経済産業省
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企業情報開示検討分科会(第6回)‐議事要旨

日時:平成27年2月16日(月曜日)10時00分~12時00分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

出席者

(企業情報開示検討分科会委員)
伊藤座長、秋葉委員、稲葉委員、内野委員、小野委員、北川委員、久保委員、熊谷委員、三瓶委員、関根委員、早川委員、深澤委員、藤田委員、安井委員、弥永委員、山田(俊)委員
(株主総会のあり方検討分科会)
岩田委員

議題

  1. 本分科会のテーマに関する全般的討議
    • 持続的な企業価値の創造に向けた企業と投資家との対話を促進する観点から、望ましい企業情報開示のあり方について
    • その他
  2. 取りまとめに向けての検討等

議事概要

以下の通り。

  • 資料の確認後、事務局より資料説明。その後、我が国が対話先進国となるため、最も効率的に有用な情報の開示を実現するためには、いかなる開示のかたちを志向すべきかについて委員間で議論。その際の概要は以下のとおり。
  • 法定開示書類である財務情報を一体化していくことについて、監査人の立場から意見を述べさせていただきたい。
  • 開示のタイミングと監査報告書日付が同一という前提で、監査対象となる財務情報をすべて一体化し、その開示情報を株主総会で利用できるものとすると、我々監査人としても、財務諸表監査の一連の作業のうちの開示項目の監査作業の部分が減少するという意味での作業負担は軽減される。監査は年度を通じて行われるため、全体としての時間数から比べれば必ずしも多くないが、作業が集中しこれ以上の分散化が難しい期末の時期での作業負担の軽減は質的に重要である。また、開示の重複の問題や後発事象の問題も克服されるという利点があり、他方で株主側においても有報をベースとした情報を総会前に入手することができるため、企業と株主の対話促進につながると考えている。なお、会社法と金商法の監査が二重という指摘もあったが、二重になっているのは開示の部分が基本であり、それ以外の部分は一体化されている。
  • 仮に、完全な一体化ではなく、どちらかの開示書類で開示した内容を他の開示書類に利用した場合、利用した部分が同じ情報であったとしても、全く同じ情報であることを確認するためのチェック作業が必要となる。このため、どこまで一体化するかによって作業の追加が必要になる。
  • 完全に一体化された場合の開示のタイミングについて、監査人としては、現状、有報の監査報告書の提出までの日数(90日程度)はかからないとは考えているが、現状5月半ば頃に提出されている会社法の監査報告書日までに、すべての監査業務を終えることは、実務上不可能に近いと考えており、この点は強調しておきたい。
  • 適切な作成期間とそれを前提とした監査期間を確保すること、すなわち情報の信頼性を確保するための十分な期間の確保は重要であると考えている。これは、有報を少し前倒しして提出する一方で、株主総会を後倒しで開催することにより、実現可能ではないかと考えている。
  • 実現可能性の観点から、完全に一体化するためには、法律や制度その他の整理が必要であり相当な時間を要する。当協会プレゼン資料の案1(会社法監査報告書日付と金商法監査報告書日付との期間を極力短縮することで、複数開示を前提とした「時の経過による状況変化」の発生の可能性を軽減する方法)のように、2つの法定開示書類における開示のタイミングを近づけることができれば、後発事象の影響が少なくなる。また、内容の重複を可能な限り減少させることで、作業の重複の問題も削減できるため、このような方法を検討することも有益であると考える。
  • 資料「望ましい企業情報の実現に向けた問い」は、機関投資家の立場から、情報の性質を「適時性」と「質」の2つの側面に分け、また情報を取りに行く目的を、「常時・投資判断(新規)」「常時・投資判断(更新)」「権利行使」という3つの側面に分けて見方を整理したものである。
  • 機関投資家が、これまで知らなかった会社について情報を収集しようとする場合、情報の性質としては質が優先され、情報の内容としては(資料2に記載されている)coverage(1)経営者のビジョン、経営戦略、中計、ビジネスモデル、ガバナンス、事業ポートや事業概要等、coverage(2)一定期間における成果や財務状態等に関する情報・年度決算、四半期決算や関連情報、coverage(3)株主としての権利行使等のための情報・取締役等の選任、配当等の情報(議案及び関連情報)等、広範な情報を必要とする。これらは、一般的には電子媒体を通じて、機関投資家側が、能動的に取りに行く情報である。
  • 一旦株主になった後は、発行体側からタイムリーに更新情報を入手することになるが、このケースでは、利用者が、発行者側の発信する情報を様々な媒体を通じてタイムリーに入手できる状態にすることが、あるべき姿であると考えている。
    この場合、情報の性質の側面からは、質よりも適時性が優先する。適時性が優先する分、質については、特に財務情報を中心とするcoverage(2)(一部財務情報以外の臨時的な情報を含む)に関して情報のアップデートとして、更新された情報を入手できればよい。
  • 権利行使に係る情報は、株主がその権利を行使するか否かに係る情報であり非常に大事である。発行体と利用者の情報交換の観点から言えば、情報を利用者に漏れなく届ける必要があり、複数媒体が必要となる。また、アップデートよりもさらに厳密な情報提供が必要になる。すなわち、(資料2に記載されている)coverage(2)一定期間における成果や財務状態等に関する情報・年度決算、四半期決算や関連情報や、coverage(3)株主としての権利行使等のための情報・取締役等の選任、配当等の情報(議案及び関連情報)が漏れなくタイムリーに提供されることが重要である。権利行使に必要な情報であるため、高い質の情報が求められると同時に、期限内に必要な判断ができるための適時性も必要となる。特にcoverage(3)はマストだと思う。
  • なお、「信頼性」と一言でいっても、投資判断に必要となる信頼性か、株主として権利行使する際に判断を間違えないという意味における信頼性か、開示のルールに則っているかという法的な意味での信頼性かなど、その意味するところは様々である。例えば、何かの情報で書き方を誤ったため訂正を出さなければならないケースにおいては、訂正情報が流れたとしても、それは単なる開示の仕方、見た目であるとすると、利用者はそれをもらったところで何ら判断は変わらない。監査の立場からは厳密な意味における信頼性が求められるかもしれないが、利用者の立場からは、投資判断を誤らせないという意味において信頼性が担保されていれば、一定の信頼性を保っていると考えられる。
  • (資料2 問1・問2に関して)発行体側では、有報における非財務情報と、事業報告における非財務情報とでは、項目が同じであっても細かさや量だけの違いでなく、異なる対応をしないといけないものが多数あると実感している。他方、監査対象となる財務情報については、表示や開示の仕方が異なるとはいえ、ベースとなる決算基礎データは、決算短信、会社法の計算書類・付属明細書及び有価証券報告書の経理の状況とも、基本的にはすべて同じである。
  • 現行では、会社法、金商法、取引所規則という3つの開示規制があり、また会社法、金商法の2つの監査が行われているが、非財務情報については、それぞれの趣旨に沿って記載することになると思うものの、財務(決算)情報((2))に関して、少し大胆であるが、3つの開示と2つの監査を一本化することを強く志向するべきではないか。
  • 大部分の有報に係る財務諸表情報や注記情報については、短信発表前の決算取締役会の基礎資料として大半が作成されているため、基本的に事業報告、決算短信、有報については、45日を目途として一本化し、監査をすることを検討してはどうか。一方、経営者のビジョン、ビジネスモデル等については、非財務情報として、諸外国等の実務を考慮し、作成するアニュアルレポートに有報の情報を取り込むことがよいのではないか。その場合、作成するアニュアルレポートには、45日以内に作成した決算情報、非財務情報でかつ事業報告に追加して記載する現行の有報の内容、コーポレートガバナンスコード等で求められている投資家との対話のために有用と考えられる任意の情報が含まれることになる。情報の質とタイミングに関しては、年度に係る決算発表について、東証で発表する決算短信の平均値が37日程度、会社法計算書類の監査報告書取得日が42.5日(この差は5.5日)であり、また半数程度の会社が会社法の監査報告書を取得してから決算発表をしているというデータがある。監査報告書を取得してから決算発表をすることで、質と適時性を同時に担保することができる。そのため、45日以内に、全てこれを作成していくという考え方がいいのではないかと思う。
  • 四半期決算短信と、四半期報告書の提出日は、概ね6日程度のズレしかないこと、また東証データによれば、2,372社中760社が、ほぼ発表の同日か、発表の1~2日違いでレビュー報告書を取得しているため、レビュー報告書の取得をもって四半期情報を開示することで統一してはどうかと考える。
  • 伝達・開示方法については、株主総会の電子行使プラットフォームや、総会日当日の電子投票についても併せて検討していくべきではないか。
  • 非常にハードルが高い議論になると思うが、会社法の開示について、公開会社については金商法や取引所の開示を意識した開示を行うこととするなど、公開会社と非公開会社で分けた取扱いを検討してはどうか。法律の根幹をいじると収拾がつかなくなるため、その工夫について皆で知恵を出してはどうか。
  • 当社では、開示関連部署で集まって、望ましい企業情報開示の実現に向けてどのように考えればよいかについて、検討を行った。
  • 当社が公表する短信・有報・計算書類等に関しては、過去に1度だけ、外部からの照会を受けたことがあったが、昨今は、全く問い合わせを受けていないのが実態である。この実態の意味するところは、開示内容に極めて満足しているか、読んでいないか、あるいは興味がないものを開示しているか、のいずれかであるように思う。
  • (質問)以前の分科会において、機関投資家の方から、有報の情報を活用しているとの発言があったと記憶している。機関投資家の方は、発行体が想定していないような有報等の活用をしているのか、また有報等で開示されているすべての情報を活用されているか、活用されていない情報はないのか、すなわち情報の活用の仕方・頻度についてお伺いしたい。
  • 一体化を議論する際に、求められている情報を是として、その重複をなくしていくことが重要である。開示情報として、投資家との対話のためには何が必要かをゼロベースで検討してみたところ、投資家さんのとのone on oneであれ、あるいは集会形式であれ、どの方からも聞かれる内容は、業績の見通し、キャッシュ・フローの見通し、リスク管理体制、株主還元方針の4つである。それ以外の情報は、長期であれ短期であれ、投資家の投資スタンスや、関心をお持ちの産業に関連した情報であり、投資家によってばらばらというのが、実態である。
  • 開示する情報は、株主の権利行使に必要な情報と、それ以外の情報(企業の詳細分析情報等を含む)に分けてはどうか。つまり、株主総会までに株主、業績の見通し、キャッシュ・フローの見通し、リスク管理体制、株主還元方針を株主の権利行使に必要な情報として開示し、それ以外の投資判断に必要となる情報等については、事業年度終了後から何か月以内に開示することとしてはどうか。こうすることで、適時性と質を同時に達成することができる。
  • 資料「望ましい企業情報の実現に向けた問い」では、「取りにいく情報」と企業側が「漏れなく発信する情報」に分類整理されていたが、株主権利行使に必要な情報は、この「漏れなく発信する情報」の方の、定量的な情報が中心になるのではないかと感じた。また、「取りにいく情報」は、長期の投資判断に対して求められる情報であり、その一部も当然株主権利行使に関係するとは思う。一方取りに行く情報のかなりの部分が企業に対する分析情報であり、これらの情報は株主総会までにどこまで必要かは取捨選択をすればいいのではないかと感じた。
  • (回答)使っていない情報を列挙することは難しい。また企業によっても使う情報は異なる。ご質問いただいた委員の会社は、以前アナリストとして担当させていただいたが、その際に、持分法適用会社約200社すべてについて、戦略的にどのような位置づけなのか、すなわち、純投資目的で保有しているのか、事業の一部として戦略投資目的で保有しているのかについて、個別の状況のみならず全体としての考え方についてIR担当者にヒアリングさせていただいたことがあった。その翌日には、副社長とのミーティングを設定していただき、どのような戦略的な意図があって、どのような場合には20%株式を保有し、どのような場合には40%株式を保有しているか等について、一つ一つ説明をしていただき、ポートフォリオの組み方について理解することができた。ただ、こうしたヒアリングを、どの会社に対しても一様に行うわけではない。
  • そのほか、税効果会計の注記では、評価性引当額の大きい会社をピックアップするなどの作業を行っている。また、退職給付に関する会計基準等の取扱いが変更されたときには、「未認識数理計算上の差異」、「前払年金費用」等、財務データベンダーのデータベースにないが必要な有報注記情報をプログラム化したエクセルシートに書き込んで全銘柄について影響額を分析した。注目項目やヒアリングするしないは個々の会社の状況や、影響額や重要性が高いか否かによって異なる。
  • 開示内容が多くなるので、土台になるベーシックなものを作った方がよいと思う。現在、各社が作成している統合レポートを推進し、アニュアルレポートの拡張版を作成してはどうか。現在、統合レポートを作成している会社は100社程度であると思うが統合レポートの中で、参照方式を用いて、ディスクローズの道しるべや索引のようなものを作成してはどうか。そうすれば、機関投資家のみならず、個人投資家も活用でき、効率的な土台作りに資するのではないかと思う。
  • 日本基準でもIFRSでも、特定の業種のための会計基準はないと理解している。利用者のうち誰かが必要であれば、会計基準は開発されることとなる。
  • 現在IFRSにおいても、ディスクロージャープロジェクトが立ち上がり、開示が多すぎるという点で議論がなされているが、作成者側が重要性を積極的に判断するという方向で解決策が検討されている。つまり、実務的には難しいが、作成者が開示の重要性を判断し、開示するか否かを決定することになる。
  • 脚注情報に限らず、任意開示(業績予想開示など)についても、業種によって使われる情報と使われない情報が異なるのではないか。これを会社側の判断に委ねて開示することは難しい。
  • ベストプラクティスを作っていくためには、座長の「投資家と作成者のフォーラム」においても議論されていたように、業種ごとにどのような開示がベストであるかを話し合っていく場があってもよいのではないかと考える。
  • 一体化を検討する際に、最低限必要な情報とは何かを考えることが重要であると思う。全ての会社に一様に高い開示水準を求めることとは話が違う。
  • 個人的な意見として述べさせていただくが、利用者の立場からすると、情報が分散されていると分かりづらい。監査された一覧性のあるものがあることが望ましい。
  • 確定した決算情報は、有報により決算期末から約90日後に開示されているが、国際的な比較では90日では遅いということで、それを埋めているのが決算短信であると思う。適時開示は、結局のところ、定時の開示の間を埋めていくものであると思う。
  • 諸外国との比較を含め、適時開示の位置づけについて考えるべきである。例えば、45日目に監査報告書が添付された有報が提出されるなら、現状のような決算短信は不要であるかもしれない。また四半期決算短信と四半期報告書の開示についても、投資情報として6日間のズレが長いととらえるか、短いととらえるか考える必要がある。
  • 適時開示については、会社側で信頼性を担保することが必要であって、中長期的・継続的に発生するものなど、そもそも監査にはなじまない性質の情報もある。例えば、中期計画を立てた場合、その作成根拠について、投資家としては非常に興味があると思うが、その情報に対して監査を求めるということはないと思う。情報の信頼性の確保の仕方は様々である。
  • 投資家保護の観点で、理想の開示の検討においては、合わせて最低限開示の必要な情報を検討する必要があると思う。その上で理想の開示とのギャップを埋める方法、例えば任意開示という形で埋めるのがよいのかを考えるべきではないか。
  • 上場会社の多様性を考えると全ての会社に理想の開示を一律で高い水準で求めることは難しいと思う。
  • 商社のディスクロージャーは非常に優れており、詳細な分析が可能である。
  • 長期投資家は、有報を活用する。長期投資家は、会計基準の変更による調整も踏まえた上で相当、遡って有報を分析している。
  • 中期経営計画の達成をコミットメントとして開示するには難しい情報である。情報の出し方を検討してはどうか。コミットメントという言葉は市場への「約束」という意味であり重く受け止めなければならない言葉で安易に使うことに警鐘を促したい。従って中期計画など中長期的な企業情報の開示の仕方については、フレキシビリティを持って考えるべきではないか。
  • ボランタリー情報の質を高めることが重要(商社や医薬品業界の開示の質は高い)。
  • ベストプラクティスは、今も日本に多数ある。これをどうやって広めていくかが必要である。
  • 長期投資家を定義することが重要であるが、その場合の時間軸(タイムホライズン)をどのように考えたらよいかが問題である。通常5~7年先までの業績予想を真摯に行い選択した投資評価手法に基づき投資意思決定しポートフォリオを構成している運用機関を指す。
  • 日本では、開示規制が複雑であるがゆえに時間とコストがかかっていることや、規制によって経営者の手足を縛り、経営者の投資家との対話に関するモチベーションを減退させていることが、対話が促進しない要因ではないか。
  • 経営者の自由度(のりしろ)をもっと高めることにより、現行の規制を緩和させることが必要ではないか。例えば、非財務情報について、重要性の判断を企業側に委ねることや、情報の伝達の仕方やフォーマットを検討することも考えられる。
  • ヨーロッパは会社法で一本化されており、開示一元化に賛成であるが、特にフランスでは、最近金商法が出来たばかりである。日本には、会社法と金商法が長いこと併存してきた歴史がある。会社法と金商法の制度趣旨、歴史等を十分に踏まえた上で、一元化を検討していくことが重要である。
  • 先ほど、45日で監査報告書まで取得することができれば、決算短信は不要であるという発言があったが、実務上45日で監査を終えることは難しい。作成者の方に、現状90日近くかかっている有報をもう少し早く作成することはできないかヒアリングしたところ、決算短信で開示される基本的な箇所は完成するが、有報で開示するオフバランスの注記等の情報を作成するのに時間がかかるため難しいとのことであった。
  • 実務的にどのくらいで開示が可能かを考える場合、グローバル化されている財務情報を前提に、海外の例が参考になるが、資料4 参考資料によると、海外の大規模の会社の開示は50日程度であるが、したがって、すべての企業が、アメリカの大規模企業のように50日で開示できるかというと、なかなか難しいのではないか。様々な企業を監査している監査人の経験からすると、アメリカの小規模企業の59日というのも平均であるためかなり厳しいのではないかと思う。現在の90日よりは全体的に少し早められるとは思うが、その辺は考えていかなければいけないのではないか。
  • そうした場合、決算短信が70日とか60日でもいいかというと、やはりもっと前に出すべきということになると思う。監査まで終えるのにはそれなりに時間がかかるが、決算短信は、信頼性を考慮しつつ即時性を優先することが必要である。財務諸表の作成責任はまず会社側にあるので、会社の責任において、すべての情報を出すわけではなく、公表できるというレベルでと考えていくのではないか。
  • 例えば、ドイツなどでは、決算短信は監査を受けてから出しているところがあるが、逆に、アメリカの企業などは監査報告書日付よりかなり早い。現在の日本の決算発表の時期をずっと遅らせるというのは現実的ではなく今まで出ていたものが30日後でもいいという人はなかなかいないため、アメリカ型に移行せざるを得ないのではないかとは思う。監査には一定の時間が必要であり、決算短信にはそれを待つまでの信頼性よりも即時性が優先されるのではないかと考えている。
  • 四半期に係る開示は、適時性から制度化されているものである。信頼性の担保としての四半期レビューも、年度の監査と比べて手続量も少なく、四半期財務諸表の適正性についても消極的形式での報告書が出されている。年度決算と比較して制度全体としての適時性がより重んじられているため、結果として会社の責任で公表する短信とレビュー手続を受けた四半期報告書の公表時期がさほど変わらないのも当然である。それぞれの役割を果たすと適時性と信頼性の確保が年度ほど必要ではないため、四半期決算短信と四半期報告書の情報は近づいていると理解している。
  • これまで東証指導の甲斐もあり情報開示の底上げがなされて来たが、これから一歩先に進むためには、最低限の開示のみを行う企業と、理想の開示を追求し投資家との対話を促進する企業とに、二極化することもやむを得ないと考えている。
  • 投資家は、投資先の企業が将来どうなるかという期待を込めて投資をする。過去実績の財務情報だけでなく、非財務情報のウエイトも当然に高まっていく。
  • あるIR担当者から、海外の長期投資家は長期のことしか聞かず、海外の短期投資家は足下の決算の情報のみを聞く。国内投資家は、中長期の話も足下の話も全て網羅して聞くので厄介だといわれたことがある。
    実際、我々も3年先・5年先だけを見て投資できるわけではなく、全く短期的なものを無視できるかというと、それもできない。リーマンショック後、セルサイドもバイサイドも、アナリストが大幅に減り、一人当たりのカバレッジが増える傾向にあるため、腰を据えてじっくり1つの企業を何日もかけて分析できている人がどれだけいるか疑問である。もちろんそこは改善していかなければならない問題であるであるが、現状それで(長期投資で)一本化できますかというと、すぐにそういう状態にはならないと思う。アナリストの質のレベルアップとともに、短期投資家と長期投資家の選別をしていくということも必要なのではないかと思っている。
  • 有報は、過去の情報を遡って利用することができる点で有用である。今見ないから不要な情報ということではない。
  • 統合レポートが400ページ500ページになると読めないので、もっと詳しく知りたい人はここを見てくださいというような参照方式に、チャレンジする企業があってもいいのではないかと思う。
  • 開示情報としては、有報が最も優れていると考えている。Web上で株主総会前までに徐々に完成させていくという方法が良いのではないか。提出期限については、ユーザーからみると現状の90日では遅すぎる。60日が理想だが、作成側の事情を考慮し、75日でもよいと思う。
  • 有報は、ほとんどの企業が印刷会社等が作成する記載例や他社事例に基づいて作成するため、表現が堅苦しくなっている。統合レポートやアニュアルレポートを作成するときのように、読み手にとっての分かりやすさを意識すべきである。モジュール型と参照方式を利用することにより、財務諸表のフォーマットは統一し、会社法で開示した情報はその後も利用することができるようにした方がよい。
  • 四半期については、適時性の観点から、四半期報告書のみでよいと思う。
  • 開示は、作成者側の有限の資源をどのように配分するかという観点が重要である。
  • 決算短信に関して、どの程度詳細な記載を求めるかについては、避けては通れないように思う。
  • 決算短信は未監査であるとはいえ、決算短信において開示した情報を、その後法定開示の過程で変更することには抵抗がある会社が多いのが現実ではないか。そのため、決算短信を事前に監査人に見てもらう必要があるが、監査報告書が出ていないにしても、監査人からよいと言ってもらうためには、合理的な期間の確保が必要になる。それは適時性との間でトレードオフが生じることとなる。早めに情報を開示する場合には、あとで細かい数値が変わった程度では動かない程度の概括的な開示を標準にし、最低限何を開示させるべきかを検討した方がよいのではないか。
  • 情報の信頼性は、人によって捉え方が異なる。年度の有報は監査され、四半期報告書はレビューされ、短信については監査もレビューも実施されていない。監査やレビューがなされていないと信頼性が確保されていないと捉える方もいるが、数年前に内部統制報告制度が始まり、上場会社は自らが内部統制を維持しているため、財務情報の信頼性は以前に比べて格段に高くなっている。情報の信頼性については、作成者サイドと利用者サイドの共通の理解が必要である。
  • 対話先進国となるためには、信頼性以外の質という側面において、海外の投資家が日本の企業をどのように見ているか、すなわち国際的な開示水準を念頭に置いて開示することが必要ではないか。
  • 対話先進国になるためには、(1)インサイダーインフォメーションが存在しうる決算期末から決算発表までの期間を短くするために、短信に相当するプレスリリースをできるだけ早く開示すること、(2)プレスリリースで出せない情報については、丁寧に準備した分、一つにまとめ、株主総会の前に充実した情報を開示することの2つが最も重要であると考えている。特に、開示を充実させるためには、注記の内容と中長期・継続的な企業情報を充実させ、ただのアップデートレポートではなく伝わることが重要であると考えている。
  • 優れたIRとは、優れた精神分析医に会うことと似ているとかつて受賞企業の社長から聞いたことがある。
  • かつて機関投資家として勤務していた時に、先輩から、投資家との対話とはギブアンドテイクでなければならず、企業側にギブするようでなければならない、といわれたことがある。少なくとも、CEOにお会いする場合には、そういった視点も重要ではないか。
  • G20が11月にトルコイスタンブールで行われるが、そこでB20がG20に提言するため、B20において5つのタスクフォースが組まれており、IIRCがそれぞれのタスクフォースに統合報告の視点から横断的にアドバイスをすることとなった(座長は日本代表としてそのアドバイザーとして推薦された)。世界では、G20、B20のレベルまで、統合報告が浸透してきているという大きな動きがあるということを、我々も共有する必要がある。
  • ハーバードビジネスレビューの電子版において、2人の共著者が、伊藤レポートにも言及しながら、アメリカも統合報告に力をいれなければならないと記載していた。対話や開示を見直そうという、世界的なうねりがあるということも我々も共有しなければならない。

以上

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最終更新日:2015年4月3日
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