経済産業省
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アパレル・サプライチェーン研究会(第4回)-議事要旨

日時:平成28年3月8日(火曜日)15時00分~17時00分
場所:経済産業省本館17階第1共用会議室

出席者

委員
井出 陽一郎[代理出席] 日本百貨店協会 専務理事
大澤道雄[代理出席] (株)オンワードホールディングス 専務執行役員
貝原良治 カイハラ(株) 代表取締役会長
尾原蓉子 (一社)ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション 会長
軍地 彩弓 (株)gumi-gumi 代表取締役/「ヌメロトウキョウ」エディトリアル・ディレクター
小島 健輔 (株)小島ファッションマーケティング 代表取締役
貞末良雄 メーカーズシャツ鎌倉株式会社 取締役会長
下村彬一 日本繊維産業連盟 会長(東レ(株) 相談役)
日光 信二[代理出席] 帝人グループ執行役員 製品事業グループ長
林 弘志[代理出席] 佐川急便株式会社 営業開発部 担当部長
藤野 直明 (株)野村総合研究所 主席研究員
藤本 隆宏 東京大学大学院 経済学研究科教授 ものづくり経営研究センター長
松尾憲久 マツオインターナショナル(株) 代表取締役社長
山田 哲也[代理出席] 日本繊維輸出組合/日本繊維輸入組合 副理事長
経済産業省
糟谷 敏秀 製造産業局長
小林 洋司 製造産業局審議官
寺村 英信 製造産業局繊維課長
宮坂 智芳 製造産業局繊維課通商室長
西垣 淳子 商務情報政策局クリエイティブ産業課長
菅野 将史 製造産業局繊維課 課長補佐

議題概要

  • 寺村課長より、研究会の趣旨、目的などについて資料に沿って説明。
  • 議論

1. 海外に向けて、日本の強み(品質・開発力・技術力)をどうアピールすればよいか

  • 日本には、イッセイミヤケ、ヨウジヤマモト、コムデギャルソンによって切り開かれた日本イメージが存在。我々に受け継がれたDNAは、「そこはかとなく」「たまゆらな」といった大和言葉で語れる洋服。言わば、デジタル化されない、アナログかつ、自由な感覚で自分たちのものづくりを表現した洋服。中国は欧米と同じでデジタル化した技術。炭素繊維など、工業的な技術で展開をすれば成功する事例もあるが、我々のクリエーションにとって大事なのは、日本の何とも規定できない物を表現すること。そういったことを実現するために、新潟の織物工場を買った。多重織りの技術を使った、今までにないものを作ろうとしている。海外で出来ないもの、デジタル化されず、日本のアナログな技術でこそできるものを商品化するということが大切になる。
  • 輸出振興という点では、民芸品、工芸品という次元の話が多く、工業製品という観点の話がない。工業製品は規模と効率性が優先され、文化というよりは文明に属する話。先進国の高コストの中でも、継続して生産できる、装置産業の軸で輸出を考えるのが第一。テキスタイルや染色整理という軸に、産業素材という枠と生活衣料素材の枠を分離して考えることには疑問。
  • キュプラ繊維で作ったデニムは需要がある。それは、軍需産業で売れるから。また、防菌、防ウイルスの衣料分野、建設分野において、テクニカルテキスタイルとアパレルを分離なく開発するプロジェクトが重要。
  • テクニカルテキスタイルの延長と、カテゴリー特化型、つまりファクトリーブランドがグローバルに普遍性が得やすいもの。これは2つの型に分けられる。エルメスのように定番商品を作るものと、ルイ・ヴィトンやTUMIのような素材軸のもの。
  • 合繊デニムや合成皮革などをグローバルな量産効果を出すためにはテクニカルテキスタイルとしての軸で考える必要がある。TUMIやマイケル・コース、セオリーといったブランドの価格帯は普遍性があり、こうしたところで新しいブランドビジネスを作れるだろう。

2. 「東京」から海外に向けてファッションを発信していくにはどうしたらよいか

  • ファッション輸出は文化の輸出・文化の展開。日本が得意としてきた製品輸出は、カメラ、家電製品、車など文明的な製品。これからはやや高価なところとして、文化の発信が必要。文化はコンテンツそのものより、それが置かれているコンテキスト(どういう文脈で、どういうお客様がその文化を理解し、良いと感じるか)が重要。単にものを売るのではなく理解して共感してもらいファンになってもらうもの。
  • ニューヨーク州立ファッション工科大学が4年前に行った展示会「ジャパンファッションナウ」が素晴らしかった。4つのテーマに分け、壁一面にビルの写真を貼り、その前にそれぞれのファッションを置いて表現。表参道にハイファッション、ストリートファッション「カワイイ」は原宿・渋谷、銀座の和光のビルの前にトラディションとトラディションに反逆するメンズ、秋葉原にはコスプレやメイドなど。チーフキュレーターのヴァレリースティールさんによると、日本のファッションを本当に理解してもらうには、ただ並べてもだめ。背景にあるコンテキストを見せたい。それを伝えるために、界隈の風景写真を壁に使用した。ジェイランウェイを立ち上げた千金楽さんも、コンテキストとして原宿・渋谷のイメージをポスターかトラックにつけて普及したと言う。新しいものや日本独特のものを、どう見せるかが大事。NYのEATALY(イタリアのスローフード等を展開しているお店)のように、国を挙げてコンテキスト、コンテンツを見せることを考えられないか。
  • 文化輸出は5つのC:コンテンツ、コンテキスト、カスタマー、コミュニケーション、コミットメント(我々はこんなことをやろうとしている、ぜひファンを作りたいというもの)。ファッションを文化の輸出として考える必要がある。
  • もったいない、自然との共生、同じものを何度も使い回すことといった、自然を大事にしながら自分たちの生活を営むという思想が、これからますます強くなってくる。
  • 東日本大震災で注目されたように、日本はそういうことを持っている国だと認識されている。その中で生まれた感性の表現としてのファッションや、リサイクル、シェアリングのビジネスの仕組みづくりなどといったいろいろなことを、例えば、「2030年の日本ファッション産業」の基本的な哲学として、資源が枯渇し、エネルギー節約が必要、使い捨てを恥じるようになっている中で、日本の長い歴史と文化における、次なるステージのファッションビジネスとして提示できたら良いのでないか。デザイナーの個々の動きはトータルにならない。いろいろなアイデアがあると思うので、こうした観点についてもぜひビジョンの中に入れて欲しい。
  • 海外における日本のブランドの状況は変わってきた。ミラノでは、アルマーニのインビテーションとして「ウジョー」というブランドがショーをやっていた。メンズは「ファセッタズム」。日本ブランドが、アルマーニテアトロという場所でショーをやるのは大きいこと。ジャーナリストは集まらなかったが、スージー・メンケスが来た。日本のブランドをかなり見に来ている。
  • パリでは、LVMHが「LVMHプライズ」を一昨年くらいから設けていて、世界中の注目デザイナーをピックアップして紹介しているが、20ブースのうち4つが日本のブランド。ミキオサカベ、コイケ、ソウシオオツキ、ファセッタズム。ブースを回り、デザイナーにブランドの海外での立ち位置をどのように作るかを聞いた。特に政府の役割を聞いた。
  • ある日本人デザイナーのコメントとして、海外で売るときのネックは関税。TPPでかなり撤廃されていくとは思うが、日本ブランドの上代は1.5倍以上になってしまうので、海外ブランドと戦えない。上代を下げるために、ヨーロッパで現地生産したいが、ノウハウがない。現在、このような形で独立しているデザイナーが、海外から評価されているが、経産省の支援が一時のものはあるものの継続的に行われていない。ヨーロッパの展示会文化は継続がポイントであり、何を訴えるブランドか、どんな特性があり、将来性があるかどうか等を見極めて、買い付けに来る。プロモーション支援が点の状態で継続性がないため、日本のブランドは、話題性はあっても商売を伸ばせない状態がここ数年来続いている。
  • LVMHがプライズを行っているということは、逆に海外は、今、若いデザイナーを探しているということ。つまり、今後、日本人の優秀なデザイナーが日本でものづくりをするのではなく、海外企業の傘下になってしまうことが危惧される。
  • これから支援していかなくてはいけないのは、デザイナーズ・ラグジュアリ型とカテゴリー特化型。自社で、地元のPR拠点や生産拠点を作って力をつけていきているので、ここに繋がっていくようなブランドをこれから支援していくべき。
  • ファセッタズムの落合氏は、海外で賞をとったことで、森ビルから出店依頼が来たなど、国内の見る目が変わったことが良かったとのこと。

3. 生地輸出をさらに拡大するためにはどうしたらよいか

  • 生地の世界では、機能素材のファッション化、ファッションの機能素材化が常識的になっており、進化している。その点で日本の技術はまだまだ生かせる。北陸産地は世界への発信基地であり、守っていく必要がある。
  • 生地輸出において、産地の基盤作り・維持継承のための問題点は、継承者問題や資金の問題のほか、労働力不足が挙げられる。海外からの求めに対応するため、中国、ベトナム、ミャンマーから人を手当しても、文化・習慣の違いがあって軋轢が生まれる。そういったときの対応や、受入体制において、どのように政府から支援を受けられるのか。規制が厳しいために逆に問題が発生することもあり、解決が必要。

4. 製品(衣料品)輸出を今後拡大していくためにはどうしたらよいか

  • ガーメントを海外に輸出する際に、日本には洋服文化がなく、過去からの知識のストックがない。紳士服、スーツについては、1607年に誕生。400年の歴史がある。婦人服については女性が社会進出から50年しかたっていないが、紳士服は長い歴史があり、歴史に則った商品展開をしないと、フォーマル、ビジネスジャンルでは受け入れてもらえない。
  • グローバルサプライチェーンでネックになるのは、日本には、ウールもコットンも原材料がないこと。原材料調達について何らかの対策を講じないと、原料所有国がバーチカルに展開したら、コストパフォーマンスでは太刀打ちできない。
  • ハイエンドのものをどのように開発して差別化していくのか。また、ファッションではあるが、ガーメントは構造物であり、設計図と技術があって製造されるもの。そこに大きな技術、ノウハウの蓄積がないと、いくらファッションを訴えても難しい。最終製品をつくる縫製の現場で、技術の伝承があるか、高齢のスタイリストが生き延びて技術を伝承してくれるかが問題となる。
  • 誰のために作るか、誰に売るかを考え、ものを作るということであって、どこ出口でも売れるといったものは、大衆商品。その辺りを区別し、論じる必要あり。IT、RFIDは企業の合理化戦略であって、消費者戦略にはあまり役立たない。実際には、地道にものづくりをし、欧米諸国と差別化をしなくてはいけない。我々も、イタリアの蓄積の奥深さを勉強しているが、日本がそれに追いつけないことは決してない。イタリアですら、季節変動に惑わされ、縫製業界が厳しい状況にある。
  • 一年間通じて売れるものと作るものをシンクロさせないといけない。オムニもRFIDも作ったものを売るといこと。ネットで商売している企業は作られたものがあるという前提のビジネス。作って売るというビジネスではない。物が余っている時代はそれで良いが、作るところがなくなれば、作られたものをECで売っていくというビジネスはなくなる。まずはものづくりを議論しないと、ファッションビジネスの議論は空回りする。
  • 製品輸出については、規模感を追うことは難しい。先進国を中心としたアッパーミドルゾーンをメインに国内外のアフォーダブルラグジュアリーの製品輸出にフォーカスし、量から質への転換を図るべき。日本のスポーツなどの機能素材やデニムなどは世界的にも評価されている。
  • 日本は世界有数の自動車大国でありながら、輸入車しか乗らない人もいる。繊維の世界でも同じように、日本や他の国の洋服が好きという海外の人が存在する。世界交流が進んで、日本での観光体験などから日本が好きになり、日本の生活・体験を自国でも、という人も多い。将来、海外観光客が2000万人を超えるともっと日本を好きな人が増える。こうした、日本の人を呼ぶ力をうまく活用できればよい。
  • 一度サント・ローレンに年間1億円の家賃をかけて出店したが、大失敗だった。こうした一等地に出店するには、鞄やベルトなど、旅行者や富裕層にサイズや季節関係なく売れる商品が必要。日本で成功しているラグジュアリーブランドも、サイズやシーズン関係なく売れる商品を展開している。
  • 香港は家賃が高く、出店しているウエリントンストリートで月に200万円ぐらいするので、8000万ぐらい売らないと採算が合わない。
  • 直営店を出すと100%自社製品ではないといけないので、内外価格差を1.2倍ぐらいに設定。コストぎりぎりで日本から出荷し、現地の黒字化を図っている。卸ならもう少し高くできる。我々の商品は、取引先の中でも高級ゾーン。ベルギーのクリエイターなどと同じ扱いをしてもらえれば1.5倍ぐらいに設定できる。
  • 海外ではサイズが問題になる。北ドイツとスカンジナビア各国は難しい。当社は南ドイツ以南の南部ヨーロッパが商品の輸出の対象。
  • 海外で成功している企業を見ると、製品を構造体として捉え、そしてその機能を見て、機能と構造の関係を分析して、他産業からアイデアを取り入れている。
  • カイハラや鎌倉シャツは、ある特定のカテゴリーにおいて、高機能なものを比較的スタンダードなものとして売っている。中「インテグラル(摺り合わせ型)」、外「モジュラー(組み合わせ型)」という戦略。インテルも同様。デンソーのような会社も2つの戦略を使い分けている。つまり、カスタマイズした高級品から入り(中インテグラル、外インテグラルといった戦略)、そこからモジュラーへ転換していくことが他産業でも起こっているので、アパレル産業でも起こってくるのではないか。これは、糸、生地、服に限らず、あらゆる階層から輸出できる。
  • まずは、構造体として見直すこと。設計は、構造と機能と工程であるが、工程から見るという発想も大切。イッセイミヤケはインダストリーファーストという意識が強い。つくりやすさや工程の安定性を制約条件として、次にアートを追求。最初からアートと言っている人とはちがうものができる。これは日本の色々な産業に通じる話。まずはインダストリーという意識が重要。
  • 日本の自動車が高級自動車に入ったポイントだが、トヨタのレクサスのときは、マーケット調査をした上で、海外の高級車は、ブランド、イメージ、プレステイジで売れており、これはなかなか追いつかないと判断し、発想を転換し、静粛性と燃費という明確に差が出るところ、海外の自動車メーカーが追いつけないところを追求して物づくりして、ブランドを乗り越え、成功した。
  • カテゴリー特化、機能性重視が重要。そこから、ブランドに到達するまでに、構造体としての分析と輸出モデルを他産業と比較しながら見ると良いアイデアが出るのではないか。
  • 扱う商品が差別性のある優れた製品であることが重要。クオリティーや技術だけではなく、現地の消費者に求められる感性・文化的なものと求められるサイズを、継続的に展開する能力がある。鎌倉シャツの成功ポイントは、失望させないサイズの品揃え。
  • 明快なビジネスモデルがあることが重要。ものづくり現場と売ることを連動させた一気通貫のビジネスモデルが重要。それを合理的な仕組みで運営する(日本流の小売価格からさかのぼった値入率は世界に通用しない。運営自身がグローバルな考えを持ち、ストレートにオープンで売る仕組みが必要)。
  • タレントを使って一時的にブランドを有名にすれば良いというものでなく、ブランディングは、ライフタイムバリューを持ってくれるようなお客さんを長期的に作っていくこと。ないがしろにされがちだと思うので、企業の哲学と物語を語れることが大事。
  • 海外展開したいという企業の強い意志があること。

5. 海外拠点を活用して、海外市場を獲得していく上で、日本の強みをどう生かしていくべきか

  • 2015年の日本の繊維製品全て(原料~製品)の輸出額は80億ドル程度。そのうち3分の2は糸・生地などの原料や素材と想定される。仕向地別でみると、中国向けの織物の持ち帰り輸出は減少しているが、一方で、アセアン諸国向けの織物輸出が増加。
  • 繊維製品のアセンブリングを中国で行うことがコスト的に難しくなり、東南アジア、南アジアへのシフトは加速している。我々も、アセアンに軸足を移して生産しているが、域内における素材背景が少ないのがネック。また、日本市場向けに限定すれば、輸送のリードタイムが中国よりも長い。この2つがクリアできれば、アセアンを活用した衣料製品のものづくりに一気に弾みが付く。
  • 日本からの原料輸出はアセアン向け素材のボトルネックを解消するもの。しかし、トータルリードタイムの短縮やコスト競争力の優位を確保するためには、アセアン域内で、豊富な素材背景を持ってものづくりを行っていく必要がある。
  • 日本からの輸出アイテムも、高付加価値の糸、ヘルスケア・医療の特別技術を伴った素材に輸出アイテムを特化する。一般的な原糸、織り、編みの工程は、アセアン拠点にシフトすることが最も合理的であると考えている。高付加価値の紡績・染色などを扱う日本の生産拠点はマザー工場として進化し、汎用品は海外で拠点を構えて、TPP、EPA域内の市場に対して、外―外での商品供給があるべき姿ではないか。経済合理性を無視した輸出拡大に無理がある。
  • 国内で新たに設備投資をするとすれば100~200億円かかる。当社の工場があるのは、山間部の過疎地。10年後、15年後は維持するのが難しくなるのではという危惧があった。現在でも70%は輸出が占めるが、今後、国内は伸びる余地が少ないことを考えると、さらに海外展開に力を入れなくてはと思い、タイへの進出を決めた。
  • タイは親日で、進出日本企業が多く、仏教徒という好条件。人件費が高いことに対しては設備投資で対応。国内でも全く同じ考え方でやっている。ハードの面で日本は海外に比べて遅れている。生産性・品質などはある程度機械が補ってくれると認識している。ベトナム・インドネシアも見たが、インフラ面などを考慮するとタイが一番であった。
  • 欧米・アジアに既に売り出しているが、よりアジアマーケットは増えるのではと期待し、アジアでの生産を考えた。タイを拠点として欧米、アジアへという考えで進めている。
  • タイに出たからといって大幅なコストダウンができるわけではない。高い品質の製品をタイからも発信できればと考えている。今はできていないが、ステップを踏んで達成していきたい。
  • 日本の繊維産業が世界に比べて劣っているわけではない。むしろ、技術は最先端のものを有している。ソフトとハード両方が揃ってはじめて一流の商品ができる。

6. アジア市場、欧州市場、米国市場でどのような戦略が求められるか

  • 当社がニューヨークで運良く顧客に支持されたのは、私自身にアイヴィというファッションカテゴリーについて割合知識があったこと。また、アメリカ人が懐かしく思っている1960年代のアメリカンファッションの代表であるボタンダウンシャツにフォーカスして出店したこと。さらに、サービスと物が一体化して商売が成り立つものと思っており、日本流のサービスをもって、商品をアメリカントラディショナルに絞り、アメリカのある程度のセールスマン、ビジネスマンに焦点を当てた商品展開を行ったことから。最終的に、競合に勝てたのは、「精緻なものづくりであった」ということと「店頭におけるサービスのレベルがどのラグジュアリーストアよりも優れていた」から。
  • 最初は、我々も人口の多い北京や上海への進出を考えたが、服飾は情緒の商品であり、文化性の高いところに寄っていく。中国は日本よりも欧米寄りのトレンドを持っている。ファッションにおいて、日本は中国に比べ後進国。中国から見れば、欧米は先進国。単に日本のものづくりが良いというだけで、中国市場を狙うのは得策ではない。やがて中国に進出するにしても、アメリカで成功して、アメリカ発の情報として発信すれば、中国、東南アジア市場も攻略できると思っている。そうした中、ニューヨークで2号店ができ、メキシコ、クアラルンプール、韓国、スカンジナビアから出店のオファーもある。また、OEMの注文も入っており、アメリカンインスパイアーの商品を日本の技術で作ってほしいという話もきている。越境サイトも80カ国からアクセスがある。今は英語のみのサイトだが、近々には、中韓語も対応したい。
  • 海外進出の難しさは、輸出先の文化性、ライフスタイルに根付いた商品開発をして、提供しないといけないこと。相手国が望まない物は受け入れてくれない。上手に作ったから買って下さいということには絶対にいかない。
  • 中国は1回でも買えばVIP対応を望まれ、次の来店時には1~2割引いてくれとなる。価格設定もそれを折り込んだものとなる。
  • かつて百貨店は大手を中心に、東南アジア、アメリカ、ヨーロッパなど、個別に海外戦略を進めていた。しかし、実際に成果を上げている例は少ない。これは、日本の百貨店ビジネスモデルが現地で受入れられなかったから。買い取り、委託システムのような商品に係わる展開の仕方だけでなく、労働生産性、国民の消費志向の違いに対応できなかった。
  • いつ、どこで、誰に、どのように売るかというマーケティングの踏み込みが弱かったために、成功には至らなかった。海外店舗を成功に導くには具体的なマーケティングが不可欠で、国民性に対応した商品開発・販売体制が必要となる。
  • 中国人の話を聞くと、日本に来て買うものは食品。理由は安心だから。では、アパレルではどうかというと、中国人は、“日本人が日本人のために作ったもの”を着たいという。サイズはあるが、日本のものそのままで良い。メイド・イン・ジャパンのものや、日本発信のコンテンツの強さを感じる。
  • 当社は欧米進出もしているが、アジアには5カ国に拠点がある。昨年から始めて感じていることは、アジア・東南アジアなどの広域ではなく、文化や人を踏まえた国別の丁寧なマーケティングの重要性。
  • シンガポールは人口約600万人の観光地。日本のSCでやっているものを持って行っても、家賃と見合うのか。路面店を出したところで儲かるか、認知してもらえるかというと考えるとシンガポールは違う。韓国、中国ではまた状況が違う。
  • 中国では、日本のブランドやコンテンツなど、ソフトを売るブランドビジネスを仕掛けている。引き合いがくるので、誰が買うか、しっかり展開してくるのかということをこれから分析していくところ。
  • 日本で作った製品輸出に際して、「越境EC」、「保税区」がキーワード。アパレル関係者が、保税区のビジネスや越境ECについて、一つ一つの国毎に対応していくことが大事。アジア、ヨーロッパなど広域に考えるのは難しい。
  • デザイナーも、素材も、機械も素晴らしいのに、日本の繊維産業はグローバルに見ると発展していない。問題は、日本のビジネスモデルが特殊であること。垂直連鎖構造的なビジネスモデルに固執して、海外で戦うのは難しい。
  • グローバルの開放経済の中で拡大均衡すべき。機械メーカー、素材メーカー、デザイナーなど、それぞれの分野でグローバルなサプライチェーンの中に入るべき。
  • 輸出拡大というトピックは、グローバルで活躍できる会社をどれだけ作れるかという視点でもう一度組み立てられるといい。輸出に直接貢献しなくても、日本で納税してくれればいい。グローバルな取引モデル、レベルの高いグローバルなITのプラットフォームは既に供給されているが、日本ではそういったことに関する情報が足りない。
  • ブランドホルダーとして鎌倉シャツのように全て自分でやらないと海外で展開出来ない、というのでは敷居が高い。パーツ的に、バリューチェーンの一部を担う展開の仕方もある。潜在力はかなり高いと感じている。
  • 情報が足りていない一因は、海外展開については総合商社に全て一任しているから。全てのノウハウが総合商社に蓄積されていて、こうした点に関する議論はこれまであまりない。海外では中堅企業でもグローバルなプラットフォームを活用ながら、全て自分で管理しているところもある。こうした情報を提供できる場を設けて、中堅企業のスケーラブルな成長を促すことができればよい。
  • 2020年には50億人のマーケットが出てくる。そのマーケットの中間層を目指して、日本の中堅企業がグローバルプレイヤーになる道筋を作っていけるといい。

7. 上記の課題への具体的な取組において、ITプラットフォーム等の情報技術が有効に活用できるのではないか

  • 越境ECについては、デザイナーたちが海外に拠点を持つということが想像しにくく、ファセッタズムも、海外のサイトで売られている。海外のECに如何にして入っていくかが大事。海外の人に見てもらうことが一番のポイント。1社で越境ECを立ち上げたところで難しい。ある程度大きいセレクトショップ型の企業体(例えばウェア、ゾゾタウン、楽天など)がもっと越境ECに踏み込んでいって、日本ブランドを結集するというやり方が必要ではないか。
  • ファセッタズムなどのブランドは海外の出展経験がないが、大手のオンワードやTSIなどは海外拠点を持っている。大企業アパレルが持っている生産ラインやコミュニケーション、コネクションといった知見のオープンソース化ができないか。例えばオンワードから若手デザイナーが出てきたとき、オンワードとしてお店を出させるのではなく、FDや生産ラインをコントロールできるコーディネーターを、パッケージでオープン化して、デザイナーが利用できるような状況を作るが良いのでは。一対一の支援ではなく、企業体に入らなくても全ての知見をシェアできるような仕組みがあると良い。
  • アパレルは従来供給過剰、需要不足状態ではあるが、最近のECビジネスにおいて、特に皮革産業で、圧倒的に供給不足型ビジネスが出てきている。靴やハンドバックをネットで受注して、1~2ヶ月後に納品するといったビジネスモデルを展開し、全国の限られた職人や工場のシェアを多く取ることで、受注をさらに増やし、成功している会社が出てきている。
  • 全ての際を超えたオープンプラットフォームが重要。「日本から持ち込んで売るというもの」と「色々な商材を探して日本に持ち込む」といったような、双方向商社のような機能がある海外百貨店はうまくいく。単方向は行き詰まる。輸出は単方向。
  • また、タンスの中がいっぱいになると、新品は売れない。中古服を大量に海外で二次流通させるシステムを作っていくのがよいのではないか。
  • 双方向であって、かつ、BtoB、BtoC、CtoC、そして、新品、中古品を含め、越境ECのオムニチャネルネットワークを構築するのがよいのではないか。回っていく構造を作り、これが海外とリンクしていく。

8. 上記の課題に関して、政策として何が必要か

  • 日本のスポーツなどの機能素材やデニムなど日本の強みであるものについては、輸出を通じた「メイド・イン・ジャパン」のブランド価値の向上を政策的に支援していくべき。日本ブランドの向上なくして、日本企業が海外において行うものづくりの継続的な発展や評価の向上はない。こうしたカテゴリー特化型の製品輸出に対して、政府の支援をお願いしたい。
  • 大変なのは、店を出して採算を出すまでのオペレーション、雇用のリスク、現地の法律商習慣。労働条件や撤退・解雇する際の条件も不鮮明で難しい。日本人に対象とするアプローチには苦労した。本当の情報を渡さずにうまく利用されたりという経験もした。一旦ノウハウが蓄積できれば、もっとうまくできる。イタリアなどが国を挙げて売り込んできているように、店舗展開・卸などのノウハウをJETROなどが蓄積してシェアできれば、海外進出ができるのではないか。
  • 機能素材のファッション化が進む中で、日本の技術はまだまだ生かせる。技術伝承もあるが、アピールするために日本の技術を標準化し、それをアジア市場に広めていくことが大事。啓発において、政府のサポートがあればありがたい。
  • 市場開拓において、仏、伊、独は優れた加工技術を持つ。日本との融合・協業を進めるにあたり、例えば優秀な技術の会社との仲介など、政府からの支援がほしい(仏、伊のジェトロの支援など)。
  • 現地のお客様の消費性向などへの幅広い知見が必要とされるが、企業単体ではなかなか難しい。クールジャパン機構、ジェトロ、在留邦人、現地で成功している企業、言わば、現地において何が求められているかを知っている人たちが持つ情報を、コンソーシアムのような形で共有、あるいは各企業が活用できるシステムを作っていただきたい。
  • シンガポールの高島屋、伊勢丹、バンコクの東急など地元密着のマーチャンダイジングを展開し、幅広い商品開発をしながら、ターゲットをしっかりと絞り、具体的提案につなげて販売している事例がある。こうした、成功事例を業界として収集し、共有化を進めていきたいと考えている。クールジャパン機構などのスキームを有効に活用していければと考えているのでご支援いただきたい。
  • TPPについて、技術を例えばベトナムに輸出する際、広めるために原産地自己証明制度へのフォローがあると支援になる。また、日EU、EPA、日中間、FTA、RCEPについても高水準の自由化を進めてもらえると促進ができるので、後押ししてほしい。
  • 以前、東京ランウェイがJFWと協業し、プロモーションとして、NYコレクションにて日本ブランドのショーを行ったが、NYの本流の人たちは、日本ブランドが来たことを知らず、ショーにも行かなかった。日本国内ではワイドショー等で取り上げられ、凱旋のように言われていたが、商売には繋がっていない。経産省のJ-LOPを利用していたが、海外で行ったのに現地の強力な媒体(CNNやワールドニュース等)に取り上げられないこと自体が、プロモーションの方法が間違っていることを示している。特に海外では、PR会社の協力がなければメディアに載らない。日本ブランドは注目されているものの、政府はとんちんかんな支援をしていると海外から指摘されている。点ではなく面で、年数をかけてしっかりとした取組で若手ブランドを育てていかないと、将来性がないのではないか。
  • 表参道は海外ブランドしかない。海外の都市のように、インバウンドの顧客に向けて、日本ブランドを原宿や表参道等でアピールできていない。観光客に向けて、そのような拠点を政府肝いりで作っていくことが可能ではないか。
  • 各々がバラバラで動くのではなく、バラバラになっているものをとりまとめ、国家プロジェクトにしていく。行政として、個別プロジェクトに補助金をばらまくのではなく、プラットフォームを作ることに投資を集中すべきではないか。
  • 人手不足については、繊維業界のみならず全体の問題なのでご指導賜りたい。

9. その他

  • この研究会も4回目。当初の話では、4、5回で取りまとめ、政策につなげていきたいということだった。そうなると、そろそろ議論をまとめて実行に移すことが肝心だ。有識者の幅広い意見は大いに参考になる。ただし、もう一度原点に戻る必要がある。なぜ経産省がこの研究会を開催したのかということ。その背景には、非常に現実的な問題がある。日本の繊維産業は、数年前に輸出額100億ドルを達する中で、衣料品については輸出がほんの少しであること、また国内を見ると、97%が輸入品。国産品の供給はわずか3%。これをなんとかしなくてはいけないということ。これを考えることが原点。そこに対して、業界と個々の企業がどのように対応するのか、経産省がどのように支援していくのかといったことを考えるのが筋だと思う。そろそろ、その段取りに入らないと間に合わない。
  • やはりまとめた以上、実行するのは、アパレル個々の企業、団体、日本アパレル・ファッション産業協会が中心となってやらないと、この研究会の成果が生きない。
  • 提案ではあるが、これだけの幅広い意見が出ている。これを十分考えて、次回以降、一番の当事者である日本アパレル・ファッション産業協会の幹部と経産省幹部で、今までの議論を纏めて、実行可能な内容と段取りを踏まえ、素案を作り、その後、委員から再度意見をもらい、実行に移していくといった流れではどうか。
  • 冒頭の貞末委員の発言(ものづくり、売り方、ブランドの展開の仕方)は示唆に富んでいるが、一挙にするのは難しい。また、韓国で成功したデサントが、10年足らずで中国に展開していくといった事例もある。(こうした具体的な事例も含め、)色々考えて、具体的なことを実行していかないと、これまでの議論が生きない。
  • 次回以降の進め方について検討していただきたい。

以上

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最終更新日:2016年3月18日
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