経済産業省
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日本の「稼ぐ力」創出研究会(第7回)‐議事要旨

日時:平成26年10月24日(金曜日)9時00分~11時00分
場所:経済産業省本館17階第1特別会議室

出席者

伊藤座長、伊藤委員、翁委員、加藤委員、川村委員、國井委員、斉藤委員、土居委員、冨山委員、野坂委員、野路委員、樋口委員、町野委員、山口委員

議題

グローバル経済圏の稼ぐ力の創出について

議事概要

事務局より、資料3に基づき説明がなされた後、委員間で行われた討議概要については以下のとおり。

  • ビッグデータの解析は、企業経営と顧客本人あるいは社会にとって非常に重要。データの活用や流通に際し、利用目的の限定やプライバシーへの配慮をどうすべきか。これに関するガイドラインがはっきりしないと、ビッグデータを活用しようとする人も、安心して使えない。個人の遺伝子からその人の将来の能力を分析するというところまで話が進んでおり、よく議論しておくことが必要。
  • 私の会社でも、自動走行やインダストリー4.0のような取り組みを進めているが、使っているセンサやソフトウェアのほとんどは欧米製で、その開発の担い手は中堅企業やベンチャー企業である。日本は、相変わらず大手企業中心でセンサやデバイスを開発しており、それが事業化にうまくつながっていない。市場規模からして中堅企業、ベンチャー企業の技術開発を促進すべき。
    自社が生き残るためには、欧米企業の製品でも使わざるを得ないのが実情だが、これは足元の状況にすぎず、ここを見ていては日本はまた遅れてしまう。5年後、10年後を見据え、誰が何をやって、どんな形で研究開発を進めていくべきか、しっかりと考えることが重要。
  • 事務局がグローバルベンチマーキングに挙げた指標は、かゆいところに手が届いてない。
    パナソニックの再生を参考に、先進的企業はキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)等を指標としたキャッシュフロー経営に移行している。P/Lの指標とB/Sの指標だけでは不十分で、欧米企業がキャッシュをいかに効率的に運用してリターンに結びつけているかを見なければ、欧米企業と日本企業との本当の実力の差は見えてこない。
    また、P/Lの指標として配当性向を挙げているが、米国企業の場合、自社株買いを機動的に行っていることから、総還元性向というような、還元に関する株主への向き合い方を指標に据えたほうが適切ではないか。さらに、事業の新陳代謝度をあぶり出すような指標や赤字事業からのエグジットルールを評価する指標等を加えられれば、なおよい。
    ビッグデータ・AIについては、ICTをうまくビジネスモデルに組み込んだ会社や、膨大なPOSデータをうまく活用しているコンビニエンスストアといった事例が日本にもあるので、そこにも光を当てるとよい。「攻めのIT」を定量的に指標化し、ベストプラクティスを日本企業の経営者に知らしめるという形で、「攻めのIT」への意識づけを図っていくことが重要。
  • ビッグデータに対する意識を変えていくべき。ビッグデータは、そこからビジネスチャンスを見出し、グローバルベンチマークのP/L指標などの改善につなげていかなければ意味がない。今ビッグデータの活用に向けた巻き返しに転じていけば、日本企業の稼ぐ力が高まるのではないかと期待。官は官でやるべきことにしっかり取り組み、民は民で経営戦略に生かしていく必要がある。ビッグデータは安倍政権が位置づけている成長分野とも関連が強いので、これを活かして成長戦略の強化につなげていくべき。
  • 人工知能は、将来、新しい世界を切り開く可能性を秘めており、産官学が連携して、これを活かすための基盤をつくっていく必要がある。事務局より、日本の若い人材が海外に流出しているという紹介があったが、これは大変由々しき事態。日本の人材は何とか日本で活かし、逆に海外の高度な人材に日本で働いてもらうような取組みも重要。
  • 経済学でいう完全競争状態にあれば、競争は激しく行われるが、個々の企業の利潤はゼロになる。当然、企業が互いに切磋琢磨して競争することは望ましいことではあるが、ビッグデータや人工知能も含め、稼ぐ力を保持する上では、いかに独占力ないしは価格支配力を合法的に確保するかということが重要ではないか。我が国の競争政策は、このような合法的独占力にかなりネガティブだったのではないかと思うが、半導体開発で互いに競い合った日本の電機メーカーが失敗したように、どうも今はそういう時代ではないように思える。ベンチマーキングの検討でも、占有度、独占度、寡占度と収益の指標との相関関係がどうなっているかを分析し、合法的に独占力を行使できるような企業経営ないしは制度設計を考えるということがあっていいと思う。
    年金について、我が国の公的年金はそれほど潤沢に給付ができる状態になく、世代間格差の是正に重きを置かなければならない。ゆえに、企業年金が重要なポジションを占めることになると思われ、ポータビリティの確保が欠かせない。また、企業年金としての確定拠出年金も重要だが、その下の中2階の部分に、経済産業省所管の小規模企業共済と厚生労働省所管の中小企業退職金共済という、私的年金といってもいい制度があり、これらも含めて年金の位置づけを整理することが必要。
  • 1974年頃からアメリカの年金はがたがたであったが、カーターが年金は上場株式でしか運用できないというルールを改め、事業、不動産等々への分散投資を可能とした。今のアメリカのIT企業は、実はこの年金の事業投資がベースになっており、学生時代のビル・ゲイツもCalPERSによる事業投資を受けている。このように、アメリカは国を挙げて年金を改革する中で、将来の新しい事業を生むということをやった。
    確定拠出年金は、確定拠出だけを強調すると事業会社のバランスシート改善に映ってしまうので、社会的には、ある程度の給付を保証する必要がある。確定拠出と給付を組み合わせたような新しい制度を構築するということが必要でないか。事業会社に課されている過大な投資教育と説明の義務は軽減すべきであるし、マッチング拠出の割合を今より引き上げてもいいと思う。また、運用会社がパッシブ運用中心で、コーポレートガバナンス強化を通じた企業収益の向上を促しても、なかなか年金への還元につながっていない。こういった点を含め、日本の年金政策をどうしていくのか、官邸を中心に経済産業省、厚生労働省、金融庁が一緒になって議論すべき。
  • ITによってイノベーションを起こしていくためには、目的に向かって様々な取組みを総合的に進めていく必要がある。「ビッグデータが重要」「人工知能が重要」ということを個別に議論するのではなく、全体として進めるようなエコシステムを作っていかなければ、企業の稼ぐ力には結びつかない。
    まず、日本の減点主義的なマネジメントでは、なかなか新しいことにトライできず、優秀な人材が活用されない。一方、Googleのマネジメントは加点主義で、社員はどんどんドライしなければならないし、技術者に自主性・自立性が確保されていて、トライすることに全力を注げるような環境が整っている。また、もっと産学連携を大きく進めるべき。現場の課題を知った上で研究を回していくことが重要で、ドイツのフラウン・ホーファーはまさにその機能を担っている。さらに、アメリカやドイツでは、ビッグデータや人工知能という新しい分野の話があれば、新しい学科やプログラムを増やして人材教育を行っている。ところが、日本の場合は、同じ一つプログラムを分けるだけ。このようなフレームワークを変えていかなければならない。
    年金については、人の流動性の確保が非常に重要。エコシステムでは、人が動くことによってニーズが把握され、基礎研究に反映されるような仕掛けができていくので、移動すると年金が減るような仕組みは変えていかなければならない。
  • 今、貯蓄力が低下してきているので、年金の3階部分を活用していくことは当然。また、公的年金の所得代替率が低下しており、それを補完する部分が当然必要になる。
    そのためには、やはり税制上の措置が必要。日本の場合は積立時も給付時も非課税だが、例えばドイツのリースター年金のように、積立時の控除は大きくしつつ給付時は課税するというような、メリハリをつけていくべきだと思う。また、今の厚生年金は18.3%を最終保険料率としているが、スウェーデン型のように、その上に個人の積立勘定部分を載せる形で準公的な年金とし、貯蓄の増加や所得保障の確保を図ることも考えてほしい。
    ビッグデータについては、多くの人は、データがどのようなビジネスチャンスにつながるのかというイメージが湧かないと思う。今後、こういったものが大きな意義を持つようになってくると、ビジネスの発想に結び付けられる人材を教育することが重要になる。
    また、日本人はどうしても情報を守るという考えが先行し、データを使えば新しいことが可能になるという発想にならない。例えば、健康情報の提示は個人情報漏えいのリスクがあるが、一方で、医療保険を運営する場合には、個人のリスクの調整という形で保険者間の競争が可能になる。このような発想の転換が必要。
  • 企業型確定拠出の加入者数は421万人と広がってきているが、個人型はたったの13万人。個人型の確定拠出を日本版IRAという形で広げていくことが非常に重要。
    企業の新陳代謝が盛んなアメリカでは、ポータビリティを持つIRAがある種セーフティーネットとしても機能しながら、重要な役割を果たしている。また、女性や公務員にも広げていこうという動きがあるが、特に女性の場合は、ライフステージによって勤めている時もあれば主婦である時もあり、IRAが適している。アメリカの401kやIRAは、若い人が長期でリスクを取るいいビークルになっているので、今後、日本でも確定給付型の企業年金に加入している人にIRAのような自助努力型の年金に対する門戸が開かれてもいいと思う。なお、アメリカではどこかの段階でIRAに課税している。日本でもどこかの段階で課税することを考え、多くの人が活用できるような個人型の年金を検討していく必要がある。
  • 鉄鋼産業は規模がものをいう産業で、事業規模を大きくしなければ生き残れないと信じ込んでいる人が多いが、よくファクトを分析してみると必ずしもそうではない。産業政策でも成長戦略でも、ファクトに基づかない議論をしているケースが多々あるが、グローバルベンチマークの議論では、引き続き、ファクトをしっかり押さえた議論を行っていただきたい。
    かつてインターネットが登場したとき、私はそれが産業構造上どのような意味を持つのか気がつかなかったが、デジタル革命によって、産業構造の水平分業化やスマイルカーブ現象の進行、プラットフォーマーの登場といったことが現実に起こった。同じようなことが人工知能とビッグデータによって再び起きるとすると、その意味合いを理解し間違えれば、この20年間で日本の産業が経験した苦しみをもう一度味わうことになってしまう。将来を見据え、人工知能やビッグデータが産業構造論、組織論的にどのような意味合いを持ちうるのか、的確に捉えながらオールジャパンで思考を深めていくことが大事。今までのデジタル革命の際、自動車産業やBtoBの産業材は比較的影響を受けなかったが、人工知能やビッグデータによる変革から、次の20年間も無事でいられるという保証はない。現状を認識し、真剣に取り組んでいかなければならないという危機感を抱いている。
  • 何社かの中小企業を指導している。どの企業も品質や納期のよさが売りだというが、データに基づいて調べてみると、他社より悪いデータが多く出てくるのが常。グローバルベンチマークでは、指標をきっちりデータで表すことが重要。そして、そのデータに基づくチェックが働くという仕組みを作らなければ、ベンチマークがお題目だけのものになってしまう。この点、ほとんどの中小企業が取得しているISO9000は、各社が独自に品質管理のレベルを定めることができ、それを審査官が年1回チェックするという仕組みで参考になる。
    今、ロボットの店が秋葉原で非常に増えていて、本格的なロボット時代の到来を実感させる。産業用ロボットでは日本が世界を席巻してきたが、ほかの分野にもロボットが進出していくだろう。人工知能やビッグデータは、ロボットを形成するための一つの要素。分野別にどのようなロボットが出てくるかを考え、求められる要素技術をどのように伸ばしていくかという議論があってもいい。
  • ビッグデータの応用は、一企業でカバーできる範囲が比較的少ない。どのようなビジネスモデルを組めばグローバルに価格決定力のある企業として稼いでいけるか、一企業として非常に悩みながら考えているところ。ドイツは、インダストリー4.0で工場の製造ノウハウを外に出すといっているが、本当に世界で買われるものになるのか。また、マイクロソフトやグーグルが、ITからハードのビジネスの世界に入ってきていることは確かだが、システム全体を作り上げるところまでやり切れるだろうか。このような印象も持っている。ITとハードウェアが融合したような世界で、企業が稼げるという確信をもてるようなビジネスモデルを早く決めたい。
    グローバルベンチマークでは、もう少し従業員にわかりやすい指標があればよいと思う。ROEは資本市場を向いた指標、売上高営業利益率は商品市場を向いた指標で、一定の利益を目指すという考えはわかりやすい。ただ、社会に付加価値を還元することが企業の仕事だとすれば、このような数値だけが付加価値ではない。企業の潜在能力や研究開発能力まで含め、将来の社会に対する付加価値を計れるような指標があれば、組織全体として稼ぐことに意欲が出ると思う。
  • グローバルベンチマークについて、P/LやB/Sの数字という、いわば過去の蓄積の結果を分析するにとどまらず、むしろその数字なり蓄積ができた原因を分析する必要があるのではないか。例えば、P/Lは要するに付加価値を上げるということだが、そのためには創造性がポイントになっているはず。プロダクトコンセプトを作ることも創造性だが、そのコンセプトを形にすることもまた創造性であり、この「形にする力」をベンチマークにすることはできないだろうか。
    コンセプトを形にするためには、徹底的にプロダクトコンセプトにこだわって、商圏、セグメント毎にふさわしい商品を提供すること、また、それを裏付けするだけの技術力を磨きあげることが重要。ASEANやアジアの成長を取り込もうとする時も同様で、産業構造を視野に入れながら考えることが大事。ASEANの各国とも、第二次産業の育成を通じた経済成長を中心としながらも、同時に、第一次産業も育てていくことを考えている。したがって、第二次産業と農業を組み合わせて提案したり、ハードだけではなくソフトも含めたパッケージで提案するということを行っていかねばならない。

以上

問い合わせ先

経済産業政策局 産業再生課
電話:03-3501-1560
FAX:03-3501-0229

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最終更新日:2014年12月2日
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