日本工業標準調査会人材育成政策特別委員会(第1回)‐議事録
日時:平成20年3月4日(火曜日)13時~15時
場所:経済産業省本館17階西3国際会議室
出席者
田中委員長、圓川委員、尾形委員、北野委員、木村委員、櫛木委員、佐々木委員、武田委員、知野委員、中村委員、古川委員、正田委員、村上委員
事務局:
廣田大臣官房審議官、朝日基準認証政策課長、高辻基準認証広報室長、福田標準企画室長、江口産業基盤標準化推進室長、相澤環境生活標準化推進室長、和泉情報電子標準化推進室長、長野基準認証国際室長、江藤認証課長、藤代基準認証政策課長補佐、高砂基準認証政策課長補佐
議題
- 各委員紹介、委員長の選出
- 本特別委員会の進め方
- 標準化人材育成施策の現状と課題《説明・議論》
- その他
配布資料
資料1 日本工業標準調査会人材育成政策特別委員会委員名簿
資料2 人材育成政策特別委員会の進め方について
資料3 経済産業省における標準化人材育成施策の概要
参考資料1 ISO/IECの国内対応体制の概要
参考資料2 今年度実施研修プログラム一覧
議事概要
- 開会
日本工業標準調査会第1回人材育成政策特別委員会の開会を宣言した。
- 議題・資料の確認
事務局(朝日基準認証政策課長)から議題及び資料一式を説明。
- 廣田大臣官房審議官挨拶
事務局を代表して、廣田大臣官房審議官から挨拶があった。
- 委員紹介
事務局(朝日基準認証政策課長)から委員の紹介があった。
- 委員長選出
推薦の有無を確認後、事務局(朝日基準認証政策課長)から、田中委員を推薦し、承認された。
- 議題2 本特別委員会の進め方
議題3 経済産業省における標準化人材育成施策の概要について、事務局(朝日基準認証政策課長、藤代基準認証政策課長補佐)から、それぞれ資料2、資料3に基づき説明した。
説明後、荻原経済産業大臣政務官による御宿町立御宿小学校における出前授業のDVDを約45秒間放映し、その後、次のとおり御意見を頂いた。
- 田中委員長
本委員会の委員は、様々な側面から人材育成に関与している方々なので、事務局からの説明に対するコメント、これから本委員会でやっていくべき課題や検討事項について自由に議論して頂きたい。
- 村上委員
標準化人材育成の必要性はわかったが、コンビナーなど引き受けると個人的な負担が大きく、継続するのはかなり難しい。表彰制度などがあると思うが、人材育成を受ける側のインセンティブがよく見えないので、それを示して頂きたい。
- 朝日基準認証政策課長
表彰制度は非常に重要な枠組みであり、今年度から総理大臣表彰、産業技術環境局長表彰を創設するなど、制度を強化している。インセンティブについてはわかりやすい形で示していく必要があると考えている。
- 廣田大臣官房審議官
標準化担当者の企業内の処遇・評価を上げていくためには、経営者のマインドを変えていかねばならないと考えている。前任者は積極的に企業訪問を行い、経営者に対して説明を行ってきたが、引き続き強化して実施していきたいと考えている。
また、国際会議の参加に関する旅費や滞在費の支援は重要なので検討を進めていきたい。日本は会議直前に行くことが多いが、そのときには既に話し合いは終わっているという話も側聞だが聞くので、そういったことが起きないように努力していきたい。
- 古川委員
資料3のp.7の人材鳥瞰図は非常にまとまっている。企業等人材は「標準化業務」と「標準化戦略」に分けられる。「業務」の方は、なかなかインセンティブが働かないが、「戦略」は非常に重要であり、やや光が当たりつつある分野である。
エンジニアリング・サイエンスの立場から言うと、標準化設計ということを初めに基礎に置かないと標準化業務に携われないのではないか。
また、標準化の国家戦略と民間戦略の区分けがやや不明瞭。国家戦略は方針が出ているが、日本として、基本的な戦略の基軸はどう考えるのか。欧米では民間主導型の標準化戦略が進められているが、日本においては民間主体をどのように創出していくのかという体制が見えない。民間主導型の標準化戦略という意味において、(財)日本規格協会(以下、JSAと表記)と(社)日本経済団体連合会(以下、経団連と表記)がどういうタイアップをしていくつもりなのか、ご教示頂きたい。
企業等人材で標準化戦略に携わる人材を育成するためには、相当の語学力が必要なので、必要があれば、帰国子女を初めから活用するような方針をシームレスにつくっていくことが重要。
また、将来的には、資格化することが重要。すぐに難しければ、現在行っている研修の修了証書という形でもいい。この人がこういう能力を保持しているということを検証し、それを積み重ねていくことによって標準化戦略者から標準化実務者までいくつかのカテゴリーで資格化していくことが重要。
さらに、MOTでは標準化を含め、幅広く教えているが、標準化はカバーされる範囲が狭いのでひとつのカテゴリーとして教育しにくい。むしろ知的財産戦略と標準化戦略を一つのカテゴリーにすることによって、対象は別だが、方法論としては同じような手法を教育上とれるので、ひとくくりの教育体系をつくってはどうか。
- 佐々木委員
DVDを拝見したが、小学生に対して乾電池を例にして標準について説明する、というのはあまり上手な入り口ではないと感じた。むしろ、小学生を2つのグループに分けて、それぞれに遊びのルールをつくらせ、どちらかのルールに統合したときにどちらのグループが有利になっているかということを体感させてはどうか。
企業の中で標準化人材が優遇されていないというご指摘があった。私は必ずしもそう感じてはいないが、それは標準化という武器の、競争優位の戦略における重要性が相対的に認識されていないからではないか。最近ではブルーレイの例があり、デファクトを取りに行くのは企業にとって死活問題となっているが、デジュールがどのくらいの競争力の武器となっているかについては感覚としてわかっていない。いかに標準化が競争優位かということを知らしめるような教育をすれば、裾野が広がるのではないか。
- 中村委員
国民的なムーブメントとなるためには、「チームマイナス6%」のようにわかりやすく説明されていること、そしてメディアを通じて小学生でもわかる易しい言葉で語りかけることが必要である。まずは基礎からの努力が必要であり、重要性がわかってくれば、大学でも、標準化、あるいは知財を切り口にした学科が必然的につくられ、そうすれば後は何もしなくても標準専門家が輩出されるという構図になる。メリットとして、国家検定を是非作って頂きたい。団塊の世代が抜けていき、技術の継承が厳しいという現状においては、例えば天秤の量り方のような初歩的な研修を企画しても人が集まる。表彰・顕彰制度と絡めて、技術認定を国レベルで行って頂きたい。
- 圓川委員
東工大MOTでも標準化に関する寄附講座を行ったが非常に好評だった。知財マネジメントを柱にしており、その中で、標準化と知財がいかに経営に結びつくのかということを重視している。
企業戦略の中での標準化戦略の活用については学生にもニーズがある。
標準化は企業の中でかなりの理解がないとやっていけない。社会的な名誉というようなインセンティブがもっとないと厳しい。標準化の仕事だけで暮らしていけるという専門家集団のレベルまで引き上げることが重要。
- 正田委員
資料3のp.7の図で、基礎的な部分を見ていると、標準化のための標準化教育という印象を受ける。学問のベースとなる、計量標準や用語の統一などについて、最近は学校で教えておらず、現在は本来あるべきカリキュラムから抜け落ちているので、その辺りをしっかりと埋めていく必要がある。「もの」ではなくて、「なぜ」というところを入れ込んでいくべき。
また、専門性の高い人材については、諸外国では大使館員の中に企業出向者が多く、また国際機関における研修を支援している国がある。国際機関・組織に行きたい人がいれば、サポートできる仕組みを構築するべき。幅広い人材を育成する上では、国際機関・組織で研修できる仕組みを工業会や学会の協力によって、構築するべき。
- 櫛木委員
標準化人材育成のための研修において、デジュールは基本事項であり必要不可欠であるが、手続き論や仕組みだけではなく、本質論である貿易のしくみ、マーケットのしくみでの標準化の必要性についても触れるべき。現場における戦略的な戦い方を習得できるようにするべき。
また、電気の分野ではフォーラム標準の活用の必要性が高まっている。一番の戦闘基地はフォーラム活動になっており、デジュールを基本としながらもそのバリエーションで物事を決めていくフォーラムについても考えて頂きたい。
加えて、グローバル標準がつくられたとして、それを各国にローカライズしていくフェーズがあり、その作業を進める人材不足に苦労している。その国のローカライズの支援をどうするかということについて検討しなければならない。
さらに、先日の経団連の国際シンポジウムで、シーメンスの講演の中で、売り上げの0.1%、2000人を標準化のために使っているということが述べられていた。標準化のために、どのくらいの人材と投資が必要かが明示化されている中で、そのためにこれだけの人材育成が必要なんだということが語られないと、経営としてのスタンディングポイントが見えづらいので、「見える化」が必要。
- 武田委員
JSAでは研修や教材作成、出前研修等を行っているが、研修の対象としては、ISO/IECやJIS作成に関するものが多い。こうした研修はISO本体でも行っている。ISO/IECの国際標準専門家を育成していくならば、現在の研修を発展させていけばいいと思うが、企業活動の中で標準化を活用できる人材とすると、人材育成のスコープを変えていかねばならない。デファクトまでとはいかなくとも、電子業界では、ITUをもちろんのこと、米国のSDO、例えば、IEEE、ASTMなど、また、フォーラムであれば、W3Cなど。とりあえずWTOのレポートで示されているSDOの類については、すべて含めて考えていかねばならない。
また、METIで数年前にITスキルスタンダードが作成されたと思うが、標準化についてもこういったものを作成しないと、能力を測定するメジャーがないということになるので、検定についても意味がなくなってしまうと思われる。
- 木村委員
製造業の立場からすると持っておかなくてはいけない資格はたくさんあり、なかなか資格取得を個人の評価やインセンティブに結びつけるというのは難しい。資格は必要条件ではあるが、必要十分条件にはならないと思われる。むしろ企業の戦略として使っていく方法を考えていくことが一番のインセンティブにつながると思われるので、国として今後、戦略の更なるブラッシュアップをしていただきたい。
- 北野委員
今回の提言検討の対象として想定されている人材とは、標準を獲りに行く、自らの技術を標準化する人材が主となっているのだと思うが、標準化活動現場の多くは、むしろ策定された標準の採用や情報収集活動というのが実態ではないかと思う。標準を獲りに行く人材の育成にシフトすることは重要であるが、標準化をフォローする活動も同じく大切であり、現状ではそちらに大変な労力が投じられていることを何卒ご理解頂きたい。
- 尾形委員
日本に本社があり、もちろん企業活動の一部は日本で行なわれているものの、今や企業活動はワールドワイドに広がっており、国内だけを見据えて標準化人材育成を考えるのは無理がある。
標準のとらえ方については、もちろん計量標準や度量衡の標準といった万国共通の基本的な部分もあるが、現在の市場の基本的な2つのルールである特許と標準は、かつては別のとらえ方をされていたものの、現在はわけることができなくなっているので、学校や企業での教育もそういった点を考慮に入れていかねばならない。
- 知野委員
現状の標準化人材育成施策は多岐にわたっていると思われるが、やはり標準化の重要性がなかなか見えてこない。体系だってないという説明があったが、具体的な全体像がよく見えないので、提示してほしい。どういう知識がどの段階で必要なのか区分けして、具体的に見せてほしい。
- 田中委員長
知野委員のご指摘のように全体像をまとめるのは、本委員会のアウトプット上で重要な点である。標準化は人を通じてやっていくということで人材育成が重要であるが、これは業種による違いがある。人材育成については、知財とパッケージにするとか、基本的な知識を体系的に組み立てるとかいろいろな方法があるが、それらについても次回以降掘り下げて議論したい。
冒頭で村上委員から教育される側のインセンティブとは何かという質問があったが、建設の世界というのは、エレクトロニクスの世界と違って、標準化知識を身につけてもそれがすぐに利益に結びつくとは限らない。また対象範囲を広げて、大学生のような企業のビジネスや利益などとは離れた人材の裾野を広げるための教育を受ける人のインセンティブの問題についての指摘も含まれていたかと思われる。
さらに、尾形委員ご指摘のように、いまや日本企業は国際的に展開しているので、国際的な視野の中での人材育成というのも本委員会で取り上げていく必要がある。
本日は様々な切り口で議論いただいているが、ご指摘頂いた諸点について事務局で整理し次回以降議論していきたい。
エレクトロニクスなどの分野とは異なり、標準化の教育を受けるインセンティブがあまりない分野についてどう励みを受けたらよいかについて、ご意見があれば頂きたい。
- 佐々木委員
例えば弁理士は、企業の中では発明のポートフォリオを組んでどこを権利化するかという視点で、弊社に限った話かもしれないが、弁理士にはものを書いて権利をとってもらうところだけ担ってもらっている。企業にとっては必ずしも必要な存在ではないものの、やはり法的知識を豊富に有しているということで、企業側としては雇おうとするインセンティブになる。同様に、標準化も、こういうことを標準化されると困る、逆にこういうことを標準化してほしいという場合に専門家に任せれば事がうまく運ぶというようなビジネスモデルができれば、標準化の商売がビジネスとして成り立つし、それはモチベートになるのではないか。
- 櫛木委員
標準化の本質は、安心・安全の品質に関して規制を守るということが第一にあって、またそれを認証する制度があるということである。そのことを理解するのは人間の社会生活における基本であるが、標準化担当者であるということは、そのことに気づいて、確実にトップに説明責任を果たさなければならないということで、トップに直接提案していくインセンティブになるのではないか。
また、標準化というのは異質の意見を合わせて、コミュニケーションし、合意形成をしていくメカニズムだと思うのだが、標準化のプロは異なる意見を戦わせて決めさせる決め方のプロである、でありそれは基本をなすものであるということで、インセンティブになるのではないか。
- 村上委員
現場でコンビナーなどをやる標準専門家のインセンティブといえば、何より名誉と報酬である。例えば外国の一流学会のフェローは非常に評価されるが、そういった具体的な処遇の向上を図るとか、あるいは海外では専門のコンサルタントが出てきているが、これは確実に報酬で来ているので、こういった2つの枠組みで、現場の方々のインセンティブを刺激するというのはどうか。
- 中村委員
標準化は、サイエンスとしての標準化とエコノミックな仕組みの中での標準化という2つのカテゴリーに分けられ、大部分の国民は前者的な考え方をしているが、産業界は経済原則の中で標準化を考えており、基本的に全く違う視点にある。
産業界においては標準化が武器となってくるので、大学における標準化教育は教養的な意味での武器が与えられるということで意味がある。一方で、標準化というのはある意味で常識であり、サイエンスの中では物差しの役割をしているので、当たり前のことを当たり前に教えるという視点が標準化教育の最下層にあるべきである。その上で経済界の方はそれを武器にするということもあり得る。サイエンス的な意味で標準化の重要性を教えていかないと、国民全体への浸透は難しい。
また、法令的・行政的な仕組みで標準士を必ずおくということにする、ということも一案としてあるのではないか。
- 田中委員長
現在、建材の適合性評価業務に携わっているが、ISO9000ファミリーやISO17025というのは、元々は欧州の標準の考え方に基づいている。櫛木委員ご指摘のとおり、標準はコミュニケーションを容易にするための合意形成である。そもそも意思疎通ができない、というニーズから国際標準が必要となるわけで、法律の規制に関係している適合性評価を行う人材が、基本的な標準の意味を理解しつつ、サービスや提言ができるようなメカニズムができればよいのではないかと思われる。
IT分野は標準化に対して問題意識を持っており、企業のグローバル化とかデファクトを獲りに行くとか、フォローアップとか、知財との組み合わせの標準化戦略とかいろいろな方策が考えられるだろうが、それ以外の分野においても、標準化人材育成は必要であり、インセンティブを含め国の政策とすることで、意義のあることができるのではないか。
尾形委員が指摘された外国との人材育成を開いた格好でやるということについては、大学の共同研究等、様々な方策が考えられると思うが、ご意見があればお願いしたい。
- 武田委員
ISOにおいても、大学における標準化教育については重視しており、昨年から教育に熱心に取り組んでいるところにアワードを出したりしている。
特に大学教育においては、中国や韓国は組織だって取り組んでおり、ISO賞を受賞したのは中国の大学であったし、韓国ではKATSが中心となって、何十という大学で同じカリキュラムで実施している。日本でもいくつかの大学で実施しているが、まだまだ個々の先生方のご尽力で実施していただいており、国際的な広がりの中でやっていくという方向性はあっても、十分ではないというのが現状である。標準化教育の中身は日本は優れているが、組織的な展開については諸外国に学ぶべきところはたくさんあると考えている。
- 田中委員長
海外との関係、事例については、スケジュールによれば、次回、海外での事例を取り上げて議論するということなので、ここからは全般的にご意見頂きたい。
- 古川委員
JISCから平成13年に「標準化戦略」が、平成16年に「国際標準化活動基盤強化アクションプラン」が出されているが、その中でも人材育成について述べられている。また、経団連でもそれを受けた形で、民間企業とのタイアップでどういうふうに対処すべきかという報告として、平成16年に国際標準化戦略部会提言が出されている。標準化人材を官民でどう育成していくかというのはこれらのレポートの中で明晰に述べられているので、再整理いただいて、今日の議論を含めて、我が国としての標準化人材をカテゴリー分けし、育成する方法論、それに対するインセンティブというものを整理してほしい。
- 知野委員
標準化の重要性を一般の人にわかってもらいたいというのが大前提としてあると思うが、標準化されてないことで、不便になっている例を説明して欲しい。また、先ほどビジネスモデルでこういうことで標準化されると困るんだというアドバイスをしていただける人がいるとありがたいという発言があったが、日本でなくとも外国にそういう人がいるのかどうか、もしいるのであれば、そういう人を紹介することで、標準化人材というのはこういう人材像もあるということがわかるのではないか。
- 藤代基準認証政策課長補佐
海外で成功している専門コンサルタントは、特に欧州で多い。イギリスやドイツでは、日本でいうJSAとMETIが合体した民間の標準化機関出身者が、個々の企業から仕事を請け負って、企業の意向をくんだ形で長期的に標準化に対応してコンサルタント費用をもらっている。その事例については、次回ご紹介できると思う。日本には、JISをつくるアドバイザーはいるが、専門コンサルタントはいない。
- 和泉情報電子標準化推進室長
ここで少し取組の実態について説明させていただきたい。小中高校の出前授業については、昨年度から国際標準化100年記念事業の一環として始めた。私も実際に授業を行ったが、実際には45分という時間は短くて何を理解していただくかがなかなか難しい。現実には、標準というものがあるということと、標準は与えられるものではなくみんなで作り上げていくものということを伝えるので精一杯。また、標準について広く授業が行われるようになるためには、学校の先生自身が教えられるようにしなければならないという課題もある。
大学についても、これまで20くらい出前講義をしたが、一般の学生とMOTなどの大学院で授業の内容を変える必要がある。一般の学生についても、在学中に一度は標準についての授業があればと思っている。大学では、国際標準化の事例を加えて、問題意識を持ってもらうようにしている。
ただ、全国には多くの大学があり、どうやって普及していくかが課題である。また、最近では、標準化に携わっている大学の先生方で若い方が少なく、その背後には標準をやることが大学でなかなか評価されないという問題がある。また、一般的な学会活動にはなかなか広がらないという問題もある。
さらに、標準化のスキルは他のビジネススキルと変わらないと思うが、標準化を特別な業務のように議論している企業もあり、理解してもらうのが難しい。
- 古川委員
小・中・高・大学・大学院で標準化の掘り下げを行うということは重要だと思うが、本当に小中学校の段階でそれが必要なのか。
- 和泉情報電子標準化推進室長
どこまで教えるかというレベルの問題であると思う。標準化というのは社会のインフラとして確立しているものなので、基本的事項として、一度や二度授業を設けることは必要ではないか。
- 古川委員
文部科学省的な立場でいえば、ゆとり教育が廃止になり、今なら、小学校なら「総合」、中学校なら「職業」の科目の時間に入れられるかもしれない。しかし、全体的に授業時間の削減が進み、学力低下が叫ばれる中で、小学校の段階で、標準化という実社会に近いところの匂いをかがせるというのは難しい流れになっているのではないか。高校でも工業高校とか高等専門学校だとか将来技術社会に携わる人以上から方法論を教える方が有効ではないか。
- 和泉情報電子標準化推進室長
私も経験がそれほど沢山あるわけではないが、様々な経験を積むというのは大事であると思うし、外部から先生が教えることにも意義があると思う。
- 村上委員
出前授業は結構だと思うが、最近は若い世代にパソコンや携帯が普及していることもあり、むしろ我々の世代より文化として標準化について知っているのではないか。ISOの国際的なことは知らないかもしれないが、サッカーのルール等も国際化されているし、国際的な文化としての標準は親しむ機会は多いのではないか。
- 櫛木委員
グローバル化という視点からいえば、日本で取得した資格がアジアや国際的に通用するようなレベルを目指してほしい。日本だけで孤立していたら意味がない。
- 北野委員
先程、標準化の意味や目的についてご指摘があった。企業にとっては、技術開発した成果について、それを他社に公開して普及させるか、公開せず差別化するか、という判断がまず行われる。全ての技術が常に標準化されるのではなく、標準化しない分野もある、ということである。どちらを選択するかという目利きが大切で、標準化の分野ですぐれた能力を持っている人材とは、そういう目利きに際しても、助言ができる人材だと思う。
- 武田委員
現在のところ、国際的には資格制度はあまりなく、ISO/IECは特に、より多くの人に参加してもらいたいという考えなので、そういった制度はない。資格制度を実施するのであれば、資格取得者のインセンティブや制度としての維持、企業・産業界・学会等でどのように活用されていくのかということを考えねば、成立しづらい。古川委員の発言のように、研修修了者を認定していく形で入っていく方がいいのではないか。
- 尾形委員
弊社では特許業務に携わる若手社員に、弁理士の資格をとることを奨励しており、合格者も増加しているが、逆に合格すると非常なインセンティブが働いてしまって、会社を辞めてしまう場合があるという問題がある。
- 中村委員
企業において、標準化担当者はどのような評価を受けているのか。
- 佐々木委員
標準化担当者は、その世界にはまりこむ方が多いように思われるが、その技術分野への専門性が高くなるということで、マネージャーになるかというと必ずしもそうではないものの、技術者としてはリスペクトされている。
- 圓川委員
MOTにおいて、知財と事業戦略の中で、標準化や特許についての意志決定をできるような人材というのはニーズがある。ただ標準化を担当するとマネジメントの世界から外れるというイメージを払拭しなければならない。櫛木委員によれば、シーメンスは標準化に、0.1%の売り上げと、2000人の人材をさいているということであるが、これは、各部署の技術分野で標準化に携わっている社員も含むのか。
- 櫛木委員
標準化部門があり、そこの社員数である。
- 圓川委員
知財の世界でも弁理士という資格はあるが、知財マネジメントのコースにおいて、弁理士試験のための講義があるわけではない。では出口イメージはなんなのか、ということが問題だが、同様に標準化部門を有している日本企業において、その部門はどのように位置づけられてるかということは、非常に重要であるので、次回提示してほしい。
- 田中委員
人材育成のレビューを受けて、今回多面的な観点から意見が出されたが、諸点について事務局の方で整理して欲しい。個々のトピックスについては、次回以降整理して議論を深めていきたい。本日の議論の進捗状況に合わせて、現状スケジュールを作り直してほしい。
- 村上委員
現場のコンビナーなどはこれまで、本来業務の片手間に標準化業務をこなしていたが、本委員会では、職業として専門家となるような方向で議論して欲しい。
- 廣田大臣官房審議官
国家戦略が見えない、民間との分担についてのご意見があったが、METIでは2015年までの国際標準化戦略目標の達成に向けて、全力で取り組んでいるところである。
幹事国数も今年度増えたが、まだ5番目であり、専門家の方々には引き続きご活躍をお願いしたいと思っている。
また、社会的名誉と報酬については、まず標準化に直接関係のない人々にも、標準化の重要性について認識してもらい、標準専門家について理解いただけるような雰囲気作りをしたい。まだまだパワー不足というご指摘もあったので、アイデアがあったら是非聞かせて頂きたい。
出前授業の導入部分についても、必ずしもよくないというご指摘があったので、工夫したい。学校の教育現場への標準化教育の導入は難しいかもしれないが、副教材としての導入をはかり、標準以外の分野に行く人においても、こういう領域もあるということを認識していただきたい。
7.閉会
最後に、委員長から、第1回人材育成政策特別委員会の終了及び出席のあった各委員へ謝意の発言があり閉会。次回会合日程等は別途連絡することとした。
