経済産業省
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独立行政法人評価委員会経済産業研究所分科会(第20回) 議事録

小野会長

本日は、お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。第20回独立行政法人評価委員会経済産業研究所分科会を開催させていただきます。

本日は、平成18年度業務実績についての1回目の報告です。もう一回は6月1日10時からということでお願いしていますけれども、2回お話を伺うということであります。今日はお手元に資料もたくさん配付してありますので、事務局から最初に資料の説明をお願いいたします。

高橋室長

経済社会政策室の高橋でございます。本日はお忙しいところをどうもありがとうございます。

早速でございますけれども、お手元の資料のご確認をいただきたいと思います。配席表の次に「議事次第」がございまして、その次に配付資料一覧がございます。

まず、製本された『アニュアルレポート』がございます。それから資料2といたしまして、後ほど深尾先生からご説明いただく際の資料がございます。資料3といたしまして、RIETIからご説明いただく「研究運営の諸課題」というパワーポイント用の資料がございます。それから、さらに資料4といたしまして鶴先生からご説明をいただきます資料がご用意してございます。それからもう一つ薄緑色の『Research Digest』をお配りしておりますけれども、これはご参考までということでございまして、本日これに基づいて特段ご説明ということは予定しておりません。

議事の順番につきましては、今申し上げました資料1~資料4に沿いまして皆様にご説明をいただくこととしておりますのでよろしくお願い申し上げます。

小野会長

ありがとうございました。

それでは、早速始めさせていただきますが、5月1日付で新しい所長に藤田さんがご就任いただいておりますので、一言ご挨拶を賜ります。

藤田所長

5月1日付で経済産業研究所の所長に就任いたしました藤田でございます。経済産業研究所の評価のために、今日と金曜日にわたって皆さん大変お忙しい中をまことにありがとうございます。

私は新米の所長でありますので、内部のことにつきましては評価委員の方のほうがよく知っておられると思いますけれども、2日間にわたりまして皆さんの忌憚のないご意見をいただきたいと思います。

経済産業研究所、前所長も含めまして非常に評価されている研究所でありますけれども、日本全体が大きく変わりつつある、世界全体が変わる、日本もそれについて変わらなければいけない。その大きな変革期に、日本の経済産業政策も大きく変わらなければいけない。それにつきまして、我々研究所ができるだけ貢献したいということで、産業政策研究の立場から国際協力も進めながら日本のRIETIとして存在感を増していきたいと思っております。

そういうことで、先ほどの繰り返しになりますけれども、皆さんの貴重なご意見をもとにまた大きくRIETIを発展させていきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

小野会長

どうもありがとうございました。新しい所長に大いに頑張っていただきたいと思います。

それでは続きまして経済産業研究所から、研究活動の現状報告あるいは代表的な研究プロジェクトのご紹介をお願いします。

川本研究調整ディレクター

研究調整ディレクターの川本でございます。座っての説明をお許しいただければと思います。

前回の分科会で、本日及び今週の金曜日の会議で研究内容について十分議論をしてはどうかという小野会長のお話があったと伺っておりまして、今日はそういう意味でいろいろな面からRIETIの研究、現在やっている活動の実態を、この分科会でシェアしていただきたいということで幾つかプレゼンテーションを準備させていただきました。

最初に私から20分ほどご説明を予定しておりますけれども、『アニュアルレポート』、これは18年度の研究活動に基づきましてRIETIの年次報告としてまとまったものでございます。これは、先生方が何回かご覧になっていることと重複するかもしれませんが、もう一度復習という形も込めまして全体の研究活動の概要をまずつかんでいただく意味でご説明したいと思います。その後、政策的にもいろいろ反響を呼んでまいりました大きな代表的なプロジェクトとして一橋大学の深尾先生の「生産性の研究プロジェクト」を深尾先生ご自身からお話しをいただくことにしております。

そこで一旦切りまして皆様方から質疑応答をいただきまして議論をいただいた後に再び私からRIETIの「研究運営の課題」ということで、これは、資料3に基づきまして今日と金曜日の2回にわたりましてご議論いただこうということで準備をさせていただきました。いろいろな論点、重要な論点を挙げさせていただいておりますので、これをもとにいろいろとご意見を賜ればということでございます。

それから、私の説明に続きまして今日来ていただいております経済産業研究所の鶴上席研究員から、研究の結果というよりも実際に今動いている研究の実況レポートという形でお話しいただきまして、後半は私の提出資料の説明と鶴上席研究員の説明に基づいてまた議論をしていただくということを考えております。よろしくお願いいたします。

それでは、先ほどの『アニュアルレポート』でございますが、現在のRIETIの研究内容の全体がどういう体系でどういうテーマがあるのかというのをザッとみていただこうと思います。

まず3ページをごらんください。「研究活動」でございます。

皆様ご案内のように第二期中期計画のもとでは「基盤政策研究領域」ということで4つ大きな研究領域がRIETIに与えられ、また我々もそれを日々研究しているということでございますけれども、「少子高齢化における経済活動の維持」、「国際競争力を維持する為のイノベーションシステム」、「経済のグローバル化、アジアにおける経済関係緊密化とわが国の国際戦略」、「通商産業政策史の編纂」、こういったものが基盤政策研究領域としてございます。それをバックアップするといいますか、そういった研究のある意味で材料となり基盤となるようなさらに基礎的な研究領域といたしまして、その下にあります3つのテーマが定められておりまして、「金融構造、コーポーレート・ガバナンスの展開等、企業関連制度」、「規制改革と政策評価のあり方」、「パネルミクロデータの整備と活用」といったようなところもRIETIの主要な研究活動ということで、大きな体系としては大体こういうような整理で、それぞれの研究テーマで新たなものを発掘したり、あるいは研究の方向づけをしているということでございます。

以下、今申し上げましたそれぞれの研究領域ごとにどういう研究テーマがあるのかということをざっと私と一緒にみていただければ幸いでございますが、次の4ページ、5ページでございます。

まず最初の「基盤政策研究領域」ドメインIの「少子高齢化における経済活力の維持」という大きなテーマでございますが、そのもとでは例えば、この研究プロジェクトの紹介ということで、I、I―1から順にありますように「少子高齢化のもとでの経済成長のあり方」、少子高齢化がどのような制約をもたらし、あるいはチャンスを与えるのかというようなことを経済構造の観点で明らかにしようということで、これは吉川洋ファカルティーフェローが中心となって、リーダーとしてやっていただいているものです。

それから「新しいマクロ経済モデルの構築」、小林慶一郎フェローによる、これもかなり理論的な、バブル経済を乗り越えて日本の経済がどうやって金融面で成長していけるかというようなところの研究でございます。

それから「ITと生産性に関する実証分析」、これは今後の少子高齢化における経済活力ということで欠かせないITが日本の経済で十分使い切れていないのではないかということをマクロ及びミクロ両面のデータから実態を明らかにさせるものでございます。

あと「少子化対策の経済分析」、これは樋口先生です。

それから「社会保障問題」について、高齢者の大規模なデータベースをつくって、そこからいろいろな政策に関するインプリケーションを考えようということです。これは今データベースを構築中ですけれども、清水谷先生を中心とするプロジェクトです。

それから、その次の深尾光洋、中田両フェローによります、これは年金の財政シミュレーションモデルをつくって、いろいろな変化を与え、年金制度改革についてのインプリケーションを探ろうというものでございます。

以上がドメインIの主な研究でございます。

次に6ページ、7ページ、8ページ、9ページの4ページにわたって説明しているドメインIIでございますが、これは「イノベーションシステムの研究」ということで大きなくくりになっております。

長岡プロジェクトリーダーで、発明者への大規模なサーベイを行うことで、どうやったら産学の連携が実際にうまく事業化に結びついていくかということを、データに基づいて研究するということでございます。

次の「産業・企業の生産性と日本の経済成長」、これも非常に大きなJIPデータベースを深尾先生につくっていただいて、それをもとに今さまざま研究成果が出ているということでございまして、これは中身は深尾先生から後でお話しいただきます。

次7ページで、これは3月にシンポジウムを行いましたけれども、「メタナショナル経営」という新しい国際的な経営の概念というものを打ち出している浅川先生のプロジェクトです。

それからII―4が、西山先生の生産性向上に関する産業・企業レベルのデータに基づく分析。

それから玉田プロジェクトの研究機関と民間企業の共同発明がうまくいっているかどうかというところの実証研究です。

次8ページで、延岡プロジェクトリーダーによる日本の情報機器・デジタル家電の競争力をもう一度見直してみるという研究プロジェクトです。

その次に藤本隆宏プロジェクトリーダーによります日本の、特に「ものづくり」の競争力の源泉というものをより掘り下げて研究していただく研究でございます。

それから、中馬先生によります半導体のこれまで競争力をなくしてきた原因を探っていただく等々がございます。

時間の関係上、全部説明することはあきらめまして、あとみていただきますと、清川シニアフェローのプロパテント(特許)政策制度をみたもの、次9ページの産業クラスターについても児玉教授に、これは近畿地方のクラスターの大規模なアンケート調査によりまして、うまくいっている事例、うまくいっていない事例を探っていただいております。

それからドメインIIIでも、ザッとみていただきますと、若杉リーダーによります貿易と投資と技術移転といったものを有機的にデータで探ろうというプロジェクトです。

それから、開発援助ついて実証的なデータから研究を行おうという澤田先生のプロジェクトです。

それから、さまざまな地域統合を法律的に比較分析する川瀬さんのプロジェクトです。

それから、伊藤隆敏ファカルティフェローは、アジアの通貨、金融の国際協力の課題についての研究です。

次の12ページで、これはシンポジウムをこの前開催いたしましたが、FTAに関しましてランキングを行って評価をするという研究です。

それから、中国の台頭と東アジアの政治秩序の問題あるいは対外投資の法的保護、対外投資協定のいろいろな分析です。

13ページで、貿易と環境あるいは食料・農業とWTO関係、法律的な規制の関係、神事先生にやっていただいております。

それから、東アジアにおける貿易関係の実証的な研究であります。

14、15ページで、「通商産業政策史の編纂」。

さらに、先ほど申し上げました隣接基礎研究領域に入りますけれども、金融・産業構造の変化、あるいは日本の労働市場につきまして、これもデータに基づく男女の賃金格差、実際に経済的に、合理的な範囲であるのか、あるいはそれを超えているのかというような研究を川口先生にやっていただいております。

16、17ページで、A―6、M&Aの経済分析ということで、これまでの日本経済で起きてきたM&Aはどういう経済効果をもたらしているかというところを実証的に研究をしていただいています。宮島先生のプロジェクトです。

それから17ページの下の方で、隣接基礎研究領域B、「規制改革と政策評価のあり方」です。例えば「電力改革における市場とネットワークに関する経済分析」ということで、電力の市場シミュレーションといったようなことをして研究成果を上げております。

最後に18、19ページで、エネルギー関係の政策的な評価をやっているものとして、「パネル・ミクロデータの整備と活用」、C―1で、戒能フェローによる日本のさまざまな省エネルギー政策は実際にコストとベネフィットからいって国民経済的にプラスだったのかマイナスだったのかといったようなところを定量的に研究している研究成果が幾つも出てきております。

ちょっと端折りまして大変恐縮でございますが、今RIETIで進行中の成果を上げつつある研究プロジェクトの概要をお話しさせていただきまして深尾先生にバトンタッチしたいと思います。

小野会長

ありがとうございました。後でご質問がありましたらご審議いただきたいと思いますけれども、続いて深尾先生にお願いしてよろしゅうございますか。

深尾ファカルティフェロー

では、パワーポイントを使いながら報告をさせていただきます。大分飛ばしながら説明させていただきますが、資料2、パワーポイントを印刷したものもありますので、それもみていただきながらお話を聞いていただきたいと思います。

今ご紹介がありましたように我々はRIETIの中で「産業・企業の生産性プロジェクト」というプロジェクトを担当しています。私はそのプロジェクトリーダーの深尾です。今日の報告構成ですが、全要素生産性を測定したり、その決定要因を分析するというのが我々のプロジェクトの主な目的ですが、なぜ全要素生産性が重要なのかという話を簡単にさせていただいて、それから我々の分析の3本柱である「マクロレベル」、「産業レベル」、「ミクロレベル」の生産性の分析の結果について、時間の制約もありますので、ここのところはザッとお話しさせていただきたいと思います。

全要素生産性というのは、TFPとか、ヨーロッパの人などはMulti Factor Productivity(MFP)と呼ぶこともありますが、基本的には、生産要素の組み合わせ1単位当たりの生産量を表します。労働生産性というときにはマンアワー、例えば労働者延べ1人1時間当たりのGDPがどれぐらいだというのが労働生産性なわけですが、それだと、例えばどんどん資本を投入すれば労働生産性が上昇するのは当たり前ですけれども、資本の投入をふやすためにはいろいろなコストがかかりますので、本当の経済の効率性をはかる指標としては多くの経済学者は、労働生産性というのは適当ではないと考えていまして、それよりはほかの生産要素、資本や中間財も考えに入れた上で生産の効率を図ろうというのが全要素生産性の考え方です。

日本の経済成長のことをサプライサイドから考えるとすると、基本的にはサプライサイドからみた経済成長というのは、労働投入の増加の寄与と資本投入増加の寄与と全要素生産性上昇の寄与という3つに分けて考えることができます。標準的な経済学、いわゆる新古典派成長モデルによる考え方でいうと、日本のように非常に成熟した経済では、資本の投入というのはどんどんむやみにふやすことはできなくて、つまりどんどんふやすと資本の収益率が下がってしまってバブル経済のようなことが起きますので、資本の投入というのはそもそも内生的に決まるというふうに考えることができて、そのように考えると結局サプライサイドからみた経済成長というのは、労働投入の増加、これは労働人口の成長率とか就業率とかで決まるものと、それから労働人口の成長率とTFP(全要素生産性)の上昇率、これに規定される資本投入の増加の寄与、資本投入というのは内生的に決まってきて、人口がふえれば賃金が割安になるので、企業の収益が上がって投資がふえる。それが生産性が上がればやはり企業の収益が上がって投資がふえる。そういうふうに内生的に資本の投入というのは決まると考えて、こういう要因で決まる。それから生産効率(TFP)が上がればやはりGDPは上がるというわけで、大体こういう要因で決まる。赤で書いたように労働人口の成長率+TFPの上昇率×1.5倍ぐらいがGDPの成長率になるというのが標準的な、いわゆる新古典派成長モデルの教えということになります。

日本の場合には、ご承知のように労働人口は減るばかりでして、例えばこれは政府の生産年齢人口の予測ですが、今後10年間ぐらいは-0.5%ぐらいで推移し、その後-1%近く急速に減っていくと予想されているわけですから、例えば日本が、政府が目標としている2%ぐらいの成長をするためには、TFPの上昇率をおおよそ1.5%ぐらい達成しないと2%の成長は難しいと考えることができます。

これが、今日なぜTFPが特に大事と考えられているかという説明ですが、我々は、この問題を分析するために2つの戦略を立てました。

1つは、TFPの上昇率というのは、企業とか産業間で大きく異なることが知られていますので、産業とか企業レベルで、ただ単にマクロ全体のTFPを測定するだけではなくて産業とか企業レベルでTFPを測定しようということをしています。このうち産業レベルのTFPの上昇を分析する部分がJIPデータベースというデータベースをつくる部分でして、日本経済全体をカバーする108産業、日本全体を108の産業に分けて過去三十数年分ぐらいのデータを、全要素生産性を測定するためのデータをつくっています。これは基本的に毎年更新する更新でして、現在JIP2007をつくる作業をしています。JIP2007は2004年までカバーする予定です。きりがなく毎年やらなければいけないので疲れてきますけれどもね。

もう一つは、産業レベルのTFPの上昇を、今度は企業レベルとか工場レベルの生産性の上昇で理解しようというプロジェクトをやっていまして、これは、例えば経済産業省にある工業統計表の個票データをパネル化して、81年から2003年までパネル化できたわけですが、これは経産省の中で、また経済産業研究所の中で長い研究の蓄積がありまして、もともとは慶応大学の清水先生とか多くの方々が努力された成果に我々は乗っかっているわけですが、パネル化したデータを使って分析をしています。

それから、今日では製造業というのはマクロ経済全体の2割強ぐらいしか重要度がないですから、非製造業も分析する必要があるということで、後で説明しますが、我々はJIPミクロ・データベースという企業レベルで日本の特に非製造業をほぼカバーするようなデータベースをつくって、これは残念ながらカバーする期間が短い、5年間ぐらいしかないのですが、今後時間が経過していけばだんだんふやすことは可能だと思いますけれども、そういうデータを使って分析しています。

JIPデータベースというのはいろいろなところで使われていまして、もちろん学者もいろいろ使っていますけれども、例えば経済財政白書とか通商白書、日本銀行、連銀、OECDの経済分析等でも使われていますし、日経・朝日の記事等でも引用されています。かなり広く成果は使われていると思います。

2番目の方針は、国際比較をするということです。ここに書いてありますが、ヨーロッパでは、2年前から始まってことしの12月で終わるEU KLEMSプロジェクトというプロジェクトがあります。KLEMSというのは資本のKと、労働のLと、エネルギーのEと、中間財の投入のM、サービスのSをとっていまして、基本的にヨーロッパの加盟25ヵ国(今は27になっていますか、発足したときにはたしか25ヵ国)のTFPを産業別にはかろうと。大体60セクター別ぐらいではかるというプロジェクトです。主にフローニンゲン大の学者やイギリスの学者が中心になってやっていますが、我々はこのプロジェクトにいわば日本を代表して参加しています。基本的にはJIPデータベースをEU KLEMSプロジェクト用に加工、修正しまして、それを提供するということをしています。

このEU KLEMSの最終成果は今年の12月に発表されて、そこでは生産性の水準についてまで彼らは推計を出すことになると思います。ですから、例えば日本の非製造業の商業の生産性がドイツのどれぐらいかというようなことがわかるように、かなり信頼できる形でわかるようになるわけですが、今のところ今年の3月15日にブリュッセルのEU本部の近くで、現在までのところの成果のお披露目が行われました。そこでジョルゲンソンというハーバード大の先生ですが、彼はアメリカ側からEU KLEMSに参加してデータを提供しているわけですが、ジョルゲンソンがスピーチをして非常に印象的でしたが、彼がいったのは、「これで成長会計とか生産性の国際比較のいわば世界標準ができた。今後OECDとかIMFとかで分析するときも、恐らくこの手法、この考え方を無視してはできなくなるだろう」というスピーチをしました。このEU KLEMSが使っている、いわば国際標準といえるような方法はジョルゲンソンとその共同研究者たちがつくり出してきたものですから、その意味では自画自賛ということがいえないこともないのですが、しかし、ジョルゲンソンがいっていることは恐らく正しくて、新しい世界標準、生産性の分析に関する世界標準ができたのだと考えられます。

このEU KLEMSの成果、いわゆる日本に関する成果のもとは先ほどいいましたJIPデータベースになっているわけですが、その成果は、例えば経済財政諮問会議の生産性上昇倍増プランのバックグラウンドペーパーとか資料でも、EU KLEMSの3月15日に発表されたものが引用されています。それをみれば、間接的ですが、例えば今の政府の生産性上昇倍増プランのもとになっている物差しも我々がつくっているということができるかと思います。

これがマクロレベルの生産性の分析結果です。先ほどお話ししたように、経済成長をサプライサイドから考えると、ソローがちょうど50年前(1957年)の論文で明らかにしたことですが、経済成長の源泉というのを資本の投入が増加する部分、ここではそれを資本の質の向上の部分と資本の量の増加の部分に分けてみていますが、それと労働の質の向上、マンアワー、延べ働いている時間の増加、それから残りがTFPの増加としてはかることができるわけですが、これをみていただくとわかるように、日本は経済成長が90年代以降だんだん落ちてきたわけですが、その背後では全部の要因が成長の減速に寄与した、つまりマンアワーの投入も減ったし、質はちょっと上がっていますけれども、労働の投入も増加率が減ったし、それからTFPの上昇も非常に停滞したことがわかります。

ここからみると、90年まではTFPの上昇はおおよそ1.5%から2%ぐらいあったわけですが、90年代以降は非常に停滞していることがわかります。これをいかに90年までの1.5%~2%ぐらいの水準に戻すかというのが日本のマクロの中長期的な課題であると考えることができます。

これがEU KLEMSで出てきた各国同じ基準に基づいた今みていただいた成長要因分解の国際比較なわけですが、非常に暗澹たる結果でした。こんなに日本がパフォーマンス悪いとは思わなかったのですが、例えば95年までは主要6ヵ国、日本、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、米国ですが、95年までは日本はトップの成長率であって、資本の投入もTFPの上昇も非常にパフォーマンスはよかったわけですね。それが、ご承知のように95年以降は非常に停滞しまして、成長率も一番低くなりました。それからTFPの上昇率も低くなりました。

もう一ついえることは、ヨーロッパは、意外にTFPは大したことはないです。TFPの上昇は、ヨーロッパでも実は減速が95年以降起きていまして、元気がいいのはひとりアメリカだけということになっています。この問題は、これまでもアメリカとかヨーロッパの学者の間でも広く知られてきた話で、なぜかアメリカだけがいわゆるIT革命の恩恵を受け取って実現し、TFPの上昇を95年以降加速させたのかと。そのアメリカの奇跡とヨーロッパを比較するためにEU KLEMSは95年を特に分かれ目にしてこういう図をよくつくるわけですが、そういうことがわかります。

しかし、ヨーロッパはそれほど成長率が落ちなかったのですが、それはどうしてかというと、特に労働の投入をかなりふやすことができたからでした。この背後には、もちろん移民とかそういうこともありますが、主要な原因は失業率がかなり低下しまして、特に若年の失業していた人たちをたくさん働かすことができるようになったことが大きいと考えられています。この時期にヨーロッパでは、ドイツ以外のフランス、イギリス、イタリア、スペインでは失業率が実際に下がったわけです。

ヨーロッパの人たちは、アメリカはTFPが上がったけれどもヨーロッパはいわば雇用を選んだのだと。特に若年の熟練していない労働者をふやせば一時的に生産性の上昇がスローダウンするのは当たり前といえば当たり前で、そのようにヨーロッパのTFPの上昇の減速というのは理解できる。ヨーロッパは雇用を選んで生産性はあきらめた。アメリカはものすごく生産性を上げたというのがヨーロッパの人の理解ですが、そういう点でいうと日本は両方ともできなかったわけで、失業率は上がったし生産性の上昇は低迷したというのが日本の状況です。

もう一つ、これは今の成長の要因分解の中の資本の投入の寄与、資本サービス投入の寄与の部分だけを抜き出したグラフですが、みていただくとわかるように日本は非常に活発に設備投資を95年まではしてきて、資本サービスの投入が成長に寄与した分というのは、主要6ヵ国中最大であったわけですが、それが95年以降は、先ほどもみていただいたように一番低くなりました。

もう一つ注目していただきたいのはIT投資、これは資本ストックをIT資本の部分とそれ以外ノンITの部分に分けてみています。ITというのは電子機器とか通信機器とかコンピューターのソフトウェア、そういった機械設備がITに当たるわけですが、その投入が日本は昔も余り振るわなかったのですが、95年以降はさらに振るわない。ほかの国がものすごくIT投資を増やしたのに対して日本はIT投資が出遅れている。イタリアの次ぐらいに悪いことがわかります。日本は、昔からIT以外の投資が非常に活発であった国ですが、そこが95年以降落ち込んだことがわかります。

以上がマクロレベルでみえてくることで、次に産業レベルでどういう結果が得られたかというお話をしたいと思いますが、JIPデータベースは、先ほどお話ししたように日本全部を人間の煩悩の数と同じ108に分けまして、70年から全要素生産性を測定するということをしています。これが108の産業について32年間のTFPの上昇が一番高かった産業から一番低かった産業にずらっと並べたグラフです。みていただくとわかるように産業によって非常にTFPの上昇に違いがあることがわかります。生産性の上昇が非常に高かったのは、やはりITをつくっている産業でして、例えば電子機器をつくっていたり、それから通信産業なども入っていますが、そういったところで非常にTFPの上昇が高かったことがわかります。一方で非製造業、サービス業等はTFPの上昇が非常に停滞していたことがわかります。

先ほどもお話ししたようにマクロの全要素生産性の上昇というのは、産業レベルの生産性の上昇の合計と考えることができます。これはドマーという経済学者が示したことですが、産業のマクロ経済に占める重要度をあらわすウエートをそれぞれの産業のTFPの上昇に掛けて、それを足し合わせれば産業全体のTFPになることが知られています。

ここではそれを示してみたわけですが、個々の産業の寄与を、一番寄与が大きいものから低いものに順番に並べて全部足すとマクロ全体のTFPの上昇になる。80年~90年は、大体マクロ全体が10%で、それがこういうふうに説明できるということで、みていただければわかるようにごく少数の産業でほとんどTFPの上昇というのはつくり出されていることがわかります。ここでは単に、先ほどみていただいたITプロデューシングセクターだけではなくて、例えば金融とか卸売りとかといった非製造業も、これはTFPの上昇自体はITをつくっている産業ほど高くない、図でいうとTFPの上昇はタンジセェントといいますか、傾きがTFPの上昇率に当たるわけですが、それは大して高くないのですが、産業が大きい、横の幅が大きい、産業のシェアが大きいためにマクロ全体では非常に重要な寄与をしているということになります。

これが90年以降の同じようなグラフで、ほとんど停滞しているわけですが、みていただくとわかるように90年以降は、例えば土木とか建築とかといったところが非常に大きなマイナスの寄与をしたことがわかります。こういうところが非常に大きく日本経済全体の生産性上昇の足を引っ張ったということがわかります。

これが寄与度のトップ10とワースト5を並べたものですが、卸売業とか金融業といったところが結構寄与していることがわかります。

これはEU KLEMSに基づいて主要6ヵ国について、もう少し粗い分類ですけれども、業種別にTFPの上昇を比較したグラフです。これをみていただくとわかるように、一番左の上が電子機器・郵便・通信業でして、いわゆるITを生産している産業ですが、IT財サービスを生産している産業のパフォーマンスは、日本は悪くないです。今でもTFPの上昇は6ヵ国中トップです。

問題なのはそれ以外のところ、電子機器以外の製造業ではほとんど生産性が停滞していますし、それから例えば建設・電力・ガスとか、商業・運輸業、それから対個人・社会サービスとか、そういったところで生産性の上昇が停滞していることがわかります。

問題は、ITを生産しているセクターは雇用のシェアでみて5%ぐらいしかない。どの国でもそうです。日本は少し高い方ですけれども、それでも5%、6%しかないですから、ここのIT財サービスをつくっているセクターは非常に生産性の上昇が高くても、ほかのところの足を引っ張っているマイナス要因が日本は相殺できなくて生産性が停滞しているということがわかります。

もう一つわかるのは米国でして、米国は驚くほど、それ以外のところ、いわゆるITを使っている方の産業で生産性の上昇がぬきんでていることがわかります。これが、アメリカではITを使っているところでいわば革命が起きて生産性が上がったといわれている現象を示しているわけです。

例えばこれはIT投資、これもEU KLEMSのデータで、日本は我々が提供したデータなわけですけれども、IT投資、資本サービスの投入を国際比較したデータですが、みていただくとわかるように95年を100とした指数でみて、先進6ヵ国が明らかに3つのグループに分かれることがわかります。一番フロントランナーというかものすごくIT資本サービスの投入をふやしたのは米国とイギリスでして、95年の4倍ぐらいにふえているわけで、次の集団がドイツ、フランスでして、一番おくれているのが日本とイタリアということになります。日本とイタリアは、6ヵ国の中でみてIT資本の蓄積が非常におくれていたということです。我々も、これほどひどい結果だとは、共同研究している宮川先生が特にITの専門家ですけれども、これほどひどい結果だとは予想していませんでしたので、国際比較して驚いた次第です。

ヨーロッパでは、ITの設備投資がなぜアメリカに比べて振るわないのか、それからITを投入する方のセクターで、なぜアメリカのように生産性が上昇しないのかということについて幾つかの研究の蓄積がありまして、一つの考え方というか原因に関する考え方として、実はIT設備と補完的な無形資産が重要であるという考え方があります。無形資産というのは、例えば企業に固有の技術を労働者がどれぐらい蓄積しているかとか、または企業の組織の改編をどれぐらい適切に行っているかとか、それから研究開発とか、IT資産の定義がありますが、そういったものを含みます。

日本の場合には、研究開発は結構活発に行っているわけですが、例えば組織改革に伴う資産等が割と少ないのではないかと我々は考えています。この点については、RIETIの中で新しいプロジェクトを宮川先生を中心に開始されて、特に無形資産について分析するということは、JIPデータベースのプロジェクトと並行して始まることになりそうです。

時間もあと5分ぐらいなので急ぎますが、最後にミクロレベルの生産性の分析です。

最初にお話ししたように製造業については工業統計表の工場レベルのデータをパネル化したものを使っています。それから非製造業については、工業統計表に当たるような適当な統計調査の個票、つまり全部の非製造業をカバーしているような調査は政府にありませんので、民間ベースの上場企業に関しては政策投資銀行のデータバンク、それから中堅企業については帝国データバンクのデータに基づくJADEというデータベース。それから中小企業についてはCRD(信用保証協会)がつくっているデータを組み合わせることで分析をしています。

これをプロジェクトの公共財として我々は利用していまして、産業レベルとかマクロレベルの研究というのは、やっても論文が1本か2本できるだけですから、若い人がキャリアを積んでいく上では余り魅力的ではない。いわば公共財をつくっているような世界なわけですけれども、ミクロデータを使った実証分析だと幾らでも論文がそのテーマごとに書けまして、やりたいという若い人は幾らでもいるわけです。

そういうこともあって、これは今我々の成果を東大出版会から出版する予定で、ほぼ原稿が出そろった段階ですけれども、その章立てのうちで第4章以降はミクロデータベースを使った分析に当てていまして、その目次をみていただいていますが、基本的にはいろいろな分析をしています。1つはイノベーションと生産性の関係、2番目は、企業の参入・退出、いわば淘汰のメカニズムです。生産性の高いところが新たに参入してくるかどうか、生産性の低い企業が退出するかどうか、そういったことによって産業の生産性は規定されますので、そういう企業の参入・退出、そういった経済の新陳代謝機能に関する分析を第III部ではしています。

第IV部ではグローバル化、日本企業の対外直接投資とか貿易、アウトソーシングとか、そういうことによって企業の生産性がどう影響を受けるかという分析をしています。

こういったいろいろな分析をしています。例えばこのうちの規制緩和と生産性・研究開発の分析は、内閣府で最近出た規制緩和の経済効果に関するレポートにも、直接ではないのですがこの方法が基本的には受け継がれて、これを書かれた乾先生が内閣府の相談役になられてレポートで利用されています。

それから一番最後のグローバル化が国内企業の生産性に与える影響に関する分析というのは、たしか去年の通商白書で引用されたと思いますし、ことしも乾さん、戸堂さんに加えて新しい伊藤さんという人が中心になってことしの通商白書用の研究を今している段階です。

こういった形で、いろいろな形で政府にも使われている分析です。一々個別に入ると時間がなくなりますので、いろいろなことができるということです。その成果は政府等でも使われていますということをお話ししたいと思います。

このほか産業構造審議会の活動の一環として、今パートや高齢者、女性労働の生産性と賃金をはかるというプロジェクトも進めていまして、これにもJIPデータベースのデータを利用しています。

それから、現在工業統計表を使った産業集積に関する分析も進めたいと考えています。これは、先ほどお話しした新陳代謝機能に関する分析ですが、時間もないので飛ばします。

これは、JIPミクロデータベースの結果に基づいて、先ほどお話ししたような生産性が高いところが参入したり生産を拡大したりする。または生産性の低いところが縮小したり退出したりすれば産業全体の生産性は上昇するわけですが、そういうことをJIPミクロデータベースというのは基本的に、CRD(信用保証協会)は名前を出してはいけないのですが、帝国データバンクと、それから政策投資銀行のデータは企業名を外に出すことができますので、名前の一覧付きでどこがトップ5かワースト5かというのはわかります。

例えば建設業で、先ほど90年代に生産性が落ちたということをみていただいたわけですが、何がきいているかというと生産性が高いところが縮小したわけです。この時期、いわゆる小渕内閣の景気促進政策等もあって政府支出がふえたわけですが、それは、かなり生産性が低い地方の中小の建設会社がそれを請け負って、生産性の大きな大手のところが縮小したために、ここでは労働生産性ではかっていますが、産業全体の労働の生産性が下がったといったことがわかります。

例えば小売業とか卸売業では、逆に生産性の悪いところが縮小して生産性の高いところが拡大するといったことが比較的起きていることも確認できます。

この結果については、実名が公表できるため、政策ニーズにも適合しているということで、情報処理振興課とか産業構造課等から問い合わせがあって、将来的には公開できるところは名簿等も提供することを我々は考えています。

途中をちょっと端折りましたが、以上です。

小野会長

どうもありがとうございました。

少しご質問をさせていただいてよろしゅうございますか。幹事役の特権で先に質問をさせていただきますけれども、今先生がご説明されたこのプロジェクトは、全体で何人かかわってやっておられるのですか。

深尾ファカルティフェロー

先ほどの目次をみていただくと大分わかると思いますが、学者が6、7人いまして、もうちょっといますかね。博士課程の学生と研究補助者が8、9人いると思います。かなり大所帯ですね。

小野会長

15人、16人のメンバーでやっておられるということですね。

それともう一つ、それだけのメンバーを集めて年間どのぐらいのコストをかけてやっておられるプロジェクトですか。

深尾ファカルティフェロー

概算ですが、経済産業研究所の側の予算が大体2,600万とか2,800万ぐらいではないかと思います。基本的にJIPデータベースについては、一橋の経済研究所が21世紀COEというのをしていまして、その一部でJIPデータベースのうち附帯票といいますか、新しい分野を開拓する方はそちらが共同でやることにしていまして、そちらが700万とか800万ぐらい支出をしています。

小野会長

もう一つ、このプロジェクトは海外に同じようなデータベースをもっておられるということですけれども、その日本の占める割合、何%ぐらいが世界の中で日本が占めている割合になりますか。

深尾ファカルティフェロー

我々自体は日本だけをやっていまして、ヨーロッパが、先ほどお話ししたEU KLEMSをやっています。EU KLEMSというのは、たしか毎年2億円の予算で3年間、それでキプロスまでやるのだから大変だよと、バーン・アークというリーダーはぼやいていますが、ただ、EU KLEMSの場合にはEUがお墨付きを与えていますので国の統計局が協力しないといけないことになっているわけですね。したがって、官僚の人がそれをかなり支援してやっています。

ちょうどOECDに先週出張してきたのですけれども、例えばフランスの場合だと国の統計局とCEPIIという、ちようどRIETIに当たるような政府系のシンクタンクが共同でやっていまして、CEPIIはEU KLEMSから1,600万毎年予算をもらっているということをいっていました。

小野会長

アメリカはどうですか。

深尾ファカルティフェロー

アメリカは、ハーバードのジョルゲンソンが参加されていますが、そこに幾らお金が渡っているかは私にはわかりません。

小野会長

今日本で使われている3,400万ぐらいの費用は、これは除く人件費ですか。

深尾ファカルティフェロー

人件費込みです。ほとんどが人件費ですね。非常に労働集約的な作業なので、そうです。

小野会長

ありがとうございました。とりあえず初歩的な質問を終わります。ありがとうございました。

それでは、委員の先生方、こういうことをやっていただいているということですけれども、ご質問がありましたらどうぞ。

小笠原委員

一つは、今そういった形のコストをかけてデータベース化をしているというお話でしたが、これを確立するための手だてというか、工業所有権であれば特許とかというのがあるのだと思いますが、こういったものをどうやってデファクトにするか、方策とかがあればお聞かせいただきたいというのが一つと、あともう一つは、こういったものの研究成果を出すまでの過程で、これはこちらのRIETIとの関係ですが、どういうような情報交流がなされていて、途中で、ある意味では研究成果の見込みみたいなものについての所内評価があるのか、そういったことについてお聞かせいただけたらと思います。

深尾ファカルティフェロー

2番目の質問は、例えばプロジェクトが始まったときにどういう見通しであったのかとか、そういうことですか。

小笠原委員

そうですね。あと、その後アウトプットが出されるまでにどういうような意見交流とかがあるのかという点ですね。

深尾ファカルティフェロー

1番目の、いかにデファクトにするかということですが、こんな大変なことはほかにどこやっていませんので、今事実上、日本においてはデファクトだと思います。ただ、余りに大変なので、EU KLEMSでもそうですけれども、基本的には、やがては政府がやっていくべきことだと思います。例えば日本政府は生産性倍増とかいっているわけですから、本来日本政府が物差しをもっていないといけないのに、今日本政府はもっていないわけですね。例えば公式の全要素生産性の統計は政府にはありません。ヨーロッパの場合はEUがお墨付きを与えてEU KLEMSがあって、基本的には3年間終わったらその先は、国によりますけれども、政府の統計局がだんだんそれを受け継いでいくという方針をとっています。

例えばオランダのフローニンゲン大のバーン・アークが中心ですけれども、オランダの場合のデータは、バーン・アークがつくるのではなくてオランダの国家統計局がつくって提供しています。ですけれども日本の場合は、内閣府はご承知のように五十数人しかスタッフがいなくて、国民経済計算、例えば遡及の新しい系列は94年までしかまださかのぼっていない状態で、最近IMFから各国の国民経済計算評価のレポートが出ましたけれども、日本については、「これだけ少数でよくこれだけいい仕事をしている。だけれども、とにかく人が少な過ぎますね」というのが、大体IMFのレポートであったと思います。日本の場合も、内閣府もEUと同様に出来ればよいのですが。

これは経産省が考えられることですけれども、例えば経産省の調査統計部が引き継いでもらうとか、長期的にはそういったことも考えられるのではないか。それで学者は、その附帯票といいますか新しい部分、例えば無形資産の推計というのは、今までありません。そこをやりますとか貿易のところをやりますとか、フロンティアのところをやるのも恐らく学者の仕事であって、ある程度ルーティンになったら、やはりどこかお役所に引き取ってもらうのがいいと、我々も思っています。だけれども、日本では、今のところ内閣府が、とてもできるようなマンパワーではないと認識しています。

もともとの経緯ですが、実は我々のプロジェクトは、4年前まで3年間は内閣府の経済社会総合研究所でやっていました。「日本の潜在成長力をはかる」というプロジェクトでして、初めに林先生がやられて、その後私が3年間、そのテーマで研究をして、そのときにつくったのが最初のJIPデータベースです。

それが浜田所長のときで、香西所長にかわるときに、何でしたら続けますけれども、いかがですかというふうにいったのですが、香西さんは、研究所の恒常的な作業としてはどうかな、というご意見でした。1年間、我々は浪人して何もしませんで、その後、ここのどなたが所長のときでしたか、ご相談をしたら、RIETIでやってみませんかということで、RIETIで行うことになった経緯があります。それで改訂版を最近つくったという状況です。

ほかにこことの交渉としては、私の印象ですけれども、特にここ2年ぐらい、RIETIは経産省のほかの部局とここの研究を連携させるという、例えばいろいろな会議の節目ごとに人を招いて、課長とか課長補佐の人を招いて参加するとかということをされたり、あとは尾崎さんが長岡さんのプロジェクト、生産性に関するとかイノベーションに関するプロジェクトのコーディネーターのようなことをされていて、我々の研究会には基本的に全回出席されて、ほかの研究会で何をやっているのかというのは情報を流していただいたり、他省庁でどういう関心があるかという情報を流していただいたりしていますので、そういう形でここ2年ぐらい連携はかなり深まっている、そういう形でRIETIやMETIのニーズが我々に伝えられ、我々もそれに応じて、例えば先ほどの無形資産の推計などはそうですが、結構交流しながらやっているという印象を持っています。

小野会長

ありがとうございました。

ご質問がありましたらどうそ。

古城委員

今の質問の続きですけれども、こういう作業はものすごく大変だというのはよくわかります。ですけれども、継続していないと意味が余りないと思います。ですから、これだけおやりになってそれを今後どうするかというのはどういうところで決まって、つまりこれをうまく継続してやりたいとする場合、働きかけはどのようにされるのか、つまり内閣府はマンパワーがないのでできないということで、それを、この研究所でやっていくような形にするのがよいと考えられているのか、それとももう少し今後の展開を具体的に何か考えられておられるかどうか、お伺いしたいのですが。

深尾ファカルティフェロー

研究所というのはどこも、私が所属するのも経済研究所ですが、継続性ということが一方では大事であって、同時にフロンティアを研究するという両方あると思いますけれども、これはかなり統計に近い分野なので、最終的に理想的な形は調査統計部とか内閣府のようなところに引き取ってもらうのが一番適当なのかなと。例えばRIETIにずっとこれをお願いするのも大変なのかなというふうには思っています。

一橋の経済研究所の中では、私がいる間はフロンティアの部分は続けることができると思いますが、同時にかなりルーティンなところは、やはり統計部みたいなところがやってもらわないと長期的には難しいのかなと思っていますが、ここの調査統計部が引き受けてくれるかどうかはわかりません。最近そういう話がちょっとありますが、まだどうなるかは決まっていない段階です。どこか引き取ってくれるまでは我々がやるのかなと思っています。

小野会長

藤田所長どうぞ。

藤田所長

これは一つの例でありまして、こういう形でできるだけ政策課題と密着した形でやっていきたいということであります。ただ、先ほどおっしゃいましたように日本全体としてこういうフロンティアを開拓したのはいいけれども、あと続かないというのは困るわけで、これはそれこそ政府の責任だと思いますけれども、こういう働きかけもなるべく我々研究所も一緒になってやっていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

小野会長

ありがとうございました。理事長どうぞ。

及川理事長

小笠原さんの先ほどのご質問にちょっと補足させていただきますと、RIETIとのコミュニケーションですけれども、ご案内のとおりうちは3段階でファカルティフェローの方と1年間を通じて詰めてきて、最初の年に、その年は何をやるかというのを、いわゆるブレーンストーミングをやり、そして途中の段階で中間の報告会をいただき、そして最後DPにまとめる、この手順でやるという流れの中で、今深尾先生がいっていただいたようないろいろな局面で議論をしていくということでございます。

小野会長

よろしいでしょうか。

非常に面白い話を聞かせていただいた後、次の議題に入っていきたいと思います。

今後の研究プロジェクトの方向性といいますか、マネジメント上の課題と方向性ということで、川本さんからご説明いただけますか。

川本研究調整ディレクター

それでは再び私から「研究運営の諸課題」ということで、これはこの場でRIETIの現在の抱えている課題を自由にご議論いただきたいという趣旨でつくらせていただきました。そういう意味で、通常の正式の資料とはやや性格が異なっておりますが、これを材料に先生方に実態等について共有していただいた上でご議論いただきたいと思います。

それでこの資料は、繰り返しになりますが、金曜日にも議論を予定しておりますので、そういう内容もこの資料の中に入っております。私どもRIETIが現在、特にマネジメントのサイドでどういうことに一番心を砕いているかということでございますけれども、大きく3つぐらいにまとめてみました。

1つは政策インパクトのある研究が十分できているかどうかという問題、2つ目が、世界的な研究ネットワークに十分我々は参画できているのだろうか。3つ目の課題は、RIETIのクライアントを常に明確にして運営しているのか、あるいはその視点が十分行き届いているかと、このようにまとめてみました。

それで、今日ご議論いただきたいのは、今の深尾先生のお話にもかなりかかわってくる問題でございますけれども課題1でございます。課題2と3は、金曜日にお時間を十分とっていただいて議論させていただきたいと思います。したがいまして今日の私のこの場でのご説明は課題1、7ページまでということでございます。

「政策インパクトのある研究ができているか」ということでございます。私ども経済産業研究所は独立行政法人として霞が関のど真ん中に位置しておりまして、経済あるいは社会に関する研究というのはいろいろなところで行われているわけで、RIETIだけで行われているわけではございませんけれども、私どものポジションからいたしまして、やはり政策形成にいかに有効に貢献していくかというのが、私どもの一番期待されている役割なのかなとふだんから思っているわけでございます。

先ほど深尾先生のお話のご質疑等の中にもありましたが、近年RIETIでは、ブレーンストーミング、中間報告、それから最終的なDP検討会というような一連の研究プロジェクトの進め方につきましては標準化された方法を確立をいたしまして、クォリティの管理をかなり進めてきていると思います。これによりまして、学術的には一定程度は最低限確保するというところにかなり注意が行き届いていると思いますし、あるいは先ほどのお話の中にありましたように節目節目のプロジェクトを議論する会議の中に、経済産業省を初めとして政策現場から課長レベルあるいは課長補佐あるいはスタッフの方々の参加を、場合によっては大変多数いただいて議論しながら研究をまとめていただくという形にだんだんなってきていると思います。そういう意味で、うまくいっている部分はあると思います。

ただ、下の方にある問題意識でございますけれども、先ほど申し上げた本来RIETIとしてこれが重要な役割だという政策的なインパクトのある研究ということについては、これは最終的には客観的に判断していただくしかないと思いますけれども、自然に流しておりますと、マネジメントを問題意識なく取り組んでいると十分そこが深まっていかないという問題を私どもは常に意識をさせてられております。

では、それはどういうことかということでございますけれども、3ページで、政策的なインパクトのある研究を進めていく上で、いろいろな面で難しい面がございます。

1つは、私ども40名程度いらっしゃる外部の先生方、ここにいらっしゃる深尾先生を初めとしまして優秀な先生方に研究のリーダーをお願いしているわけですけれども、一般論としてですけれども、学者の方にとっての業績評価、これは主に大学を中心とした研究活動の評価は、やはり学術的な価値でございます。この学術的な価値と政策的インパクトの大きい研究というのはオーバーラップする場合もありますが、世の中からみるとここを研究してほしいという政策的なテーマに関する研究は、学術的にいいますとデータがまだ十分整っていない、アプローチがまだよくわからいといったようなことでリスクが大きいというのは、これは当然予想されることでございます。

第2点目といたしまして、政策的な研究、政策にかかわる研究ということを掘り下げれば掘り下げるほど一つの社会科学の分野だけでは解き切れない問題が出てまいります。例えばある政策を実現するためにどうしても今の法律の枠組みを変えなければいけないということになると、経済にかかわることで経済の分析をしているというだけでは正しい答えに迫れない、十分でないということでございます。ところが、複数の専門領域をまたぐ研究をやっていただくというのは、これはいうはやすく行うはなかなか難しいということで、やはり学会もある意味では縦割りの学問領域がございまして、これは専門ということの裏返しですけれども、例えば法律学と経済学の両方をバランスよく組み合わせてあるテーマをやってもらうということになりますと、どういうグループ形成にしていくか、法律学者、経済学者にどういう形で参加してもらい、どういうテーマを分担するか、ここら辺もかなり突っ込んだプロジェクトフォーメーションが必要になり、放っておいて研究者の方々にお願いしますということで進むというのは、そういう場合ももちろんありますが、進みにくいという実態がございます。

3つ目ですけれども、政策にかかわる研究ということで、先ほどの政策当局の人をどんどん入れてもらおうということで、もちろんプラスになる部分はたくさんありますが、それでは、ある意味でご用聞きのように政策当局の方に、今どういうことが自分の研究テーマでしょうかということをヒアリングなりでお伺いする、これは日々やっておりますけれども、それだけで、これから重要な研究テーマが自動的に明らかになるかというと、これは行政の現場も大変忙しいということもありまして、当面の重要な課題にかなりオキュパイされている。あるいはどうしても根本的な政策の見直しにつながるような研究というのには腰が重いという現状もございます。

そういう難しさがあるわけでございますが、そういう中でも、先ほどのアニュアルレポートの中でもいろいろご紹介いたしました研究、中には先ほどの深尾先生の生産性の研究ですとか少子化対策ですとか、いろいろなFTAをランキングする研究ですとか、政策形成の議論にかなり大きなインパクトを与える研究、これが生まれつつあるところだと、私どもは思っております。ただ、やはりこれからもRIETIが役割を十分果たしていくためには、こういったところをさらに強化していかないといけないのではないかと、私どもとしては思っておるところでございます。

このためにはいろいろな工夫を、マネジメントがイニシアチブをとる部分はかなりあると思いますけれども、研究所の中で生み出していかなければいけないことでございまして、具体例は後ですぐに申し上げますけれども、自由な議論を促すような雰囲気づくりを初めとして、マネジメントの方からいろいろな働きかけをしていく必要があるのではないかと思います。そこではマネジメントの時間なりリソースをとらえていくことになりますが、そこら辺が今の一番の悩みだということでございます。

具体的に今どういうことをやっているかということでございますが、5ページで、どういう研究テーマを、あるいはそれをやっていただける研究者の方がいるか、潜在的な研究リーダーですとか協力者、こういった方々を探し出すという作業を日常的にいろいろな場でやろうとしております。

それから、チームアップをするというところにもかなり心を砕かなければいけなくて、先ほども申し上げましたような異なる研究領域にいる先生方に集まっていただいて、一つのプロジェクトでやってくれませんかということをお話をするといったような場面もございます。

それから3つ目ですけれども、これは若干わかりにくい言い方になっていますが、「基盤的サーベイやロジスティック面からの研究を支える体制の強化」ということですが、研究というのは、先ほど深尾先生のお話の中にありましたが、たくさんリサーチアシスタントの方がいて細かいデータを労苦をいとわず整える、こういった面も研究には必要でございまして、いろいろなチームアップをした上で、その研究が実際に進むようにそれを支える人もさらに探してこなければいけません。そういったところも私ども、そこまで心を配らないと研究プロジェクトが実際に自動的に動いていってもらえないという部分が正直いってございます。

4つ目ですけれども、先ほどの研究テーマをどうやって探し出すかというのは、確立した方法論、これが決め手だということはございませんが、問題意識のある人を集めて自由に議論する機会をふやすというのが、私どもの一つのやり方でございまして、例えばここにありますように関連する研究プロジェクトの方々に、日ごろ先生方、自分のプロジェクトを一生懸命やっていただいていますけれども、やはり隣で何をやっているのかというのをお互いに意見交換をすると、そこのすき間なり共通の大きな課題というものが浮かび上がってくる場合がございます。こういったことも試みとしてやっております。

それからさらに「研究者に知的刺激を与える海外の先端的研究者の積極的招聘」、これはもちろん海外にネットワークをもっている先生方はいっぱいいらっしゃいますけれども、チームアップをしていってようやくできた研究プロジェクトなどというのは、最初の動き出しが不安なり鈍い場合もございます。やはりそういうのに求心力を与えていくために、マネジメントがイニシアチブをとって先端的な研究者をどんどん呼んできて国内の研究している方に刺激を与えるといった努力も必要になってまいります。

そういうような問題意識に基づきまして、昨年来幾つかマネジメントが種をまく形で幅を少しずつ広げてきているというのが実態でございます。例を今簡単にご紹介いたしますけれども、そういう意味では、これらのご説明するものは、成果もまだはっきりとは出ておりません。見通しも、本当にこういうことができるのか明確ではないものも正直いってたくさんございますが、こういったものを育て上げていきたい、育て上げるのもRIETIの一つの政策的なところを強める試みの具体的なやり方としたいと考えおります。

これは、今ここにいらっしゃる鶴シニアフェローからすぐご説明がありますが、ことし経済財政諮問会議等でも大きな労働ビックバンとか、そういう議論が出てきておりますが、労働市場制度改革問題の研究が始まっております。

それから大学のあり方、これを法律学、経済学、教育学等さまざまな分野の先生方に参加していただいて「日本のカバナンスのあり方を問う」といったような研究を開始しています。

それから、会社法は組織が自由になるような大きな改正がなされましたけれども、それに伴って会社をめぐる税制ですとか倒産法、労働法、ここら辺まで含めて整合的になっているかというところはまだ十分検証されておりません。そういったところを研究する。

それから地方経済のシミュレーションというものを具体的なモデルと数値をもって展望する。あるいは税制・社会保障負担のあり方についての検討。

次のページで、地球温暖化防止対策の排出権取引を含むさまざまな選択肢の国民経済的な政策評価。それからグローバル化・イノベーションの時代を迎えた競争政策のあり方。スタートアップ環境、日本はベンチャーキャピタルのGDP比、OECD諸国中最低レベルでございますが、こういったものに構造的な原因があるのかどうかというのを一度根本的にやってみようと。

それから、先ほど生産性の話がございましたが、特にサービスの生産性について、これは個別のいろいろな産業ごとにみてみなければわからない部分もございまして、こういったところもどういうアプローチで適切な政策を探し出すかということについてのアプローチを模索中でございます。

それから安全・環境規制の構造的な問題ですとか、有事下の経済政策、それから中国経済の実証研究、それから東アジアの安全保障、さらに構造改革の一つの実例として水産業の構造改革の問題等々、これはリーダーになる先生もはっきりと特定できていない、お話をしている段階のものも含めてご紹介をさせていただきました。本日の材料にしていただければと思います。

小野会長

ありがとうございました。

質疑はまた後にさせていただいて、早速鶴先生から、本日のテーマの労働問題について、よろしくお願いします。

鶴シニアフェロー

ただいまご紹介にあずかりました経済産業研究所の鶴でございます。本日は、このような場でお話しをさせていただく機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。

私自身、2001年度経済研究所が独立行政法人になりました設立当初からおりますフェローで、同じときにいたのは小林さんという研究員と2人ですけれども、そういう意味ではかれこれ6年ぐらい研究所の中におりまして研究をさせていただいております。

先ほど川本さんから「研究の諸課題」というお話がありましたけれども、私は、特に常勤フェローという立場から研究所の政策研究のあり方とか課題について、同じものについて違った面からみるとどういうような見え方でみえるのかというようなことだと思いますけれども、補完的なお話ということになるかと思いますけれども、お話しさせていただきたいと思います。

私、今日の話のメインは、先ほどご紹介いただきましたように、今労働市場制度改革というイシューについて研究会をやっております。この研究会はどういうようなことをやっているのか、その研究会ができるまでの過程ということで少しお話しをさせていたただこうと思いますが、その前として、先ほど申し上げたように、これまでのいろいろな研究の流れとかというようなところで、私自身の研究所に対する見方とか研究のあり方に非常に関係いたしますので、それを若干ご説明したいと思います。

最初に挙げているのは、実は江崎玲於奈さんの『私の履歴書』、お読みになられた方もいらっしゃるかもしれませんけれども、私みたときに、非常に「なるほどな」と思いました。ここでのポイントは、研究所のあり方は非常に難しい。なぜ難しいかというと、研究員が創造的であればあるほど独立を求め干渉されるのを好まない。一方、トップはやはりマネジメントの立場がございますので、重要課題に焦点を合わせた秩序ある体制を求める。江崎さんは、これは二律背反だと。一言でいえば「組織化された混沌」というか、二律背反をあわせもつようなものを維持していく、部分的にみればそれぞれの研究員の自由に仕事を進めているので混沌としているかもしれない。ただ、研究所全体としてみれば非常にバランスがとれている状態ですね。それで、管理され過ぎてはうまくいかない。一方、全体的に筋が通った体制というのは必要である。

研究所を私、これまでみてきて、これは物の常ですけれども、片方に非常に振れたりまた片方に振れたり、これはありがちであったかなと思います。ただ、これも試行錯誤のプロセスということで、その中での学習経験というか、江崎さんもおっしゃっていますけれども、「急がば回れ」ということも全く二律背反ですけれども、むしろそういうところで非常に着実にそこでの経験、学習効果、我々フェローとしてもそういうものができてきたのではないかなと思います。

それで、フェローといっても我々のような常勤フェロー、それから先ほどお話ししていただいた深尾先生のように大学にいらっしゃって研究所にかかわっていただいているファカルティフェロー、それから実際に役所で官僚、役人の業務をやりながらかかわっていらっしゃるようなコンサルティングフェロー、いろいろいらっしゃいますし、それぞれのフェローによっても皆さんそれぞれ特徴があって、十把一からげにフェローはこうあるべきだというようなことをいうのは多分間違っているだろうと思います。

常勤フェローも役所からの出向者の方もいらっしゃいますし、私のように外部から来て採用されたという者もおります。私自身が自分で感じますところ、私見ですけれども、一つはテーマ設定、もう一つは自分の研究をどういう形で具現していくかというので3つばかりお話したいと思います。

1番目はテーマ設定、これも非常に難しいのですが、やはりその時代に応じた柔軟な研究テーマを設定していかなければいけないなと。研究者は、ある専門をもってそれを非常に深くやることを基本的に求められています。それは、研究所の中の研究というと、常に非常に狭い分野で一歩もそこから動かずにということができるのかなというと、これも二律背反の一例なのかもしれませんが、私の場合は、ここにも挙げていますように、一つの制度とか経済システムというのを根幹に置きながら、その時々で自分の興味、時代の背景なども変わってきているという流れの中で、最近はここに挙げましたように労働市場の問題、それからM&Aの問題というのを特にやっています。

それで研究員、特に常勤の研究員が考えなければいけないことで一番筆頭に挙げられるのは、やはりアカデミックな研究を目指しているわけなのでDPはきちっと定期的、継続的に生産していく。これは先ほど理事長がおっしゃったように3段階プロセスというところが、こういったところに非常にいい影響を出しているのではないかと思います。ただ、DPというか、結果として政策インプリケーションを求めるのはなかなか難しい場合があって、実際に研究を始める前にそういう意識を入れてやると、その結果が具体的にどうなるかというのは、なかなかわからない場合がある。これは私も非常に強く感じる部分があります。

政策担当者やメディアというような政策インパクトを意識した情報発信となると、少し形を変えなければいけないだろうと思います。そういうときは、多分DPより短く、もう少し読みやすくして、なおかつ自分の研究だけではなくてこれまでどういう研究が行なわれたかというところも全部きちっと把握した上でのサーベイ論文、エッセイ、コラムというのは重要だと思います。

ただ、こういうものは、また二律背反の話になりますが、アカデミックは認められないんですね。学術的に評価されない。例えば大学に行こうとかいうときに、そのときにその成果としてこういうものが認められるかというとほとんど認められない。ただ、政策インパクトということになると、むしろこちらの方が大きい。

それで私自身、特に研究所のウェブサイトを通じて、ここに挙げましたようにコラムとかエコノミクス・レビューとか、そういうものを通じて一時期非常に活発にやっていた時期があって、最近はそれを本にまとめるという作業をやりましたので、そうやってウェブを通じてやると、私の経験は、いろいろな新聞とか雑誌とかの記者の方々も、最近はウェブで検索してどういう人がどういうことを書いているのかと探す場合が非常に多くて、こういう研究所のウェブをみて、例えばほかの新聞とか雑誌で書いてくれないかと。新聞や雑誌というところでいろいろ意見が出たことによって、やはりそれをみていた人たちが、実際にその政策につながるような現場にいる方々からいろいろアドバイスを求められるという、そういう向上感というのがあったのではないかなと思います。

それで、今日の一番の本題ですけれども、DPをしっかり定期的にやらなければいけないですね。それだけでは政策インパクトは難しいので、いろいろな形で政策が届くような努力をしなければいけない。

3番目の役割として、私自身非常に大きいなと思いましたのは、先ほど川本さんがご説明になったように、いろいろ複数の分野にまたがるような人たちを、ある意味でまとめて一つの研究グループをつくっていくと、これは多分こういうRIETIみたいな研究所でしかできないだろうなと思います。その中に常勤のフェローとかマネジメントというのがしっかりかかわっていくというのが非常に重要だろうと思います。

なぜかということですけれども、私はこの霞が関の世界も長いのでいろいろみてくると、学者の先生方、常に分野を固定されているので、ある分野で議論される専門家の方というのは決まっています。そういう方々が決まっているので、いつも同じような分析、視点、手法、政策提言で、人の固定化がそういうものの固定化を生んでいる。これを打破しないと新たな政策提言はなかなかできないなというのを非常に感じます。

経済学者だけではなくて経営学者、法学者、政治学者、それから実際に政策を担当している人たち、そういう人たちがある意味で「知のバトル」というか、殴り合いというと語弊がありますが、そういうことも時にはしながらお互いに刺激を与え合ったり、そこから何か一つの新しいものの融合とかシナジー効果というのが出てくるのではないかと思います。

こういう話は、いえば非常に簡単ですけれども、実は非常に難しいですね。なぜかというと、よく顔を合わせている専門家同士の方がグループもやりやすいですよね。みんな同じことを考えいるので結びつきやすい。異なった人たちを集めてくると、みんなすぐばらばらになりがちですね。それをばらばらにさせないような工夫が、私は非常に重要になってくると思います。

その工夫の話が以下の話ですけれども、1つは、最初そういうグループを立ち上げるときに、みんなそこに向いて努力していけるような一つの基本的な考え方をしっかり出す。そこの問題意識をまず共有させる。これがまず一番大切だろうと思います。

2番目として、先ほど申し上げたように、これは外の人にお願いできる話ではなくて、やはり研究所の中の人間がしっかりその中に入って結びつける役割をする。

それから次に非常に重要になってくるのは、後で実例を申し上げますけれども、私の場合も、人選びというときは、私は経済の専門なので、例えば法律学者とかというのは余り知らないわけです。やはり人集めをするときに適切なアドバイスをしていただくというところで、私の経験では経済産業省の方々、マネジメントの方々に非常に助けられました。こういうところでのマネジメントの強力なサポートというのは、非常に重要だろうと思います。

それから、実際に政策イシューをやっていく中で、政策担当者の人たちと相当密接にコミュニケーションをとらないと、非常に浮き上がったものになってしまうと思います。これも具体的に後でご説明するということで、私の経験は、第一期でやりました「財政改革プロジェクト」があります。それから今やっている「労働市場制度改革プロジェクト」、それからメンバーとして成蹊大学の宍戸先生が企業法制・税制で、これもいろいろな方々を集めてやり出したということで、そこのメンバーに入っております。

あと「財政改革プロジェクト」と「労働市場制度改革プロジェクト」についてご説明をしたいと思いますけれども、財政改革プロジェクトというのは、最初所長でいらっしゃいました青木さんがプロジェクトの中心となってやられたプロジェクトで、そこに挙げていますように2002年の末に開始して2004年3月にシンポジウム、2004年12月に本を、プロジェクトの成果を出したということです。

メンバーも、みていただいておわかりのように常勤フェロー、コンサルティングフェロー、ファカルティフェロー、学者の先生方はむしろ少数派という感じで非常に幅広い人材、かつ実際に政策を担当していた人たちに集まっていただいたということです。

この場合も、最初全部メンバーが決まっていたわけで、途中、いろいろな方のアドバイスでメンバーを追加していく、そういうときに経産省の方の助けをかりたり、最初メンバー間の意思統一をするというときに、青木さんが書かれた論文「経済教室」が非常に役に立ったということです。

それで、これは私事ですけれども、こういう成果を出させていただいて、それが昨年、経済財政担当大臣の与謝野大臣が、歳出・歳入一体改革をやるということで、内閣府の人間以外のメンバーも少し集めるということで私も非常勤ですがその中に入りまして、経済財政諮問会議、骨太などでの歳出・歳入一体改革をまとめる中で、いろいろ諮問会議にて発言をしたり、提言をしたような話も、歳出・歳入一体改革の中に入っていました。

具体的に申し上げると、私自身カナダの財政改革の例などを本の中にいろいろ書いていますけれども、それが一つ諮問会議でのキーワードになりまして、抜本的な歳出改革をまずやってから次に消費税の話にいくとか、それからいろいろ中期的な財政改革をやっていく上で、やはり慎重な見通しに基づいた財政改革、これはprudentといいますけれども、そういうことを非常に重視した諸外国の例とか、そういうのも実際の骨太の中に、いろいろ挙げると切りがありませんが、大臣からも、本の中の成果が本当に骨太に反映されたなということを感慨深げにおっしゃっていただいたこともありましたので、そういう意味では一つ成果が出せたかなと思います。

それから政権がかわって大田大臣になってからもアドバイザーということで呼ばれて、安部政権の「予算の五原則」というのを去年出していますけれども、そういったところでも少しアドバイスをしました。

以上がこれまでの状況ですけれども、こういう私の経験の中で、やはりいろいろな専門家の人たちだけではなくて幅広い人を集めて、まずカレンテッシュな問題を考えていく。それで、去年あたりから労働の問題、ホワイトカラーイクゼンプションとか格差問題、いろいろあるわけですけれども、そういう問題が出てきている中で、最初のきっかけは、経済産業省の政策担当者でざっくばらんに今どういうものがイシューになっているのか、どういうことをやっていくのかと。それで我々もいろいろ問題意識をもってお互いにそういう自由な意見をぶつける場を2回ぐらいもちました。そういうことを議論していく中で、労働というのができていないのだけれども、しっかり取り組まなければいけない問題だと。そのときに出席したメンバーは本省のメンバー、あとマネジメントの副所長を初め研究調整ディレクター、副ディレクターの方々、我々の方も常勤フェローが何人かで、非常にざっくばらんな話し合いの中で、そういうものが少しみえてきたわけです。

そうすると、では先生を呼んで少し勉強してみましょうかと。そこでまたどんどんがんがん議論をするわけです。そうしていくと、何が問題なのかというのをお互いに共有できるようなベースが出てきまして、その中で、ではプロジェクトを立ち上げていきましょうかということで研究プロジェクトを去年の秋ぐらいから年末にかけて、そういう動きをずっとやっていったわけです。

その中で私自身、例えば労働法の学者の方は余り知らないので、高原副所長や山田副ディレクターにご紹介いただいたということで、こういうようなインターアクションというのは非常に重要だと思いました。

それで、ここに書いている目的・問題意識ですけれども、やはり大きなポイントは、法学者の先生、経済学者の先生とがっぷり四つに組んでお互いに本当にいい制度設計をどうするのかということを考える。あともう一つは、ヨーロッパで相当いろいろな制度が進んでいますので、そういうことをしっかり導入する中で日本で何が有用なのかということで今研究をやっています。

メンバーは、ここにありますように法学者の先生が4人ぐらい、経済・経営学も含めて同じぐらいの人数で、その中に常時研究のマネジメントメンバー、経済産業政策局、今日ご出席の大川さんにもいつもご出席いただいてアドバイスもいただいております。

これまで5回ぐらいやってきていまして、通常のちょっと毛色が違ったということがあれば、労働政策の政策決定過程の話、三者構成、労働、使用者側、学識経験者、そういったものがなかなか機能しなくなっているのではないかというような話、また経済学者側からは、裁判の判例などを集めて非常にきめ細かく分析するということもやっている方がいて、お互いにそれぞれの考え方に刺激を受ける形で、非常におもしろい形で研究会を開催して、これからは少し全体をまとめていく段階になっていきますけれども、来年のコンファレンスに向けて準備をさせていただいているところです。

こういうことで、先ほど申し上げましたが「二律背反」、答えはすぐにはないかもしれないけれども目的を達成していく一つの手段、メソッドというのは少しみえてきたのかなというような印象を私自身も個人的にもっております。

若干時間がオーバーしましたけれども、ありがとうございました。

小野会長

どうもありがとうございました。

川本さんからは、悩みがたくさんあるというお話で、その後、鶴さんから体験を踏まえて、うまくやっていけばうまくやれるというふうなお話を聞かせていただきました。少し質疑応答をさせていただければと思いますけれども、最初川本さんから研究の難しさというようなことをご説明いただきましたけれども、資料の3ページ目、ここに書いてあることはそのとおりだと思いますが、実際にはRIETIと経済産業省との距離は非常に近い、場所もそうですし空気も読める、そういうところにメリットがあって、難しさと同時にやりやすさも反面あると思いますので、そういうやりやすさをもう少しうまく使っていただく、実際にはそういうふうにしていただいているということだと思いますけれども、ここに書いてあるトーンからすると安全志向といいますか、いろいろあちこちからごちゃごちゃいわれたくないという感じはどうしてもあると思いますが、研究部隊というのは、我々実業家からすると、もう少し先に進んでいてほしい、トライ・アンド・エラーのトライに少しウェートをかけてやってほしい、7割ぐらいはトライしてほしい。守る方は25%ぐらいで、5%ぐらいはどこかとけんかして、何か新聞記者が来たとかそういうことがあってもいいというふうに実業の舞台では思うものですから、そういう意味では、なるべくトライをしていただくのがいいのではないかというのが私のコメントで、いろいろやりにくいことがたくさんあると思いますけれども、特に先ほど鶴先生のお話にもありましたけれども、ヨーロッパではこういうふうにやっているということには聞く耳をもちたいというふうになってくるのではないかと思います。

ですから、そういう国際比較というのは一つのトライをする視点の大きな部分なのではないかと思います。そういう意味でかえる力を引き出すようにトライをしていただいたらありがたいなと思います。勝手なことをいわせていただいて恐縮ですが、これは私のコメントです。

それではほかの先生方のご意見をどうぞ。

古城委員

今のトライの話ですけれども、私は研究者ですからトライの方を重点的にやる研究所というのはすごくいいとは思いますけれども、こういう形の研究所ですと、結局このような外部評価もかかりますし、トライのところをどのぐらいにするかというのはものすごく難しいと思います。評価の基準も、結局政策へのインパクトが直接的に、短期的にどのようにあったかという尺度ではからざるを得ないような基準になっていますし、ですから、そこをどうやっていくのかというのがものすごく難しい課題だと思います。

それで、RIETIの場合は、常勤のフェローの方が少なくてファカルティフェローの割合の方が多いわけですよね。日本の場合、そういう研究所がほとんどで、常勤の人がものすごく少ないところを外部の研究者の人で補っているわけですが、外部から風通しをよくするという面では非常にいいとは思いますけれども、外部はそれぞれホームをもっていますので、どうしてもホームの方が専業になってしまって、こちらの方はやるけれども、いろいろなことを考えたりとか長期的なことを考えるのは例えば常勤の方とかマネジメントに非常に依存している、そういうことで回っていると思います。

ですから、マネジメントと常勤の方の関係といいますか、それが、うまく運営していくには一番のカギになると思いますが、そのあたりのことというのは、今までご苦労されてきているとは思いますが、このように改革をしているとか、その部分がもしありましたら教えていただきたいのですけれども。

川本研究調整ディレクター

大変よくわかっていただいてご質問いただきましたが、5ページにありますような、私どもとしてはこういう改革をしたら必ず答えが出るというような、そういう意味では古城先生の今のご質問に対するお答えはみつかっていないのかもしれませんけれども、我々マネジメントの方で、もちろんいろいろなプロジェクトごとに会議を必ず設定していかなければいけない、あるいは予算的な意味でのいろいろな成果をいつまでに出していただくというようなことも考えなければいけないのですけれども、他方で日常のそういうものに埋没しがちだというところを、何とかこういうテーマもあるのではないかとか、あるいはこの先生とこの先生にお願いするともしかしたらうまくいくかもしれないとか、しかし、なかなかそのとおりにならないことも正直いって多ございます。

というようなことで、全く答えになっていないのかもしれませんけれども、先ほどおっしゃられた常勤のフェローあるいはマネジメントというのが、そういう意味で責任感をもって考えていかなければなかなか難しいということはおっしゃるとおりで、我々としてはこういう幾つかの試みをしているところでございますが、何かさらにこういうところをもっとやった方がいいのではないかというようなご示唆があれば、いつでもいただければありがたいと思います。

古城委員

非常に難しい質問になってしまって済みません。こういうことをしたというのをいえといったわけではなくて、どのような試みを方針として考えておられるのかというのを、小さなことでもいいのでおっしゃっていただければと思ったのですが、例えば国際的な連携をしていくというのは、一つの方向性としてこの間伺っていまして、それは一つの大きな試みではないかと思ったんですけれども。

川本研究調整ディレクター

そういう意味では、一つご紹介をいたしますと、昨年の年末ぐらいからですか、私どもの方で定期的に毎週1回ずつ会議がありますけれども、所長、副所長、私、副ディレクターが必ず月曜日のある時間に集まって、いろいろなプロジェクトが今走っておりますが、その表をとにかくそこへ出して、それをずっとみんなでながめながら、これはどうなったのだろうか、このプロジェクトはちょっととまっているとか、このプロジェクトはこのままだと余り議論がいい方向へ行かないから海外から研究者を連れてくるようなことを少し考えたらどうか、次回の月曜の会議までに何か人の名前をみつけてこようということを議論したりする、そういう機会を必ず1週間に1回もつというようなことで少し進んでいるようなことはございます。

及川理事長

古城先生のご質問は実は大変鋭く、私どもの問題のポイントだと思っておりまして、6年強にわたりますRIETIの歴史ですが、私は2年弱しかおりませんけれども、率直にいってトライ・アンド・エラーの歴史であり、これだというのを見出しているわけではないと思います。

発足当初は、通産省から経済産業省にかわって、RIETIそのものが自由に独立行政法人としてやろうということで、会長、小笠原委員等からもこの評価委員会でもたびたびいわれましたけれども、研究の自由をなるべく確保することが大事で、外からの強い介入等によってRIETIのよさをなくなさないようにということを、大変ありがたいことにご支持をいただいて、そのよき風土、環境は維持するというもとで、まさに鶴さんのおっしゃったような「秩序ある混沌」みたいなものをどうつくっていくかというのの歴史だったと思います。

かなり自由にやった初期から、吉冨所長のころからDPを研究者としては質のいいものにしようと、そのコンセンサスをみんなFFの方、それから常勤の方を含めてやろうと。かつそこに一種のマネジメントとして、先ほど申し上げました3段階の工程管理、研究管理を導入しようということで、ほぼコンセンサスになってきたと思います。

ただ、これもやはり受けとめ方、それからやり方等々、フェローの方、常勤、非常勤を含めていろいろ違ってきたと思いますが、これをしても、先ほど川本君がご説明申し上げたような問題点というのはなお残っているわけでございまして、したがってマネジメント体制を少し強化した上で、そこでマネジメントが具体的な研究の中身について先生方と直接対話をしながらプロジェクトビルディングを考えていこうというのが現在の段階で、これも成功するかどうかわかりません。

ということで、今回率直にここにお出ししてご議論をいただいております。深尾先生のように当初からやっていただいて「継続は力なり」のような形になっているプロジェクトもございますが、途中でやめていったプロジェクトも率直にいってたくさんございます。ですから、なるべく長続きして、かつ積極的に我々常勤が機能を果たせるようなプロジェクトをみつけることが非常に重要ではないかと思っております。

小野会長

ありがとうございました。

ほかにご意見、コメントがありましたらどうぞ。

小笠原委員

先ほどからご説明どうもありがとうございました。

鶴先生は創立当時から小林先生とともにずっと手がけていらっしゃるということですので、今及川所長様からのお話もありましたけれども、6年前と現在と、もちろん環境は変わってきて統合的なテーマを取り組まなければいけないとか、よりマネジメントが強化されながらDPをアウトプットとするという流れがある現状の中で、非常によかった、満足がいったという部分もあれば、これは昔に比べると環境としてはかなり悪化しているなという点があろうかと思いますので、そのあたり、成果を生み出す上で非常によくなったなというのと、これは少し問題だなというようなところを忌憚なくお話しいただければと思いますが。

鶴シニアフェロー

ありがとうございます。では忌憚なく、といいましても、私自身6年間の中で、先ほど申し上げたように大学の先生でいらっしゃってこういう研究所にかかわる方というのはそれほど悩まれるというのはないと思いますけれども、こういう研究所で、特に常勤でという場合に、やはりいろいろなモデルがあるわけではないので、どういうような形なのか、フェローにいろいろなものを求められていると思いますけれども、それをどのようにやっていくのか、1人で全部やれるかということも、私は非常に難しいと思いますし、それはフェロー一人一人によって個性もありますし、その時々に何を重視するのかというのも当然あります。そこは私自身非常に悩みながらの6年間であったなと思います。

一番大きなポイントは、組織との関係において研究者には何が一番必要かというと、自由度というのは重要です。その自由度というのが将来的にずっと永遠に確保されていく自由度であったら非常にいいわけですけれども、不確実性がある自由度であったら、今はいいかもしれないけれども、将来これが本当にずっと続いていくのか、サスティナブルなのか、予測可能なのかということが、やはり私は非常に大きかったなと思います。体制がしっかりしていないと、マネジメントも当然振れるわけですよね。その不確実性が大きいと研究に対して非常に大きな影響を与えます。だから、モチベーションも下がりますし、実は研究というのは仕込みに時間がかかるわけですよね。実際にはもっと長いタームでやっていかなけれはいけないものを、そこの仕組みが非常に不安定だと、どうしてもロングタームな視点で、寄与の投資と全く同じですから、それができなくなるということです。それがやはり一番大きな問題点であったかなと思います。だから、目先の自由度があっても、それがサスティナブルでなければ、それは本当の自由ではないかもしれない。

今いろいろな状況の中で、端と端に行けばそれぞれの問題点はみえてくるわけですよね。そうすると、ではどの辺に中庸というか、どういうバランスをとり合っていくか、それは関連の人たちみんなのインフォーマルな面が大きいと思いますけれども、やはり情報交換していったり意見交換をしていかなければいけないというのが、当たり前のことですけれども、そういうのをみんな非常に強く意識するようになって、もちろんいろいろな制約は当然ありますし、それは本省とも関係あると思いますが、ある意味でそこの部分が、ある程度の自由が残された形で安定すれば、その部分でも私は研究者としても相当いろいろできるはずであろうと思います。

今の状況は、その安定度が、マネジメントの方々のご努力もあってこの何年間かの中で安定してきたなと思います。そういう意味では、私は逆にいうとやりやすいなという部分は率直に感じております。

小笠原委員

もう一つですけれども、今いろいろお聞きしていますと、今までよりもよりチャレンジしなければいけない、ある一定の要素だけで解決するような話ではなくて、答えがみえないような、そういうようなテーマに取り組まれようとしているかなという感じがありますが、それと実際のマネジメントというか、先ほどのお話の自由度のところにもかかわると思いますが、複数年にわたって、しかも予算も取りにくいというか人とお金が非常に不確実な、こういうようなテーマに取り組むという場合に、今の現状、どういう障害があるのか、非常にやりやすいものなのか非常に厳しいのか、ちょっとそれを率直に教えていただければと思います。

鶴シニアフェロー

それもずっと長年のジレンマですね。例えば、企業と銀行などの関係も同じで、契約は毎年お金を貸し借りするという契約だけれども、実態上はずっとお金を貸してあげますよということをやっている場合が非常に多いわけです。当初複数年度で始めてそれでいこうとなっても、それはもう少し成果とかそういうところをきちっとやらなければいけないというような考えの方が強まれば、そこはどうしても弱くなる。

ただ、そのときに思ったのは、我々フェローとして、これも先ほどの問題にかえるのですが、勝手にフェローが何かやっている、それはアカデミックみたいに重要なテーマかもしれないけれどもねというような感じだと、今度はフェロー側からすれば、もしかしたら次の年に切られてしまうかもしれないと不安になるわけですよね。そういう不安感があると、自分の仲間の研究者に対してもコミットメントできない。それは非常に大きな問題だと思います。

そういうところは、やはり自分がやっているプロジェクトを、やはりマネジメントの方でも何でももっと深いところで、やはりこれは重要だよねと、形式的に何かやっているよねというのではなくて、それをやっていかないとどうしても乗り越えていけないなと、だから、それはどこまでいってもある問題です。それを形式的に、では複数年度でどんどんやってくださいとやったときに、そのときに必ずそれの仕組みを悪用する人も実際に出てきます。そこがそういう研究の中での難しい面で、正直にやる人もいれば悪用する人もいる。悪用する人が一人でも出れば、こういう組織だとやはりそれは困るよねという話です。

だから、非常に悩み深いですけれども、そこは解決していく中での、研究所の中でのコミュニケーションとか、いろいろな問題意識の共有とかということがさらに乗り越えていくための重要な要素だと思っています。

小野会長

ありがとうございました。

藤田所長

非常に活発なご議論をありがとうございました。

私、40年ぐらいやってきましたのは研究者の方でして、今度は所長としてマネジメントの方に立ったわけですけれども、私はどちらかといえば研究者の方に理解が深いというか味方になる、そういう性向がありますけれども、しかし、先ほどからありましたように研究者というのは自由を求めるわけで、短期のことを要求するなと、まともな研究というのは最低3年はかかるんだということですけれども、毎年予算をいただいて評価されている状態では、ある程度のまとまった成果を毎年上げていかなければいけない。自由と、全体としてはある程度組織化された安定した成果を出す、そのためにはどういうやり方が一番いいかということだと思います。

私は、経済産業研究所は、ある意味では今日本で政策・研究、それから学際的な研究でいろいろ違った分野の人が協力するという社会的なニーズ、また学際の研究の方向としても全員がそれをやる必要はないわけですけれども、生産性が非常に高い研究課題というのはたくさんあるわけで、経済産業研究所は日本で数少ない、一番最適な研究体制を整えて研究成果をどんどん上げていけるポジションにいるのだと思います。

実際に専門家というのはそれぞれたくさんあるわけで、違った考えをもっている人はなかなか協力しません。だけれどもRIETIは、大学間を超えて法学者と経済学者が、例えば独占禁止法の研究を20人ぐらい一緒にやるというのも立ち上げていますし、そういう意味でも交流が日本では稀にみるような形で進んできていることは非常にいいことだと思います。

最後にいいますけれども、RIETIのマーク、これを皆さんは何と思われましたか。私はこれはツタの葉っぱが3枚あると思いましたけれども、これは人の顔が3人だということらしいです。私の専門の研究は空間経済ですけれども、最近は特にイノベーションというか新しい知識の創造、これがみんなのどういうインターアクションのもとで起こるかというのを今研究していますけれども、要するに「3人寄れば文殊の知恵」、重要なのは、まずオーバーラッピングが少しあって、このオーバーラッピングがないとコミュニケーションにならない。だけれども、オーバーラッピングがあり過ぎると集まるベネフィットは余りないわけで、適当な共有知識と独自の知識、これでインターアクションを起こす。

「3人寄れば文殊の知恵」といいますが、それで組織の壁をつくったらだめなわけで、これはある程度の入れかえが必要だと思います。「3人寄れば文殊の知恵」と同時に順次適当にメンバーが入れかわるような組織体制、そういう形でRIETIというのは最適な場所だと思います。

そういうことで、いろいろな難しいこともありますけれども、与えられた条件を最大限に生かして、しかし、長期的にみればリスクがあることをやれば失敗もありますが、研究プロジェクトを30、40やっていますから、平均すればある程度コンスタントなものは出るという形で私は進めればいいのだと思います。だから、評価していただく場合も、個別よりもRIETI全体でコンスタントにどういう形で成果を上げてきているかということでみていただければ、個別の自由度と全体として着実に成果を上げることができていくと思います。そういう形で、これも東京の人ばかりではだめなわけで、どちらかといえば日本全国、それだけでもだめで、やはり深尾先生などはいろいろな外国の方と研究をやっていらっしゃいますし、日本だけではない交流、経済学者だけではなしにいろいろ広い交流、それから社会との交流、こういう形で研究所をますます活性化していきたいと思っていますが、私、短期間ですけれども、研究していただいているファカルティフェローの人も常勤の人もマネジメントの方も、そういう方向に向かっているような気がいたします。

そういう形で、評価委員の方々も長期的な視点で大きくRIETIを発展させていくということでみていただいて、ぜひそういうふうにご指導いただきたいと思います。

小野会長

藤田所長どうもありがとうございました。

時間も大分オーバーしています。また金曜日にありますので、両先生はご出席いただけませんけれども、本当に今日はお忙しいところをありがとうございました。いいお話をたくさん聞かせていただきまして、大いに参考になりました。ありがとうございました。

それでは最後に事務局からお願いします。

高橋室長

簡潔にお話しさせていただきます。

お手元に配りました資料で1枚紙、「今後のスケジュール」と付した紙がございますのでごらんください。

今会長からお話しいただきましたように、今週の金曜日(6月1日)、午前10時~12時にもう一度18年度の業務実績についての分科会を開催させていただきます。本日積み残しになっておりますご説明でありますとか、今集計の途中となっているアンケートの結果ですとか、今年度の評価をしていただく参考となるような具体的なものを取りまとめまして、またご説明をさせていただきたいと思っております。

場所は、今日は別館の2階でございますが、金曜日は本館の17階に会議室を用意してございますので、そちらにお越しいただければと思っております。

それから今年も6月1日からクールビズの実施が予定されております。特に男性の方におかれましてはノー上着、ノーネクタイで来ていただいて結構でございますので、よろしくお願いいたします。

あと7月18日に経済産業省全体の独立行政法人の評価委員会、通常「親委員会」と申しておりますが、こちらがセットされました。こちらには小野会長、またお出ましをいただくわけでございますが、したがいまして、それまでの間にもう一度こちらの分科会を開かせていただきまして、分科会としての18年度のRIETIの評価について取りまとめるということが必要になります。したがいまして6月1日の段階で資料は恐らくまとまると思いますが、それをごらんいただいて評価をしていただいた上で、お送りいただきまして、こちらの方で整理をしまして、それで諮らせていただくということですから、早くても6月下旬ないし7月上旬ぐらいになろうかと思います。また日程調整をさせていただきますので、ご多忙中を恐縮でございますがよろしくお願いを申し上げます。

以上でございます。

小野会長

どうもありがとうございました。そういう段取りですので、今後ともよろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。

以上

 
 
最終更新日:2007年10月19日
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