経済産業省
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日本の「稼ぐ力」創出研究会(第4回)‐議事要旨

日時:平成26年6月10日(月曜日)17時00分~19時00分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

出席者

伊藤座長、伊藤委員、翁委員、加藤委員、川村委員、國井委員、斉藤委員、土居委員、冨山委員、野坂委員、平野委員、増田委員、町野委員、山口委員

議題

雇用・人材、中間論点整理(案)

議事概要

事務局より、資料3に基づき説明がなされた後、委員間で行われた討議概要については以下のとおり。

  • 人材の議論についても、グローバルモードと、ローカルモードで分けて考える必要がある。例えば、グローバルな企業の正規雇用では流動性が低いが、雇用に占める割合は20%でしかない。一方で、残りの80%は、地域に根ざしたサービス業や中小企業で勤めている人で、流動性は非常に高い。労働生産性が明確に低いのはローカルの企業で、その生産性の向上は、GDPの増大に非常にポテンシャルがある。
    このローカル企業について言えば、まず、中小サービス業の集約化が重要。人手不足かつ労働力人口の減少が予想されている現時点においては、生産性の低い企業の退出に関する議論から逃げず、生産性の高い企業に事業や雇用を収れんさせる方向に政策を転換すべき。また、時間で働くジョブ型雇用の生産性をどう上げるかが重要。サービス産業では多くがこの形態の雇用であるが、現在の日本の雇用規制の中ではほとんど守られていない。不当解雇に対する保護等、この雇用形態の制度を確立すべき。加えて、企業には、社員教育を実施しても、その従業員が辞めて転職した場合、辞めた先に職業訓練をフリーライドされるというジレンマがある。共通的な技能については、公的に職業訓練する意義が大きい。
    最後に、外国人労働者については、彼らにも最低賃金法を適用し、”cheap labor”として扱わないようにすることが重要。そうでなければ、経営者が外国人労働者に依存しブラックな使い方をしてしまう恐れがあり、生産性の向上の為の努力が十分になされない可能性がある。
  • 有期雇用は、雇用の需給の調節弁として機能しているが、正規化を進めると、その機能が弱くなる。現状では、高齢層が増え、企業の海外生産比率の上昇により、国内の生産職や、国内の管理層も減っている等の変化があるが、そのような変化を踏まえ、年齢別、職種別、職能別のそれぞれについて調整弁がより有効に働くような制度づくりを行うべきではないか。
    これが機能するためには、日本人全体の意識を、雇用の安定を求める画一的な価値観から変えていく必要がある。そのためには、職業を意識した専門課程別の高等教育や、非正規雇用向けの資格認定制度などを複線型で作り、一番自分に向いたものを選択するという流れを作っていくことが大事。
  • 雇用形態を非正規雇用から正規雇用に変えるだけで生産性が上がるわけではないので、非正規雇用で働いている人の生産性を上げるためにどのような教育をしていくべきか、どういう支援をしていくべきかを、併せて考える必要がある。
    日本は新卒一括採用で、採用時に正規・非正規に分かれてしまう。非正規雇用になった場合、その後、正社員や多様な正社員になるというのは非常に難しいため、多様な正社員という雇用形態をどのように認めていくかを検討する必要がある。また、非正規を正規化したとしても、その人たちをどう教育していくかという議論がないと、生産性の向上とリンクしない。
    海外からの人材の受け入れについては、日本が選択されるような国になっているか危機感を持っている。日本で学んだ留学生が自国に戻った際に、日本流の教育や技術、あるいは日本の製品を現地で広めるという効果も期待できることから、日本に来てもらうために、日本でどのようなことを学ぶことができるのかを積極的にアピールしていくべきではないか。
  • 職種限定正社員や労働時間限定正社員というのは、主に女性を対象にしていると考えられるが、かつての総合職と一般職が、実質的には男女の区別となり、男女格差を招いたことに留意しつつ、これらの制度が結果的に男女格差を助長しないよう注意しなければならない。
    外国人労働者については、同一価値労働、同一賃金を実現することが重要。これは日本人の労働者についても言えるが、多重下請構造で下請になればなるほど同じ仕事をしても賃金が低いということでは、モチベーションの低下や、劣悪な労働環境の原因となり、それが主体性や技術力の強化の足かせになっている。
    日本は社会人教育や生涯教育が非常に弱いが、常に学んでいくことをベースにしたキャリア形成を考え、人材の上手な活用や、モチベーション、能力の向上を図るべき。
  • 社内外労働市場での人材活用に向けた人材マネジメントの必要性ということが資料3の24ページに記載されているが、社内と社外の間に存在する「企業グループ」という中間の労働市場についての視点が抜け落ちているのではないか。この中間の労働市場を人材マネジメントという視点からどのように積極的に、戦略的に活用するかで、稼ぐ力が大いに異なってくる。親会社と子会社間だけではなく、子会社間などで戦略的に人材を回して、経営人材、あるいは将来のグループを担っていく人材を育成・活用するという戦略的視点が必要ではないか。
  • 外国人労働者を活用することも重要だと思うが、非正規の正規雇用化やミドル層の活用のほうが優先度は高い。
    非正規雇用は、雇用の不安定さや低賃金が、結婚や出産の足かせとなっており、人口の減少や社会保障制度への悪影響を招いている。日本が抱えている一連の問題の根幹には、非正規化の行き過ぎた拡大がある。今は非常に人材不足感が強まっているので、非正規の労働者を正規化して抱え込むことは、従業員にとっても企業にとってもウイン・ウインの関係にあると思う。
    ミドル層については、資料3の19ページでは40歳から55歳となっているが、35歳ぐらいから捉えたほうが良いのではないか。また、産業構造の変化や企業の事業構造の変化に対応するため、ミスマッチにより十分に活かされていないミドル層の成長産業への転職を促したり、都市から地方への転職を促したりするような政策が必要ではないか。
  • 資料3の13ページにおいて仕事の成果で評価される働き方とあるが、産業界では20年ほど前に成果主義を導入したものの、ほとんどの企業で失敗した。仕事の成果は、関係する要素も多く、正確に測るのが難しいというのが失敗の原因である。
    次に、日本の場合は、人に対して賃金を支払うのであって、仕事に賃金を払うという発想がまだない。中国の賃金が安いと言われるが、安いのはいわゆる現場の労働者の賃金だけで、エンジニアの賃金は日本とあまり変わらない。日本は技術者を世界で一番安く使っている国であり、先進国の技術者が日本に自分の技術をもってきて、日本で成果を上げようという人は、ほとんどいないのではないか。人材の流動性や生産性を上げるという観点からも、仕事に対して賃金を払うというジョブ型や職業型の賃金構造に変えていくことが重要。
  • 多様な正社員を増やしていくため、非正規雇用の働き方だけではなく、いわゆる正社員の働き方も見直していくべき。そのために、ミドル層の機能の強化、働き方の柔軟化に取り組んでいかねばならない。特に、自発的なキャリア開発が大事で、ミドル層が自らの専門性を自覚し、継続的にキャリアを高めていくことが重要。また、海外を含めグループ会社の責任者としてミドル層の人材を派遣すれば、能力を向上させることができる。ミドル層の生産性をもっと向上させるという方向で、いろいろな手段を検討しなければならない。

続いて、事務局より、資料4に基づき説明がなされた後、委員間で討議が行われた。概要については以下のとおり。

  • まず、資料4の5ページ「本研究会で議論を深める事項」の「受託者責任」について、損害賠償責任よりまずは忠実義務や善管注意義務を記載する方が適切。ERISA法においても最善を尽くす限り責任を問われないという仕組みになっている。次に、同じ箇所に記載のあるCSAについて、考え方は反対ではないが実際には非常に難しいと思う。というのは、アナリストは、バイサイド、セルサイド、コンサルティングなど、様々な立場で活動しており、かつ証券会社の中ですらその貢献度を正確に評価することは本当に難しい。特に日本では、情報に対し金銭を支払う意識が低く、アナリスト業務のみではビジネスとして成り立たせ難い。また、6ページ「投資家と企業の対話の促進」に関する「当面具体化に向け取り組む事項」は是非進めていくべき。
    最後に、「雇用システム改革」に関連し、米国で日本人と米国人を雇って経営した経験から言えることは、終身雇用制度の下にある者と能力ベースの雇用の下にある者とを組み合わせて一緒に働いてもらい評価、管理するのは非常に難しいということである。
    金融については、金融機関の労働生産性を日米間で比較するデータが示され、日本の金融機関の労働生産性が低い、と指摘されることがある。しかし、米国の金融機関の現実は、1人で数億円を稼ぐプレーヤーがいる一方、週給制で働く秘書業務の職員がいる。こうした人には、上司が期待した以下のパフォーマンスだったという理由だけで退職金も支払われず、合法的に解雇される扱いを受けている。日本の金融機関では、同様の業務を務める者に、もっと手厚い扱いをしている。雇用の問題を日本で米英そのままにやると社会問題が出てくるので、提言にあるように「多様な正社員」を拡大していくべき。ノルウェーも同様だが、ドイツではシュレーダー首相が、解雇を自由化した際に、解雇された者が7割の給料を国が保証する条件として、トレーニングセンターに通うことを義務づけて、そこで新しい技術を身に着けて新しい仕事を見つけることを強制する仕組みを導入した。日本でも同様の改革を検討すべき時期に来ているのではないか。
  • 資料4の5ページ「直接金融の役割」は重要であり、是非とも進めて頂ければと思う。
    間接金融に関し、戦後の資金がタイトであった時代を例外として、産業の成長や、新陳代謝を促す機能が十分ではなかったのではないか、という自戒がある。特にリーマンショック以降は、雇用を、また、中小企業を、守るという大きな方向性の下に、金融円滑化法の制定などもなされてきた。大企業については、間接金融から直接金融による資金調達にシフトしたこともあり、企業がその時点で健全である限り、間接金融は資金を供給する以上の役割が難しくなった。
    「稼ぐ力」の創出に関し、間接金融が果たすことのできる役割は、目利き力と、非金融的サポートビジネスの2つであると考えている。まず、「グローバル経済圏」について、間接金融が、事業会社以上に目利き力を発揮することは難しいと言わざるを得ない。従来は、国内の類似企業との比較において目利きすることもできたが、より一層多様化し、加速するグローバル化の中で、事業会社以上の目利きを行うことは困難となっている。この点に鑑みても、同資料4ページ「当面具体化に向け取り組む事項」に記載のある「グローバルベンチマーキング」や「対話の場の設置」といった取組は非常に良いと考えている。ただし、これらの取組を進める上では、留意すべき点が2つあり、まずは、どのような情報を収集するか、という点。関係者がそれぞれの立場からの情報を持ち寄り、深みのある分析につなげることが重要。もう1つは、情報の利用方法であり、例えば、ランキングとして公表するようなことは適切でない。前述のとおり、移り変わりの激しい時代であるため、あくまでも参考データベースとしての活用が適切であると考えている。このような前提の下、施策により関係者で認識を一致した大きな方向感を後押しすることは重要。また、「グローバル経済圏」における非金融的サポートビジネス、いわゆるアドバイザリー業務についてであるが、我が国の間接金融は、海外金融機関との連携等を通じて、こうした能力が上がってきていると感じている。次に、「ローカル経済圏」について、金融円滑化のフェーズは終わり、次のフェーズに移っていると認識している。円滑化をないがしろにはしないが、産業の新陳代謝、すなわち、転業、廃業、再編をサポートしていくべきと考えている。我が国の間接金融は、世界に類を見ないコンサルテーション型バンキングを実施してきており、ビジネスマッチングを始めとして、引き続きサポートをしていきたい。
    同資料13ページ「関連施策」に記載されている「地域コミュニティの維持・安定に資する企業、NPO等へのファイナンスの仕組み等について検討」について、米国において、アファーマティブアクションとして融資における差別解消を目指し始まったCRAがCSRの方向に発展してきたと承知しているが、産・官・学のマッチングファンドによる資金供給について、公的金融機関、民間金融機関と事業者がCRAに近い形で検討していくのは良いことだと考える。
  • 雇用の議論について、「多様な正社員」の普及・拡大は重要。保育や介護に直面する人が多くなる中で、ライフコースに応じて柔軟な働き方を選択できる「多様な正社員」を普及・拡大することにより、非正規を正規化していく取り組みは是非進めて行くべき。また、外国人の活用に関して、事務局説明資料にもあったとおり、国家資格を有するにも関わらず働けないといった不整合な現実は、改革すべきと考える。アジアへの教育機会の提供を通じ、日本への人材の誘致をすべき。さらに、これからは、保障型の労働政策から積極的労働政策に転じ、就労支援により人材の流動性を向上させ、新陳代謝をサポートすべきである。
    中間論点整理案については、資料4の5ページ「本研究会で議論を深める事項」に確定拠出型拠出年金やNISAの普及促進について記載があるが、アメリカやドイツの例を参考に、これらをしっかりと見直していくことが重要。併せて、機関投資家によるエンゲージメントについても進めるべき。
    同資料12ページ「本研究会で議論を深める事項」の「保険者機能の強化」について、経営内容の「見える化」やベンチマーキングを通じて、保険者が質の高い医療を選べる仕組みを構築することが必要。また、高齢化に対応するという観点では、プライマリーケアの充実が重要。同資料13ページ「本研究会で議論を深める事項」に関して、各都道府県にある中小企業再生支援協議会が、学校法人や医療法人についても扱えるようにし、統合や連携を促していくことが重要。
  • 中間論点整理案について、それぞれの地域が横並びではなく、それぞれが置かれている立場の機能や能力を発揮して、それぞれの活路を見いだすという書きぶりは評価できる。
    地域経済の持続可能性確保は大事だがその文脈から甘えが出てくることには気をつけなければならない。真に持続可能で自律的であるためには、財政的支援に頼ってはならず、甘えを断ち切ることが重要。前鳥取県知事の片山さんが、発展途上国が援助から抜け出せず自立できない状況を表す「貧困の罠」という開発経済学の用語を使って、地域交付税に関する「貧困の罠」に言及されていたが、その通りだと思う。地域経済が自立可能性を確保するため、それぞれの地域で何ができるかという点について、今後更に議論を深める必要がある。
  • 「グローバル経済圏」について言及する。資料4の4ページにコーポレートガバナンスについて記載があるが、この中身は社外取締役についての議論がほとんどであった。しかしながら、本来のコーポレートガバナンスは他律でなく自律のストラクチャーであるべき。CEOが自律のための要となるが、日本においては特にCFOが機能していない。CFOになる人材が不足しており、中国が戦略的に育成しているような状況に鑑みても、CFO人材を充実すべき。
    同資料2ページに6つの価値創造パターンについて記載があるが、自分が「C群企業」と呼んでいる企業にも注目すべき。ここに、規模を縦軸にとり、収益性を横軸にとったグラフがあるとする。グラフの左上、規模が大きく収益性が低い、典型的には日本の大企業が該当する集団がA群企業。グラフの中央下、規模が小さく収益性が低い、典型的にはローカル企業が該当する集団がB群企業。グラフの右下、規模は小さいものの、収益性は高いという集団がC群企業である。C群企業は恐らく意図的に独自の事業領域を厳密に選択して規模を追い求めない。これらの企業の価値創造パターンも分析することが、「稼ぐ力」の創出との関係で重要なのではないかと考えている。
    資料4の2ページにはグローバルニッチトップ型が紹介されているが、トップシェアが収益性に結びつかない場合がある。逆浸透膜などの例があるが、高いシェアを取得していても商品がコモディティ化してしまうと収益性に結びつかない。コモディティ化しないための工夫が必要になってくる。
  • 雇用システム改革に関連し、ミドル層の人材活用が謳われているが、とりわけ重要なのは、女性の活用。特に、技術系の女性人材の育成が重要であり、海外では、様々な政策が講じられている。技術系の分野に向いている女性がポテンシャルを十分に発揮できる環境を整備することが必要。
  • 時代が進むにつれ人口が2千万、4千万と急減していく。地方は、若者の流出阻止、都市は少子化対策にもっと本気で取り組むことが必要と認識すべき。特に、東京は介護の面で対応が困難になってくるため、人口の逆流が必要となってくる。ビッグデータを活用した分析により、適切な産業支援を行っていくことが重要。
    資料4の8ページ「当面具体化に向け取り組む事項」にある「地域の企業と都市部の人材のマッチング」は良い指摘。
    同資料12ページ「本研究会で議論を深める事項」にある「新たな「法人」の類型の創設」については、産業競争力会議で議論となっている非営利法人カンパニー制度を一層進めたものと認識しており、大変興味深く、より効率的に進められるということであれば、極めて良い。
    日本の中で人を移動させるという政策は非常に取りづらいが、東京圏から地方に高齢者を中心に現役世代の人口も移していくことで、地方の医療・介護分野における余剰とバランスをとることが望ましい。人口移動を促すために、ふるさと納税の拡大やより進んだ二地域納税制度について議論すべき。
    また、これから労働力不足の時代に直面する中で、高齢者の活用について、支える側の高齢者についてもメッセージを出すことが重要。実際の介護現場でも、より親身になれる高齢者が活躍している。
  • ミクロの観点から、地域を支える担い手の位置づけについて議論することが必要。例えば、日本政策投資銀行が地域を支える広域プラットフォームを構築するというリリースをしていた。資料4の12ページ「本研究会で議論を深める事項」にある新法人類型についても、インフラまで巻き込んだものとして構想していくことが必要。
    また、マクロの観点から、地方自治体のヒエラルキーにまでしっかりと踏み込んだ形で、地方自治体の在り方についても議論することが必要。

以上

問い合わせ先

経済産業政策局 産業再生課
電話:03-3501-1560
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最終更新日:2014年7月7日
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