経済産業省
文字サイズ変更

経営者・投資家フォーラム(第3回)‐議事要旨

日時:平成28年3月8日(火曜日)14時30分~17時00分
場所:経済産業省本館17階第一特別会議室

議題

  1. 経営者や取締役等のあり方と選任プロセス
  2. 企業の無形資産投資やM&A等、長期投資のあり方
  3. 投資家の投資判断のあり方 他

議事概要

1. 冒頭挨拶

鈴木経済産業副大臣
  • 「第四次産業革命」とも言われる劇的な産業構造の変化の中、短期的な市場の動きに過度にとらわれることなく、自社の企業理念に基づき、中長期的な視野に立った未来に向けた投資が求められる。
  • 企業経営者が中長期的な視野に立って投資を実行していくためには、その資金の出し手である投資家との深い対話、相互理解を通じて、中長期的な企業価値の向上を共に実現する、共創関係を築くことが重要となる。
  • 引き続き、「経営者・投資家フォーラム」での議論により経営者と投資家との相互理解が促進され、その内容が広く発信されることを期待している。

2. 経営者・取締役のあり方と選任プロセス

以下を主な論点として、討議が行われた。

  • 今後、厳しいグローバル競争に勝ち残り、価値を生み出すため、経営者、取締役(会)には、どのような資質、能力、行動が求められるか。
  • 特にその観点から、
    1. 経営者はどのような観点、プロセスで選ばれるべきか。指名委員会(任意含む)や社外取締役の関与についてどう考えるか。
    2. 社外含む取締役、あるいは取締役会には、どのような人材が求められるか。他社の現役役員(あるいは執行役員)が候補となることをどう考えるか。

1) 経営者に求められる資質、能力、行動は何か。

  • 経営者の選任プロセスの議論もあるが、経営者の適正に関する議論こそ重要。
    • 経営者の選任について、指名委員会の委員にはどのような人物がふさわしいか、といった選任プロセスに関する議論は見受けられるが、経営者の適性に関する議論こそ重要ではないか。(投資家)
  • 経営者に様々な役割が求められる中で、最も重要な資質は「Integrity」である。
    • 企業にイノベーションを起こすこと、不祥事が起きないようにコントロールすることなど、経営者の仕事は増えている。そのような中で経営者に求められる資質を示すのは難しいが、資質として一つ上げるとすれば、インテグリティー。努力して身に付くものではなく、様々な体験の中から自然に身につくという特性を有している。(投資家)
    • 五点挙げられる。まずは、インテグリティーが大原則でベースとなる。二つ目が、結果を出すこと。三つ目が伝える力、いかにして自分が考えていることを相手にわかるようにメッセージとして伝えられるか。四つ目が決断力。最後はいかなる時も絶対に逃げないこと。(経営者)
    • 投資家として、どのようなCEOがいる会社に投資するかという観点から話をすると、まずはインテグリティーを有するか。そして、苦労をした経験があるか。また、リーダーシップをとった経験も当然重要。さらに賢く、アイデアを有すること。そのうえで、ビジョンを持ち、会社の5年先10年先がどのようになるかストーリーを語ることができるということが重要であると思う。(投資家)
  • グローバルな環境変化の中、経営者には国際感覚や変化への対応力が必要。これらの求められる資質を示していくことも重要。
    • 「国際性」など、一般的に必要と思われる経営者の資質を示す取り組みは有益だろう。昔は企業として取り組むべきことがわかりやすかったため、従業員が一丸となってそれに取り組むことがビジネスの拡大にあたっては重要であった。こうした時代においては社内の人材が経営者に適していたのであろうが、時代が変わりグローバルな対応等が求められる今日では社内ビジネスにおける経験を有するだけでは経営者として不十分であるかもしれない。(投資家)
    • インアウトのM&Aの勝率が悪いのは、マネジメントも一因ではないか。社会構造がダイナミックに変化している環境で経営者に求められるのは、例えば国際感覚や外人の方々との人間関係構築の能力、創造力、感性といった、グローバルな感覚。(投資家)
    • 常に経営者として求められる資質と、時代の変化とともに求められる資質とがあるのではないか。現況のように大きく社会構造が変化している環境の中では、変化にいかに速やかに対応できるかが重要ではないかと考える。その観点から、現在の環境の中で何が必要かをリストアップした上で、幹部候補生の育成に取り組んでいるのがわかれば、投資家としても次期経営者候補が育っているという安心感を持って投資が出来る。(投資家)
  • 経営者は、変化に対して挑戦していかなければならない。
    • グローバル社会において、新しい挑戦が重要であり、CEOに求められる役割であると考える。(投資家)
    • 経営者とは、部下と議論することでき、そのような部下を持っているべきと考える。また、常に関心(Curiosity)をもち、変化にチャレンジ(Challenge)し、また、様々なコミュニケーション(Communication)を持つことが重要であると考える。(経営者)
  • 経営者には、世代と組織を超えたコミュニケーションを行い、あらゆる要素を統合する力量が求められる。
    • 組織を超え、世代を超えたコミュニケーションができなければ、次の時代に対応できないと考えており、意見を聞くということが大事であると考える。(経営者)
    • 事業の生き残りの観点から、経営者はもはやChief Executive Officer としてだけではなく、Chief of Ethics、Chief of Risk、Chief of Innovation等といったあらゆる観点からリーダーシップが求められる。自らがそれら分野に精通している必要はなく、そのような要素を自社に取り込み適切に運営していける力量が問われている。(投資家)
  • プロ経営者とは、既存事業の成長性をゼロベースで評価できる人材である。
    • 日本にはプロの経営者がいないとマスコミで論じられている。海外のように様々な企業を転々として結果を出している経営者をプロの経営者というのであれば、そうした人たちの共通項は、既存の事業について今後の成長性をゼロベースで再評価でき、色々なものを統合して、非連続な成長を模索できる人材であるということ。(投資家)

(2) 経営者等を選ぶプロセスはどうあるべきか。

  • 社外取締役が増える中、経営者の選任方法も変化していく。
    • 昨今、制度導入を契機に社外取締役の導入会社が急激に増えており、同様に、経営者の選任方法というのも今後、変化する可能性があると考えている。(経営者)
  • 社外取締役や指名委員会等が経営者選任プロセスに関与すべき。
    • 経営者の後任をどう選ぶかという問題に関して、従来は前任者が自ら選任していたが、これからは、交代のある一定期間前に、社外取締役・指名委員会等の第三者が関与して、先入観にとらわれず選任するという流れになってもらいたい。昨今、制度導入を契機に社外取締役の導入会社が急激に増えており、同様に、経営者の選任方法というのも今後、変化する可能性があると考えている。(経営者)
    • 当社は監査役設置会社だが、社長と社外取締役から構成される任意の指名委員会を設置しており、社長が提案し、委員会で意見をもらい承認するプロセスとなっている。今後は社長が選ぶ経営者ではなく、リストアップされた候補者を指名委員会で確認し、さまざまな機会を与えて評価をしていくプロセスにするのが望ましいかと思っている。(経営者)
  • 経営者の選任に、前任者が関与すべきでない。
    • CEO(後継者)の選任は前任者がやるべきではないと考える。前任者が関与してしまうと、もっと長く残ろうという思いや好き嫌いが出てしまう可能性もあるので、取締役会やアドバイザリーボードから指名要請されるが辞退している。(経営者)

3. 企業の戦略的な投資と機関投資家による評価のあり方

以下を主な論点として、討議が行われた。

  • 今、企業(経営者等)に求められる事業への「投資」はどのようなものか、その判断や説明はどうあるべきか。
  • また、(機関)投資家は、その投資をどのように評価・判断すべきか。対話はどうあるべきか。
  • 特にその観点から、
    1. 設備投資だけでなく、人的資本や知的資本(研究開発、ノウハウ、知的財産等)への投資をどのように評価、判断、説明すべきか。
    2. グローバル企業が「時間」を買う手段として重要なM&A(買収のみならず黒字事業の切り離しも含むポートフォリオマネジメント、エグジット等)やグローバル事業を支える社内の共通プラットフォームはどうあるべきか。

1)人的資本や知的資本への投資はどうあるべきか。

  • 人的資本への投資では、ソフトウェア開発能力が重要
    • 人的資本に関して、日本はものづくり大国であるという意識が続いており、ソフトに関する体制が遅れていると感じる。ハードウェアの開発能力は高いが、ソフトウェアの開発は追い付いていないように思える。(経営者)
  • 人的投資として経営人材の育成が重要であり、将来のビジネスにもつながる。
    • 投資を行い、投資先に人を送り込んで企業価値を高めるのが当社の事業であり、国内外の多数の連結事業会社に若い人材をCEOという立場で送り込んでおり、こうした人材を育てることで、ビジネスにも幅が広がると考えている。世界中でいろんな業界の経営をやることで、情報も入ってきて、次の時代のビジネスを検討することも可能である。(経営者)
  • 企業の研究開発投資を競争優位やイノベーションにつなげることが大事。横並びや自前主義から脱却し、オープンイノベーションを進めることも課題。
    • 日本の企業がグローバル競争を失いつつある理由の1つとして、横並び主義があると考える。日本の東証一部上場企業の研究開発費の総額が13兆円程度で、対GDP比では世界第2位程度であったが、INSEADのイノベーションランキングでは世界25位程度。研究開発費をかけてもイノベーションは起こっていない現状。これは例えば、リチウムイオンバッテリーやミドリムシなど、各社が同じ研究開発をバラバラに行っていることが背景にある。その研究開発に本当に競争優位性があるのかを、社内プロセスや、国からの補助金を配る際には精査するべき。(経営者)
    • 自前主義や、オープンイノベーションの遅れも課題。欧米ではベンチャー投資のEXITとして大企業によるM&Aというのは一般的だが、日本の大企業は、良い技術を持っているベンチャーがあっても、自社でやろうと思えば実現可能として買収に消極的。M&Aは時間を買うという点も重要である。(経営者)
  • このような投資に対して速やかかつ集中的に予算を投じる文化、プロセスが重要。
    • 新しい芽に対して、マーケットを意識して速やかかつ集中的に予算をつける文化、社内プロセスが非常に重要なポイントと考えるが、日本企業には米国企業ほど備わっていないのではないか。(投資家)

2)人的資本や知的資本等への投資をどのように評価すべきか。

  • 人的資本や知的資本への投資の成果を定量面のみで評価することは難しく、定性面も考慮して行うべき。
    • 投資判断のあり方について、主にM&Aの際、人的資本、知的資本を投資家がどのように評価するのか、研究開発をどのように評価するのかは、定量面のみで判断することもできず、定性的な要素も十分に考慮する必要があることから、難しい問題である。(投資家)
    • 人的投資の効果は、例えば長期間かけて人が育って役員・社長となり会社を動かすことで現れるが、定量的に計るのは難しい。(経営者)
  • 投資判断の評価に当たっては、その理由や効果、プロセス等が見えるよう透明性が確保されることが必要。また、投資が企業価値創造に結び付くかを理解することが大事。
    • 研究開発費については、なぜその研究に投資しようとしているのか、市場の状況を踏まえているのか、投資がうまくいった場合にどのような効果があるのか、投資決定が適切なプロセス・ガバナンスのもとなされたのか、等といった意思がみて取れるような透明性の確保が重要であり、投資家も説明を求めている点である。(投資家)
    • 投資判断のあり方に関して、投資家からみると、企業価値創造にどう結びついているかについて知りたい。企業価値創造に結び付くストーリーを理解できなければ、中長期的な信頼関係の構築は難しい。(専門家)
  • 企業の投資判断においては、社内で正直な議論が行われることが必要。外部・株主の目線という点で社外取締役の役割も重要。
    • 長期投資に関して、成果が出るまでにある程度の期間が必要なものと、そうでないものが混在していると考えており、社内では正当に評価する制度が必要であると考える。また、社内で裸の王様とならないよう、社内で正直に話し合いが行われることが重要である。(投資家)
    • 社内での正直な議論が重要であり、企業自身は全ての投資は勝算を持って投資しているが、自己評価だけでは、世の中からずれている可能性がある。そのため、同業他社、セクター分析をしている投資家からの意見による軌道修正が重要になってくる。(経営者)
    • 議論を真摯に行ったつもりでも、往々にして社内だけで盛り上がるレベルに終始しがちである。この点に関して、議論を世の中に通用するレベルに昇華する役割が社外取締役には期待される。(投資家)
  • 人的資本や知的資本に関する投資について、経営者と投資家が評価しやすい共通指標を確立すべき。
    • 投資家との対話の中で、人的資本や知的資本投資に対してどのように評価してもらうかの共通指標を確立すべきである。前年同期比やシェアだけではなく、顧客のブランド想起率、量販店のPOSデータでの競合との比較といった指標がある。こういったものを長期の投資家と共有しながら、評価し合うべきである。(経営者)
    • マーケットでは無形資産をどう評価すればよいか、といった議論があるが、無形資産は様々な結果に結びつけることができるため、経済効果を正確に特定することは難しく、株式市場は無形資産の評価に長けているとは総じて言い難い。より良いアプローチとしては生産性(Productivity)を見ることが重要ではないか。どのようなKPIを用いて生産性を測るのかに関する指針を設けることが有用であると考える。(投資家)
  • アセットオーナーとして、アセットマネージャーに対して、人的資本、知的資本、ESG等を評価することを求めている。
    • 人的資源、知的資源についていえば、ESGの要素を運用に関して十分に考慮すること、すなわち、数字に表れない内容を評価する能力を運用会社に要請していっているところである。(投資家)

3)企業の投資に関して、経営者と機関投資家の対話はどうあるべきか

  • 投資家等との対話においては、企業の投資判断の適切さを外部の目線で評価し、必要に応じて軌道修正をすることが期待される。
    • 社内で裸の王様とならないよう、社内で正直に話し合いが行われることが重要である。外部から情報が入ることによっても防ぐことが可能であり、外部から分析することが投資家の責任であると考える。(投資家)
    • 長期的な視野で投資しているということを、投資の中断、事業の撤退の決断を避ける際の言い訳にしてはいけない。社内の正直な評価システムや、投資家からの外からの視点が重要になる。(投資家)
    • 社内での正直な議論が重要であり、企業自身は全ての投資は勝算を持って投資しているが、自己評価だけでは、世の中からずれている可能性がある。そのため、同業他社、セクター分析をしている投資家からの意見による軌道修正が重要になってくる。過去の経験としても、長期投資家から、企業理念を理解しているため、時に耳の痛いことも指摘されるが、それにより軌道修正された。投資家との信頼関係の構築、対話は改めて重要だと感じる。(経営者)
    • スチュワードシップ・コードの一環として、年間250社訪問し、投資先企業と少なくとも1社1時間は対話しているが、最近は先方から要請を受けて訪問することもある。経営環境の変化が激しい中で、事業ポートフォリオをどうするかヒントがほしいと相談受けること、当事者が社内で検討し、判断したことについて、客観的な立場として意見を求められることがある(特に中小規模の会社は、社内リソースが有限である)。対話の中で、企業と投資家の各々が初めて気付くこともあり、機関投資家として事業理念を理解した上で、有限な資本や人的資源をどこに投資していくかについて企業と建設的な会話を行うことが明日の日本の成長につながると考えている。(投資家)
    • 社内における正直な議論の結果を世の中に発信し、その内容に基づいて投資家が行動するのが望ましいと思う。(投資家)
    • 事業会社としては、インナーの目線、業界内の目線で見ているので、アウトサイダーから見た意見を言ってもらい、外の目から気づかせてほしい。また、投資家からもどのような指標がいいか示してほしい。(経営者)

4)企業のM&Aの判断、実施はどうあるべきか。

  • M&Aの前提として、自社のコアを明確にして資源を集中させ、ノンコアを(黒字でも)切り離すことが日本企業の課題。これを投資家と議論・共有すべき。
    • 選択と集中はできているが、選択から外れた部門を切り出すことはせず、黒字である限り残したままにしている。その結果、リソースが割かれず低迷し続けている。こうした点について経営者と投資家は議論するのが望ましいと考える。(経営者)
    • 国内の成長鈍化を見込み、多角化に乗り出した時期があったが、2006年頃から我々のコアは何だろう?と見直して徹底的にEXITした。コアを決めれば、黒字でもEXITするし、赤字でも頑張るという判断ができる。これについて、投資家サイドに理解を得るためには、やはり長期投資の対象となる事業を何をもって評価するかのコアを投資家と共有しておくことが重要である。(経営者)
  • M&Aについて、リスクを軽減させる通常の経営手段として活用すべき。
    • M&Aに関して、時間を買うという観点が強調されるが、リスクを低減させるという点についても評価されるべきと考える。買い手にとっては事業をゼロから興し軌道に乗せるリスク、売り手にとっては事業を継続するリスク、これらをM&Aにより軽減することができる。M&Aというと勝ち負け、といった悪いイメージがあった時代もあったが、通常の経営の手段として活発化するべきだと考える。(経営者)
  • M&Aを実施するための資本政策の判断が重要。その際、発生する「のれん」の影響をどう評価すべきか課題。
    • M&Aを活用しながら、拡大を図ってきた。M&Aをするにあたっては、手元資金で行うのか、増資が必要なのか、既存事業の売却による捻出が必要なのか、といった資本政策を検討して判断してきた。最近は、のれんの扱いを気にしている。当社はUSGAAPを適用しているため、のれんは償却せずそのまま資本にインパクトがあり、格付けにも影響があるが、どのように検討すべきか悩ましい。(経営者)
  • M&Aを成功させるためには、社内の専門チーム等の体制強化やM&A後の統合(PMI)の早期開始が重要。
    • M&Aに関しても、実績がある会社とそうでない会社があるが、M&Aに対応する仕組みがあるか、組織としての能力があるか否かを知りたいと考えている。そのような点ついて対話を行いたいと考えており、対話が可能となり中長期的な価値創造について信頼できると、短期のイベントに一喜一憂しない。(専門家)
    • M&A専門のチームを社内に有するか否かという調査について、日本では79%が有していないという結果が出ている。さらに、買収後の実質的な統合(PMI: Post Merger Integration)をいつから検討するかという調査に関して、日本はディール終了後に開始しているケースが46%を占めており、M&Aの失敗の理由として専門チームがないことによるPMI開始の遅れを挙げるケースもある。すべてのM&Aが成功するわけではなく、M&Aに関する日本及び欧米の調査結果によると、M&Aにより価値を喪失したケースが価値を創出したケースを上回っているという結果もが出ているが、専門のチームを備えておくことで成功の可能性を高くすると考える。(投資家)

5) グローバル事業を支える社内の共通プラットフォームはどうあるべきか。

  • グローバル企業の共通プラットフォームとして、企業理念の共有が重要
    • コーポレートフィロソフィーを会社の中で全世界の従業員と共有することを心がけているが、実体験として、機関投資家も機関投資家内での投資理念の共有という同様の悩みを掲げていた。事業会社と投資家でいかに共通のプラットフォームを見いだすのかというのが、対話のテーマのひとつになると思う。(経営者)
  • グローバル事業を支える執行体制や情報システムの共通化が重要
    • グローバルで共通プラットフォームを整備しておけば、同じデータを世界中の社員が見ることができ、インターナショナル間でのコミュニケーションが非常に円滑化される。M&Aにおけるインテグレーションにおいても重要なポイントになると考える。(投資家)
    • 自分が社外役員を務める会社で感じていることとして、グローバル経営執行体制を築くのは非常に重要である。海外拠点の執行部がグローバル経営の視点に立ち、経営全般から、R&D等具体的な点も含め、企業価値向上に向けてどのような体制を構築するか議論することが必要なのではないか。(専門家)
  • グローバルな人材活用が重要
    • 日本企業の投資先に関して、海外の人材を有効活用していないケースがある。海外の人材を把握して、才能のある社員を積極的に迎え入れることが重要と考える。(投資家)
  • 海外の子会社等から良い仕組みを学び、取り入れることも有益
    • M&A後に社外役員として中に入るうちに、海外子会社における非常に良い取り組みに気づくことがある。自社グループ内での各国のベストプラクティスを集めて、シェアすべきである。海外から良いケースを取り込むこと、逆に自社の良いケースを海外に共有すること両面あるだろう。(経営者)

6)投資を判断、評価する際の時間軸はどのようなものか。

  • 企業によっては、30~50年に及ぶ長期的な開発・投資が求められる事業を継続する必要がある。こうした事業をポートフォリオの中でどのように判断するかが求められる。
    • 当社の現在の主力事業は50年ほど前から始めたものの、はじめの35年位はずっと赤字であったが、経営者・当該事業部門の強い意志と業績を支える事業の存在により継続することで成功した。次の新しい事業を考える上でも同様に長期間かかることを想定している。(経営者)
    • 5年だから、10年だから長いという話ではなく、各企業の事業ポートフォリオによって異なる。事業ポートフォリオに合った的確な投資期間があると考えている。(投資家)
  • 企業価値を考える上では、長期的思考だけ大事にすべきでなく、短期、中期を踏まえた上で長期を考えるべき。
    • 会社の経営者としては、短期、中期、長期も大事で、長期的思考だけ大事にするといった考えには賛同できない。3年先の事もわからないのに、10年先ことはわからない。短期→中期→長期の順で大事であると考える。(経営者)
  • 企業と投資家との対話においては、時間軸に対する認識にミスマッチが生じないようにすることが重要である。中期計画はそのためのツールとして重要。
    • 企業と投資家の対話が長期的な観点で行われるべきか、短期的な観点で行われるべきか、はその企業の業態や投資家の投資期間に関するスタンスにより異なると思われる。企業と投資家の間で時間軸のミスマッチが生じることは望ましくない。こうしたミスマッチを防ぐためには、双方の丁寧な対話が重要である。投資家は自身の投資スタンスに沿わない企業に投資すべきではないと思われるし、企業は特定の株主の期待に応えることが困難な場合はその株主には株式の保有をご遠慮していただく努力が必要ではないか。(投資家)
    • 自分が社外役員を務める会社においても、海外企業のM&A後相当の時間をかけてグローバル企業化してきた。グローバルのM&Aは短期間で実績が出せるものばかりではない。そのため、中期経営計画についても相当な時間をかけて作りこみ、中期的に投資家に株式を保有してもらうための重要なツールと考える必要がある。(専門家)
  • 市場は短期と長期の思考を持つ投資家が混在していることで効率的に運用されるものであり、短期的思考をむやみに排除するべきではない。
    • 事業会社に対して聞きたいのはショートターミズムが言い訳になっていないか。事業会社としてもう少し説明ができるのではないか。全ての投資家に似たようなタームでの考え方を求めることはキャピタルマーケットとしてナンセンスで、短期的思考の人と長期的思考の人が混在してキャピタルマーケットが効率的に運用される。全員がパッシブ運用、長期的思考となると、経営サイドに時間的プレッシャーはなくなるが、ある意味、アクティブの運用者は短期で結果が出ないのであれば売却する等の行動をとることによって、経営サイドに時間的プレッシャーがかかっていくと思うので、そういったものをショートターミズムとして否定してしまうのは行き過ぎではないか。(投資家)

4. 情報開示と建設的な対話のあり方

以下を主な論点として、討議が行われた。

1)中長期的な観点からの開示と対話はどのように行われるのか。

  • 企業と投資家の間で、四半期等の短い時間軸での議論はかみ合ってきたが、中長期的な価値創造に関する議論に時間を割くべき。そのために投資家の選別も必要。
    • 中期的な価値創造をベースにした議論については、できる投資家とできない投資家がいる。可能な範囲で、中長期的な議論ができる投資家との対話に時間を割くべく選別しようと考えている。各社のCFOと情報交換すると、同様に動いているようだ。(経営者)
    • 投資家と企業の議論をかみ合うようにすべきである。四半期決算のデータは充実しており、以前よりはかみ合っていると思う。今後充実させるべきなのは、中長期的にどのように価値創造がされてきたかである。また、対話にかける時間の制約もあり、企業が投資家を選ぶこともこれから起こり得る。従って、中長期的な価値創造の実現に向けてお互いのニーズに合ったディスクロージャーを用意することが重要になるだろう。(投資家)
    • 四半期決算は十分かみ合ってきた。中期経営計画についてみれば、海外よりも日本企業のほうが十分に開示している面があると思う。中期経営計画のレビューについて企業と投資家の対話が必要となっており、この対話が十分にできるかどうかで投資家は選別されていくことになると思う。(投資家)

2)投資家が企業を選別するのと同様、企業は投資家を選べるのか。

  • 企業側が対話を深める投資家を選ぶことは重要。そのために証券会社も役割を果たしうる。
    • 企業が投資家を選ぶというのは同感だが、例えば中長期的に保有して建設的な対話ができる投資家に持ってもらいたいと思っても、どの投資家がマッチするのか選定することが難しい。(経営者)
    • 投資家を選別するにあたっても、現在海外株主比率が高いこともあり、国内の長期機関投資家にもっと当社の株式を持って欲しいと思い、よく意見交換をするが、ポートフォリオ上これ以上持てないという声が多い。もう一歩積極的に持ってもらえないものだろうか。(経営者)
    • 自社にあった投資家をどのようにして見つけるかという点について、まずは証券会社に希望を伝え、紹介してもらい、その後は直接やり取りをしながらリレーションを構築することができる。(投資家)
    • 企業側が運用会社を選ぶという点について、それがあるべき姿になっていくであろうと思うし、アセットオーナーとしては、運用会社が事業会社からどう評価されたかというのをチェックしていきたい。(投資家)

3)安定株主と政策保有株主はどのように異なるのか。

  • 政策保有株主と安定株主は異なる。安定株主は企業理念への深い共感を元に長期的に株式保有しており、そのためにも対話が重要。
    • 政策保有株主と安定株主は別であろう。政策保有株の存在は議決権の空洞化を招く可能性があるが、安定株主はもっと広い概念の株主だと思う。安定株主は個人であっても長年にわたり企業とコミュニケーションをとっている株主であり、企業が直面する様々な状況に応じて株式を売却することもあるが、株価が大きく下落する局面で逆に買い方に回ることもある。(投資家)
    •  エンゲージメント投資家についても、全く売らずに持っているかというと必ずしもそうではなく、短期・中期の延長線として長期で持っているのであり、経営についての信頼感を保ちながら、局面局面では売ることもあるが、基本的には長く持つというあり方が安定株主として機能するという面があると理解しており、当社もそのような方法を模索している。(投資家)
    • 当社はリーマンショックを経て外国人株式保有比率が67%から30%に低下した。あの局面で持ち続けるのは難しいとは思うが、企業側からすると、もう少しいろいろなタイプの投資家と対話をしていれば、一部の売却で済んだのではないかと思うことがある。同じ長期でもフィロソフィーが違うので、CFOはそれを考えるべき。当社の場合、過去から将来を見通すのは難しい発行体であり、このビジネスは将来このようになるということを丁寧に説明していきたい。(経営者)

5. 閉会

柳瀬経済産業政策局長
  • 本日は参加者皆様に高いレベルの議論をして頂き感謝。ここの議論を通じて日本全体でレベルアップすることを期待する。
  • 安倍政権になり、「稼ぐ力」の向上を目指し、TPP、電力自由化等、様々な制度改革を積極的に行い障害を取り除いてきたが、実際に「稼ぐ力」を向上させる主体は民間部門であり、ROEもかつてより向上しつつあるが、一層の向上に期待しているところ。
  • そのためには投資家と企業のさらなるの関係強化が不可欠と考えており、投資家と経営者の対話の質を高めていくことが重要である。
  • 本日の議論において、単純な海外進出ということではない経営そのもののグローバル化と、急速なテクノロジー変革への対応が重要だと感じたが、引き続き、企業ができること、投資家ができること、さらに政府のほうでできることを考えるべく議論させてもらいたい。

以上

関連リンク

お問合せ先

経済産業政策局 産業資金課

 
 
最終更新日:2016年4月11日
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.