経済産業省
文字サイズ変更

ヘッジファンド研究会(第1回) 議事要旨

日時:平成19年10月16日(火)10:00~12:00

場所:経済産業省本館17階東4第5共用会議室

議事概要

1.ヘッジファンド業界の最近の動向と今後の方向性について
(講師:株式会社CGIキャピタル 山内英貴 代表取締役社長)

山内社長より、世界、及びアジアのヘッジファンド市場の現況と、日本の政策的課題について、資料に沿って説明。その後の主な議論の要旨は以下のとおり。

  • ヘッジファンド運用会社のガバナンスはどのように担保されるべきと考えるか。
    • 方法としては大きく二つ、(1)許認可要件や登録制度による監視体制のルール化によるもの、(2)経済合理性に基づく市場規律によるもの、が挙げられよう。
    • 2000年以降、(2)の方式が世界的にも主流となっている。「ヘッジファンド業界の機関化」によって、投資家の運用会社に対するデューデリジェンスが高度化し、ヘッジファンド業界の浄化・洗練化が進んだ。
    • プライムブローカーはヘッジファンドのバランスシートをリアルタイムに把握し、信用供与枠の管理に用いている。10,000を超えるとみられる個別ファンドを直接監視するよりも、プライムブローカーを通じた監視の方が効率的であり、各国の規制当局もこうした方法論に関してはほぼ合意している。
    • ヘッジファンドはオフショアを主な舞台として活動しているため、「どのようなプレーヤーがどこで何をしているか」が分かりにくい。それを顕在化させるためには何らかの規制、例えば当局による登録制度のようなものは有益だと思うが、実効性のある制度を作ることはなかなか難しい。
  • 投資家がヘッジファンドの運用実態について詳しい情報を入手するのは難しいと聞いている。モニタリングの専門家たるファンドオブヘッジファンズ(FoF)のマネージャーは、投資家よりも詳しい情報を得ているのか。
    • 投資家とヘッジファンドとの力関係で決まることが多い。多額の資金を集めることができるFoFは、個別ヘッジファンドにとっては重要な顧客であるため、一般的な投資家と比べて高い頻度で、よりふみこんだ情報を得ることができる。
    • なお、ヘッジファンド・マネージャーに対するデューデリジェンス(事前調査)については、投資家が不利益を被らないようにAIMAは質問状の雛形(AIMA's Illustrative Questionnaire)を作成している。一般の投資家がデューデリジェンスを行う際には、これがある程度参考になるだろう。
    • 確かに、投資家はFoFに投資をすれば、個別ヘッジファンドに対してより高度なデューデリジェンスができるようになるかもしれないが、その場合にもどのFoFに投資をするかを決めなくてはならない。FoFに対して適切なデューデリジェンスをしなければならないことは変わらない。
  • シンガポールは、ヘッジファンドの誘致に積極的だと聞く。シンガポールと日本ではどのような違いがあるのか。例えば、運用会社をシンガポールに設立する場合、どのような利点があるか。
    • シンガポール政府はファンドの運用会社の誘致には非常に熱心。運用会社の設立時には、MAS(Monetary Authority of Singapore)のFinancial Center Development Bureauと呼ばれる専門部が対応してくれる。これは名前からも分かるとおり、シンガポールを金融センターとして発展させることを目的とした部門であり、金融業の育成に熱心に取り組んでいる。
    • シンガポールの規制内容を端的に表現すれば、「シンガポール国内市場に参入しなければ原則規制の適用除外とする」というようなもの。当局に対する定期報告義務はあっても、求められる報告内容は日本の投資顧問会社(一任ライセンス)に求められる水準と比較して、はるかに簡易である。(もっともシンガポール国内市場で募集・販売をするならば、規制を受けることになる。)
    • MASは規制だけでなく、税制に関する権限も持っている。規制と税制両方の相談に積極的に対応しているので、設立時に事業計画を立てやすい環境にある。(ヘッジファンドは運用業界のいわばベンチャービジネスである。事前に事業計画が見通しやすいことにより、創業が促進される効果は小さくないと考えている。)
  • 日本で運用会社を設立しにくい理由は何か。
    • 創業後間もない運用会社(通常は人員2~3名程度)にとって、日本の規制は事務負担や税務リスク等が大きすぎる。(ある程度経営が軌道に乗れば、維持可能な程度の負担とはいえる。また、規模が大きくなって公共性が高くなれば、ある程度の規制を吸収するのは当然のこと。)
    • 海外投資家を資金の出し手とする場合、運用会社が恒久的施設(Permanent Establishment, PE)とみなされ、二重課税されてしまう危険性が特に切実である。米国にはオフショアビジネスに関するセーフハーバールールがある。日本もオフショアビジネスを前提に制度作りをすべき。海外投資家と国内投資家の整理をするのが良いのではないか。
  • 「海外投資家」とは具体的にはどういう投資家か。また、どのようにして「海外投資家」から資金を集めているのか。
    • 海外投資家のほとんどは、FoFや、富裕者層(High Net Worth, HNW)のファミリーオフィスである。これらはタックスヘイブンを経由して投資してくる、いわばプロのヘッジファンド投資家で、有料のヘッジファンドデータベースに登録されたファンドの運用実績を分析し、目を付けた有望なファンドに先方からコンタクトしてくる。ヘッジファンドとしては、資金を集めるために特別な営業網が必要になるわけではない(向こうからやってくる)。
    • 日本のヘッジファンドの資金は、こうした海外からの調達資金と国内での調達資金が半々ぐらいか。

2.AIMAの活動について
(AIMA JAPAN 橋口英毅会長、白木信一郎副会長)

橋口会長より、AIMA(ヘッジファンドの業界団体)とAIMA-Japanの理念、及び活動内容について、資料に沿って説明。その後の主な議論の要旨は以下のとおり。

  • AIMAは規制には反対とのことだが、規制が導入されないような環境作りのために、例えば、会員ヘッジファンド運用会社に対して、情報開示(ディスクロージャー)に関するガイドラインを作成したりしているのか。
    • 規制当局との対話をもとに、情報開示に対するガイドラインを作成して、会員限定のジャーナルやウェブに載せている(広く公衆の縦覧に供するような提供方法はしていない)。ガイドラインにどこまで従うかは、会員の判断。強制力こそないが、ガイドラインを会員各社に自発的に活用してもらうことで、ヘッジファンド投資の透明性、ひいてはヘッジファンド投資の拡大を図りたいと考えている。
    • AIMAの役割としては、基本的には“投資家教育”がある。投資家教育を通じて、へッジファンドを理解し、投資家にヘッジファンドへの投資を増やしてもらうこと。また、メディアや規制当局にもヘッジファンドのことをよく理解して頂きたいと思っている。活動の主眼は、ヘッジファンド業界の底上げ・発展にある。一概に規制に反対というわけではない。
  • AIMAは、どのような規制を正しい規制、間違った規制と判断しているのか。
    • 明確な判断基準はない。その時々に取り上げられる課題に関し、規制当局やサービスプロバイダー等関係者との対話を通じて望ましい対応を見出そうと努力している。例えばロンドンでは、FSAと議論しながら資産の時価評価(バリュエーション)の方法を検討した実績もある。
    • AIMAが一方的にヘッジファンド・マネージャーの立場を主張するだけでは有益な結果にはつながらないと考えている。対話形式で業界と当局の相互理解を深めていく中で、何がヘッジファンド業界全体の発展に資するのかを模索していきたい。
  • AIMA Japanの会員のうち、ヘッジファンド・マネージャーは何社か。また、会員の運用資産は、日本全体のヘッジファンド資産のどのくらいをカバーしているのか。
    • AIMA Japanの会員は現在53社。うち10社強が投資顧問会社であるが、伝統的な資産運用を主体とするもの(大手金融機関傘下の運用会社)の方が多い。これ以外の会員は、プライムブローカー、アドミニストレーター、法律事務所等。
    • ヘッジファンド運用を主体とするような独立系の投資顧問会社は極めて少ないが、その運用資産規模は数千億円に達する。これに伝統的な資産運用会社を加えると、会員の運用資産総額は数兆円になる。ざっと日本全体の1/4~1/5をカバーしているという感触。
  • 日本でヘッジファンドの運用会社を設立しにくい理由は、何か。
    • まず、税負担が大きいことが挙げられる。日本で運用会社を設立すると、ヘッジファンド・マネージャーは成功報酬を得ても、およそ75%を税金として納めなければならない勘定になる(運用会社としての法人税と個人所得税の合計)。シンガポールに設立した場合、税金の額はこの1/4程度で済み、その差は大きい。
    • また、(今は廃止されたが旧投資顧問業法の下では)投資顧問業の一任ライセンス取得・維持にかかる事務的負担も非常に大きく、これも日本で運用会社が設立されにくい理由の一つである。
    • こうした背景から、これまでは、日本で事業を行う者はほとんどが運用助言業務にとどまり、投資顧問業は稀だった。金融商品取引法の施行後にどうなるかは、まだ分からない。金融商品取引法には、自己募集と他人募集の区分や、海外からの投資資金がどのような取扱いになるか等、法解釈に関して、不明確な部分が残されている。
    • 他にも、日本は立ち上げ時のハードルが欧米に比べて高いという事情がある。ヘッジファンドは運用業界のいわばベンチャービジネスなので、立ち上げがしやすいかどうかが非常に重要な観点。利益に対する課税の問題は、利益を上げた段階での問題で、まずはファンド事業を立ち上げることができるかが重要。
    • 例えば、海外でヘッジファンドを設立する場合のシードマネーは、2,500万~3,000万ドル(30~36億円)が一般的。成功報酬が入らなくても、1.5%の管理報酬で3~4人のチームは回せる。他方、日本ではシードマネーが10億円を超えることは稀で、経営が軌道に乗るまではマネージャーの手弁当に頼らざるを得ず、非常に厳しい(特に初年度の1年間)。
    • また運用会社を設立する場合、目論見書に、恒久的施設(Permanent Establishment, PE)とみなされ課税されてしまうリスクを記載する必要が生じる。海外投資家に対して二重課税のリスクを明記しなければならないのは、資金募集に当たって極めて不利なこと。従って日本のファンド・マネージャーは、リスクを明記する必要のないシンガポールなどに設立することになる。
  • 金融庁による「平成20年度税制改正要望(2007年8月29日)」をどう考えるか。
    • AIMAとしては、本件について金融庁と対話をしたことがある。但し、金融庁が主な対話の相手として相談しているのは証券投資顧問業協会である。

      (注)金融庁は当該資料にて以下の点を要望している。

      「海外のファンドが国内で活動するファンド・マネージャーと投資一任契約を締結する場合において、ファンド・マネージャーがPEと認定されることにより、ファンドの運用益にも本邦で課税されるリスクを排除(したい)。

      また、我が国で組成されたファンドが非居住者等に対して運用益から収益の分配をするとき、当該収益の分配について源泉徴収不適用(としたい)。」

以上

 
 
最終更新日:2008年3月26日
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.