経済産業省
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産業構造審議会産業技術分科会研究開発小委員会(第16回)‐議事録

安永研究開発課長

委員長をお務め頂いている東大の西尾先生から、本日御連絡があり、本日はお見えになれないとのこと。急遽、今回は、事務局が司会をさせていただきたい。

(1)前回議事録(案)の確認

事務局から、資料3に基づき前回議事録(案)について説明。

(2)当省における研究開発を通じたイノベーション創出策について

1.「第3期科学技術基本計画」の概要

2.「経済成長戦略大綱」の概要

3.問題意識:我が国のイノベーション・プロセスの課題

4.「イノベーション・スーパーハイウェイ」の概念

5.「イノベーション・スーパーハイウェイ」の取組事例

安永研究開発課長から、資料4に基づいて研究開発を通じたイノベーション創出策について説明。さらに、佐々木委員から、NEDOにおける人材育成・成果普及への取組事例について紹介。

安永研究開発課長

(1)研究開発成果をどうやって社会に還元するかという出口に近いところの施策の議論、(2)非常に入り口に近いところの施策としては、研究人材の育成及びそれを研究開発そのものと併せてどうやっていくかという議論、(3)異分野の融合や異業種の連携をどうやっていくかという議論の3つの議論があると認識。

桜井委員

例えば創薬・医療機器では、異分野の連携というものが少し少ないのではないかという問題意識がある。半導体・エレクトロニクスもやはりイノベーションの最後のところの出口まで考えると、物理から始まって、システム、ソフトウェア、回路等々が融合して初めて出口のソリューションになるという意味で、その部分の融合というものが我が国の場合は必ずしも十分でない。あるいは研究開発においてその辺が十分でないために、最後のイノベーションにつながらないという事例が多いのではないかと考える。したがって、他と同じように、融合に関して課題があるのではないかという認識が必要。あるいは、各種のテーマ、政策補助等において、そういうところを援助する形で行うと、より効果的なイノベーションになるのではないか。

伊藤委員

イノベーション・プロセスの基本モデルの図について。このような仮説をしっかりと透明に説明しつつ研究開発政策を推進するというのは非常に重要。この図で、S(サイエンス)からT(テクノロジー)へ行って、最後はB/M(ビジネス/マニュファクチャリング)となるわけだが、この最後の事業部門は、既存の企業を想定されているのか。あるいはここにニュービジネスをつくり込んでいくということも含まれているのか。それから、スーパーハイウェイというからには、企業の研究部門を飛ばして、サイエンスから直接ビジネスセクターに抜けるようなパスの設定もあるのではないか。このようなコメントの裏には、実は企業の研究部門に対する若干の不信感がある。いわゆるNIH症候群に入っている場合が結構あり、本来であれば、テクノロジーのところは技術合理性でシーズをどこからでも採って、そこでインテグレートすべきところを、シーズから全てを自分たちでやろうとする。その背景には特許等の問題があると聞いている。いずれにしても、そういう企業のビヘイビアが、スーパーハイウェイというよりは、そこが逆に壁になって、それを打ち破る内部摩擦にかなり苦労するような図にもみえなくない。意見は、サイエンスから直接ビジネスに行くようなパスの設定、それから、テクノロジーの摩擦を減らすような仕組み、工夫、配慮、そういったところを少し検討するのはどうかということ。

大竹委員

今回は、イノベーションというのが恐らくキーワードになっているだろう。その中で、人材の育成というのが1つ入ったことは良い。イノベーションというのを「革新」と日本語で訳して良いかどうかは疑問がある。従来のやり方自身は、「革新」ではなくて、従来の延長の「改良」の話。まずそういう印象がある。その中で、技術の革新というものが、イノベーションというものから生まれれば、それに越したことはないと思う。もし重要な技術があったときというのは、やり方を革新することによって、さらに重要な技術が生まれたり、短期間で生まれたりということはあり得る。極論すれば、大学を辞めて、3年間、本当に研究に専念できるような厚遇のシステムができれば、これはかなりイノベーションに近いやり方になるのではないかと常々思っている。これは可能かどうか不明だが、それに少し近いシステムというものを考えてみることを提案したい。もう1点、イノベーションというのはやはり「革新」。100個イノベーションの種があったとして、そのうちの100個がうまくいくと思われると、研究屋、技術屋はたまったものではと思う。「評価を厳格に」というのは重要。国民への説明という点で重要だが、イノベーションというのは、失敗もある。これをどう扱うのか、あるいはどう認めていくのかということも、我々はイノベーションというからには考えなければいけないのではないか。

梅田委員

ここにサイエンス→テクノロジー→ビジネス/マニュファクチャリングという真ん中の矢印の流れが書いてあるが、大多数の研究開発はそうだろう。ただし、太い矢印はシーズ・ドリブンの話をイメージしていると考える。しかし、今は領域(2)を主体とした研究開発のニーズが増えているのではないか。そういう意味で、矢印の逆向きの研究開発のウエイトを高めていただきたい。シーズ・ドリブンな矢印は既に方法論があるので成功率は相対的に高いと思うが、(2)の領域から頑張るという矢印は失敗の確率が高いと思う。その辺を許容して高めていくべきではないか。もう1つの側面は、この絵の中に、「社会」のようなプレーヤーの絵があれば良いと思う。

橋本委員

気になっているのは、大学で研究に携わっている人間から言うと、研究開発から実際のイノベーションのところまで到達するには、うまくいく場合もあるが、確率論的に低いということ。それとともに時間軸の問題がある。リニアモデルではなく、何回も何回も市場に近いところへ行ってそれが戻ってきてと、そういう中で発見が出てくるということを非常に経験しているし、周りで見ている。そこで感じることは、いろいろな国のプロジェクトというものが3年とか5年で切れてしまうということ。最近、それに対する問題意識はいろいろなところでいわれていて、その解として、省庁連携をうまくやることによってこれを乗り越えるのだということがよくいわれている。それをいい過ぎる余りに、これは単なるリニアモデルになってしまう。実際に研究をやっている人間からいうと、5年プロジェクトは、3年目ぐらいから次のことを考えないといけない。いいものをどんどん続けて、それで行き来しながらでも続けていけるのだと、そういう保証を出すと、現場で研究開発をやっている人間にとっては非常にやりやすい。

安宅委員

企業の経営マネジメントというところに関係してコメント。「企業の中で中長期的な発展に結びつく研究開発投資が減少する傾向にある」と述べられているが、そのとおり。ただ、その原因が、必ずしも開発効率が落ちてきたからとか、経営が長期のものにたえないからという問題だけではなく、技術も難しくなり、市場の動きも速くなって出口のイメージを描きにくくなっているということも1つ大きいのではないか。イメージが描き切れないものについては、企業は非常に不得意。特に研究所の技術屋はそういう出口イメージを描きにくいということがあり、たとえ高い見識とアイデアをお持ちの方でも、企業のそのテーマをオーソライズして、ある期間、歯を食いしばって続けるというモチベーションを持ち続けるようなシナリオを描いて維持できない。

小舘委員

ナショプロを中核とした人材育成・人材交流というのは大変良い。そこで身につけたものをもって、その後の活躍の場というのをどのように展開するか。若手研究者にとっては非常に意欲的に応募していけるのではないかと感じる。

田中委員

サイエンスからテクノロジー、そしてビジネスへ行くという非常にオーソドックスなプロセスの中で、これから経済産業省のいろいろな諸制度をつくるに当たっては、その諸制度が、例えばSからTに行く場合なのだという定義をして、だからこれの目標というのはこういうものであると、だからこういう点を評価しなければいけないといった考え方をする必要がある。多分、SからTへ行く場合とTからBへ行く場合で評価の仕方は全く違っているのではないか。何年か前、その実用化とか商業化・工業化というのに非常にウエイトを置いた時期があった。それだけではだめで、やはりサイエンスのところからきちっとやっていかなければいけないのだということを、この「団子と串」モデルというのはうたっているのではないか。そういう制度の中で評価を含めて検討すべき。2点目は、人材育成・人材交流というところで、特に学生さんとかポスドクを中心にした人材育成というのはいいが、企業の研究者もこの中で参画できるような、あるいは参画しやすいような姿というのはどういうものなのか。以前、幾つかのナショプロなどで集中研制度をやった場合に、結局、同業他社がその同じ集中研に入っていくだけでなく、バイ・ドール制度のために特許は発明者のものとなってしまうことから、研究者も、競争他社と腹を割って研究するとこれは共同発明になってしまうということで、どうしても自分一人で研究しようとすることがあった。このように本来の集中研の意味がやや薄れてしまったようなケースがあったのではないか。

菅野委員

経済成長戦略大綱は、「我が国を世界最高のイノベーション・センターにするとともに、アジアの発展に貢献し、アジアとともに成長する」とあるが、これは可能か。自己満足の世界で終わりそうな気もしなくもない。例えば、世界最高のイノベーション・センターのアメリカの有り様をみていると、研究は外国人がやっている。日本人にそれだけの度量があるか。もう1つは、日本が成功したときのことを考えると、アメリカでイノベートされたがほったらかしにされていた技術を随分使って、日本は勝った。サイエンスは自由にイノベートして、企業がつまみ食いをしていいものをつくるというようなスキームをしっかりつくった方が、この大綱の中にうたわれていることを実現しやすいのではないか。

安永研究開発課長

ご議論に感謝。ぜひこの件について引き続きディスカッションをさせていただきたい。確かに国の研究開発は、その研究開発要素は何かということを突き詰めていくと、どうも要素的な部分になって、ある1つのコアに行き着くと、それをやればいいのだということになってしまうケースがありがち。材料物性を研究しながら、ある程度芽が出てきたら、次は回路屋に少しそれを考えさせる、ないしはそれをシステム屋の目でみてみる、そういうことをもう少しやるべきではないかということだと思う。この「団子」のB/M事業部門には、今ない産業が出てくるということも含めて考えたい。それから、サイエンスからビジネスに抜けるパスというのは、これは確かに御指摘のとおり。決してSからBに行くのが異端だとも思っていないし、そういうものも分野によってはあるのだろうと思っている。それから、人を動かすということの重要性、これはもし時間があれば後で伊藤委員からご紹介いただきたいと思うが、産総研が独法化をしてから、任期つき任用などをうまく使うと、人が移動して研究をやるという、リサーチのところの人材の流動化を進めることが可能。それから、100個シーズがあった場合に、評価を厳格にし過ぎると大変なことになる、無駄や失敗もあるというのは、恐らくそのとおり。国のお金というのは貴重な国民の血税だから大事に使う、無駄遣いをしてはいけない。けれど、冒険をすると失敗もあるという、その2つを考えなければいけない。リスクがあることをやるのが国の研究だということは、肝に銘じていきたいと思っている。それから、この太い黒い矢印はBやMのところから逆に行くものも当然多いということは、御指摘のとおり。将来の社会像を共有するような議論をしながらでないと、本当に意味のある研究開発ができにくくなっている感じもする。意識してやることの重要性を考えるとともに、御指摘のあった、5年なら5年で切るというのではなく、うまく柔軟な仕組みをつくれるように考えてまいりたい。出口イメージを描きにくくなった点については、特に、人類の制約に関する部分の研究開発に関するビジョンを、産業界と学会の方々と政府とで協力しながら考えてみたいと思う。いい研究をやられる若手の方が育っても、日本の企業がそういう方々を生かしていただけるのか。場合によっては、そういう方々が海外にもっとチャンスを求めて流出してしまうということは、もしかするとあるのかもしれない。それよりも、日本の企業でイノベーティブな研究をやっていただけるように、ここは恐らく経団連や実際の産業界と相談をしないといけないと思っている。それから、我々も、実用化主義というのをやった時期がある。いろいろな状況の中から、実用化を見据えることは大事。しかしながら圧倒的な競争力を得るには、サイエンスに根ざした研究は大事だと思っている。バランスよくやっていき、なおかつ、評価をするときに、どこをやるのか、何が大事なのかをもう少しメリハリをつけていこうと思う。それから、企業の研究者が参画する場合のバイ・ドールについては、非常に評判はよいが、バイ・ドールがかえって共同研究における腹蔵なき研究者のディスカッションを妨げている要素があるとしたら、これはプロジェクトリーダーの先生方とよく話し合い、どこまでオープンにするとクリエイティブなのか、どこまでオープンにするとクリエイティビティよりも共有のデメリットがあるのか、それを研究者間で議論してみないといけない。日本の若い人が減る中で、海外からの研究者の方がむしろ主体であるという構造は、我が国で必ずしもとりやすいということは恐らくない。ただし、そのときに、どの部分を国際的な学術の連携でやり、どの部分を日本の競争力強化という視点でやっていくのか。これを議論しながら、やっていくしかない。企業がサイエンスを自由につまみ食いできる仕組みという御指摘があったが、今の日本のサイエンスあるいはテクノロジーの世界では、大学の先生方も、自由ということと、みずからのご関心、そして産業への貢献というもののバランスを今お考えになっているところだと思う。

赤池委員

テクノロジーの定義というものがやや紋切り型だなということを若干感じた。このイノベーションの創出策の中に中小企業とか町工場とかをどうやって取り込むのかということを、これまでの中小企業庁系の議論や政策を含めて是非考えてもらいたいと思っている。研究部門などを持っている町工場はすごく少ないので、そのかわり、逆にシーズがあれば、あるいはニーズがあれば、速効的に試作してしまうような、そのクラスの製造業などもこのモデルに入っていって、高度化していくようなシナリオをぜひ検討してもらいたい。

伊藤委員

産総研の試みを紹介する。企業部門から公的部門に、一旦身を移して、それでもう一度サイエンスとリンクしつつ、技術的課題を突破していったらどうかということをやってみてはどうかと思い、産総研では、ある技術を持った人材のチームとして企業の研究者を一定期間受け入れ、産総研のポテンシャルもそこに入れ込み、そこで再起を図る。そういうことを今考えている。もう1点は、企業人材の活用だけではなく、産総研自身の人材も、人事制度の自由化に伴って、今かなり企業に派遣できるようになった。サイエンスとビジネスセクターを直接つなぐ、こういう人材の移動も今進めようとしているところ。

中辻委員

国の研究サポートというのは5年とかで区切ってしまうのはよくなく、継続性、発展性が大事だというのは確か。本当に成功して次に発展するものについては是非それを発展して欲しいと思うが、一方でやはり予算は限られているので、選別評価というものも非常に大事。これは非常に痛みを伴う部分があるので、今まで必ずしも適切に行われたかどうかはわからない。ややもすると、日本は、一旦創ったものを、見かけを変えながらも継続してしまうというところがあったりする。そこははっきりと将来の発展に役立つかどうかを見直さない限り、一方で発展するものをさらにサポートするということはできないと思う。もう1点は、大学の予算とか概算要求等に関わっていると、かなり暗い状況をみんなが持もっている。つまり、大学のアカデミックなポジションで、安定・継続して研究活動ができるようなポジションが実は減っていっている。そして、新しくできるポジションは必ず3年なり5年なりの期限つきのもの。パーマネントのものは毎年確実に減っていっている。これからの日本の将来を担うべき人は、大学生で科学技術を目指そうとする人達であり、その人達に対してこういう職業についても先がないということになれば、それはどうしても暗くなってしまう。これが一番心配である。日本が科学技術立国として将来発展するための科学技術・産業を担うべき人を支えるには、アカデミックポジションだけでは無理だし、それはベンチャーを含めた産業界の人が、これまでの延長ではなくて、これからの新しいことを切り開けるぐらいの、それこそイノベーションの能力をもったような人を雇用して、活躍できる場を提供しなければいけない。経済産業省は産業界へのそういう「発展」というものを担う役割が重要。

東嶋委員

イノベーションを推進していくという経済産業省の出されたこのテーマというのはすばらしいと思う。ただ、例えば創薬・医療機器の分野で、「関係省庁の協働は進んでいるか」というのがある。いろいろなプロジェクトにいろいろな目的でお金がばらまかれているという印象をいつも持っている。それで、総合科学技術会議の役割ということで、司令塔機能の強化というのがある。どのプロジェクトにどの程度お金を使うかというのをきちんと評価していかないと、今のままのばらまき財政は変わらない。司令塔機能をどこがもつか。このテーマに関しては経済産業省が持つとか、そのようにもう少し長期的に、かつテーマ別に、どの省庁がリーダーシップをとるのかを見ていかないと、結局、ばらまき財政というのは変わらないのではないかと思う。

安永研究開発課長

中小企業の話は次の議題や、大学のあり方ということで、当局からも大学連携課が来ているので、少し問題意識を伝えて今後研究したいと思う。来年度は是非医療の現場をみておられる厚生労働省と少し連携を深めていきたいと思っている。

(3)本年度における「技術戦略マップ」の策定・活用方針について

1.技術戦略マップ策定の目的

2.技術戦略マップのローリング基本方針(案)

3.今後のスケジュール

渡邊研究開発課企画官より、資料5に基づいて本年度における技術戦略マップの策定、活用方針について説明。

安永研究開発課長

前の議題について、堤委員と宍戸委員からコメントがありましたら、お願いしたい。

堤委員

プロジェクトを核として人材育成を進めながら、イノベーション創出を図るというのが今回のキーだと思うが、そうすると、どのぐらいのプロジェクトをどのように選ぶのかというところが問題になる。その場合、あまりイノベーションということを強調すると1つ問題が起こるのではないか。ロードマップを活用して異分野技術の融合促進を図るとか、あるいはイノベーション創出を図っていく、そういう活用を考えていたが、例えば、エネルギー・環境の技術戦略マップの策定が遅れた理由の1つとして、環境と資源の制約を考えるといつまでにこういった技術が必要になるといったことを考えなくてはいけなかったことが挙げられる。それらの制約以外に物質循環の制約もある。それらの制約から、いつまでにこれぐらいのスペックの技術を開発しなければいけないということがある。それは必ずしもイノベーション・ベースになっていない。イノベーションというところに力点を置き過ぎると、その辺をどうするのかという心配がある。エネルギー・環境分野におけるバックキャストという手法は意味が大きいと思う。いついつぐらいまでに、このぐらいの技術を開発しなければいけないとすると、では、どのぐらいの人と、どのぐらいのお金をつけなければいけないというのがある程度出てくる。それとイノベーションに期待している分野とのすり合わせのようなところで、プロジェクトをどう決めていくかというところを考えていくプロセス、そういうところがロードマップの活用の方法の1つとして重要になってくるのではないか。

宍戸委員

企業の立場で、新しい技術を実用化していくというときに、どうしても解決しなければいけないのは、社会需要の問題。ロードマップの中に標準化の戦略も含めている。幾つかの領域において、いついつまでにこういったものを標準化していくという形で織り込まれているので大変結構なこと。これの領域を拡大していただければ、企業サイドとしてみれば非常にありがたい。2番目に、問題意識として、「金融の論理」というか、数字でできるだけ置きかえることのできる基礎研究投資なり基礎研究に対する開発費の支出というものが、企業の中でますます厳しく問われている。企業のロードマップ、経済産業省ロードマップ、そして学会等でのロードマップ。要するにロードマップをツールとして、そういうコミュニケーションをきちんと図ることによって、企業内での合理的な説明ができるようになる。最終的には、企業の中で支出が難しくなってくる。しかし、会社として存続するためにはある程度のお金をそういった部分にかけなければいけない。となると、公的機関や大学にそういった部分を今後お願いするという形になる。そういったときに、こういうものを1つのツールとして活用できるような形に是非ともしていただきたいと思う。

亀岡委員

イノベーションを推進していく1つの有力な方法として、ロードマップということを説明いただいた。この方法は非常に有効である。ロードマップの中には2つの「知」が含まれている。1つは、形式化された報告書。これに加えて、大変重要な「知」がまだある。それは、作業をした人たちの頭の中に今残っている知識。この方がはるかに重要で有効な情報がある。400人の方々の頭の中にある「知」を絶やさないように常に回しておくということが非常に大事。もう1点は、最近、融合・コンバージェンスということがいわれている。今、まさしくコンバージェンスの時代。これまで日本が成功したのは製品のレベルでのコンバージェンスである。技術を製品のレベルで融合していくというところにおいては、非常にすぐれた力を出した。ところが、社会性とか出口とかという、これから求めていくコンバージェンスの最終レベルは、「サービス」になるのではないかと考える。非常に社会性が強くなり、人間的ファクターが強くなっている分野で、コンバージェンスを起こしていかなければいけない。そのためのコミュニケーションが必要。このロードマップの中に、技術レベル、製品レベル、サービスレベルという新しいレイヤーを置いて、戦略ロードマップを推進するということが非常に重要。最終的には、戦略目標というものをやはり共有しておく必要がある。それは、ジャスト・イン・タイム・イノベーションである。これまで日本は、ジャスト・イン・タイム・プロダクションで成功した。この次は、イノベーションをジャスト・イン・タイムで進めること。これは産学も連携をし、研究所と事業と経営層、すべてのかかわりのある人達が情報を共有し、ビジョンを共有して、非常にダイナミックに対応ができるような仕掛けを作り、非常に柔軟な形をとりながら、結果的にイノベーションがジャスト・イン・タイムになるということを追いかける必要がある。

岡崎委員

この技術ロードマップを地域産業の活性化にどう生かしていくかという視点でご提案。現在、産業クラスター事業を進めているが、その技術開発に着目をした場合、短期的な、3~5年の中小企業の技術開発、そのぐらいを見据えている。ただ、クラスター計画そのものは、連続的なイノベーションを起こしていくということを前提にしている。技術ロードマップが5~15年後を見据えて作っているという話であるならば、中小企業の方に技術ロードマップを念頭に置いてもらうことが重要。各中小企業が技術開発を行う場合、中長期的な技術動向をみて短期的な技術開発をするのと、中長期的にみないで短期的な技術開発をするのとでは、費用対効果も随分違うと思う。まずそこのリンケージをとることが必要。その方法論だが、中小企業庁の方で昨年度から進めている新連携がある。もちろん異なった事業を展開している中小企業同士を結びつけて新しいビジネスモデルを構築していく、ハンズオンで考え方の違う中小企業を結びつけていることが1つの成功要因になっている。そのことから考えると、先ほど地域の技術開発と技術ロードマップをリンケージするために、例えば、クラスター支援機関に地域の技術をオーガナイズするような立場の人を置くと、1点目の議題でも議論になった技術動向を地域で見据えていく人がいれば、いろいろな形で国の研究開発の資金が流れてくる。または、場合によってその連続性が欠ける場合もある。そういうことも含めて、技術分野ごとにきちっとオーガナイズする人をまず置くことが必要。今、地域には分野ごとのコーディネーターは育っていると思うが、そのコーディネーター同士の技術的なインテグレートというのは非常に難しい。そういうことを見据える人がもしこの技術ロードマップの活用の方策の1つとして置かれれば、これが地域において実際に研究開発をプロモートするコーディネーターに浸透して、国が実行している各施策を効果的に活用し、研究開発が根づき、連続的なイノベーションが創出できると考える。

赤池委員

1点目は、ビジネス領域の出口コンテンツがみえない、探れないという話があるが、産業界が独自に、そして多分守秘的に策定したこの技術ロードマップみたいなものを「技術戦略マップ」にどう引き寄せるかということが、大きな肝になってくるのではないか。情報をどのようなやり方で、どのレベルで吸い上げていくのかというのを、具体的な手法をぜひ現実的に検討して、次回、そんな方向感を発表していただければと思う。2点目は、議案1とも関わるが、サイエンスとテクノロジーとビジネスというこの3つのことを常に意識しながら「ものづくり」をしているのは、インダストリアルデザイナーと呼ばれる職能集団ではないかと思う。こういう人間をぜひ人材育成や地域オーガナイザー等の中で組み込む議論を行っていただきたい。これは研究のマップではないので、技術戦略を考えたときに、それを社会化していくデザイナーのポジションのようなことをぜひ検討しながら書き込んでいただきたい。

安永研究開発課長

御議論に感謝。渡邉企画官より、御指摘について、当方の考えを御説明する。

渡邉研究開発課企画官

地域コンソーシアム、それから新連携に向けて、国として進めているグローバルな技術戦略と、地域がもっているポテンシャル、それを比較しながら、どれが伸びていくのかを見極める能力のある人材を育てていかなければならないというのは、まさにそのとおり。参考資料として配付させていただいたコンバージェンスプランというのは、昨年、私どもが委員の皆様方に御協力いただきながら進めたわけですが、この5ページ目にありますが、こういう技術領域の融合を進めていくためには、特異な技術領域をもったコアシーズリサーチャーの方が何人かいて、ただそれだけでは融合は起こらないので、中長期的な視点で社会ニーズがどうなっていくのかといったテーマを見定めたり、ニュービジネスがどう進んでいくのかということをコンセプトとしてまとめ上げる人材が必要であるというのは、このケーススタディの中で学んできた。そういうコミュニケーションを進める、それから、もっている技術の方々の知恵を吸い上げて、それをコーディネートしていく、そういうノウハウと方法論をできるだけわかりやすくまとめて公開し、今度はこのロードマッピングのプロセスマネジメントをできる人材を地域で、増やしていけば、地域発の新しいアイデアや提案が出てくるのではないかと考えている。

安永研究開発課長

さらに追加させていただきたい。イノベーションは、インクリメンタルなイノベーションと非連続的なイノベーションとがある。我々は、国がリソースを割くのであれば、よりリスキーな分野に行くというのが1つの考え方である。社会的ニーズの高い方には当然リソースを割かないといけない。そういう分野では、インクリメンタル・イノベーションでも非常に大きなリソースがかかるとか、あるいは国が全部出さなくてもいいけれども、産学官が意識を共有して何らかの役割分担でやらなければいけないケースが当然ある。特に標準化戦略は、言うは易しの分野であり、ある段階でよくみないと、日本の中でも企業の利害が実は相反する部分がある。そこがうまくマネジメントできないといけない。個別企業戦略と国の標準戦略をどうすり合わせていくかというところは、非常に各論的にも難しい部分がある。イノベーションの有力ツールとしてのロードマップとロードマッピングであるが、例えば異分野融合などは、全くそれまで知り合ったことのなかった、同じ研究テーマすら扱ったことのなかった人たちが、作業をするロードマッピングというプロセスが非常に大きな価値を生んだ。こういう分野でも、ロードマッピングの重要性について世の中にも情報発信をしていきたい。また、ロードマップにないからといって、民間企業、大学の先生方からの提案を直ちに、「これは載っていないからだめです」というようなことがあると逆効果であると。ロードマップに載っていないほどすばらしいアイデアかもしれないし、もしかするととるに足らないアイデアかもしれない。けれど、そこを杓子定規に判断するようになると、このロードマップというのはかえって害になる。そこを注意するように説明している。それから、研究コーディネーターは地域の中で育ってきたが、それをインテグレートするということについては、いろいろな側からも御指摘をいただいている。具体策を早速に考えたい。いろいろな立場の方々がビジョンを共有するための1つ共通のたたき台がロードマップであろうかと思っているので、そういう意識で施策を丁寧に細かい部分まで考えていきたい。

桜井委員

1点だけ補強。研究の最前線は意外に早く外国人化が進んでいて、もう待ったなしでそういう環境が進んでいる。そういう人々が今後更に産業界にも行くだろう。その人々をどうやって育てるか、そもそも、まず促進するのかどうかということも含めて、腹をくくらなければいけない時期になっているのではないか。グローバル化の一環として、世界のセンター・オブ・エクセレンスになるということも含めて、どういう意味なのかということをクリアにした方がよいと考える。

安永研究開発課長

御指摘の点については、私どももまだ固まった案はもっていない。ただ、御指摘のとおり、特に理工系の博士課程などにおける留学生比率の高まりなどをみると、そういった人々がしっかり日本で研究を深めて、なおかつ日本の産業界にも貢献していただき、うまく回っていくという仕組みを考えていくべき時期に来ているのではないかと思う。それをうまくできるかどうかということについて、いろいろな議論があるというのも事実。社会的な枠組みも一緒に考えていかなければいけない。これは政府全体の問題でもあるので、少し議論をしてみたい。

(4)今後の予定(閉会)

安永研究開発課長

次回の日程については、作業の進捗をみながら、委員各位に御連絡する。それでは、本日はこれで閉会としたい。長時間の御議論に感謝する。

 
 

最終更新日:2008年9月10日
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