経済産業省
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地球温暖化対応のための経済的手法研究会(第5回)-議事要旨

平成20年5月
産業技術環境局

日時:平成20年5月13日(火)15:00~18:00
場所:経済産業省別館3階第4特別会議室

出席者

委員:
茅座長、足立委員、安部委員、逢見委員、嶋津委員、関澤委員、永松委員、森嶌委員、森本委員、山岸委員、山口委員

講師:
大塚直早稲田大学教授

議事概要

大塚講師から京都メカニズムの活用について、事務局から総理主催の地球温暖化問題に関する懇談会政策手法分科会の概要説明、先般行われた海外調査及びこれまでの議論の論点整理について説明があった後、議論が行われたが、概要は以下のとおり。
 

中長期の政策手法に関して

基本的考え方について

  • 中長期の政策手法の選択については、自主的取組も含め、現行の対策をきちんと評価すべき。海外がやっているからといって、排出量取引、税を導入するという議論はすべきではない。
  • 欧米では、2013年以降の政策手法について公式な議論が開始。欧州は、長期の2050年、中期の2020年を念頭に、EUETSの設計を行っており、中長期の目標の中で議論。COP15の国際交渉に向けて、日本でも公式な議論を行う必要がある。
     

追加的な取組の検討について

  • 2013年以降に向けて、追加的に導入する政策オプションは何があるのかという議論が必要。
  • 京都議定書の第1約束期間は「京都議定書目標達成計画」を閣議決定し、政府の対応策は決まっている。2013年以降は、この対応策の足りないところを補完し、色々と追加的にやっていくのでよいのではないか。
  • 現在の手法で削減幅を高めることが可能かは検討しなければならないが、海外調査の結果を聞いたところ、欧米でも2013年以降の政策手法の選択に答えは出ていないという印象。
     

技術革新の必要性について

  • 究極的な目標を実現するためには、技術革新が重要。技術革新がなければ、GDPを減らす以外に温室効果ガスは削減されず、政治的にその方法は取りえないだろう。長期的に革新的技術の開発を行うインセンティブを与えるべき。
  • 技術革新にもいろいろな段階があり、技術にはどういう段階があり(「革新的技術」とは何をさすのかなど)排出量取引制度やその他の制度はどの段階に貢献するのか(しないのか)を具体的に検討することが必要。
  • 2050年半減を実現するためには、自主行動計画では対応できず、非連続な革新的技術が必要。
     

原子力発電について

  • 原子力発電は重要であり、稼働率向上と安全運転が極めて重要。
     

排出量取引制度

検討に向けたスタンスについて

  • 排出量取引には、様々な問題があり、そのメリット・デメリットをじっくりと見ればよいのではないか。
  • EUETSは現在進行形で、米国の制度もどうなるかわからないのであり、税や排出量取引制度の何がいいのかを専門家や政府部内で議論すべき。
     

欧米の動向について

  • 米国の金融市場の状況を考えれば、米国の排出量取引制度が欧州を飲み込むことがあり得る。経済理論というよりも、政治ということで大統領選の中でどのように動いていくのか、考えておく必要あり。
  • 欧米の動向を見ていく上では、欧米では炭素税が導入できない、自主的な取組により罰則なく約束が守られることはあり得ないと信じられているという基本的な背景を理解すべき。
  • 欧州にとって、排出量取引制度の継続が前提。導入したら政治的に撤回できない制度。最も効率的なものを巡る条件闘争をしている状況。
  • 価格がつかないことは制度の失敗だと考えられており、価格が高止まりするように制度設計をしようとする動きがあるが、産業界は価格が生命線でもあり、猛烈なロビーイングをしている。EUETSの第3期改正案も色々な形で修正される可能性あり。(理想的な制度から政治的妥協によって)本来の効率性に支障がでてくる可能性あり。
  • 「第1期は失敗が共通見解」が海外調査の結果。
  • キャップ・アンド・トレードは、キャップの問題、効果の問題等、いろいろな問題があり、試行錯誤の段階。
  • 第1期は、緩やかながら効果があり、効果が全くなかったわけではない。
     

排出量取引制度の衡平性、削減の確実性等について

  • キャップの衡平性の問題はあるが、税も含めて、完全に衡平な制度設計はあり得ない。総量を削減するという政策目的のためには、排出量取引を導入すべき。
  • 排出量取引には問題があるというだけではなく、代替政策ではその問題が克服できるかどうかも考慮すべき。排出量取引制度は、確実性、効率性、認識的効果に優れる。
  • キャップをかければ自動的にそのレベルまで削減されるわけではない。実際に削減を行う技術がなければ実現は不可能。
  • 行政が企業にキャップを課して縛ることは自由経済にとっていいことではない。省エネは国際競争の原点であり、京都議定書以前から多額の投資を行い、実施。日本がエネルギー効率の点で世界のトップランナーであることを理解すべき。
     

国際的なリンクについて

  • ヨーロッパは、炭素リーケージを防ぐためにリンクを考える方向に走る。
  • リンクについては、欧州から見ると米国の排出権価格が低すぎる、州政府には条約締結権限がないなど、簡単ではない。
  • 国際的なリンクの観点よりも、日本の国内政策として何が一番いいかを考える視点が重要。
     

オークションについて

  • (海外調査では、欧州が思ったよりもオークションに後ろ向きに見える背景は)オークションの場合、そのコストを上乗せできないとリーケージの問題は更に厳しくなる。電力は価格転嫁ができる場合もあるが、鉄鋼や紙業界は国際競争に晒されており、価格を上乗せすると国際競争力を失う。
  • 全ての国が排出量取引を導入した場合に、オークションでやる市場が価格を決めてくれるので理想的だが、リーケージや国際競争力に関係するところを保護するために、無償割当が必要との議論がある。
     

技術開発との関係について

  • 価格シグナルだけでは、技術革新が起こらないというのが海外調査で得られた感触。様々なポリシーミックスを組み合わせていくことが必要。
  • EUETSは需要牽引型で技術開発を促進させようとする手法。排出権価格の乱高下が促進効果を弱めるとともに、3~4年のスパンの話であり、長期の投資には影響を与えない。
     

自主行動計画

経済的手法との関係について

  • 自主的行動計画は、実質的なキャップをかけ、足りなければ外部から購入することを行っており、実質的にはキャップ・アンド・トレードという経済的手法と同じ。削減効果があるならば、自主行動計画の継続でもよいが、削減に責任を負う主体などが不透明であることは課題。2013年以降も自主行動計画でいけるかどうかも含めて検討すべき。
  • 自主行動計画の取組は素晴らしいが、目標の甘いところや自主行動計画のないところをどうするかを議論すべき。世界的に最高水準の取組をすべての業界が行っているのであれば、自主行動計画でもよいかもしれないが、甘い取組しか行っていない業界を巻き込んでいくためには、税や排出量取引を入れるしかないのではないか。
  • 自主行動計画は継続する価値があるものだが、欧米では国際的な制度設計を行っており、日本も排出量取引のルール作りに参画するべき。焦った方がよい話。米国を巻き込むチャンスも限られている。
     

自主行動計画の国際的評価、透明性等について

  • 自主行動計画は国際的に見ても理解されない。非常に高い目標を設定しているとしても、外には見えない。例えば、自主行動計画を社会契約化して、責任の所在を明確にするなど、もう少し説明責任を果たせるものとするべき。
  • 自主行動計画の追加で削減量が積み上がったがどういう経緯ででてきたのか不透明。自主行動計画のいい点は柔軟な点だが、こういう不透明なところは明らかにしていくべきであるし、国民への説明を十分に行っていくべき。
  • 自主行動計画に関して、京都議定書目標達成計画の中で、総量目標が業種毎に積み上げ、閣議決定され、オーソライズされている。電力部門では、電力使用量はコントロールできず、安定供給義務があり、原単位目標で取り組むことが必要。
  • エネルギー効率の向上はCO2の絶対量を減らさないというが、自主行動計画では、経済活動が増加する中で、成長とエネルギー効率を向上させて、CO2排出量を減少させている。まず合意ありきで、とにかく始めてみて失敗したのが京都議定書であり、衡平性は極めて大事。
  • 自主行動計画は、責任体制が不透明、罰則がないといわれる。しかし、目標達成が困難な業界は、社会へのコミットメントとしてCDMを購入し、実績を上げている。壮大な実行計画であり、エネルギー産業部門の84%をカバーし、着実に実行中。
  • 自主行動計画は「国際的に評価されない」ということはない。大事なのは削減効果の有無であり、自主行動計画は効果を発揮している。
  • 自主行動計画の実効性向上については、ベンチマークの検討、大企業と中小企業が一緒になった省エネ、民生・運輸におけるセクター別のトップランナー制度等について検討していくべき。

以上

 
 
最終更新日:2008年6月23日
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