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第4次産業革命クリエイティブ研究会(第4回)-議事要旨

日時:平成29年2月6日(月曜日)16時00分~18時00分 
場所:経済産業省本館9階西第8共用会議室

出席者

鷲田委員(座長)、柴田委員、西村委員、山中委員、福原委員(第4回招聘委員)、堀井委員(第4回招聘委員)

議事概要

本研究会の概要

本研究会の趣旨について最初に事務局から説明する。その後コンピテンシー調査結果を福原委員より、クリエイティブ人材の育成をテーマに堀井委員より発表頂く。
2名の招聘委員からの発表の後、質疑応答を設け、最後に事務局よりクリエイティブ人材の育成に関するヒアリング調査の報告を行う。
以上3名の発表を受け、全体ディスカッションを実施。委員からの主な意見を下記に示す。

コンピテンシー調査概要

(1) プレゼンテーション概要

  • コンピテンシーとは社会で成功している人の「行動特性」を分析し、実際の成果を生み出すために必要な要素を明確化したものである。コンピテンシーは、企業の人事評価・育成や採用面接の評価軸として利用されている。
  • 「スキル」「気質」「コンピテンシー」については、「スキル」はプログラミングや語学など比較的開発が容易でかつ体系的に学びやすいもの、「気質」は遺伝による性格など変えていくことが難しいもの、「コンピテンシー」は課題設定力や外向性など育成が可能な行動特性を指す。コンピテンシーは失敗・演習を通じて経験を蓄積する中で徐々に学ぶものである。
  • 「クリエイティブ関連部署に所属する人材はコンピテンシーが高い」という仮説のもと、8社の企業において、デザイン部・クリエイティブ室等に所属する人材(以下、クリエイティブ人材)、それ以外の主に製造・開発等の部署に所属する人材(以下、ノンクリエイティブ人材)を対象に360度評価(他人からの評価)によるコンピテンシー分析を行った。
  • デザインシンキングの各プロセス(問題設定→創造→プロトタイピング/フィードバック→最終成果物)で関わってくるコンピテンシー8つ(共感傾聴力・問題設定→疑う力・創造力→柔軟性・解決意向→影響力の行使・外交力)を比較した結果、全てのコンピテンシーにおいて、クリエイティブ人材の方がノンクリエイティブ人材よりも高い値であった。
  • 更に、ビッグ5に基づいた気質(本人がコントロールしがたい部分)に焦点をあて、クリエイティブ人材とノンクリエイティブ人材の違いを分析した。分析の結果、5つの気質のうち、「情報への開放性」においてはクリエイティブ人材の方が優位に高いが、残りの4つ(「外向性」「繊細性」「誠実性」「協調性」)においては特に差異がないことが分かった。
  • コンピテンシーと気質を分析した結果、クリエイティブ人材とノンクリエイティブ人材の違いのうち大部分は後天的に獲得可能な可能性が高いことが明らかとなった。この結果から、「クリエイティブ人材は育成できる可能性が高い」という示唆が得られる。
  • (1)実践可能なクリエイティブ人材育成の仕組みをつくる、(2)コンピテンシーの変化を見据えた上で教育を実践する、(3)コンピテンシーの変化を定量的に測定する、(4)クリエイティブ人材育成の仕組みを見直す、というPDCA((1)→(2)→(3)→(4))をまわしてクリエイティブ人材育成方法の精度をあげる必要がある。

(2)質疑応答

  • 統計処理の結果、クリエイティブ人材の一部がコンピテンシーの値に対して大きな影響を与えているように推察される。
    • コンピテンシー全項目が高いクリエイティブ人材はほとんど確認できなかった。一部のコンピテンシーが優位に高いクリエイティブ人材は数名確認された。一部のコンピテンシーが高いクリエイティブ人材が存在したとしても、データの中央値をとって分析しているため統計結果の有意性は高い。
  • クリエイティブ人材は社内の他者評価によって選出されている。「Aさんはクリエイティブである」と「Aさんには才能(クリエイティブに関する)がある」という他者評価の双方に相関があるのは当然ではないか。
    • クリエイティブ人材としてデザイン部門関係の社員を選んでおり、ノンクリエイティブ人材はデザイン部門以外に所属した社員を指している。
    • デザイン部門の社員全員がクリエイティブ人材か否かは定かではない。但し、他部署と比較してデザイン部門にはクリエイティブの優位性がある可能性が高い。

東京大学 i.schoolプレゼンテーション概要

(1)プレゼンテーション概要

  • 2009年より「イノベーション人材の育成」((1)創造的な課題に対するプロセスを設計できるようになること(2)イノベーションを生み出すことができるという自信を持つこと)を目的にi.schoolをスタート。社会人学生は、設立当初は人事・教育系が多かったが、近年はR&D・商品開発系からの参加者が多い。
  • i.schoolでは「イノベーションWS=アイディアを発想・評価・意思決定するための人の集団による情報処理」と捉えている。WS自体を情報処理の一貫と捉えることができ、情報処理プロセス(WSのプロセス)は記述・モデル化・設計・評価・改善・教示・学習が可能である。
  • イノベーションWSプロセスの標準モデルを使えば、全てのWSプロセスを説明することが可能である。イノベーションWSプロセスでは手段・アイディア創出の(1)新規性、(2)有効性、(3)確度の高さが重要である。
  • 新しいものを生み出す仕組みには、個人の創造性を活用するだけでなく他者との接触の中でアイディアを考察する場があることが重要である。また新しいものを生み出す仕組みにとって、「価値基準をシフトさせる」ことは重要である。
  • 人材の3要素((1)スキルセット、(2)マインドセット、(3)モチベーション)がある。i.schoolでは(1)スキルセットを最初に育てるよう方針付けている。(1)スキルセットが成長すれば(2)マインドセットが育ち、最後は(3)モチベーションを生み出すことが出来る。

(2)質疑応答

  • 1年間かけてWSを実施する(時間をかけてWSを実施する)ことに意味があるのか。
    • 1つのWSに参加し、1つのメソッドを学んでも効果的ではない。(1)WSのプロセスを設計する(2)新しいアイディアを生むという学びは、経験を通して会得できる。暗黙知を掴むには異なったテーマやWSプロセスを経験することが重要である。
  • 東大の教育プログラムとi.schoolのプログラムで大きく違う点は何か。
    • 日本の高等教育プログラムは知識の習得に焦点がある。今後は知識の習得だけでなく、問題解決能力や新しい製品・サービスを生み出す創造力を身に付ける必要がある。問題解決能力や創造力の育成は、既存の教育とは異なり経験学習が必要である。
  • 複数のプログラムを進める中で、最終的な出口はどのように設定しているのか。評価のポイント(評価の実施方法)はどのように実施しているのか。グループワークのメソッドとして、グループワークのプロセス設計や周囲の人を巻き込む方法の教育はどのように実施しているのか。
    • 周囲の人を巻き込む方法は教えていない、学生が自発的に学んでいる。WSを実施する際には、教員がリーダーや司会者をあえて指定しない。学生が自発的にメンバーに役割を割り振っている。
    • WSの試行錯誤の中で、振り出しに戻ろうとするプロセスが発生するが、振り出しに戻らないようにするためには、現在問題となっているポイントを学生に分析させることが重要である。問題のポイントを分析させるにあたり、WSの前半で定めた価値基準がマイルストーンとなる。全体のWSプロセスに教員が介入する必要はない。WSプロセスを見据えた上で、学生を適度に誘導することが重要である。

クリエイティブ人材育成に関するヒアリング調査報告概要

(1)報告概要

  • 経営者(大企業2社、創業者2名、同族経営4名)にヒアリング調査を実施した。
  • ヒアリング対象企業にクリエイティブ人材がいる(いた)という前提の元、どのようにクリエイティブ人材の育成・活用するのかという部分に焦点を当ててヒアリング調査を実施した。
  • 調査対象者の経営者が「クリエイティブをどう捉えているのか」、「クリエイティブ人材はどう育成すればいいのか」という点に着目してヒアリング調査を実施した。
  • クリエイティブの捉え方としてパターンが3つある。(1)何らかの文脈で差異があるもの、(2)生まれつきの個性・自社養成できないもの、(3)常識を疑い本質を考え続ける実践、のパターンがある。
  • 育成の考え方はパターンが3つある。(1)教育の対象としない(ただ「育成」はしている、(2)絶え間ないOJT(特に企業の場合)、(3)アンラーニングや身体活動の活用、である。

全体ディスカッション

  • 気質の調査結果より、クリエイティブ人材とノンクリエイティブ人材では「情報の開放性」で大きく異なるのではないか。育成や教育を施される前より、最初からうまくクリエイティブに立ち回れるネイティブな人材は存在している。
    • 遺伝子と能力の相関を研究した論文は、先天的だと捉えられていた能力が後天的な能力である可能性が高いことを明らかにしている。音楽や美術の能力は、案外環境が大きな要因だったりするのではないか。
    • 一般には義務教育は批判されがちだが、中等教育等がクリエイティブな才能を生み出す契機となりうる可能性はある。
  • 企業でクリエイティブ人材を育成できる仕組みはあるのか。
    • 企業はプロジェクトの失敗を許さない文化であり、試行錯誤をして振り出しに戻ることを認める寛容さ・余裕がほとんど無い。最近ではプロジェクトの工数がカウントされ始め、企業がチャレンジできる機会や余裕が減っている。
    • デザインファームに勤めている時は、クリエイティブ人材は育成できないと思っていた。しかし大学教員になったら、高等教育の中では意外とクリエイティブ人材を育成できるという感覚を持てるようになった。
    • 教員は学生に課題を繰り返し与えるため、それを通して学生の失敗や成長を観測することができる。失敗や成功を観測できた結果、学生を育成しているという実感を持てる。一方で企業では繰り返し試行錯誤を許容する風土がなく、部下の失敗や成功を観測できる機会が少ない。そのため企業の人間と教員の間で、人を育成できたという実感が違うのではないか。
  • コンピテンシーの高低は置かれている環境に依存する。クリエイティブ人材の活用にとって、創造性を育成できる環境の存在が大きく影響する。
    • i.schoolで一番大切にされている学びは「価値における多様性の発見」である。個人の個性が容認され個人がオリジナリティーを発揮できる(=価値の多様性が発見できる)環境が日本社会には少ない。
  • 個性に対する寛容さと同様に組織の統制は大切である。個性を活かしつつ組織として統制がとれた運営をすることが重要である。
    • 多様性を認める中で、人同士を競争させることは危険である。「競争」とは「同じフレームで優劣をつけられること」を意味する。設定されたフレームとは別枠で、全然違う勝負をした人はつまはじきにされる。多様性は勝ち負けを決めないパターンをさすので、勝ち負けにこだわる人はクリエイティブにむかない。多様性を競争社会が前提となっている社会システムに組み込むのは厳しい。
    • コンピテンシーは競争を暗喩しうる概念であるが、クリエイティブ人材育成手法を考える上では、競争とは別に新たなフレームワークを示さないといけない。
  • 経営者や企業が採用にかけたコスト以上の対価を、採用した人材から得ようとすることが、クリエイティブ人材の育成を阻むのではないか。経営者・企業が採用コスト以上の対価を求める意識とクリエイティブ人材のモチベーションのずれによって、社員の中にプレッシャーが生まれる。
    • 大企業は世間の変化に対し危機意識があり、企業が変化するべきであるというプレッシャーも世間から受けている。しかしプレッシャーや危機感を感じつつも、企業として何をすべきか分からない人が多い。
    • クリエイティブ人材にかかるプレッシャーが小さくなれば、大企業の中でも抑圧を受けずにクリエイティブ人材がデザインを遂行できるきっかけを得ることができ心理的負担が楽になると推察される。
    • 企業内で部署や箱をつくれば、プレッシャーから保護され、ある程度のチャレンジが寛容されうる組織ができる。
  • デザイン人材育成には、デザインマネージャーの寛容性が大きく影響を与える。優良なマネージャーを発見できるか否かもデザイン人材育成には重要である。
  • 日本企業の中でイノベーティブな環境・仕事がなされるためには、中間層のマネージャー(今までの事業で発揮されたスキルとはまた別の能力をもつ)が必要である。しかし新しいマネージャーのあり方・必要性が認識されていない上に、育成方法も確立されていない点に課題がある。経営層がクリエイティブ導入の必要性を認知しつつも、導入にあたり中核を担うマネージャーがいないため誰にも仕事を任せることができない状況が起こっている。

次回第5回研究会は2月24日(金曜日)の午前中に開催する。3月9日(木曜日)の午後に最終報告会を開催予定であり、概要等に関しては今後事務局から連絡する。

以上

関連リンク

お問合せ先

商務情報政策局 生活文化創造産業課(クリエイティブ産業課)
電話:03-3501-1750
FAX:03-3501-6782

最終更新日:2017年4月5日
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