経済産業省
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日本の「稼ぐ力」創出研究会(第1回)‐議事要旨

日時:平成26年4月25日(金曜日)8時00分~10時00分
場所:経済産業省本館17階第1特別会議室

出席者

伊藤座長、伊藤委員、翁委員、加藤委員、川村委員、斉藤委員、土居委員、冨山委員、野坂委員、増田委員、山口委員、藤田委員代理

議題

日本の「稼ぐ力」創出のための問題意識について

議事概要

  • 事務局より、資料4に基づき説明がなされた後、委員間で行われた。討議概要については以下のとおり。なお、伊藤委員より、本研究会における議論とも関係が深いものとして、同委員が座長を努めるプロジェクトに関する資料について紹介があった。
  • 少子高齢化、特に地域における少子高齢化、アジア市場の成長やICTの発展等、20年前から騒がれているような問題が、いわゆる「失われた20年」の間、解決されないままとなっている。今は、これらを一気に動かし始めるチャンス。経済財政諮問会議ではマクロ経済の議論がなされているが、本研究会では、もっと経済の細部、企業行動まで落とし込んだような議論や地域の具体的な将来の繁栄の姿についての議論を始め、様々な議論をしていきたい。
  • グローバル経済圏とローカル経済圏という2つの経済圏に区分し、検討するという問題設定は適切。グローバル経済圏は企業レベルでは個々の規模は大きいが、むしろ雇用や賃金という観点からは、ローカル経済圏の方がスケールが大きい。ローカル経済圏においては、密度の経済性が規模の経済性を上回るため、グローバリゼーションによる空洞化問題は生じにくい。加えて労働集約的ビジネスが多いため、ローカル経済圏の域内市場産業では、人手不足が問題となり、賃金を上げ、人材を確保するということが重要となる。
    賃金を上げるためには、利益率を高めなければならず、労働生産性を向上させることが必要。日本の大半の域内市場産業の生産性は、米国に比べ約2分の1程度であると考えられ、向上の余地がある。政策的に置き去りにされてきた部分であるため、本研究会で分析してもらいたい。生産性向上のためのキーワードは「代謝」と「集約化」。また、足下の人手不足は団塊の世代の退出による影響が大きい。高齢者と女性の労働参加も重要。
  • 日本企業はイノベーション創出の潜在力が高いにも関わらず、持続的低収益性を有するというパラドックスが起きている。技術優位にある企業が、「先端的イノベーションの創出」という価値観を最優先し、「稼ぐ」ことへのこだわりが弱かった結果。日本の経営者はROEといった財務指標を軽視してきたのではないか。また、対外説明と対社内説明の際に、これらの財務指標を使い分けてきたのではないか。日本企業には、CFOといった人材が薄く、自律的なコーポレートガバナンスが効いていない状態にある。また、雇用を守るという意識から、新陳代謝の遅れを招いている面もある。
    日本の製品・サービス市場が消費者に鍛えられてきたことに比べ、日本の経営者は資本市場での投資家との対話をなおざりにしてきた。機関投資家とのエンゲージメントや統合報告といった仕組みを導入し、見えざる資産をステークホルダーに開示していくことが必要。また、欧米の投資家のように、パッシブ運用ではなくアクティブ運用を行うような投資が、もっと出てくる必要がある。
  • 新陳代謝に関しては特にリーマンショック以降、企業内での新陳代謝に努めて来ている。事業を捨てる際には、そこで働く人材の再教育が必要。日本では、公の場での職業教育があまり行われていないため、苦しいながらも企業内で再教育を進め、新陳代謝を進めてきた。利益についてはようやくスタートラインに立った段階で、これから欧米企業に追いついていこうというところ。一般に、デフレ経済の下、日本企業は不採算事業部門を持ち続け、欧米に取り残されてきた。経営者だけでなく従業員も含め、技術で世界一になりたいという意識はあっても、「稼ぐ」ことへの意識が足りない。投資家との対話は大変有用と実感しているため、当社は社内カンパニーの社長にまで、投資家への説明を義務づけている。また、企業内でベンチャーを育成することは難しく、大きな課題。
  • 日本企業は付加価値を向上できていないが付加価値の向上に必要な要素は2つ。1つは新しい技術に見合った新しいビジネスモデルの生み出し方。「ものづくり」という言葉に象徴されるように、日本は技術にのみ注力している。本研究会では、技術に見合うビジネスモデルの生み出し方について集中的に検討してはどうか。2つ目はマーケットの捉え方。日本では、個人レベルから国レベルに至るまで、市場ニーズから技術シーズに結びつけていく発想が不足している。
    これが付加価値を生み出せない原因。また、市場ニーズを押さえるときに、どういう軸でこれを捉えるのか、一段深めることが重要。例えば、グローバル市場を分析する際に、国別市場で分析するだけではなく、経済圏として市場横断的に分析して捉えること。このような発想はグローバル経済圏でもローカル経済圏でも共通して必要であり、ビジネスモデルを生み出すことにもつながる。
  • 対策が異なってくるため、グローバル経済圏とローカル経済圏という2つの経済圏に区分し、検討することが適切。また、「稼ぐ力」を検討するためには、議論の前提とする事実が重要。人口減少は避けられない事実であるため、人口急減を少しでも抑えられるよう政策的な対応をすべき。現状は約1、800ある市町村のうち、約500の市町村において、2040年、50年には人がいなくなっていると考えられる。人口の増加による無秩序な土地利用に対応するための都市計画法や農地法は不要となる。むしろ郊外から中央への移転、コンパクト化・効率化に対応することが必要となる。このような地理的分布をファクトとしておさえるべきであり、人口移動の分析をできるだけ正確に行っておくべき。
    また、東京と地方の所得格差も強まる。例えば、相続により地方から東京に金融資産が移動していくということも現象も起きる。また介護も、地域によってビジネスとして成り立つかどうかが分かれてくる。地域における需要と供給のバランスが問題。ローカル経済圏においては集約化が重要。地域は、ミニ東京ではなく、若者にとって魅力ある集積、機能を有することで「稼ぐ」場とならなければならない。
  • 人口減少は20年前から分かっている問題だが、地域では最近になってやっと現実の問題として捉えられてきた。しかしながら、企業誘致などの従来の発想から抜け出せていないのが実情。地域でもサンクコストとなっている不採算分野の切り捨てが必要。地域間の連携やネットワーク化が必要であるが、これらは地域の自主的な取組のみで実現することは困難。医療と介護の分野については、本当に「稼げる」のかという点がある。価格が公定されているという問題がある。また、高齢者は移動できないという現実の下、地域間の需給バランスをどう調整するのかという問題もある。社会保障負担は、法人税減税のみではまかないきれない程、重くなる。
  • 海用小型遠隔操作無人探査機「江戸っ子1号」プロジェクトには本研究会が目指す先のヒントがある。コーディネーターの役割を地域の金融機関が果たし、地域企業、大学、役所が関係し、産学官金の連携がなされた事例。産業金融の在り方を今後議論することとなるが、金融機関の役割の重要性を再認識すべき。製造業だけでなく、非製造業も含め、このような事例が増えていくための処方箋を考えていきたい。また、グローバル経済圏についてGNIに着目することは時代の要請。日本に魅力的な投資先が無ければ、日本への投資は増えない。立地競争力をいかに高めるか、ということであり、法人税の問題、対内直投の問題などを議論しなければならない。
  • GDP成長率について、労働投入がマイナスとなっていく中、全要素生産性を向上させることが重要。新陳代謝を促進するには、人材の再教育が必要となり、国としても人材の移動がスムーズに行われるよう考えていくことが必要。少子高齢化が進む中、医療・介護の分野は、雇用の観点からも大きな意味を持つ。ビジネスの担い手が株式会社でないことも多いが、いかにネットワーク化、連携を促して、生産性を高めていくか検討が必要。
    また、例えば、信用保証制度に関して、デフォルト率が高いところ程、利用率が高いという事実がある。責任共有制度の導入等がなされているが、中小企業がリスクにあったリターンを得るような在り方を検討することが必要。さらに、地域の企業が新しいビジネスモデルを展開していく際にどのように連携を取り、その地域において経営の基盤を作っていくのかという視点に立って、金融機関も知恵を絞る必要があり、その意味で金融機関の役割はますます重要になってきている。また、機関投資家によるエンゲージメント活動や、アメリカの退職年金によるリスクマネー供給機能に倣った企業年金制度、年金構造についても検討が必要。
  • 日本では、これまで企業価値の評価主体が不明瞭であったという問題がある。国家戦略や生産者側の考え方で企業価値が評価されてきた歴史がある。社員が経営者となる日本では、自分の会社が満足するだけ稼げばいいとなりがち。その結果、市場・株主や消費者の意識との乖離が進み、利益率が低下している。他方、ガバナンスを行うべき金融の側にも問題がある。金融機関は、国際競争力の高い企業ではなく、グループ企業中心に融資をしてきたという側面がある。投資信託や年金についてもパフォーマンスの向上が必要であり、プロフェッショナルな運用者の育成が重要。アメリカでは運用者に対し、販売会社からの独立性やERISA法における信任義務に基づく説明責任を厳しく求めており、それを背景に運用者は投資対象企業の稼ぐ力に厳しい姿勢で臨み、企業側もそれを経営に取り入れるというサイクルになっている。
    資本主義の下では、社会的責任の観点を含めても、ビジネスマンは「稼ぐ」ことが最も大事。中国では、国が主導し、効率の悪い大規模国有企業の縮小・民営化を進めようとしている。我が国では、民間の市場力を使ったコーポレートガバナンスの拡充により稼ぐ力の向上を図るべき。今後は、企業が海外で生産や製造を行うことにより生産性を向上させることは不可避。それを前提として、海外での稼ぎを国内に還流させるための構造をいかにつくるか、を検討すべき。
  • 我が国企業の収益性が低い理由は、デフレ化における低金利を甘受し、生産性を向上させるインセンティブがなかったため。今後、今以上に金利が下がることは考えがたく、生産性を向上させることが重要。「稼ぐ」よりも大事なことがあるという発想については、教育にも原因がある。資本主義には良くない面があるという点を誇張した教育や、そのような考え方を持つ教育者も多いのではないか。
    例えば、GNIの概念に対しても不労所得は問題といった風潮があるのではないか。高校や大学では、バランスシートやグローバルな企業活動について教え、ある程度の金融リテラシーを養うことが必要。本研究会の検討成果についても広く浸透させられるような取組があるとよい。ローカル経済圏については、医療と介護の分野は、政府依存を無くす方向で検討を進めるべき。担い手の多くである非営利法人のガバナンスを改善する取組も必要。また、人口移動を考慮することに賛成。企業誘致といった従来の発想ではなく、非効率分野の退出や近隣地域間連携を進めることが重要。これらを、単に示すだけでなく、地方自治体の職員や政治家に説得することが必要。
  • 「稼ぐ力」を議論するためには、どの指標を用いるかも重要。ボトムラインから株式コストを引いたものを付加価値とする指標を用いるべきでないか。「ものづくり」をビジネスモデルの観点から捉え直し、有形資産投資から無形資産投資へと重点を移すことが必要。日本では無形資産投資への投資が進まず、利益率が低下している。
  • 本研究会では、従来と異なることをやっていくことが必要と感じている。ビジョン、フィロソィーを深めていくということ。政策へのインプリケーションを詰めるということ。そして、現実に実行していくということをやっていきたい。

以上

問い合わせ先

経済産業政策局 産業再生課
電話:03-3501-1560
FAX:03-3501-0229

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最終更新日:2014年5月14日
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