経済産業省
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日本の「稼ぐ力」創出研究会(第8回)‐議事要旨

日時:平成26年12月22日(月曜日)13時00分~15時00分
場所:経済産業省本館17階 国際会議室

出席者

伊藤座長、伊藤委員、翁委員、國井委員、斉藤委員、土居委員、冨山委員、野坂委員、野路委員、平野委員、増田委員、山口委員

議題

グローバル経済圏の稼ぐ力の創出について

議事概要

事務局より、資料3に基づき説明がなされた後、委員間で行われた討議概要については以下のとおり。

  • 日本企業がIndustrie4.0やAI・ビッグデータ活用などの潮流に何故乗り遅れているのか分析が必要。その背景には、まず、日本企業の経営者がICTの理解に乏しいことがある。また、情報サービス産業は多重下請構造で、研究開発費が非常に少ないという受け身の体質になっている点も問題。
  • 日本は長時間労働を強いられ学び直しの機会が少ない。経営者も含め、社員が新しい技術を取り込めるような環境整備が重要。働き方が変われば、女性の活躍の機会が増え、人材の多様性を通じたイノベーションも起きてくるはず。
  • パフォーマンスが悪く、内部留保を貯め込んでいる日本企業に対し、賃金上昇や投資を促すためには、コーポレートガバナンスが重要な役割を果たす。社外取締役はグローバル企業にとって不可欠の標準装備。適任者、とりわけ女性の社外取締役の数が不十分との議論もあるが、だからといって社外取締役の数を少しずつ増やせばいいということにはならない。社外取締役にふさわしい人材の発掘と企業へのマッチングの支援を検討すべき。
  • ビッグデータ活用については、日本に代表的なグローバルプレーヤーがいないのは極めて残念。我が国の大企業にありがちな自前主義・囲い込み主義を改め、外部の力を積極的に活用するオープンなマインドに変わるべき。
  • 働き方・雇用の変化に合わせて、義務教育の段階から、ITリテラシーを高めるような職業能力開発のあり方を考えるべき。欧米では初等教育からプログラミング教育を導入している。
  • コーポレートガバナンスは、形式よりも中身が大事。実際、リーマンショックの原因となった企業の大半は委員会設置会社であったし、委員会の設置と業績には有意な相関は認められなかった。結局、執行サイドが内部統制の枠組みをしっかり構築できているかどうかが重要。
  • 変化を求められる企業や閉鎖的な体質・旧弊を変えたい企業にとって、社外取締役による外部の声は極めて有効であるが、課題が3つある。1つは人材の問題。適任の外部取締役を見つけるのは難しく、外部人材の育成が重要。経営で成果を残した人材が、退いた後に他社の社外取締役になるという形を定着させることも有用。2つ目は体制作り。議案の立て方や資料の作成方法を含め、外部取締役をバックアップする事務局の体制を構築することが重要。3つ目は対話であり、経営者が社外取締役と十分にコミュニケーションを取ることが大事。
  • ビッグデータの活用については、一部の先進的な事例を除き日本は遅れているという危機感を持っている。毎年、シンガポールサミットに参加しているが、3年前頃からビッグデータ・ロボティクスへの関心が高まっており、今年は、機械による労働代替の問題とそれに関連する教育の問題が熱心に議論された。資料に取り上げられていたオープンイノベーションや人材育成の課題に加えて、情報セキュリティや個人情報保護の問題も国際的な枠組みの中で制度のあり方を考える必要がある。
  • コーポレートガバナンスを制度で強制するのは限界がある。コーポレートガバナンスを向上させれば、マーケットから評価され、中長期的な収益向上につながると認識されるような情報発信・制度設計を行うことが大事。社会通念を踏まえた社外取締役の視点と経営者の視点をすり合わせながら、合理的に収斂させていくことが重要。
  • 企業と投資家の対話については、望ましい情報提供サイクルは事業分野によって異なる。製造業では、昨今、市場側から短期的な収益の動向を詳細かつ高頻度に求められることが多いが、経営者としてはより長期の視点も必要だと感じている。現在の四半期決算ではこのバランスがとれていないので、業界毎のルールでIRを行ってみるのも面白いと考えている。
  • ビッグデータ活用については、データから得られる発見を全体のフレームワークの中で解釈する、また反対に、データから全く新たなフレームを浮上させる、といった演繹・帰納両方のアプローチが必要。また、専門的な知育の必要性が高まるが、それに伴ってベースの倫理観を育むことが重要。
  • 社外取締役については、日本では能力の高い人材が限られている現状で、人材をいかに確保するかが重要。また、複数社の社外取締役を兼任する人も多いが、さすがに能力の限界もあるだろう。兼任のしすぎが社外取締役の役割を十全に果たす上で障害になっていないか問題意識を持つべき。
  • 企業と投資家の対話については、機関投資家だけではなく、増加が望まれる個人投資家との対話も促進すべきであり、継続的対話の指針を示して欲しい。少数株主、外国人株主への配慮も考えていく必要がある。
  • ビッグデータ活用については、これをうまく活用できるか否かで日本の産業界の競争力が左右されるという意味で、今がまさに分かれ道。産官学でどのようなアクションプランを示していくのか、しっかりと肉付けをして欲しい。その際、政府は、規制改革や投資へのインセンティブ付与を行うべき。
  • 無人運転・自動運転・情報化施工を実現するセンサ・GPS等の技術は、ほとんどが欧米製。技術を提供する企業は、(アメリカの場合、)DARPA、DOEなど政府の巨額資金を得て台頭してきたベンチャー企業。日本でこうした企業がいないのは、十分な予算が提供されていないことも大きな要因だと考える。アセンブリメーカーは先端技術を世界から買えばよく、日本に技術がなければ開発拠点を欧米に移転せざるを得ない。また、日本では3次元データの活用が遅れている。大学の工学系専攻でも3次元データの活用は必修科目になっていないし、公共事業の図面は未だに2次元。
  • 土木建設業の生産性が低いのは、発注がコストプラス利益という考え方で、企業努力でコストを下げてもその分だけ受注金額が下がるから。工法等でイノベーションを起こした分だけ儲かるような構造にしなければ、魅力的な産業に育たない。
  • Industrie4.0については、オープン化が肝。いつまでも自前主義でやっていては、オープン化を進めた企業にデファクトスタンダードを取られ、その企業をプラットフォームとする産業構造に飲み込まれてしまう。また、ICTだけでなく計測技術も非常に重要。ドイツ・アメリカでは、中堅・中小企業が地方大学と連携して計測技術を磨き、存在感を発揮している。
  • エネルギーについては、政府が、省エネの方針を打ち出すべき。ドイツのバイエルン州では、エネルギー消費を2050年に半減させるという目標を掲げ、様々なインセンティブを付与している。再生可能エネルギーの地産地消を進めれば、送電網は不要であり、買取制度のような問題も起きない。この推進の際には、地方大学や中堅・中小企業に活躍の機会が生まれる。
  • 企業と投資家の対話については、新たな取組を追加するだけでなく、何を止めるかも議論して欲しい。日本ほどきめ細かい情報開示を行っている国は世界にない。
  • 社外取締役については、数よりも質が問題。私も2社の社外取締役を担っているが、それでも精一杯。質が担保されるよう、日本の現状に合わせたルールとすることが大事。
  • コーポレートガバナンスコード策定にかかる研究会において、取締役会の機能は、モニタリングかマネジメントかという白熱した議論があったが、日本の法制上は両者のハイブリッド型。「攻め」を意識すれば、出来るだけCEO以下にマネジメントの権限を委譲しつつ、取締役会は重要な長期的議案を取り扱うモニタリング機能に力点を置くべきであり、モニタリング:マネジメント=8:2が理想と考える。
  • 社外取締役には、経営の経験が求められる。計算上は、約3000社の上場企業から毎年500人程度の経営経験者が輩出されており、過去10年で5000人の人材の蓄積があるはず。1人2社担当すれば10000社をカバー可能。高齢でも元気な人が多く、一番の人材の供給源である。
  • ディープラーニングによる機械学習が高度化した時代では、研究者が研究所で唸っていても良い商品は生まれない。基礎研究と応用研究の境目がなくなってきており、現場で研究を磨いていく形にシフトする中で、ベンチャー企業の存在感が増す。その際、産学間だけでなく、学学間・産産間の連携も大事。大学は、学部学科毎に縦割りの構造になっており、これを打破することが必要。AIの世界は自然科学と社会科学の学際的な世界なので、今のアカデミアの縦割りの壁を超えた研究を推進せねばならない。なりゆきに任せても、この壁は壊れない。
  • 自動運転については、いち早く社会実装をできるかどうかの勝負。サンフランシスコで既に自動走行実験が行われているが、これに対抗するには、高速道路ではなく、下北沢のような複雑なシチュエーションでも実証実験できるようにしなければ戦えない。法制度を整えるため、関係省庁と調整を行って欲しい。
  • 「攻めのガバナンス」という際、語義に幅が出てきているので、言葉が独り歩きしないよう何を指すかをクリアにする必要がある。
  • コーポレートガバナンスは、形式よりも中身であり、社外取締役等が適切な情報提供を受けることが極めて重要。監査役会設置会社であっても、指名・報酬委員会での議論を経ず、あらゆる案件をいきなり監査役会にかけていては、ガバナンスの実は伴わない。また、社外監査役は社内監査役から十分な情報共有を受けているが、社外取締役と社内取締役の間には、情報の格差が生まれている。
  • IT活用に関して、東証による「攻めのIT経営銘柄」の策定に関わっている。ITを経営に上手く活用している企業を選定し公表することで、経営者のITに対する意識を高められる。IT活用を資本市場と結びつけるのは世界的にも例のないこと。シーメンスによるエネルギーハーベストへの取組や大学におけるウェアラブル端末関連の優れた技術も視野に入れる必要がある。
  • 内部留保の取り崩しは、コーポレートガバナンスに引き付けて議論されるべき。内部留保が非効率であるとすれば、コーポレートガバナンスが上手く機能しておらず、適切な投資ができていないから。例えば、従業員の研修や報酬による還元など人的投資にまわした方が企業の中長期的な成長に資すると思われるにも関わらず、低収益の株に投資して塩漬けにしてしまっているという場合がありえる。これは、十把一絡げに内部留保を取り崩せばいいという話ではなく、企業毎に適切な資産振り分けができているかという、ガバナンスないしは経営の在り方に関わる話である。
  • ビッグデータの活用について、政府に何ができるか、という観点で4点申し上げる。1つ目は、医療の標準化に政府がより深く関与すべき。医療行為が医師によってバラバラで、病名すら統一できていない。DPCデータは標準化されつつあるが、レセプトデータは医者の裁量に任されていて病名すら揃っていない。2つ目は、プラットフォーム構築の後押し。本来は民間の自然淘汰の中で生まれるべきものだが、民間に任せていては世界の潮流に乗り遅れてしまう可能性がある場合は、政府が方針を打ち出して支援すべき。3つ目は、大学改革。最近は、学際的な分野に予算が供給されやすくなっており、徐々に変化の芽生えが生まれてきている。依然として研究室単位では縦割りが残るが、プロジェクト単位では学術横断的な取組が拡がってきている。4つ目は、学校教育の変革。教員の意識の改革、受験科目とすること等がポイントとなるだろう。
  • 社外取締役への情報共有は大事であり、トップが意識を持ってリードしていく必要がある。取締役会では、リスク管理とモニタリングに集中した議論ができるようにすべき。
  • 業績連動型の役員報酬はインセンティブとして有効だが、何を業績とするかは、業種の特性によって変わってくる。何と連動させるかを考える過程で、企業が自らの業種の特性に目を向けることにも意味がある。
  • 企業と投資家の対話については、政府が基準を示すとこれをクリアすれば良いと思われてしまうため、むしろインセンティブ・コンパティブルなアプローチが必要だろう。
  • 日本企業のICT活用の遅れについては、危機意識を共有する。レセプトのNDBに関しては、法律が利活用を前提としていないため、ビッグデータ活用を前提とした法律に変えることが必要。
  • シーメンスは、コアコンピタンスをとにかく追求し、自社の強みがない、収益が低い事業を売却し、M&Aによる事業の多様化を進めた。同様の動きは取引所でも見られ、海外の証券取引所には、外部からの事業買収により、総収入に占める情報提供サービスからの収入が株式売買の収入を大きく上回るようになったところもある。日本企業は、海外では外部資源の活用ができているが、国内では遅れている。これを進めなければ、日本企業は、真のグローバル化を達成できない。

以上

問い合わせ先

経済産業政策局 産業再生課
電話:03-3501-1560
FAX:03-3501-0229

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最終更新日:2015年1月23日
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