経済産業省
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経営者・投資家フォーラム(第1回)‐議事要旨

日時:平成27年6月10日(水曜日)9時15分~11時30分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

議題

  1. 持続的な企業価値創造とその評価のあり方について
  2. 企業と投資家の関係や対話のあり方について
  3. 持続的な企業価値創造に向けた企業情報開示のあり方について

議事概要

(1)山際副大臣ご挨拶

  • 安倍政権になってから経済を最大の眼目としてこれまで政権運営を行ってきた。マクロの数字は良くなってきていることを示しているが、これを底堅く、持続的にすることが我々が今後行うべきこと。
  • 企業と投資家の関係については、日本版スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードなど様々な仕組みの整備を行ってきているが、ここに魂をしっかり入れていくところに来ている。
  • 企業経営者と投資家の関係を密にしていくことが、これに魂を入れることになる。
  • その中でこのフォーラムを開催することとなった。
  • 稼ぐ力を堅いものにしていくために、積極的に発言頂いて、それを国内外に発信して、共有していくことが日本の経済を強くしていくことにつながる。そのために是非力を貸して頂きたい。

(2)自由討議

以下の論点について意見交換を行った。

(1) 持続的な企業価値創造とその評価のあり方について

  • 企業経営者や制度関係者から、資本効率の向上等、稼ぐ力を高めることが日本企業にとって課題であるとの認識が示された。
    • 我が国の化学業界の一人当たり生産性やEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization)は、欧米企業と比較すると7割程度であり、稼ぐ力をどう高めていくかが課題である。
    • 日本企業のROEの上昇は、アベノミクスによる円安効果の寄与が大きく、経営者のROEへの意識向上による寄与は大きいとは言い切れない。経営者は資本効率を高めて持続的な株価の上昇に努める必要がある。
  • また、企業経営者から企業価値向上についての考え方を投資家に理解してもらうため、ROEを目標に設定しているとの取組が示された。
    • ROEは製造現場へ適用するのが難しく、直接的な目標を設定するためにROSを重視してきた。次期中期経営計画にてROEを設定する予定。中長期的な視点を持つ投資家とじっくりと対話していきたい。
    • 投資家に対して、弊社のビジネスモデルを「あらゆる業界の川上から川下まで投資するだけでなく、人材も投入して企業価値を上げていく」と説明している。従って、ROEだけが必ずしも指標にはならない業態なのだが、こうした会社の実態を理解してもらい、中長期的にROE向上に繋げていくことが重要と考える。
  • これに対し、企業経営者から、企業価値の考え方等について投資家と認識があっていないとの見解も示された。
    • 海外投資家とのコミュニケーションを最低でも年3~4回行っているが、数値化できない企業価値の考え方や企業評価の時間軸及び評価指標がすり合わない。たとえば、米国の投資家からは、サービスレベルを落としてROEを上げろと言われる。そのようなすれ違いを緩和するために、数値化できない企業の価値をどう評価するかについて、グローバルスタンダードの見える化を考えてもよいのではないか。
    • 企業は、顧客、従業員、地域社会など多様なステークホルダーの期待に応えるために努力しているが、投資家は株価向上や配当引き上げなど、自らの視点のみで主張を行っているようだ。この点で企業との認識のずれがある。
  • この他、株式市場では新規上場企業など新たな企業も育っていることも留意すべき、コーポレートガバナンスコード等について外国のものを単に入れるだけではなく、常に見直し、修正していくべきとの意見もあった。
    • 日本市場の時価総額が30年前と変わっていないという見方があるが、日本市場の時価総額を構成する主体の変化にも目を配るべき。悪い企業ばかりでなく、良い企業も育っている。・コーポレートガバナンスコード等についても単に外国製のものを受け入れるということでなく、常に見直し、修正していくべきである。

(2) 企業と投資家の関係や対話のあり方について

  • 企業経営者、投資家双方から、投資家も短期的な視点ではなく、中長期的視点を持つことが重要との認識が示され、中長期的視点を持つ上での対話の重要性についての指摘もなされた。
    • 長期投資家、短期投資家ともに株主還元に関して近視眼的であり、中長期的な視点に立っていただきたいと考えている。投資家と事業会社の対話は望むところである。
    • 中長期的なビジネス戦略のある企業を応援しているが、マーケットには短期的な投資家が多い。これは、テクノロジーの進歩により、投資家がデータをよく解釈せずにアクションを起こしていることも原因であり、対話の環境を整えることは重要である。対話を通じて、投資家の思考も中長期的になっていくだろう。日本企業は海外投資家に注力しがちであり、日本の投資家とも対話の機会をもって頂きたい。また、中長期的なビジネス戦略のある企業を応援する上で、限られた資本の有効活用の観点も踏まえた上で、投資すべき企業の選択をする必要がある。実現可能性のある戦略であるか否かを見極める必要性があることは言うまでも無いが、市場への影響(所謂、ベーターに対するインパクト)も考慮する事も必要な点は企業経営者の方々にもご理解頂きたい。
    • 当社もこれまで短期志向であったが、今後、中長期投資とエンゲージメントを重視する運用に取り組んでいく。投資先企業との対話を通じて計画や数字の裏側について理解を深めていきたい。長期で考えると企業にとってはROEの向上だけでなく財務の健全性も重要であり、財務体質を悪化させてまで、レバレッジをかけすぎるのはよくない。企業が実現するROEの「質」や資本コストとの差も重視していきたい。
    • 何よりも企業側に企業戦略のストーリーを外に向って明解に説明する力が必要であると考えている。一方で、投資家の中には、ショートターミズム志向に基づき、発行体に対して企業の成長に向けた投資よりも資本の削減による効率化等の杓子定規な要求をするところもある。この背景には、アセットオーナーが短期的なリターンで投資家を評価する動きがあるのかも知れない。
  • 企業経営者から、機関投資家は、責任投資原則について自覚を持ち、自ら直接企業と対話を行い、経営に対する理解を深めることが重要との指摘があった。
    • コーポレートガバナンスコード等一連の施策は即座に英訳され海外発信されることもあって、着実に成果が出つつある。機関投資家が短期にこだわってきたのは、過去30年間、日経平均株価の低迷が続いたことに加え、多くの企業で中期経営計画の達成率も低かったため。また、機関投資家は責任投資原則(アセットオーナー及び地球に対する責任)について自覚を持ち、企業と対話していく必要がある。
    • 機関投資家は受け身の機関投資家であってはならず、例えば、議決権行使にあたって、助言会社に任せきりではなく、直接企業と対話することが大事である。
    • 対話によって、経営者も投資家も育っていく。当社は、インベスターズガイドを作り、投資家との対話に役立ててきた。その成果もあり、株主の8割は我々の求める株主であり、リーマンショックの際も、株主と粘り強く対話することで、経営に対する理解を促した。
  • 機関投資家から、中長期的な視点の投資を行う上で、個人投資家や年金基金等のアセットオーナーは、手数料、報酬体系や運用評価期間が運用者にどのようなインセンティブを与えるか等について検討することが重要との指摘があった。
    • 当社も長期投資家であり、手数料の体系・報酬の体系・運用評価期間についてあるべきインセンティブになっているか適宜検討するのが重要と考える。例えば、運用手数料体系で言えば、運用成績に連動する成功報酬導入の励行、運用評価期間について弊社内では5年、7年、10年で評価している。
  • 機関投資家から、投資家の視点では過大・非効率と見える企業の内部留保、政策保有株などについて、企業が十分な説明を投資家に対して行っていないとの指摘があった。
    • 日本経済全体を考える上で企業および個人が保有する現預金を投資を通じリサイクルすることが必要だ。そのためには、技術革新や生産性改善への投資を促進することが重要だ。企業はCapital Allocationの方針について、投資家と対話をすべきである。
    • 企業はすべての株主を平等に扱う必要があるが、株主還元を含むCapital Allocation方針を明確化することで結果的に株主を選択することができる。例えば、増配か自社株買いかどちらを株主還元の主軸にするかの方針を明確化するなど、また、株主とのそのような方針についての対話を通じて、自社にとって望ましい投資家に株を持って貰えるようにすることができる。
    • 年金は超長期の投資家である。ROEを上げるなどコーポレートガバナンスの向上を図るためには、市場機能を改善し、活用するべきだと考える。具体的には、政策保有株と買収防衛策を無くす方向とすることで、安定株主以外の投資家の発言力を高め、株主議決権の行使や対話の実効性を上げていく必要があると考える。
  • アセットオーナーから、形式的なガバナンス改善では意味がなく、投資家と企業との対話が形式な対応に陥っていないか注視したいとの発言があった。
    • 企業が持続的に成長し、企業を評価する株式市場が効率的であることが重要である。日本企業は、実態よりも低く評価されていると考えるが、形式的なガバナンスを改善すれば解決する問題ではないと思う。従って、投資家が、企業との対話において形式的な対応に陥っていないか、アセットオーナーとして注視したい。また、企業経営者にはクオリティの高いアセットマネージャーとの対話に重点を置いていただき、結果として形だけの対話が自然淘汰されていくことを期待している。
    • 既に、CEOとして対話する投資家を選別しており、実質的に淘汰がすすみつつある。
    • アセットオーナーである、公的年金基金のスチュワードシップ活動評価の姿勢が、日本の株式市場に大きな変化をもたらしているように思う。
    • 今回の「日本型ROE経営」を定着させサスティナブルなものにする為には、実際に企業価値向上に取り組む現場に対しても明確なインセンティブを与える必要がある。即ち、企業と投資家のアライメント(方向性、向いている向き)がガバナンス以上に必要不可欠である。

(3) 持続的な企業価値創造に向けた企業情報開示のあり方について

  • 企業経営者から、統合報告書等、中長期的な観点から自主的な発信を進めることが重要であるが、四半期開示は中長期的・建設的な対話を阻害しているとの認識が示された。
    • 自動車産業はイノベーションが不可欠で生き残りをかけて、先行投資をしている。しかし、一方で、四半期の説明に非常に時間をとられている現実があり、もう少し中長期のスパンを投資家と共有していきたい。四半期ごとの決算見通しを含め、開示制度が改善されていくことを期待している。
    • 四半期開示は、企業とアナリスト・投資家に細かい穴埋め作業を強いており、建設的な対話を阻害している。
    • 四半期ごとの一律開示義務から脱却し、開示のあり方も資本市場を通じて、企業毎に評価されるべきである。
    • 経営者は、投資家に対して、統合報告書の作成などにより、自発的に、ストーリー立てて企業情報を発信することが重要である。ショートターミズムを軽く見るべきではなく、根が深い。四半期の開示は廃止する方向で進むべき。
  • 投資家から、四半期などの短期的な話ではなく、長期的な話をしたいと考えているとの指摘があった。また、企業のIR担当者が経営者のビジョンを投資家に理解させられていないため、しかたなく短期的な話になっているとの指摘もあった。
    • 長期投資家は、四半期などの短期的な話ではなく、もっと長期的な話をしたいと考えており、いっそう透明性が確保されるので、ウェブサイトでの情報開示も歓迎である。エンゲージメント投資を行っており、経営者に直接会って話せるようになったことは、評価されるのではないか。
    • IR担当者が経営者のビジョンにおける四半期決算の位置づけを投資家に理解させられていないため、投資家は企業に対して四半期決算の数値の話をしがちである。
  • 企業経営者から、企業と投資家の対話を充実させるため、開示の整理・統合が必要との指摘があった。
    • 投資家との対話の時間をとるためにも、開示に関して重複する事項については、是非とも整理・統合を行っていただきたい。企業側として、課題をどうやってこなすか(How)は得意だが、何をするか(What)は十分ではなく、そのような点について、投資家と対話したい。
    • 日本企業の開示量は、欧米に比しても多い。開示されている数字の裏側について対話をしたいと考えている財務の健全性も重要であり、財務体質を悪化させてまで、レバレッジをかけすぎるのはよくない。ROEも長期の視点で考えるべきである。
  • 投資家や有識者より、中長期的価値向上との関係で開示や説明が必要な項目として、ESGと長期的企業価値の関係や後継者育成計画等について指摘があった。
    • ESGへの施策が長期的な企業価値向上にどう結び付いていくのかを経営者が投資家に示すプロセスが非常に大事である。一方で機関投資家は、長期的視点に立って、フォーカスエリアの開示を検討していくことが両者の有益な対話につながる。
    • CFOの育成が大事な課題であり、次世代のリーダー等を育成する後継者育成計画(サクセッションプラン)の作成と開示が必要である。

(3)閉会

菅原経済産業政策局長挨拶

  • 昨年の成長戦略では、コーポレートガバナンスの強化を通じ稼ぐ力を高めるよう企業に変わってもらうというのが一番目のメッセージとなっており、そこからこの議論が始まっている。
  • 第三弾の成長戦略でも企業の前向きな姿勢を引き出すというのがメッセージだと思っている。現在、過去最高の収益を、技術、人材、M&Aを含めた広い意味での中長期の投資にどのように活用するかを決断する段階に来ている。
  • 企業経営者がこの決断をするために重要なのが投資家との対話。大胆な前向きの投資を引き出すための効率的かつ前向きな対話が第三弾の成長戦略でも重要と考えている。本日頂いたご意見も参考にして成長戦略を作っていきたい。
  • また、本フォーラムを通じて、日本の株式市場全体の活性化を進めて行きたいと考えており、今後も引き続き活発なご意見を頂きたい。

以上

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経済産業政策局 産業資金課

 
 
最終更新日:2015年12月16日
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