経済産業省
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日本の「稼ぐ力」創出研究会(第2回)‐議事要旨

日時:平成26年5月20日(火曜日)15時00分~17時00分
場所:経済産業省本館17階第1特別会議室

出席者

伊藤座長、伊藤委員、翁委員、川村委員、國井委員、斉藤委員、冨山委員、野坂委員、野路委員、樋口委員、平野委員、増田委員、町野委員、山口委員

議題

稼ぐ力創出のための産業と金融の一体改革

議事概要

事務局より、資料3に基づき説明がなされた後、委員間で行われた討議概要については以下のとおり。

  • 事務局から提示された6つの事業モデルについて、社外取締役などを担当した経験から、いずれのモデルについても競争は厳しいと考えている。シャープな経営を継続することが必要で、そのためには、産業と金融の対話の充実が重要である。
    グローバル経済圏での競争力を高めるためには、物的資本ないし人的資本の集約化・効率化が鍵であり、事務局資料51ページのベンチマークとしては、ROEやROICといった資本効率が重要な指標になる。ROIC10%を割るような事業は将来への投資をできないので持続可能性がなく、このあたりの数字が1つのベンチマークかと思う。
    また、日本では、直接金融だけで企業のガバナンスをワークさせることは困難。特に、事業再生局面においては、間接金融の役割は決定的に重要。
    最後に、世界的には、会社法と金商法の開示はコンバージェンスしていいという流れのはず。日本でも、公法と私法を峻別する学問的ドグマと会社法は法務省、金商法は金融庁という役所のドグマを克服し、効率化すべき。
  • 日本企業の収益性には、(1)平均値が非常に低い(ROE:日本約4.9%。アメリカ約8%)、(2)ばらつきが小さい(日本はアメリカの10分の1以下)、(3)赤字企業の割合が非常に小さい(日本は約10%、アメリカは約30%)という3つの構造的特徴がある。これらの背景には、仮説だが、間接金融型のガバナンスが影響しているのではないかと思う。間接金融型のガバナンスには功罪があるが、銀行はガバナンスや収益性よりも、継続的な利払い能力に関心が向きがちである。
    次に、事務局資料では、日本企業がビジネスモデルを大胆に変革できなかったという論調であるが、少しポジティブにみると、総合商社、コンビニ、複合機等、世界に類例をみない日本独自のビジネスモデルが発展してきた。これらの共通項は、企業家精神とスピード、事業の目利きである。海外に学ぶことも重要だが、日本独自に発展した業種やビジネスモデルも視野に入れて議論すべきである。
  • 事務局資料34ページの図は、矢印の中に各プレーヤーがガバナンスというか、相手方のパフォーマンスをウォッチすることが含まれていることを意識すべき。GPIFの問題についても、賦課方式の下で運用する中で、国民は運用益を期待しているのか、それとも元本を確保すればよいと考えているのかが曖昧で、国民への情報開示の問題と共に、どういうコンセプトで年金を運用すべきかがGPIFにはっきり伝わっていないのではないか。
    ベンチャー企業の育成について、シリコンバレーやイスラエルのテルアビブのような事業・資金・テクノロジーが一体となったクラスターを作ることが必要。大学やベンチャーファンドが参画し、ベンチャリストが出てくるという絵を描くべき。米国のテキサスや中国とインドは既に着手している。
    また、資本の効率の追求が各所で出てくるが、まだまだ日本では会社は株主だけのものではないという意識があり、資本効率を軽視する風潮があると感じる。この認識を変えない限り、稼ぐ力は高まらない。この点、中国はCFOを中心にをしっかり教育しており、日本はこのままではアジアの中ですら通用しなくなる。企業の新陳代謝の面でも、ゾンビ企業を市場から退出させる際、日本では失業率の上昇という社会問題と一企業の収益性の問題が一緒に語られている。フリーキャッシュフローを意識した経営ができるよう、労働問題と企業収益との関係を整理して議論をする必要がある。
    最後に、株主総会が株主確定の基準日から開催まで3か月かかるという点について、法的にはフレキシブルな基準日設定が可能であるものの、基準日から株主確定の作業期間、招集通知発送までの期間、招集通知の発出から開催までの期間、それぞれが諸外国に比して長くなっているのが実情。様々な関係者全員が合意できる形で検討すべき。
  • 事務局のいう、「産業と金融の一体改革」という言葉には違和感がある。競争力の強化は、企業・産業自らの手で行われるべきであり、金融はあくまでそのサポート役にすぎない。金融も産業の1つではあるが、金融のみが一人歩きをするとリーマンショックのような問題になる。
    また、直接金融が間接金融より優れているとか、間接金融中心から直接金融中心の社会に移行するという発展論的な考え方を自分はとっていない。市場からの規律を基軸とする直接金融と、預金者の預金を一旦蓄えて融資する間接金融は、それぞれに別の機能を担うもの。間接金融においては、預金者保護という観点が重要。したがって、事務局資料34ページの図の矢印が、資本効率だけで結ばれているという考え方には賛同できない。直接・間接金融の機能を仮に一言で表現するなら「持続的成長」であろうが、間接金融は資本の論理ではないことは明らか。
    グローバルベンチマーキング(事務局資料50-51ページ)はおもしろいアプローチではあるが、金融機関の与信判断能力が失われる結果にもなりかねないので、官庁による業界に対する格付という形になってはならない。
    貸出利鞘の日米の差(事務局資料47-48ページ)は、市場の構造の問題であり、収益力の問題ではない。日本では預金と貸出の需給が崩れており、スプレッドがつぶれている。
    事務局資料68ページについて、銀行と証券会社の利益相反については、非常に厳格に管理されている。企業買収の場面等で総合金融サービスのニーズがあり、専門証券会社も含めて、それぞれ多様なソリューションを提供できる金融機関の存在は望ましい。
    最後に、事務局資料78ページについては、企業と投資家との対話は、ディスクロージャーの充実が大前提。日本の情報開示については、まだまだ工夫の余地があるのではないか。
  • 6つの事業モデルのうち、ソリューション型は今必要とされている一番大事なモデルである。産業サイドとしては、バリューチェーンのチェーン一つ一つの価値を高めると同時に、チェーン全体としての統合的な価値を創造することが重要。
    金融・国・行政サイドは、これからの成長が見込まれるところや小さくてもおもしろい事業にウェイトをかけていくべきである。地域で言えばアジア、産業分野で言えば製造・加工よりも素材・開発や消費・サービスの分野、企業規模で言えば大企業よりも中堅企業に力を入れるべき。
    金融について、アセットマネージャーの戦略的運用について、短期的運用よりも中長期的運用を根付かせてほしい。四半期開示の再検討は大賛成である。業界毎のIRを作成すれば、グローバルベンチマークとも結び付けて考えることができる。
  • 6つの事業モデルを倣うだけではなく、これらを組み合わせるなどして、次なる成功モデルを目指すことが肝要。
    企業の創業期、成長期、成熟期、停滞期、それぞれのステージで資金面や人材面の課題がある。ステージ毎の課題に応じて金融機関がサポートし、産業と金融の連携を図る必要がある。
    また、金融機関の目利き力が重要。企業の成長力の測り方は金融機関の独自性に委ねられるべきであり、国が統一的な基準を設けるのはおかしい。問題意識を共有した上で、それぞれの金融機関が独自に成長マネーを供給できる仕組みを構築することが大事。
  • グローバルと言うが、日本市場で稼いでいる企業が少ない。まず日本市場で稼がないといけない。そのためには、シェア重視に陥りがちな日本の文化を変えていくことが必要。また、オープンイノベーションが重要である。日本はICTが遅れている。ICTベンチャーが育っていないから、M&Aや提携により、世界の技術を取り込み、自社の商品価値を創造するというイノベーションが必要。
    次に、日本は中小・中堅・ベンチャー企業が多く、どうしてもここで稼ぐ必要がある。そのためには、ドイツのように国が中堅企業の技術開発を支援すべき。農業も林業も技術開発が進んでいない。技術開発なくしては、なかなか稼ぐ力は育たない。
    ベンチャーについては、成長マネーの供給不足を指摘する声がよく聞かれるが、それ以前の問題。そもそもベンチャー企業の数がなく、成長マネーを出す先がない。数を増やすためには、従来国の技術開発予算の配分が大企業に偏っているので、大学や中小企業にもっと配分するとともに、産官学の人材の流動化が重要。また、ベンチャー育成をよしとするような社会的理解を醸成すべき。
    最後に、企業と投資家の対話に関して、四半期に加え、上期下期、年間予想までやる必要はないのではないか。アメリカのように、四半期決算をきちっと行い、市場予想に対しての評価だけ行えば、開示としては十分である。
  • ベンチャーの促進を考える上で、テキサスのシリコンヒルズ(オースティン)は非常に参考になると思う。そこでは、技術開発を大学がしっかり行い、産学官の連携ができており、テキサス大学オースティン校のビジネススクールで人材育成が行われている。日本でもそれなりの体制を総合的に整えて、このようなエコシステムを作る必要がある。
  • 最近、経営層では稼ぐ力への意識が高まってきたと思うが、この意識を中間・末端の社員まで浸透させることが必要。
    不採算事業から撤退する際、一番の障害は人材の移動。人員の解雇ができないので、社内失業を抱えながら時間をかけて撤退するしかなく、非常に非効率。
    社外取締役や投資家との対話は、事業の持続的成長に役立つ。
    ベンチャー企業を支援するためには、大企業がもう少しリスクテイクすることも必要。日本の研究開発力はまだ力を残しており、この技術力を活かすには、ベンチャーが提起した新事業のリスクを誰かが飲み込まねばならず、それができるのは官庁ではなく大企業である。
  • 間接金融は、エクイティー性の成長マネーの最終的な提供者ではなく、提供するとしてもリエゾンとしての機能であろう。むしろ、銀行は、そのネットワークを生かしてスポンサー等のマッチングを行うなど、アドバイスのできる人材を育成して企業の成長をサポートすることが求められる。
    GPIFのポートフォリオの多様化には賛成。ただし、受給者に対する受託者責任を発揮しつつ積極的なエンゲージメント活動を行うなら、政府からの独立性・中立性、情報開示の在り方、ガバナンス等、GPIFをどのような組織にしていくのかという点とトータルで議論がなされるべき。
    IRAは日本でも導入すべき。アメリカでIRAの資産規模が伸びているのは、倒産した企業の従業員が入ってきているからであり、産業の新陳代謝を進めていくこととも整合的な制度ではないか。IRAのような器があれば若年層の投資や長期投資が進むのではないか。
  • 稼ぐ力を考えるにあたっては、社会慣習と人の力があると思う。社会慣習の面では、例えば、当社の例であるが、日本とドイツの間には賃金水準の差が大きくないが、商社の粗利益は、EUは30%、USAは20%、ASIAは10%である。人の力については、自分が何かやろうという人が減ったように感じる。特に、ゆとり世代以降は、学校から競争原理をなくしてしまった。社会に出てから他社や海外と競争しようにも、競争する力の源泉が失われてしまっているのではないか。
    ベンチャーへの資金供給については、ベンチャービジネスだけに補助するのではなく、大企業や中小企業であっても、新事業については補助の対象としてよいのではないか。事業があってこその研究開発だと思う。
    経済活性化に向けた私案だが、祭日を全部やめて、1週間単位での休みを強制してはどうか。現状、宿の予約は土日に集中するが、1週間単位の休みとすることで平日にも宿泊客を見込め、収益構造が変わる。
  • 本日の議論は、製造業等のグローバル経済圏で競争する企業の稼ぐ力を向上させるための話題が中心。他方、日本のGDPの約7割を占めるのは、サービス産業。グローバル経済圏で競争していない卸・小売業等において、日本全体の稼ぐ力を考える上では、製造業等と同じ議論が通用するのか。むしろ、消費者の集積効果など、需要を考慮した対策を重視して、これらの業種の稼ぐ力を議論する必要がある。
    また、産業の新陳代謝が重要だという問題提起がされているが、緻密な議論が必要であると思う。生産性が高い企業が参入し低い企業が退出すれば、全体の生産性が高まるという前提であるが、今の日本で実際に雇用や事務所を増やしているのは医療・介護であり、逆に製造業は圧倒的に廃業率が高い。今のままで、新陳代謝を高めることが稼ぐ力を高めることにつながるのか疑問がある。
  • グローバル企業のキーワードは新陳代謝である。新陳代謝のためには人材の流動化が必須であり、それを制度面で乗り越えないといけない。
    投資家との対話というのは制度的にできあがっているのかが気になっている。さらに、制度を作っても生かされていないと意味がない。実態として満足足りうるものになっているのかについてもみていくべきである。

以上

問い合わせ先

経済産業政策局 産業再生課
電話:03-3501-1560
FAX:03-3501-0229

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最終更新日:2014年6月5日
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