経済産業省
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日本の「稼ぐ力」創出研究会(第5回)‐議事要旨

日時:平成26年7月28日(月曜日)9時00分~11時30分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

出席者

伊藤座長、翁委員、加藤委員、川村委員、斉藤委員、土居委員、野坂委員、野路委員、山口委員
ゲストプレゼンテーター
新日鐵住金株式会社 三村相談役名誉会長
国際医療福祉大学 高橋教授
株式会社八十二銀行本店営業部 佐藤営業第二部長

議題

有識者からのプレゼンテーション

議事概要

事務局より、資料3に基づき説明がなされた後、3名のゲストプレゼンテーターより順次説明があった。その後、委員間で行われた討議概要については以下のとおり。(○は委員、●はゲストプレゼンテーターの発言。)

○ 地方の活性化や、地方での雇用の創出に関する自社の取組から、少しヒントをお話させていただきたい。
まず、農業や林業については、生産性の向上だけではなく、需要や消費を掘り起こす観点での研究開発が少ないと考えている。例えば、重油に代わるバイオマス発電や、有機肥料について、ドイツではフラウンホーファー研究所と地方の中小企業や大学が手を組んで各地で研究しているのに対し、日本ではそれらの研究開発に遅れている。マーケットの規模が小さく、大手企業は参入しにくいので、中小企業が取り組むことができるよう、地方大学や産総研が支援していくべき。
次に、本社を地方に移す企業に法人税を下げるなどして、企業の地方移転を促すことを提案する。企業が東京に集まる理由の一つは、官庁が東京にあること。ICTを活用することで、一部の機能を移転させることはできるのではないか。
定年後に地方に戻らない理由は、地方に雇用の場や活躍する場がないためである。工場勤務経験のあるエンジニアのOBは、生産技術を有するため、地方の中小企業に既に活躍の場が用意されているが、エンジニアでなかった人にはその場がない。その際、新たに「自然塾」など、子どもとふれあう場を提供することで、高齢者は健康寿命を延ばし、子どもたちは自然から生きる力を学ぶことができるのではないか。地方を活性化し、地方の中小企業から好循環を生むことで、少子化・高齢化の対策につなげることができると考えている。

○ 「まち・ひと・しごと創生本部」は今後、各種政治的課題を乗り越えるために、どのように司令塔機能を担うのか。特に、各省庁のとりまとめ、地方ごとの戦略の書き分けについてお伺いしたい。
また、東京の医療・介護を3分の2に減らすべく、国民の発想を転換させるための方策として、何が考えられるのか。
そして、ローカル線がバスへ転換する際に、地元からの理解が得られにくいと聞くが、長野のケースではどのように鉄道の問題に対処しているのか、お伺いしたい。

● 危機意識を共有したことで、消滅可能性を指摘された自治体を含め、人口減対策の様々なアイデアが生まれてきている。本部には、こうしたアイデアをヒアリングし、一つの政策に結びつけていただきたい。その実現のためにも、本部をバックアップし、プレッシャーをかけ続けるということが大事だと考えている。

● 医療と介護が過剰になれば、要介護の期間の長期化につながる。その反面、医療と介護が減ると、人手不足により施設での対応ができなくなるため、「ぴんぴんころり」型に近づけることができる。こうした事実を周知することが、まず1つ目に重要。
2つ目に重要なのは、社会の変化をうまく政策に取り入れることである。フランスでの延命治療の急減、日本での仲人付結婚式の消滅や胃瘻治療件数の減少など、とある考え方が口々に伝えられることで、自然と流れが大きく変わっていくという現象が生じる。老い方や死に方も、こうして国民レベルで十分変わり得るものであり、メディアも含め、事例を紹介していくことが必要ではないか。        

● アルピコグループも鉄道を保有しており、鉄道売上と今後発生する設備投資を試算した上で、存続、廃止の検討を十分に行った結果、企業努力により他事業の収益で補うことで何とか現在も維持できている。地元鉄道会社の他社の例では、一路線の廃止を表明したとき、住民による存続運動こそ起きたものの、結局乗客は増えず、廃線となった事例がある。代替バスのほうが便利だという声も聞かれるものの、そもそも路線バスは高速バスや観光バスと異なりもうからないのが現実であり、維持するには相当の企業努力が必要。
ここから先は私見だが、地方で鉄道事業を維持するのであれば、施設は地域主体が引き取り、運営を既存の事業者が担うなど、上下を分離して地域全体で支えることが必要ではないかと思う。

○ 多様な経験を経た、50代後半から65歳までの定年退職者と、ローカル経済が求める人材とをマッチングできるようなシニア労働市場を、行政主導でつくることがまず1つ目に重要だと考える。
2つ目に大事なのは、地元資源を活かした観光振興を行うに当たって、異業種間・省庁間・官民の間など、様々なレベルで連携し、「観光圏」をつくりあげることである。例えば、省庁間の連動によってビザの発給緩和措置が実現され、ASEAN地域からの観光客増につながったほか、観光関連の展示会の合同開催なども実現し始めている。こうした具体的な施策を、ローカル経済の振興につなげることが重要ではないか。

○ まず、選択する未来委員会において人口1億人の目標を設定するにあたって、どのような反応があったのか教えていただきたい。
次に、東京など大都市の周辺部の人たちを地方に移住させるインセンティブをどのように付与するのか、方法についてお考えを教えていただきたい。
また、地方の企業を再生する手段は、コングロマリット化に尽きるのか、お伺いしたい。 最後に、昨今否定されがちである「地方のミニ東京化」という現象についてコメントする。若い女性を地域の中で保持していくためにも、楽しみの場や消費の場を確保し、ある程度地域の都市へ集積することは避けられない。局所的に集積が起きると、その周辺市町村にお金がまわらなくなることを理由として、こうしたミニ東京化に反対の声があがるのかもしれないが、地域独自のライフスタイルの提案や観光資源を加えるなどすれば、それ自身はさほど問題ではないと考える。

● 出生率を国の目標として掲げることについては、国が個々の生活態度に干渉しているとして、明解なためらいがあったことは事実。他方、こうしたわかりやすい旗を掲げることによって協力を募ることが目的であると説明したところ、最後は反対無く了承いただくことができ、良かったと思っている。

● まず、東京と地方の生活実態を「見える化」することが非常に重要である。若者向けの結婚情報雑誌を作るだけでなく、高齢者向けの移住情報雑誌を作り、優れた移住先やお得な移住先の情報提供を行うなどすれば、すすんで移住する人が増えるのではないかと思う。
次に、地方が積極的に、受け皿となることを政策として打ち出すことが重要である。例えば、西日本は東日本に比べて医療従事者が多いが、東京から移住者を誘致することで、さらに住所地特例によって介護保険の費用も呼び込むことで、医療・介護の需要を創出することができる。こうした事例を発信し、ベンチマークが行われるようになると、人は自然と動き出すのではないか。

● 地方企業の一番の問題点は、経営者難である。若い人が地方から出て行ってしまう一方で、経験を積み、視野を広げた人材が戻ってこないという問題で悩んでいる企業が多い。
また、人という観点で言えば、業界の環境が厳しくても、優れた経営者がいれば企業は成り立つのであって、そうした経営者の元に、地域の企業をコングロマリット化することが望ましいが、現実的には難しさがある。例えば、観光地においても、やる気のある経営者の下に、周辺の温泉旅館が施設を賃貸することで面的再生を進めるというアイデアもあるが、やる気の低い経営者から協力を得るのは容易ではなく、実現は難しい。また、地方企業と金融機関の取引関係も様々で、一概に金融機関のデットガバナンスを効かせてコングロマリット化を進めるのも難しい面がある。

○ 50年後に1億人の人口を維持するにしても、今より6分の1の人口が減る以上、選択と集中を図る必要があるのではないかとの厳しい考え方を持っている。
1つ目は、若者の未婚率が上昇していること。男女のマッチングがうまくいっていないと考えるが、「選択する未来」委員会での議論をお伺いしたい。
2つ目は、医療・介護は賦課方式であって積み立て方式の財源調達でないため、高齢者の移住が促進されても、実際の給付の段階では出の方が多くなってしまうということ。財政を圧迫するのではないかという懸念があるが、見解をお伺いしたい。
最後にコメントとして、地方に本社を移転する企業に減税するという提案があったが、日本の地方自治体は企業から税金を得ることを肯定する傾向があり、多くの件で超過課税が実態となっている。地方税制についても、企業や地域経済に親和的な税制となるよう、議論すべきではないか。

● まず、結婚や出産は、若者が将来に対する不安を感じていることを背景に、減少している。例えば、結婚率の低下の原因は、非正規労働者の増加にあると考えられており、その所得を上げることが効果的な対策と考えられる。また、歴史的に見ても、経済が拡大しているときは出生率が上昇するという傾向がある。我々が20年間過ごしてきたデフレ経済では、将来に対する希望を膨らませるよりも、現状維持を最大限に活用することが重視されてきた。経済情勢が変わりつつある今、有効な施策を打ち出せれば、効果はあると思っている。
なお、もう一つの結婚率低下対策として、商工会議所でも、婚活に積極的に取組はじめている。

● 東京で、必要な施設を用意するのは難しいが、地方に既にある施設を有効活用することが大事。Uターンで移住してから、10年程度は普通に生活することを想定しているが、そのためには、団塊の世代が動き始めなければならない時機に来ている。地方に移った方が、東京で暮らすよりも全体では効用が高いということは、試算により示すことができるだろう。

● 私自身が東京からのUターン組だが、生活の質は明らかに地方の方が良い。ぜひ、地方の生活水準というものを都会の方々に見ていただくとともに、地方の方々には、人口が減るといかに大変かを見せることが大事である。

事務局:生活コストの「見える化」については、全市町村について、コスト面での東京都との比較を市町村間比較できるような、新たなパッケージを作ろうと思っている。具体的には、ビッグデータを活用して、産業構造や人・物の動き、付加価値の動きを表したいと考えており、医療や社会福祉も含め、係数を複数設定することで、何を頑張れば自分の市町村は伸びるか、といった分析もできるようにしたいと考えている。給与や生活費など、統計から得られる金銭的なコストに加えて、生活環境や家の大きさ、通勤時間などの非金銭的なコストについても、アンケート調査やそれに伴う金銭的評価の手法を用いて、数値的に換算した形でお示しできるように取り組み始めた。10月に、この研究会で再びローカルの議論があるので、どのような形で進めているか、報告させていただきたい。

○ 非常に期待している。その際、東京より恵まれているような地方圏の都市もあるということが分析で明らかになってくることは、直感に反しないが、他方でなぜ、引き続き東京への人口流入が続くのかということまで踏み込まないとならない。

○ 案外、産業もこれからは地方に、人を呼び込める余地がある気がしている。大きな生産工場は確かに海外に進出しているが、それら世界中の工場で働く人材に対する研修施設が必要になるなか、マザー工場に加え、こうした施設を地方に置くことで、地方に産業や人を呼べるのではないか。また、地方で働いてきた社員にとっては、東京への異動をショックと受け止める傾向がある。地方での暮らしが良いという話は、こうした事例からもうなずける。
寝たきりを続けさせる日本の福祉については疑問がある。根拠のない楽観論ではないが、良識の方向に少しずつ動いていくという考え方にも共感するところがあった。
アルピコグループのような事業再生方法は、続き得るものなのか、疑問である。企業の中で悪化した事業を抱えているときも、一旦借金を引き上げ、業績が改善してからそれを返済してもらうという手法で再生するのが一般的ではないか。

○ 婚姻率を上げていくことも重要だが、結婚したカップルに対する支援ということも重要。地方であれば仕事を提供すること、都市であれば保育環境の整備がそれに当たる。自治体のデータを出すという話があったが、育てやすさや住みやすさについても情報開示をすることで、足による投票が進むようにすべきではないか。
終末期医療の事前確認について、海外での環境整備はどのようになっているのか、保険者にも余地があるのか、お伺いしたい。
地方銀行の役割は非常に大きく、地方企業の売上げが減少する中で連携を強化していくことが大事だという点について、改めて確認することができた。一方で、アルピコグループの事例について、最終的なスポンサーをどのように探す前提で、またどの程度の期間を見込んで出資を行ったのか、こうした最終案件に銀行が出資するスタンスについてお伺いしたい。

○ 日本では、「利益」という言葉を使うと嫌われる傾向があるが、利益とGDPの成長こそが福祉の源泉であるという原点を、国民全員が認知する必要がある。成長主義の肯定ということを、改めて強調いただきたいと思う。
アメリカでは、地方の活性化や雇用の維持の方策を、地方自らが考えているのに対して、日本では中央に依存する傾向が強いと感じている。例えば、各県の大学が独自に地域活性化の案を作り、知事とともに提言するというのも一つの案である。
地方だけではなく国レベルでも、政策によって企業を誘致するという考えは重要。イギリスは、法人減税によって企業誘致に成功し、失業率は下がり、経済が非常に好調となっている。
アルピコグループの話にあったように、日本の地方には早期の再生に踏み切れば再建できる企業はたくさんある。ただし問題として、銀行が動こうとしても、保証機関(信用保証協会)が、税金を用いた機関であることを理由に、保証機関の債権を放棄しないことがある。そのため、再生にも手が付けられないゾンビ企業が増えてしまうという構造的な問題がある。他方、そうした場合であっても、企業・銀行双方に株主がいるのであるから、株主が企業・銀行それぞれの行動を追求し、判断することができるはず。そうしたサイクルがこの国に必要。
最後に、社会福祉制度のフリーライドについてコメントする。シンガポールや中国のように、国有企業が生み出す利益によって、国が税以外の収入を得ている国もあるが、日本は税のみに収入源が限定されている。つまり、税を払わずに、社会福祉の恩恵を受けることが可能となっているということ。そうしたフリーライドを見張り、相応の決断を下す役割は、国民自身にあるのではないか。

● 地方の活性化は地方自身が考えるべきとの考えは納得するが、少子化問題は、地方に限らず、国や地方、企業それぞれにできることがある。ではその中で、地方は何をすべきか。例えば横浜は、待機児童を解消したことが、横浜への人の移住を促したという。このように、進んだ取組をした自治体には人が集まるのであり、自治体同士の競争が始まっているということに注目すべきである。
需給ギャップの解消により、更新投資・能力増強投資の需要増など、期待できる動きが出てきた。企業の地方移転という考え自体には賛成だが、むしろこうした動きが、地方活性化にも役立つのではないかと考えている。

● 過去に二次医療圏を分析するツールをつくって公開し、レポートを出したことがあるが、問題は活用する側に、データを読み解く知識がないこと。費用はかかるが、データの解説を自動作成したり、映像化したりすること等によって、一般の人にもデータを見やすくする取組をしていただきたい。
また、経済産業省、厚生労働省、国土交通省、いずれも使っているデータを揃えることで、より比較・分析しやすくなるのではないかと思う。
事前指示書については、日本ではあまり普及しないように思う。個人の価値観に関わる範囲に国家権力が介入することを是としない考えもあり、導入の議論においては、そうした国内の雰囲気の変化が重要になると思われる。

● アルピコグループへの増資は、地元生活に密着した企業体であったための、極めて例外的な対応。特に真水の増資資金については、経営不振の中で十分な設備投資がなされていなかったという側面を踏まえ、業種柄安全を維持するために投入したものである。
出資時には、5年後の上場公開を目指したが、現時点ではまだ上場公開には至っていない。ただし、再生ファンドが投資した増資分については、地域の元気な企業が取得してイグジット済みである。

以上

問い合わせ先

経済産業政策局 産業再生課
電話:03-3501-1560
FAX:03-3501-0229

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最終更新日:2014年9月10日
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