果は何なのかという双方向の情報のやり取りが求められる。これはまさに高質な対話の中核である。高質な対話の下での適切な議決権行使を行うためには、Webを通じ、例えば個人株主が質問をすると、それに対するレスポンスを会社側から提供できるようなものがないと、株主総会一発勝負という形になってしまう。
    そういう意味では、Notice&Access制度ではコンピューター・リテラシーが低い方にはきちんとした制度的な担保を講ずる必要はあるものの、一方、Webを使って情報を高度化してほしいという個人株主のニーズも今後増えてくるであろう。これに対応できるだけのプラットフォームを、政策目的として構築していくことも中期的な展望としては必要ではないか。
  • 個人投資家からは、電子化により情報を高度化してほしいという声が多く聞かれる。総じて電子化には歓迎の声が多いが、議決権行使については、電子投票は大変手間であり議決権行使書だけは紙で欲しいという人と、電子投票で問題ないという人に分かれる。他方、前者についても、米国のように議決権行使が一括サイト上で行うことが可能になれば、それで十分という声があった【再掲】。
    さらに、総会情報の日時・場所をGoogleマップやカレンダーと同期することや、決議通知や配当通知も一括サイトから入手できることができれば非常に歓迎であるという声もあった。
    また、個人投資家は小口であり決議全体への影響に対する無力感を抱くことも多いため、議決権行使へのインセンティブが必要という声もあり、例えば、タイムリーな議決権行使の集計結果が株主に報告されるなど、企業と個人株主のコミュニケーションが増えるようなものがあると、投票への動機づけになるのではないかとの声もあった。懸念点としては、一括サイトや証券会社の会員サイトを活用する場合、個人情報等の情報漏えいが怖いという声があった。
    全ての書類を電子化し、株主総会の出席票をプリントアウトして持参することになると、プリントアウトが何枚もできてしまい、総会の現場で混乱するのではないかといった懸念も聞かれた。
    デジタル弱者の問題について、最近はネット口座を開設するシニアの方も増えているため大分解消しているが、解決策の一つとして、口座を開いている証券会社からデジタルを選ぶか紙を選ぶかという申請ができるなど、証券会社のサポートを前提に解決できる点もあるのではないかという声があった【再掲】。
  • 個人株主からの意見としてあった証券会社のサポートについて、現状、証券会社の窓口において株主にさまざまな情報提供をしているが、1人の株主の名前で複数の証券会社に口座を開いており、かつ同じ銘柄に投資される場合もあるため、株主の名寄せは証券会社の窓口のみではできないと聞いている。海外の事例であった代行機関がサービス提供をするプラットフォームを個別の証券会社が持つことには限界があるのではないか。
    一括プラットフォームがあるのとないのとでは、個人の方も含め、電子化の浸透度合い・スピード感が異なると思うため、大きなビジョンをもって検討すべきであり、高い目線・広い目線も必要ではないか。
  • プラットフォームにおける電子行使について強いニーズがあり、そのためには事務の一本化が重要だと思うので、その点については改めて強調したい。
  • 1つのウエブサイトで全ての銘柄の招集通知が一覧できることに加え、それらが英語で開示されていると、外国人投資家も直ちに検討を始められるため、最終的には一番望ましいのではないか。
    総会終了後の決議通知について、現状、有価証券報告書の臨時報告書にも掲載されているが、それらの情報が英語で、かつ一覧性のあるウエブサイトに掲載されていると、投資家も一覧で見れるためメリットがあるのではないか。

3. 株主総会の適切な日程設定について

  • 基準日について、株主に十分な検討時間を与えるという要求と、丁寧な監査や必要な情報を作成する時間の確保、これを両立させるためには、現在の決算日=基準日という状況では難しいのではないか。自分が公認会計士であった場合、総会スケジュールとの兼ね合いでミスを指摘しづらいインセンティブが働く可能性すらある。制度としては、通常の人が無理なくできるようなものである必要があり、タイムスケジュールが非常に詰まっている状況というのは、監査上の失敗をもたらすリスクが高まるのではないか。
  • 日本会計士協会としては、「当然しっかりやっている」といえるような環境整備に力を入れており、その一環として本日の事務局作成資料にも入れていただいている開示監査制度の一元化に関する提言も行っている。本日、永池委員より説明のあった全株懇の検討資料にも『後発事象等の問題に対応するための金商法と会社法の監査一元化』という形で盛り込んで戴いており、大変ありがたい。日本は諸外国と比べて総会開催日が非常に早い。監査報告書の提出時期で比較すると、日本は決算日後平均44日後であるのに対し、対話促進研究会報告書の基礎資料編のデータによれば、米国は約58日後、英国は約77日後、ドイツは約80日後となっており、監査報告書を提出するまでの期間が諸外国と比べて非常にタイトなスケジュールとなっている。
    この点からも先ほどの弥永委員の懸念に繋がることがわかる。日本では会社法と金融商品取引法という2つの制度があるが、この二つの法定開示書類を諸外国のように一元化し、信頼ある情報として適切に作成してチェックできるだけの期間をしっかりと確保する必要がある。監査人のみならず、計算書類等の作成者である会社にとっても、情報の信頼性確保という観点から十分な期間を確保する必要があるのではないか。
    また、投資家サイドからは、現状の議案検討期間は短過ぎであり、最低一カ月以上欲しいという要望がある。これらを充たすためには、6月末総会は非常にハードルが高いため、総会日程の柔軟化、すなわち総会を後ろ倒しによる7月以降の開催を前提に考えないと成り立たない会社も多いはず。7月開催であれば、会社法の計算書類等と有価証券報告書を一元化し、最も充実した財務情報である有価証券報告書を株主総会の議決権行使のための資料として使うことができるタイミングで開示することも可能となる。
    先日、公認会計士協会の会員(会計士)に対し、コーポレートガバナンス・コードに関する担当会社の取組に関するアンケートを実施。その質問の一つに、「総会の後ろ倒しを検討している会社はありますか」という質問を入れたところ、有効回答167名のうち、6名の会員から「検討している会社がある」という回答があり、基準日変更に関する流れも徐々に出てきているのではないかと考えている。各社において、総会の後ろ倒しが進む方向で検討が進むことを期待する。
  • 本研究会に対する海外機関投資家の関心や期待は非常に高いものがある。この研究会の議論もそうだが、この議論も踏まえて先般株懇の方々が、グローバル投資家の総会出席に関するガイドラインを日本語で出し、同時にすぐ英語で発表した。その内容は多くの主要な機関投資家や海外機関投資家団体の間で読まれているということを確認している。
    また、決算日から総会日までの期間は、欧米やアジアと比べても日本は非常に短いという現実があり、それは招集通知の早期発送や早期Web開示、さらには電子行使プラットフォームを活用したとしても十分な議案検討機関の確保には限界があるということを考えると、基準日の問題にはどうしても触れざるを得ない状況にあることも、海外の機関投資家は認識している。
    この点について、海外機関投資家団体(ACGA)は、「私たちは、基準日をもっと遅く設定することにより、総会が開催される時期を4ヵ月超等に拡大することが可能になるという案を支持している」と明確に述べている。
    基準日を変更する際の企業のコスト負担増の問題について、長期運用の海外機関投資家サイドの意見は、企業の立場のみならず、株主の立場を考えてほしいというものである。すなわち、基準日の変更に関するコストが発生しても、株主にとって基準日を変更することによる議案検討期間の拡大のメリットの方が大きいため、コストをかけても基準日を変更してほしいという意見である。
  • 機関投資家の議案検討時間の拡大が必要な理由の1つは、日本再興戦略や2つのコードで求められているように、機関投資家は、外見的基準のみによる判断にならないよう、企業と株主が高質な対話をした上で実態に合わせた議決権行使を求められていることである。他方、ピーク時には1日200件も議決権行使する場合もあるため、日数が限られる中でミスをしないよう、ルールを簡単にし、数値で賛否がつくようなやり方を安全策として選びがちになる。従って、検討期間が拡大すれば処理にかかる日数が分散されるため、もっと手の込んだプリンシプル・ベースのガイドラインに基づく行使ができるのではないか。
  • 個人株主からは、基準日に関して、総会が集中している現状を何とかしてほしいという声が大変強い。個人株主は、できるだけ多くの経営者の考えに直接触れ、投資判断に役立てたいと思っているが、株主総会の集中により、その機会が限定されてしまうという声が多い。ネット中継などによって解消できる面もあるが、リアルタイムのネット中継だと、結局同じことであり、いつでも好きなときに総会のネット動画がみられるような仕組みがあれば、ある程度補完はできるが、それにしても総会集中は避けて後ろ倒しにしてほしいという声が多い。
  • 基準日から総会日までの期間について、3カ月を4カ月にする会社法改正はやはり難しいのか。この選択肢のデメリットはもちろんエンプティーボーティングの懸念が広がる点だが、逆に言うとその点の調整だけですむ。4カ月という選択肢を定款で可能にすると、いろいろなバリエーションができるため、総会日の集中という事象には効果がある。集中日問題で、誰のために何を変えたいのかの目的次第であるが。
  • 株主提案権は、株主にとっては非常に重要な権利であるため、対話の有効性を高めるために活用できる面もあるが、株主総会の適切な日程を検討するに当たっては、株主総会日阻害要因になっているのではないか。
  • 投資家という観点からも、議案をきちんと精査するには時間も情報も必要という観点は全く同感。また、やはり、諸外国同様に、有価証券報告書を総会の議案判断に使いたいという思いは非常に強い。現在は有価証券報告書に記載されている情報を使うためには去年のものをチェックしており、鮮度が古い情報を使っている。よって、総会を後ろ倒しし、有価証券報告書を総会前に開示することが非常に重要ではないか。
    全国株懇連合会の基準日に関するプレゼンテーション資料について、投資家の観点から手伝えることがあれば何かフィードバックをしたいので、是非協力させていただきたい。
    この(基準日の)資料に記載されている内容で、投資家は意外とデメリットだと感じていない点もあると思っている。例えば、海外では決算日と基準日が異なることが一般的であるし、日本で決算日と基準日をずらすことについて社内でも議論したが、これは決めの問題であるという結論であった。そのような投資家の考え方をぜひ拾い上げていただき分析していただきたい。また、総会決議を要する配当金の支払いが遅くなるという話については、現状、剰余金の処分について定款変更で取締役会決議にすることについて否定的にとらえる投資家が非常に多い状況であるが、例えば総会の分散という話がセットになった場合であれば、取締役会決議に賛同するような投資家も増えてくるのではないかと思う。
  • 基準日の話を全国株懇連合会において検討いただいていることは非常にありがたい。メリット、デメリットそれぞれ挙がっているが、今回の日本の検討結果が海外の常識と異なってくるときに、なぜそうしたのかという意見はどうしても出てくるため、その場合にどういった説明ができるかといったことなども併せて検討いただくとよいのではないか。
  • 基準日の設定については、総会日の集中によって、我々も年間の約75%の事務量を6月単月で処理しており、約2万4000枚もの議決権行使書に賛否をつけている。さらにICJ電子行使プラットフォームでの行使件数が背後にあるため、それも合わせるとトータルで約5万件。これが6月の特定の週に集中するため、事務上も高い緊張感で対応しており、総会の開催日が分散化すると、事務の効率化という意味でもありがたい。グローバルカストディアンにおいても日本の6月は非常に忙しい時期と認識されている。

以上

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最終更新日:2016年3月9日
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