|
日時:平成17年3月22日(火) 8:00〜10:00
出席者:
(講演者)
ヒューマンリンク株式会社 代表取締役社長 藤田 潔
(有識者)
岡田慶應義塾大学助教授、近能法政大学助教授、花田慶応義塾大学教授、森田立正大学助教授
(経済産業省)
豊田商務情報政策局長、岩田審議官、芳川サービス政策課長、橋本サービス産業課長、新原紙業繊維課長
議事概要:
o
ヒューマンリンク株式会社 代表取締役社長 藤田 潔より「間接部門アウトソーシングの一事例 ― ヒューマンリンクの場合 ― 」について説明、委員による自由討論を実施。その概要は以下のとおり。
【間接部門のアウトソーシング市場の現状】
o 一般に間接部門の人員は、人事で1%、経理で10〜15%を占めるといわれ、小規模企業も含めると膨大な数となるが、KPI(Key
Performance
Indicator)のような経営管理指標が無く、市場価値も図りにくい。間接部門に対するビジネス支援サービスの役割は、合理化・高度化支援と言える。
o
これまで人事業務の主流は組合対応等の労務中心だったが、連結経営の進展や環境変化により、現場で起きていることを理解できる能力や人事制度構築のコンサルティング能力が必要となっている。
o 企画部分を除く業務内容は業種や規模を問わず同じで、人事部人員の60%がアウトソース可能である。
【市場の変化】
o 1990年代は中小規模企業からのニーズが多かったが、2000年以降は1,000人以上の企業からのニーズが増えた。
【米国の人事BPOマーケット】
o 米国では1995年頃から複雑な401K業務を一括受託する企業が出現し、また大手企業ではSSC設立が活発化する等により、人事部の機能の「戦略策定及び実行」へのシフトが見られた。当時の市場規模は2,000億円弱であった。1998年以降は1兆円市場への成長期で、大企業はBPO業者を積極活用し始め、サービサー間ではM&Aによる淘汰が始まった。2003年からの安定成長期には大手BPOサービサー同士の合併によりプレーヤーが集約されると共に、請け負った業務のインド等へのオフショア化が始まった。コスト削減だけでなくコンサルティングサービスへのニーズも高まった。現在は1兆2,000億円市場である。
【アウトソーシングの目的】
o
アウトソースする理由は5つに集約される。@会社の急成長にオペレーションが対応できないため。A会社の分割や合併で間接部門が無いため。B間接部門コスト削減のため。C特に中小規模企業で、担当者の辞職を契機とした外部化のため。D人事給与システムの入替え時に自前導入よりも外部化した方が合理的であるため。
【SSCの課題】
o 大企業のSSC子会社の問題点としては、@モチベーションが維持できない。A親会社から業者扱いされる。B親会社の仕事がメインとなるため良い人材が集まらず成長性が見込めない。C利益を親会社に吸い上げられるため追加投資ができない。D連結でみるとコスト構造は何も変わっていない、などがあげられる。
o
段階的にはフェーズ1がシェアードサービス子会社(分社化)の設立、フェーズ2がこれらの子会社の合併や他企業による買収の展開となるのではないか。
【人事アウトソーシングの課題】
o
アウトソースされる人事業務のサービスレベルは日米で差がない。一方、日本では年金基金や健保関連の事務についてさえ、受託企業は年金数理人を雇用しなければ受託が出来ない条件や、アウトソースの場合には社会保険手続きを社労士事務所に限定する等規制があることが大きな差となっている。米国では、給与計算を自前で行っている企業はほとんどなく、人事部は経営層と従業員との結節点(employ
communication)の役割を担っている。
o
欧米ではHRマネージャーの半数以上が女性であるのに対し、日本の企業においては、まだまだ男性中心であることや上記のように欧米のHRの機能として重要と考えられている「従業員とのコミュニケーションという視点」よりも「いかに従業員を管理するかという視点」で業務が行われていたり等、日本の人事部も今後変っていく必要があると考える。
o
終身雇用を前提とした年金・退職金の問題がアウトソース対象業務に従事する従業員の転籍のハードルを高くしている。米国ではアウトソースの際、通常従業員は受託先に転籍となるが、日本では現場の抵抗が強く、出向形態でさえ容易ではない。
o
企業に共通する課題としては、競争力の強化や効率化といった営業等ラインでは当然とされる「会社は競争の中にいる」という視点が、間接部門には共有化されていない。
【今後の方向性】
o
人事部はこれまでのオペレーショナルな機能からもっと戦略や制度企画の機能に転換する必要がある。方向感としてはもっと経営企画に近づく、あるいは経営企画部隊に組み込まれ、実務をアウトソーサーが支える構造になるように思われる。
o そういう状況でこれからの人事部員は現場感とコンサルティング能力を有するべきである。
o
従来と異なり、間接部門も今後パフォーマンスをある尺度で測り、継続的に効率化を図ることを考えるべきであり、その意味で「アウトソースしたらどうなるか」を真剣に検討すべきでは。
o
アウトソース化の流れで企業内人事部に蓄積された知識やノウハウの空洞化を解消するような教育サービスに将来的なマーケットが見込めるのではないか。
【人材開発の対象】
o コーポレートユニバーシティや社内リーダー育成プログラムでは各事業部の次のリーダーや事業投資先のCEO,CFOなどのコア人材の育成が目的である。一方、間接部門にはオペレーション業務を行う膨大な人材が存在する。これらの間接部門の人材に対しては、これらの社内コア人材向け育成策ではカバーされず、別途スキルアップのトレーニング等が必要なのではないか。
【アウトソーシング活用企業の業績】
o
ミシガン大学ウルリッチ教授の研究によると低業績企業よりも好業績企業の方がアウトソーシングの活用度合いが高く、人事部社員1人当たりの従業員数も165名に対して129名と少ない。より現場に近いところに人事スタッフを配置する欧米に比べ、日本では本社の人事部員が多い。経済産業省としては、アウトソーシングの市場規模だけでなく、好業績企業のアウトソーシング活用率等のデータ収集や研究を行っていくことには意義があるのではないか。
【アウトソーシングの活性化】
o
現場でやらなければ見えない重要な価値があるはずで、それらを戦略的人事部門で吸い上げたり残したりするのは重要である。製品開発の概念であるモジュール型とすり合わせ型は組織にも適用可能で、役割の明確なパーツの最適化を行う前者が米国型、後者が日本型と言えそうだ。両モデルが混在するのが現状であり、モジュール化が進めばアウトソース活用が活発化していくのではないか。
|