経済産業省
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産業構造審議会環境部会地球環境小委員会・中央環境審議会地球環境部会合同会合(第27回) 議事要旨

日時:平成19年11月30日(金)9:00~12:00

場所:ベルサール神田「イベントホール」

出席委員

茅委員長、浅野部会長代理、青木委員、浅岡委員、飯田委員、石坂委員、猪野委員、植田委員、潮田委員、及川委員、逢見委員、大塚委員、鹿島委員、勝俣委員、河野委員、小林委員、佐和委員、塩田委員、関澤委員、高橋委員、高村委員、千葉委員、名尾委員、永里委員、長辻委員、中村委員、南學委員、新美委員、馬田委員、原沢委員、桝井委員、三橋委員、森嶌委員、山口(光)委員、山本委員、米本委員

議事概要

1.重要事項項目について(営業時間の見直しなど、店舗への排出削減対策)

経済産業省から資料1、永里旭リサーチセンター代表取締役社長から資料2、山口フランチャイズチェーン協会環境委員会委員長から資料3に沿って説明があった。

2.委員の発言及び質疑

  • コンビニについては、深夜時間帯の売上は一日の売り上げの16%程度を占めるとのことであったが、利用状況調査によれば実際はもっと少ないデータも確認できる。また、霞ヶ関あたりでは11時頃には閉店している。この辺、もう少し細かいデータを出して頂きたい。
  • 原単位目標の根拠は、床面積掛ける営業時間に対するキロワットアワーとなっているが、営業時間を長くすることによって売上高を上げることでき、不適切。
  • 深夜営業については、安全の面からも店員を二人置いていると思うが、労働費用の観点からも見直しが出来るのではないか。

  • 年中無休24時間営業のビジネスモデルは、必ずしもコンビニのビジネスモデルとは言えない。諸外国では、年中無休でないところもある。日本国内においても、全てが年中無休24時間営業を行っているわけではない。したがって、本当に年中無休24時間でないと出来ないものなのか検証する必要がある。「一人一日1kg」との国民運動を実施しようとしている現在、24時間営業の見直しは影響力があると思う。コンビニは、営業時間を短くすることによって、痛みを伴いながらCO2削減に取り組むことの担い手となる必要がある。

  • 営業時間が24時間営業から16時間営業に減ったからといって、省エネが進むとは思っていない。防災・防犯効果という観点から、24時間営業は効果があることも理解している。ただ、逆にこういうところにまで省エネ対策が進んでいるのでいれば、国民に対する影響は大きい。
  • 青少年は、コンビニが24時間営業しているために夜中遊んでいるとの側面もある。規制するのは行き過ぎかもしれないが、経産省と業界で話し合って調整をしてほしい。

  • コンビニだけがターゲットにされているのはおかしい。この議論はもっと幅広く行うべき。例えば、百貨店の中で冷房温度を上げても、数年前と比べて消費者の受容性ははるかに高くなっている。このようなことと連動して議論する必要がある。ドイツでは夕方6時過ぎには店は閉まっており、フランスでも日曜日には店が閉まっている。国民はそれを受容している。我が国でも、将来的にはこのような方向性が普及してくるだろう。
  • この会合で議論を行うと、どうしても大都会の話になってしまう。田舎もある。ケースバイケースで論じることが国民の了解を取るためにも必要。

  • 地域又は事業者の実状は多様。そのような多様性の実状を加味して、一律でない上手い知恵を出す必要がある。

  • いまの温暖化の状況を非常事態と捉えるか通常の状態と捉えるかによって判断が分かれる。いまは非常事態にあると考えるべき。営業の自由を掲げると、利便性やエネルギーを使用する体制を優先せざるを得ない。24時間営業で省エネ努力ができるのであれば、16時間営業を前提とした努力もできるはず。企業は与えられた制約条件で最善の努力をするもの。
  • 消費者に痛みを与えるとの考え方は妥当とは思われない。電力料金が風力発電や太陽光発電といった原価の高い電力を前提とした料金であっても、消費者は受け入れるもの。消費者は非常事態における負担は受け入れても良いと考えているはず。

茅委員長
  • このような問題は、消費者行動に影響を与えるシステムを作ることが大切。消費者は、企業の場合と異なり、簡単にその行動を律することができない。したがって、社会のシステムの方を変革して影響を与える必要がある。24時間営業を16時間営業にするのもこのような考え方の一環。16時間営業になれば企業はそれに対応できるはず。コンビニに限らずテレビなど、消費者に影響を与えるものについて、社会の流れとして考えていくことが重要。
永里旭リサーチセンター代表取締役社長
  • コンビニがあるから犯罪を防げているとの事実はあると思うが、小売店舗等に関する世論調査が内閣府大臣官房政府広報室から出ているが、それによるとコンビニがあることによってかえって犯罪を助長しているとのデータも出ている。
  • コンビニだけをターゲットとしている訳ではない。テレビもそう。
  • 「国民の痛みを伴う」という言葉が不適切であれば、「国民そのものがそのような事実を認識してほしい」ということを言いたかった。問題は、コンビニを利用する生活者の方にあるということ。
  • 一部のコンビニ経営者は24時間営業の見直しを主張しており、業界で検討してほしい。
山口フランチャイズチェーン協会環境委員会委員長
  • ご指摘頂いた点については、引き続き検討していきたい。
  • 24時間営業の現状システムについて、加盟店であるフランチャイズのオーナーの自主的事業との観点から、全般を考え直す必要がある。
  • 24時間営業によって、社会的仕組みの中で何を果たしていけるのか。現在、セーフティーステーションや災害支援などについての取組を行っている。社会的役割として何が出来るか、引き続き検討していきたい。
浅野部会長代理
  • 今日の議論で結論が出るわけではない。自動車の問題と似たところがあり、地域特性はあると思われる。都会で50メートル置きにコンビニがある場合、当番制で営業すれば良いとの考えもあるだろうし、田舎の場合はまた事情が異なる。
  • 社会的役割については、24時間営業による社会的役割とコンビニがあることによる社会的役割を混同せず議論することが必要。

3.重要検討項目について(国内排出量取引制度の導入)

経済産業省及び環境省から資料4に沿って説明があった。

山口東京大学先端科学技術研究センター特任教授
  • 私の方は資料5について。この審議会は、要するに京都期間にその目標を達成するか、どうやって達成するかという審議会。排出権取引の問題は、果たして第1ピリオドというか、京都期間のものかどうかということ。これについて、我々はさんざん議論をしてきており、自主行動計画も相当強化されている。そういう意味では私はもうけりがついていると理解している。ただ、そうは言ってもせっかくの機会なので、このキャップ&トレードの問題をここで議論してみたいと思う。
  • もう一つ、ここで議論するのは産業部門の排出権取引の問題、下流のGroundfatheringを前提とした問題。それから全量オークション、これは基本的に出来ないという前提で皆さん考えている。そしてもう一つ、実は今日は上流キャップの排出権取引及びその国際制度、これについて他で少し議論が出ているので、出来ればそれについて話をしたい。
  • 私が一番申し上げたいのは、要するに実態をよく見る、そして議論をしようということ、これに尽きる。その意味では、先ほど藤原経済産業省環境経済室長から説明があった資料の5ページに、日本の自主行動計画とEU-ETSの具体的な比較があった。あれ以外に、以前一度この会合で言ったことがあるが、日本の自主行動計画とEU-ETSの各業種の目標の原単位がどのくらいなのか、これをちゃんと比較してみる必要がある。要するに、自主的なのは緩くて、法律はきついという、私はこういうのを黒板経済学と言っているが、要するにそのような非常に単純な思い込みが多い。そこはよく現場を見る、その上で議論をしようという、こういうことが一番だということを最初に申し上げたい。
  • そういう前提で産業部門の国内排出権取引についてだが、私は日本になぜ導入されないかということをずっと考えていたが、一番のポイントは、日本には有効に機能する自主行動計画があるということ、これに尽きる。具体的には、アメリカとヨーロッパはこれがない。ないというか信用がない。自主的なものは、要するにあんなものは機能するはずがないということが前提となっている。これは企業の行動原理が違って、ヨーロッパを見てもアメリカを見てもそうだが、ものすごい罰金を高くしない限り企業は絶対にこれは守らない。日本の場合はそうではない。そして、自主行動計画を見ると実際に守っている。そういうところをよく見て、その上で議論しようではないかということ。したがって、彼らは自主的な手法に関する代替案がない。そうするとキャップ&トレードから直接規制になる。税金は失敗した。そうすると直接規制よりキャップ&トレードがいいだろう。こういうロジック。日本の場合はそこが違う。
  • 次に4ページ目だが、ここが私の思う全てであり、要するにヨーロッパと日本、アメリカと、一番左の1、2、3、4、5と5つ違いがある。ヨーロッパは全部に当てはまる。アメリカはこのうちの幾つか。日本は余り当てはまらない。政策の正当性ジャスティファイをする、これはオルタナティブとともにいろいろ比較する。こういう場合には、効率性が非常に大事となる。要するに、いくらこちらのほうが安いかということ。ただ、日本の場合には、効率性、要するにそもそも政府が政策を出すときにオルタナティブを出してやるということはほとんどない。その必要がない。
  • それから企業の行動原理、これは向うの場合には完全な市場信仰である。要するにマーケットに任せる。それからもう一つは、要するに短期の利潤極大、これがやはり最大。実態は比較の問題だが、経済学の教科書どおりに動く。M&Aなんかを見ても皆さんよく分かると思うのだが、現実に日本の企業行動は違っている。日本の場合には短期の利潤極大では動かない。だから自主行動計画が機能している。短期の利潤極大であれば機能するはずがない。だから彼らにはそれがわからない。ここで何回も国内の発信が必要だといっている理由である。
  • それから3番目は経済モデルに対する信頼。日本のモデルは非常にいいが、ただ政府の恣意的な干渉が入る。1998年の第一次の大綱のときに、原子力発電所21基入ったのを、これがBUAに入る。これは最初からそういうふうにすることになっている。できた途端にこの信頼性がない。みんなモデルを信用しないで果たして本当に日本全体の中でインダストリーはこれだけだと。その中でこの分野、鉄鋼は幾つ、セメントは幾つというように、政府は本当にそういうことができるのか。これはできないと思う。
  • 4番目、政策の判断基準の優先順位。これは要するに、日本の場合には一言で言えば横並び。ということは公平性。もちろん効率性が大事ではないとは言わない。ただ、この審議会で効率性の議論をしたことはほとんどない。一昨日も資源エネルギー庁で議論があったが、効率性あるいはコストという言葉は1回も出てこなかった。日本の場合に効率性ということはほとんど関係ない。これは良いか悪いかではなく、そういう現状がある。
  • そしてもう一つ、政府と産業界の信頼関係。これも非常に総体的なものである。どちらかというと、アメリカやヨーロッパの場合にはコンフロンテーション、日本の場合にはどちらかというとお互いにコミュニケーションをしてやっていこうということ。そして、こういう前提で考えるとEU-ETSは左の1、2、3、4及びもう一つEU統合の政治理念。要するにいろいろ問題はあるが、ルーマニアもチェコもポーランドもEU-ETSはもう本当にたまんないと思っている。だがEUから抜けるという自信はない。もう最後は仕方がないというふうになるのだろうと思っている。
  • そしてもう一つ、EUの場合にはすべての加盟国にプライムスという一つのモデルで配分している。こんなことはできるはずない。したがって、後で申し上げるが訴訟が起こっている。それでもEUから抜けるかというと、なかなか抜けられないだろう。
  • 次に、アメリカはこの左の1、2、4、これは同じ。ただ、1つは経済モデルに対する信頼性がアメリカはない。したがって初期配分は非常に難しい。それから、議会が強い。だから、理論どおりいかない。
  • 次に、日本は2番、5番、これから自主的な手法が有効。3番、4番から初期配分が非常にできない。1はほとんどないということで日本の場合には導入の必要性が薄いと思っている。
  • そして5ページ、これは後でご覧いただけば分かるが、要するに申請したのと欧州委員会が認めた額、その比率を見ると、旧EU、EU15の方は4.2%しか削られていない。新規のほうは25%削られている。この太字で書いた国がみんな今提訴中。したがって、1本のモデルでやることにそもそも無理がある。しかし、抜けられない。
  • 次の英語のやつをちょっと。これは一昨日のフィナンシャルタイム。先ほど最近の事情という説明があったが、これはまさに一昨日なので最も最近だが、これは非常におもしろい記事がいっぱい出ているのでぜひ皆さんに見ていただきたい。このうちの次の7ページのコミッションコールズ何とかというところ。これはEUの副委員長のコミッショナーが言っている。後でご覧頂きたいが、要するにアルミ、鉄とか、フェーズ3の方。これは、要するに仮にオークションになっても無償で排出権を与えるべき。これはこうした産業がEUから出て行くのは好ましくないから。汚染を輸出して失業を輸入する愚は避けるべき。EUは、この業種に対しては排出削減のためのボランタリーグローバルセクトラルアプローチを進める。この動きが広がることでEUの競争力の不利は免れる。解決の道は1に技術、2に技術。これがEUのコミッショナーがまさにバイの前に言っていること。
  • 次にアメリカ議会、エレクトラル、要するに議会の行動というのは、次に落選すると困るので、次に選ばれるようにする。実は、クリーンエアアクトンというのは13年間大議論があった。そこで賛成派・反対派を見ると党派は関係ない。要するにメイン州、カリフォルニアとかマサチューセッツ、バーモント、あんまり汚れないところ。そういう産業がないところはもっと厳しくしろと言う。下のバード、リハール、リンネルとか、この辺は要するに石炭地域。そういうところの議員は反対する。ですから、アメリカの場合はかなりコストエフェクティブネスという概念が強いが、現実の政治になるとなかなかそういかなくなる。ですからアメリカ議会でいっぱい法案が出ているが、あのとおりいくとはとても思っていない。
  • そういうことから排出権取引を検証してみると、効率性について、これは後で岡教授から説明があるが、要するにそんなに効率的でない。環境効果、ここのところは非常に誤解があって、あたかも排出権取引を入れると減るみたいなふうに考えている人がいるが、これは排出権取引を入れるから減るとか増えるのではない。要するに、排出権取引を入れるから減るというのは間違い。
  • 最後に11ページについて、要するに排出権取引と比較すべきは自主協定だが、現在では直接と自主との混合、現在は政府がもう随分干渉している。そして効率性は大差ない。環境効果も大差ない。要するにほぼ同じ。公平性の点からキャップ&トレードは実現の可能性が非常に困難。そうすると、要するにポスト京都の話で見ると、ポスト京都の国際的な動きを見極める必要はあるが、自主的手法の目標が、これがもちろん納得できなきゃだめ。そういうものであり、その目標が達成される限り排出権取引の導入の必要はないというのが私の結論。
  • 上流配分については私の資料を見て頂くと非常に問題が多いということがよくわかっていただけると思う。あと参考資料がついている。このうちで秋元さんが書いたホームページが非常に詳しく書いてある。この辺をぜひご覧頂きたい。
岡福井県立大学経済・経営学研究科教授
  • 排出量取引で非常に重要なのは初期配分をいかに行うのであるという観点から、ここ十数年いろんな制度を見て来たが、昨年からEU-ETSで初期配分がどう行われているかを調査して来た。その結果を中心にお話したい。
  • まず、排出権取引のメリットを先ほどまとめられていたが、大きく分けて2つだろうと思う。1つは目標達成の確実性。2番目が効率性。効率性というのは最小費用での排出削減。このほかに長期の影響として技術革新を促進するというようなことが言われているが、実はこれは排出権取引というのは取引可能な規制の一種であるというところから来ており、直接規制と比べて排出権取引の方が技術革新を起こすということは全然実証されていないので、その点利点はないだろうと思っている。
  • そこで、この2点に絞るが、このうち目標達成の確実性に意味のあるのは、すべての部門にかかる排出権取引が導入された場合であり、ここで主としてターゲットになっているのは、EU-ETSでもそうであるが、産業部門とエネルギー転換部門。そこだけを含むような取引制度であれば、確実性というのは全体としては満たされる保障はないので、利点は失われる。そうすると、効率性に絞られるのではないかと思う。もちろん、電力部門は微妙なところがあり、電力部門の直接排出というのは産業部門以外の業務、民生、運輸からの間接排出、運輸は別、運輸も含んでいるので、そこを大きくカバーすると目標達成の確実性という意義は大きくなってくるかと思うが、電力部門の直接排出をどうするか、どう考えるかというのは重要な問題なので、後で申し上げたい。
  • ここでは排出権取引の利点を効率性に絞って議論する。効率性というのは、先ほど申し上げたように最小の費用で排出削減目標を達成するということ。そのための条件がある。それは排出権価格が限界排出削減費用に等しくなるということ。限界排出削減費用というのはここでもさんざん議論されたと思うが、追加1トン削減するためにかかる費用、あるいは、逆に言えば追加1トン排出を増やした場合に得られる便益と言い換えても良い。この限界排出削減費用を考えるときに、排出削減方法に2種類あるということが重要。1つは省エネルギーなどによって、あるいはエネルギー源の転換によって生産現場でのCO2排出原単位を減らすという方法。もう一つ重要なのは、CO2を出しながら作られる製品の生産自体を減らすということ。この2つの削減方法両方に限界排出削減費用というのがあって、どちらの削減方法を取ろうと、すべての活動での限界排出削減費用を排出権価格に等しくするということが効率的削減のための条件となる。
  • 特に、後者の製品の生産自体が減ることによる排出削減、ここに効くというところに排出権取引のメリットがある。もし原単位を減らすのであれば直接規制が可能だが、需要そのものが減っていくという効果は排出権取引独自のもの、あるいは環境税なので、ここに排出権取引がどう効いて、そこで効率性をどう発揮しているかということが重要になる。どちらについてもCO2を排出するすべての活動が排出はただではないということを考慮して行われるということ。これが排出権取引制度の核心。ここが満たされているかどうかにかかっている。
  • ところが、排出権取引に不可欠の初期配分というものがこの前提を崩すという現実がある。それがEU-ETSで見てとれる。EU-ETSの初期配分の方法全体を見てみると、基本的に個別既存施設への配分は実績の排出量または実績の生産量に比例して行われている。それから第2に重要なことだが、第1期と第2期から成って、配分のためのベースになる年がずれている。第2期の配分のベースになる年は第1期の配分のベースになる年よりも後になっている。特に重要なのは、2005年という年がオランダやドイツでは含まれているということで、これは第1期中の1年。ということは、第1期中の活動が第2期の配分に影響する。このことがもっと重要なのは、第3期、第4期と続いていくとすれば、そこでの配分も第2期中の活動に依存して行われるだろうという予想が行われるということ。
  • 3番目に非常に重要なことだが、期間中も再配分があること。すなわち施設の閉鎖や新設・増設に際して再配分がある。新設・増設に対しては無償配分があり、閉鎖の場合には排出権を返上しなければならない。こういう配分方法が行われると、次のようなゆがみが生じる。まず実績排出量に基づく配分は、多く排出すればするほどたくさんの排出権をもらえることに結びつく。
  • ベンチマークというのは、例えば生産量1単位当たり幾らというベンチマークで配分するという方法だが、この場合も大きな生産能力を持ちたくさん生産すればするほどたくさんの排出権をもらえるというゆがみをもたらす。このことが実は生産量の削減による、削減の場合の限界排出削減費用と排出権価格が等しくなくなるという事態をもたらす。
  • また、新設・拡張への無償配分は設備拡張してたくさん生産すればたくさんもらえるということになり、閉鎖時に排出権を返上しなければならないということは、古い施設を温存するという行動をもたらす。実際、新投資するとかえって排出権を減らされるということがあるので、なかなか排出削減につながるような新投資は行われない。これらのゆがみは、すべて排出権費用を気にしない排出の増加や減少が存在するということから生じている。すべての活動に炭素価格を組み込むという排出権制度の最重要事項がここで消えてしまっている。つまり、EU-ETSは効率性を諦らめていると見たほうがいい。
  • 実際の配分量では、電力部門だけ現実の削減量を求められるような配分が行われている。つまり実際の排出量よりも少な目の配分は電力だけで行われているが、そうすると電力部門では少なくとも排出権取引制度によって排出削減が進んだのかということが重要になるが、現実に起こっていることは電力ですら排出量は増えている。例えば、イギリスの電力産業が2005年に受け取った排出権は1億3,600万トンだが、排出量は2005年1億7,200万トン、2006年1億8,200万トンというふうにむしろ増えている。したがって、電力部門は排出権を購入している。排出権取引ゆえに排出削減活動が行われたという実績はない。なぜかというと、エネルギー転換投資をするとかえって排出権を失うからである。より排出原単位の少ない施設を作ると、排出権の再配分によって排出権を減らせる。例えば原子力発電を導入する、あるいは水力発電を導入すると排出権を1単位ももらえない。
  • それからもっと重要なことは、10年後にこの制度がどうなっているか分からないということ。電力の投資というのは10年先を見越して行われるが、10年後に無償配分されるのか、あるいはオークションになるのかということが全然わからないので、10年後を見越した投資がこの制度によって促進されるということはない。そうすると、唯一の実行可能な削減対策は、既存発電所の利用構成を変えるということになるが、これもガス価格の高騰によってかえって石炭が増えた。この状況は第2期についても変わらないと思われる。
  • 効率的な排出削減を実現するためには、配分量を実際の排出量から切り離す。それから過去のある量を基にして配分したとしても、それを歴史上1回きりのものとして再配分を行わないということにすれば効率性は満たされる。しかし、そのためには一度配分を受けた施設の所有者が施設閉鎖後もそれを所有し続けるということが必要になる。また、新規参入には無償では配分しないということが必要になる。EU-ETSはそれを行わなかった。なぜかというと、社会が多分それを受け入れないからだろうと思う。それは、たまたまある時期にCO2を排出していたというだけで未来永劫続くような財産権を受け取るということを社会が許さない。資本主義の所有権というのは正当性が問題になる。古典派経済学以来、自己労働に基づく所有と、それに基づいて行われた所有権の正当な対価を伴った移転、これ以外に正当な所有権の根拠はないので、恣意的な政策によって天から降ってきたような所有権を私的な経済主体に与えるということは非常に難しい。それが、このような配分が行われた根拠だと思う。だからこそ不要になれば没収され、必要が生じれば新たに配分される不安定な権利としてしか排出権は配分されなかったのではないか。このような困難な初期配分を回避するには、全量オークションで配分するというのが唯一の方法。しかし、それでは排出者の負担が莫大になるので、なかなか難しい。EU-ETSの将来は全量オークションができるかどうかにかかっていると思うが、一部の電力部門であればそれは賛成するが、その他の部門は賛成しないだろうと思われる。
  • それから、温暖化対策には大きな費用がかかるので、費用をできるだけ節約すること。つまり効率的な排出削減が重要だといわれているが、実は効率性というのはそれほど重要ではないからこそあのような初期配分が行われている。この例は読んでいただければ意味がわかると思うが、効率性よりも分配の平等ということが重要だろうという例。
  • もし日本でEU型の排出権取引を導入するとしたら、現実的な方法は自主行動計画を基にして実績排出量に比例した配分をするということ。そして、施設閉鎖時には排出権を取り上げ、施設拡張時には追加配分するという方法になるだろうと思う。また5年後には実績排出量に基づいて配分し直すと。そうするとEU-ETSと同じように効率的な排出削減は行われないだろうと思う。しかし、自主行動計画と同じぐらいの排出削減は起こるだろう。ただし効率的ではないので費用最小ではなく起こる。そうすると、結果は自主行動の場合と大して変わらない。違いは自主行動が総量規制に変わったということになる。ただし生産の変動に応じて再配分を繰り返す総量規制に。そのための行政費用というのは非常に大きくなると思うが、それを正当化するほどの排出削減効果があるかどうかということを吟味するのが必要だと思う。
諸富京都大学大学院公共政策連携研究部准教授
  • 今お二方の先生が自主行動計画であたかも行けるかのような前提に立ってお話をされたが、私は、自主行動計画は必ずしもこのままで上手くいくとは思っていないので、その意味で自主行動計画から排出量取引制度へ転換していくことが重要であるという立場からお話をさせていただきたい。
  • まず、基本的な私の問題意識としては、日本の2005年の温室効果ガスが基準年比で7.8%増加しているということ。これは皆さんご存じのとおりだが、以下、私が排出量について語るときはすべて直接排出、つまり電力セクターも含めた排出で語っているということをご承知おき頂きたい。でないと、電力セクターからの排出がすべて家庭や電力を購入する産業からの排出に割り振られてしまうので、以下の話はすべてエネルギー転換部門を含んだ話である。
  • CO2排出量の約6割を占める産業・エネルギー転換部門の排出量というのは、実は1990年以降約10%増加をしている。そのうち8割をカバーする自主行動計画では、原発の稼動停止等で2008年から12年に見込まれる対策量の不足分というのはさらに拡大するという可能性が大きくなってきている。つまり、さらなる追加削減が必要になってきているということ。実際、この図を見ていただけばわかるように、自主行動計画の主要7業種における排出量というのはこのように顕著に増加しており、とりわけ電力セクターにおける石炭の増加によって顕著な増加を見ているというのが現実。これで、実は自主行動計画は量的な排出量のコントロールが可能である、成功しているということが言えるのか。
  • 10月の自主行動計画では目標引き上げというものが行われたが、実は18業種のうち11業種で現状を上回る甘い目標が設定されているということが明らかになっている。実は、乾いた雑巾ではなくて、さらなる削減余力を残した目標設定であることが明らかになっている。実は、家庭部門の排出が確かに増加しており、ここから排出を削減すべきだということがよく主張されているが、実はそのエネルギー消費というのは先進国で比べると群を抜いて低い。直接排出の64%を占め、削減余力そして技術的潜在能力を持つ産業・エネルギー転換部門からの排出削減というのが日本の温暖化対策の本丸であるということを改めてここで強調しておきたい。
  • それを考えた場合に、自主行動計画は果たしてその期待に応えるのかという点で私は問題点が5つあると考えている。
  • 第1は、目標自体が自主的に選択できること。これは非常に自主行動計画のレーゾンデートルである。自主行動計画の削減目標の正当性、そして目標達成の担保措置が実は存在していない。
  • 問題点の2は、4種類の指標の中から実はみずからに有利な指標を自主的に選択できる構造になっており、その結果、実は業種内・業種間での効率性改善競争のメカニズムをビルトインすることに失敗している。例えば、生産減が見込まれる業種は排出量を選択し、生産増が見込まれる業種は原単位を選択している。石炭使用の多い業界はエネルギー原単位を選択する。このような形で達成を可能な手法を選ぶことができる。しかし実際に排出総量のコントロールができているのかと言うと、原単位目標の業種は排出量が顕著に増加しているということが明らかになっている。
  • 問題点の3は、業種内における排出削減努力の配分過程は実は不透明であり、外部からは検証不可能である。排出量取引と比べ排出削減努力の配分が公平性と効率性の観点から見て優越性を持っているということを山口先生、岡先生はどのようにして証明されるのかということをお聞きしたい。
  • 問題点の4は、原単位についても分母が独自に補正されており、検証不能であるという問題があり、最後に業種間・事業所間で排出量取引が許容されていないため費用効率性の改善可能性がない。
  • 実際に削減をしていくということを考えた場合に、日本の場合には実は余力がある。どのような余力があるかというと、例えば燃料転換。1990年以降の発電所での石炭使用増というのは先ほど言及したとおりだが、これは実は日本の排出増加分に相当する。石炭から天然ガスに実は燃料転換によって大幅に削減可能であるが、その削減インセンティブを与えるには炭素に価格づけをしていくことがやはり必要。これがないために非常に増えている。
  • 削減方策の2つ目は、実はエネルギー効率性を改善していくことによって大幅削減もさらに可能である。つまり日本は効率性がいいと言われているが、実は日本の事業所間・発電所間の中で相当効率性のばらつきがあり、そしてその効率性を改善していくことが実は大幅削減を可能にする。そのためには操業率の変更とか、改修・新規投資が報われるそういうインセンティブを与えていくことが必要であり、排出量取引はそれを可能にする。インセンティブの付与という点では、実は上記のいずれの点でも排出量取引制度は自主行動計画に優越する。なぜかというと、総量をまずコントロールできる。マクロレベルで。それから各事業所の排出削減目標を量的な観点から実は統一的に定義できる。これはミクロレベルで。燃料転換、改修・新規投資による効率的改善へのインセンティブを付与することができる。これは排出枠に実は移転ルールというものを設けることによって可能になる。そして費用効率性、これを私はあえて費用再評価とは言わない。岡先生が批判されたとおり、私は岡先生の批判に同意する。しかし、効率性改善の余地がある、これが排出量取引の非常に大きなメリットである。実は、岡先生は数値でこれを先ほど示されました。さらに技術革新へのインセンティブが存在するということ。
  • 実は、現行排出量取引制度(EU-ETS)は確かに多くの欠陥を持っている。しかしそれは克服可能。グランドファザリング方式の初期配分にそれを投資する、これは岡先生が指摘されたとおり大きな問題であり、それは他の型が普通だと効かない、そういう先期に次の期の初期配分を投じてしまうこと、それから新発明に対して追加で無償配分していくこと、これは問題であるという指摘はそのとおりである。しかし、現行のEU-ETSがとりあえずその初期配分の現在の状態の欠陥がなぜ排出量取引制度を全否定する理由になるのか。実は排出量取引は欠陥を抱えながらもさまざまな利点を持つ政策手段であり、多くの改善可能性を持っている。ましてや、上記の欠陥は自主行動計画を正当化することにはならない。排出の取引は負荷の経過を持っているにかかわらず、なお排出総量をコントロールできるという利点を持っている。これは将来的に一層の排出削減が必要な場合には極めて重要なポイントになる。必要最小から実現されたものは取引を通じて効率性改善の余地がある。この点は自主行動計画では達成ができない点である。そして業種間・業種内の事業所からの排出量と排出分の透明性が膨張する。初期配分の改善も可能。オークションの活用が既に現に行われている。グランドファザリング方式の欠陥をこれによって除去可能。そして最善技術に基づくベンチマークを活用することによって、業種間・業種内で排出削減競争のメカニズムをビルトインすることが可能である。そして、移転ルールを活用することによって改修・新規投資へのインセンティブを与えることも可能である。
  • 私は、排出量取引制度は日本の産業にとって必ずしも不利だとは考えていない。むしろ逆に日本の産業の更なる発展にとって排出量取引制度の導入が非常に重要なことだと考えている。2013年以降、日本を含む先進国が更なる排出削減を求めることは必至である。であるならば、日本も中長期目標というのを設定し、それを整合的な形でキャップ&トレード型排出量取引制度を導入していくことは非常に有効である。キャップを伴う中長期目標というのは、企業の投資計画や技術開発に長期的な見通し、予見可能性を与え、そしてそれに影響を与える点で極めて重要である。
  • 事業種別行動計画に存在するフリーライドを克服し、そして排出削減を行った企業が報われる、ある種公平な仕組みというのを導入しなければ、実は計画がどんどん厳しくなっていくときに、真面目に取り組んでいる企業の潜在的な不満というのは非常に高まっていくだろう。いずれ将来、排出量取引制度の導入が不可避であるならば早期に導入し、グローバルな市場ルールの形成過程に日本も参画していくべき。
  • 最後に、岡先生と山口先生がドメーリ、クレリオンという論文を引用され、排出量取引制度がEU-ETSが費用効率性、つまり費用最小化という理論的に想定されるものか実現されてないということを示されているが、実はそのクイリオン氏とは私は研究所の交流がありまして、彼はメールで私の私信の中で、それがEU-ETSを否定する方向で使われているということが私は非常に心外であるということを私に言ってきている。彼は、だからといって私は自主行動計画を正当化するつもりは毛頭ないとも言っている。我々の課題はむしろその欠陥を克服し、どうやって排出量取引制度をベターなものにしていくか、それが大きな課題だと思う。
明日香東北大学東北阿アジア研究センター教授
  • 今日は、このようなアウトラインでお話しさせて頂きたい。まず最初に、世界と日本の現状に関する最新情報の提供をしたい。これによって、早急かつ大幅な総量削減の必要性に関する認識を皆様と共有したい。次に、現行のキャップ&トレードの評価を行う。これはEU-ETS批判に対する反論である。さらに自主行動計画の比較劣位な点を再確認させて頂きたい。最後にまとめ。
  • 最初は早急かつ大幅な総量削減の必要性。私もキャップ&トレードが完全無欠なすばらしい制度だと言うつもりはない。実際に問題点はある。またキャップ&トレードはあくまでも道具の一つであって、制度構築自体が目的や目標ではない。そこでまず最初に、温暖化問題に関する世界や日本の現状、そして、そのような現状において私たちが持つべき目的や目標を再確認したい。
  • これは、つい最近採択されたばかりのIPCC第4次報告書からそのまま引用したものである。これによると、今後20年から30年の削減努力が私たちの将来を決定してしまう。また、排出削減が遅れるとより厳しい影響のリスクが増大するということを第4次報告書は警告している。すなわち、早急かつ大幅な排出量の削減が必要だということが国際社会の共通認識になっている。
  • これは、今年10月にアメリカ科学アカデミーの雑誌の電子版に載ったばかりの研究論文から引用した図である。ご存じのように、IPCCのシナリオにはA1FIという化石燃料を最も大量に使う最悪シナリオがある。この図では、これが温暖化対策を全く行っていないという前提である最悪シナリオでの排出量増加の様子である。一方、世界における実際に2000年から2006年までの排出量増加というのがこちらである。ご覧のように現実が最悪シナリオでの増加スピードをはるかに超えてしまっている。繰り返しますが、この最悪シナリオというのは温暖化対策を全く行っていないという前提のシナリオである。すなわち、私たちの状況はかなり深刻である。
  • これも今年の10月に出たばかりの世銀の研究結果の紹介である。何をやっているかというと、2004年時点のCO2排出量上位70カ国に関して、1994年から2004年までの排出量増加の要因分析を行うことによって、各国の温暖化政策の実効性を比較、評価している。日本に対する評価だが、日本は70カ国中61位で、これは先進国の中では最下位。このような低い評価の原因は、このグラフをご覧になれば分かるが、主に産業及びエネルギー転換部門に使われる石炭の消費が1994年から2004年までに40%も伸びたことが原因である。もう一度言うと、日本は70カ国中61位で先進国の中では最下位。
  • そうは言っても、一人当たりやGDP当たり、あるいは製品の単位生産量当たりのエネルギー消費量やCO2排出量は優等生なのではという疑問や反論もあるかと思う。このグラフは、お手元の資料ではエネルギーとあるが、一人当たりのCO2排出量の部門別内訳の国際比較を示している。ご覧のように、一人当たりでも、部門別内訳でも、日本はEU主要国とそれほど変わらない。GDP当たりでも同じ。あえて他国との違いを言えば、米国と比べてもエネルギー転換部門・産業の割合が大きく、諸富先生もおっしゃったように家庭部門の絶対値が小さいのが日本の特徴。さらに、製品の単位生産量当たりでも今年の6月に出たIEAの産業別エネルギー消費の国際比較を試みた報告書では、残念ながら日本の産業や製品のすべてが優等生という結論にはなっていない。
  • 以上、見てきたように、早急かつ大幅な総量削減が絶対的に必要というのが私たちが向かい合うべき世界の現実である。日本あるいは日本の産業は優等生だから、総量の削減義務を免れるというのは誤った状況認識。また、企業は、原単位はコミットできるけれども活動量はコミットできないので、総量規制は受け入れられないという考えがあることも承知している。しかし、今後20年や30年のタイムスケールで2割とか3割を日本で減らす場合、先ほどの石炭消費増などを考えると、産業やエネルギー転換部門を含めた形で総量規制を行う必要があることはここにいらっしゃる方々には十分ご理解いただけると思う。
  • 次は、EU-ETS批判に対する反論の再確認である。反論は、EU-ETSの意義を2005年から2007年までの試験的なパイロット・フェーズの数字や割当方法だけで判断するのは拙速で意味がないということに尽きる。そもそも最初から完全な制度などあり得ない。また、一つの先例に対する評価だけで将来の行動を正当化するのも論理的には誤り。例えば、割当量が甘い、割当量方法が不公平、カバー率が小さいという批判は、どれもキャップ&トレードという制度の本質に対する批判ではない。実際には、割当量も割当方法もカバー率もそれぞれ次のフェーズや他の国の排出量取引制度ではより厳しく、より効率的に、より広く、そしてより公平なものにどんどんダイナミックに変化していく。
  • 次は、このようなキャップ&トレード制度と自主行動計画との比較のおさらい。自主行動計画の問題点に関しては諸富先生が詳しくお話しになったので、ここではポイントだけを繰り返すこととする。自主行動計画がキャップ&トレードに対して比較劣位な点は、取引による効率性向上なし、甘い目標と検証困難な数値、未達の場合の責任の所在が不明、法制度的にあいまいな位置づけ、国際的な戦略性や長期展望が不明確の5点。私は、自主行動計画の意義は否定しない。多くの企業は努力してきたと思う。しかし、現在は自主行動計画が作られた11年前の1994年とは状況が全く違う。冒頭で紹介したように、状況はかなり深刻である。すなわち日本において早急かつ大幅な総量削減、そのための総量規制が必要であり、その状況で取るべき選択肢は明らか。それがキャップ&トレード。
  • これまでの3人のご発表をお聞きになって、恐らく皆さんも既にお気づきになったと思う。山口先生や経団連の方の批判はトレード批判ではなく、キャップすなわち総量規制に対する批判である。それは温暖化対策の必要性、そして緊急性自体に対する認識が不足しているから言えることではないか。一方、岡先生の批判は、ある特定の割当方法を採用した場合のトレードに対する批判。いずれも温暖化対策の緊急性や重要性、そしてキャップ&トレード制度自体がダイナミックに変化している現状においては、批判として有効性を持たないものである。
  • 最後に、私のメッセージをまとめさせて頂きたい。まず、現在、世界は早期かつ大幅な総量削減が不可欠な状況にある。このような大幅削減を実現するためには、一人当たり排出量の圧倒的な違いという面からの公平性を考えると、まず先進国政府が原単位ではなく総量削減にコミットする必要がある。また、残念ながら日本は優等生ではないので排出削減の対象外にはなり得ない。そして、日本が早期かつ大幅な総量削減を実施するためには、これも必ずしも優等生ではない産業部門を含めた総量規制は不可避である。この場合、国内制度としてはキャップ&トレードのほうが自主行動計画よりもすべての点で勝っている。
  • 皆さん、特にここにいらっしゃる企業の皆さん、皆さんも本当はお分かりのように、岡先生や山口先生のご議論は限定的であり、特に山口先生の議論は論証不可能な日本特殊論に頼ったなかなか苦しいものである。皆さんもお分かりだと思う。また、皆さんも本音のところでは世界や日本の現実を直視すれば、総量削減や総量規制としてのキャップは免れないだろう、そうであればトレードはできたほうが良い。でも国際競争力問題は何とかならないだろうかと心の中では思っているだろう。ちょっと前とは全然違って、会社内部では既に具体的な検討を進めていらっしゃるところが多いことも私は知っている。割り当てや国際競争力問題に関しては、企業と日本政府が協力し合ってできることはたくさんある。
  • 私も、個人的には企業の個別な事情は十分に考慮されるべきだと思うし、日本にも努力している企業がたくさん存在することは十分認識している。また、優れた技術を持つ日本企業が正当な利益を得られるような制度を官民が協力して構築するべきだとも思う。実は、私は日本企業の立場に立って途上国によるセクター別取り組みの重要性を、おそらく日本の誰よりも中国政府や中国の研究者の人たちと中身の濃い具体的な議論を真剣にしている。しかし、そのような国内及び国家間での具体的な話し合いを進めるためにも、先進国の国別キャップ反対及び日本での総量規制反対という入り口のところでの議論はもう終わりにするべき。国際社会の現実を無視した議論を続けるのは時間を浪費するだけ。そうしている間に国は信用を失い、企業はマイナスの社会的評価を受けてしまう。それで本当に良いのか。それで本当に誇れる日本なのか。皆さんの理性的な判断と行動を期待したい。

4.委員の発言及び質疑

  • EU-ETSについて、別の視点を提示したい。EU-ETSは1999年にEU機構がそれまでの意見を変え導入したものだが、EUの立場から見ると、拡大EUを巻き込んで新たに排出権の市場を創出し、地球温暖化対策にも寄与するという名目で、新しい統治機能を設けたもの。第1フェーズと第2フェーズの国別配分計画で排出枠はともに過剰配分になっており結果的に、旧EUの15カ国の電力セクターが東欧の余った分を買うということで東欧援助として機能する形になるものである。

  • この会合は、日本の温暖化対策について、国の政策を議論し決定していく場。その範囲で議論をすべきであり、学会の議論をする場ではない。
  • 2013年以降の国際交渉において、温室効果ガスの削減目標は現在よりも厳しくなることを覚悟しておかなければならない。日本自身が2050年までに50%削減目標を掲げており、今後相当厳しく取り組む必要がある。我々がこれまで取り組んできたことは、自主行動計画を軸に据えて、省エネに取り組んできた。欠陥もあるかもしれないが、精一杯やってきた。その体制で今後出来るのか、出来ないのであれば、それに加えて排出権取引を導入すべきかが問題となる。現在EUで行っている排出権取引制度は、排出権取引の全てではない。EUは政策として行っている。実験として行っているので上手くいかないのは当たり前である。我が国として、自主行動計画にきちんと取り組み、ポスト京都でも上手くいくのであればよいが、グローバルな流れの中で上手くいかない可能性もあり、その場合、排出権取引について、導入するか否かは別にして、この場で検討を開始すべきである。

  • 排出権取引が日本に導入されないのは自主行動計画が上手く機能しているからとの意見には疑問。日本のCO2排出量の6割は産業・エネルギー転換部門であり、その中核は電力、鉄鋼である。この両業界は、海外からCDMを購入する予定であり、またそれは数千億円が必要との状況。このような事情があるにもかかわらず、自主行動計画が上手く機能しているとは言えない。
  • IPCCの4次報告書では今後20年から30年が勝負だとしており、これに対応した仕組みを提示する必要がある中、この会合では第一約束期間だけ議論すれば良いとの意見は現状の緊急性から外れた意見である。

  • この会合のミッションを考えると、最大の課題は排出増加の著しい家庭・業務部門の削減対策を如何にして進めるかということ。産業・エネルギー転換部門は、既に自主行動計画を着実に展開しており、この会合でもその進捗状況は高く評価されているところ。そのような中、排出量取引を京都議定書のタームの中で導入することは全く必要がない。
  • 欧州などを中心に、ポスト京都の国際交渉の関係で、排出量取引制度拡大に向けた動きがあることは承知しているが、欧州の排出量取引制度はまだまだ色々な課題がある。米国、欧州の電力会社のトップとも話し合いをするが、色々問題があることは彼らも十二分に承知した上で動いており、我々としては、もう少し冷静に見極めることが必要。「クールアース50」など、30年~40年先のことまで視野に入れて、またグローバルな枠組みについて議論がある中で、刹那的にドタバタするのは不適切であり、実践的な取り組みを行う企業にとっては大変迷惑。

  • IPCCの4次報告書が出たが、温暖化の影響は進んでいる。危機感を持った上で対策を考えることが必要。
  • 自主行動計画か排出量取引かとの二者択一の議論が進んでいるが、自主行動計画は相応に機能したと考えている。問題があるとすれば、総量ではなくて原単位を採用していることであり、総量が削減できないという状況が発生してくる。
  • 排出量取引は効率性だけで議論されているが、経済的インセンティブが大きく、削減した者にメリットがあるという点で公平性がある。幅広な視点で見ていく必要がある。
  • 自主行動計画を海外に伝えるとの話があったが、世界中は排出量取引に進みつつある中で、自主行動計画の評価をこれから行うのは国際的に難しい。
  • EU-ETSに対する批判があるが、日本はEU-ETSを手本に出来るメリットはある。
  • 制度設計について、すぐにでも準備をして、第一約束期間の始めから自主行動計画から排出量取引にすぐに移行できる形に持っていかないと、温暖化防止という当初の目的は達成できない。

  • 鉄鋼業界としては、エネルギー原単位で7.7%、CO2総量でも5.1%と、かなりの削減を行っている。加えて、補完的措置として、業界全体では、かなりの金額を費やして4,400万トンのCDMを購入契約している。
  • キャップアンドトレードについては、キャップをどのようにかぶせるかの議論が全くできていない。また、環境と経済成長を両立させることが議論のスタートのはず。経済成長、あるいは国際競争力を確保するとの観点から、キャップアンドトレードを導入すると炭素リーケージの問題が出てくると思うが、この点をどのように考えているのか。日本の成長はマイナスとなるおそれがある。この点についても議論がされていない。以上から、排出権取引には反対である。
  • 第一約束期間のみならず、ポスト京都においても、中国、アメリカ、インドが入ることは当然だが、原単位を改善させるというセクトラル・アプローチが重要である。鉄鋼業界としては、世界全体でこの方向で合意して進めようとしている。

  • 排出量取引については、キャップの義務づけに議論が集中しているが、それ以外の基本的な事項の議論が進んでいない。
  • 現在の自主的な枠組みでは、京都クレジットが発行されれば、取引は自然に発生するはず。我が国でも、京都クレジットは既に相対で、先渡し取引という形で行われている。
  • まずは、取引に関する最低限の議論を先行して行うべき。例えば、政府に京都クレジットを提供した場合は寄付との扱いとなるようだが、これが税制上どのように取り扱われるのか、京都クレジットを購入した場合は消費税が発生するのかなど、このような基本的なことですらまだ決まっていない。排出量取引が円滑に行われるための取引基盤整備を開始していくことが先決。
  • 我が国は2050年に排出量を半減させるとの目標を世界に発信したので、第一約束期間の問題というよりも、中長期的な問題として、取引制度の構築に向けて真正面から取り組んでいくことが必要。世界的な環境意識の高まりを考えると、我が国においても排出量取引は大きく伸びていくと考えられる。我が国として取引制度の在り方、考え方を明確にした上で、世界各国を巻き込んだフリーでフェアーな取引制度の構築を働きかけていくことが期待される。

  • 公平性、実行可能性のある枠組みが提示されないと、キャップを設定するとの方向性には反対せざると得ない。

  • 環境で世界をリードしているEUが提案するものは良いものと日本では考えられている。ところがEU-ETSの場合、訴訟が多発しており、また例えばセメントの場合、EUで定めている枠は甘く自主行動計画の方が優れている。その点で、セクター別アプローチの方が優れている。
  • 企業は自ら取り組んでおり、排出権取引を導入しない日本企業の評価が落ちることはない。日本の業界は、以前は護送船団方式と言われたが、いまはトップランナー方式で頑張っている。経済団体もそれを推奨している。長期的な視野に立って、世界でCO2を削減していくことが重要であり、日本の優れた技術を世界に移転できるような新たなシステムを作る議論をしていくことが必要。

  • (参考資料3のデータに沿って説明)キャップアンドトレードの割当の部分がワークするのか、極めて疑問。将来の生産量を予測することは困難。生産が伸びている産業・企業にとってはペナルティが課せられることになる。人為的な割当が自由競争を歪めることは一目瞭然である。市場の競争に勝って伸びていく産業・企業にペナルティを課すとなると、日本経済の活力を削ぐことになる。国が生産を割り当てるのは計画経済。企業は5年先、10年先を考えて研究開発投資・設備投資を行う。自由な経済活動が保証されていなければ、こうした投資を行うことが出来ず、工場は海外に移転してしまう。

  • キャップアンドトレードには反対。企業や自主行動計画に対する批判のコメントがあるが、我々としては真面目な議論を行いきちんと取り組んできた。目標も引き上げてきた。100を90にしたら、90を80にするのも簡単と思われるかもしれないが、乾いたタオルは絞れない。それでも何とかやっていこうと自主行動計画を進めてきた。
  • 電気を使わない生活に戻るのであれば別だが、我々は化石燃料で生活している。石炭を天然ガスに代えたらインフラをすべて替える必要がある。化石燃料が保つのは、原油で50年、天然ガスで70年、石炭で190年と言われているが、原子力も織り交ぜて、きちんとしたエネルギーの使い方を議論すべき。我々は社会の豊かさをエンジョイしており、これを肯定しながらも何とか取り組みたいと考えているのであり、我々は自主行動計画をしっかりやってきたし、今後もしっかり取り組んでいきたい。

  • 完全な制度はない。より政策効果の上がる制度を選択する必要がある。自主行動計画の下で事業者は努力をしていることは認識しているが、評価が難しい。各業界において、事業者によって削減ポテンシャル、コストが異なることが明らかになっている。自主行動計画の評価が明らかになってはじめて、効果が計られることになると思う。更に削減を進めていこうという時に事業者によって幅があると不公平感を生む。このような点も踏まえて、相対的な評価を行う必要がある。
  • 排出量取引制度について、初期配分の難しさは理解した。オークションが代替する選択肢の一つとして指摘されているが、よりよい初期配分を前提とした制度を考えた場合、制度効果も異なるのではないか。
  • よりよい制度を考えた場合、抽象的な制度の議論から一歩進んで、具体的な制度案を基に議論を進める段階にあるのではないか。

  • 自分の持っているデータでは、日本の主要製造業のエネルギー効率は世界最高水準を達成している。それにもかかわらず費用と労力をかけ自主行動計画を愚直に実行している。必要に応じてCDMも手当している。何としても2012年までの目標達成に努めているのが実状。京都議定書はエネルギー効率を反映せず、かつ一部の国にだけ削減義務を課しているため、国際的な競争条件は大きく歪められている。このような中で、排出量の上限を設定することは、日本の産業・企業が自主行動計画を進める妨げとなる。
  • トレードによってなぜ温室効果ガスが削減されるのかについて、納得的な説明はない。
  • 地球温暖化防止のためには、主要排出国が全て参加し、公平な目標が設定され、国際競争でのイコールフッティングが担保されるなかで、技術を軸にして確実に削減していく方法しかないのではないか。日本の役割は、世界最高水準の省エネ技術の普及・移転、革新的な技術開発を推進すること。このために努力は惜しまないこと。2050年までに排出量を半減させるためには、官民一体となって、国際連携をとって、革新的な技術開発に総力を挙げて取り組むべきであり、排出量取引はこのような費用も時間もかかる革新的な技術開発に効果がない。第一枠組みだけでなく、将来枠組みにおいても、排出量取引は導入すべきではない。

  • 京都議定書の実施という面から見ると、世界では欧州、日本、カナダの3つ。カナダは問題が起こっており、日本のモデルは2つのうちの一つ。自主行動計画は、関係者が努力しており、かなり効果が上がっていることは認めたい。これで京都議定書の目標達成ができれば良いが、もしできない場合は色々な方向で修正をしてでもやっていくのが近道。
  • 排出権取引は、経済的には良い制度ではあるが、過去の実績を見ると、導入までの調整に時間と労力がかかる。排出の割当をどうするか、その後のフォローアップをどうするか、非常にきめの細かい調整が必要となり、実際問題としてなかなか上手くいかない。また、関係者も賛成しない場合が多い。日本の産業界もこれと同様の考えを持っているものと認識している。排出権取引を一般に導入することは、日本の現状から見て非常に難しいのではないか。
  • 環境省が実施している自主参加型排出量取引制度があるが、参加している事業者は制度をどのように評価しているのか。国の補助制度があるから参加しているのか。もし国の補助制度がなくても、このような制度を作っておくことが排出権を購入できるメリットがあると考える事業者が多いのであれば、そこに市場は成立するはず。

  • 資料4の2頁で、EU-ETSの取引関係を矢印で図解しているが分かりにくい。
  • 資料5の4頁で、経済モデルの信頼性がヨーロッパにはあって日本やアメリカにはないというのはどういうことか。
  • 資料6で初期割当が非効率としているが、オークションで行えば効率的。オークションの意味は、削減総量を固定した上で、市場で炭素税率を決めることに等しい。実際にそれを行うのが難しいので初期割当を行う。古い設備を温存する、新しい投資を阻むとの指摘があるがよく分からない。
  • 排出権取引には100%賛成できない。排出権の価格は変動し、不確定要素がある。不確実性がないという意味では、環境税の方が望ましい。また、キャップだけでなくトレードもあるため、計画経済とは言えない。

  • 自分の意見について、参考資料2を提出している。
  • 初期配分の困難性が議論されている。水質汚染に関して閉鎖性海域の総量規制が存在するが、規制が導入されたときに同じような議論がなされた。現在も総量規制は存在するが、内容についてあまり批判はない。水質汚濁量が50%以上削減されているとの実績もある。このような事例を参考にして、日本版の総量規制を考えてはどうか。EUにこだわる必要はない。
  • キャップの問題ばかり議論されており、トレードの問題が議論されていない。キャップを横に置いて、トレードはできないかについて議論できないか。キャップがないとトレードのためのインセンティブがはたらかないと良く言われるが、既に自主行動計画で実質的なキャップをかけている。海外でお金を出してまで買って来ようとしており、そのお金を国内のトレードに使えないか。その辺を御検討頂きたい。

  • 我々に与えられたテーマは、第一約束期間で排出権取引を導入するか否かであるが、まだけりがついていないのが問題。第一約束期間について、自主行動計画という日本的な取組が進んでいるが、産業界は努力してきた。産業界は責任を果たしていないというのは抽象論。自主行動計画の評価を行わずにこれを頭から否定するのは不適切。
  • 第一約束期間に排出権取引を導入するのであれば、抽象的な議論ではなく具体的なプランを提示してほしい。どのように行えば公平となるのか、どれだけ効果があるのかなど、これらを明らかにしなければ机上の空論。具体案を提示しなければ政府を動かすことにはならない。
  • 2013年以降のポスト議定書の議論になれば、排出権取引についていろいろな議論が出てくる。2~3年後くらいに、総理や大臣から諮問してもらって、しっかりした委員会を作り議論すればよい。この会合で排出権取引という新しいスキームを議論すべきとは、大臣から諮問されていない。第一約束期間については、本日をもって、この会合で排出権取引を議論するのは止めてもらいたい。

  • 限界排出削減費用を最小化するとの議論については、改善で十分との観点から議論してほしい。効率性だけでなく、インセンティブや透明性の確保が重要との観点からは、排出量取引はかなり有効な手段。技術開発にも資する。ただ、制度設計上、期間は長くする必要はある。
  • 自主行動計画には業務や運輸部門も含まれており、産業界がこれまで取り組んで来たことを批判するものではない。目標達成計画との関係では、7.6%削減までいかないと達成したとは言いにくい。
  • 割当について議論があるが、自主行動計画を前提として、既に合意があったとしてそこから始める方法はある。効率性を考えるのであればオークションという方法があるが、短期的に2か月に1回程度の頻度でオークションを実施し、売上高全額を政府が持っていくのではなく、かなりの部分を消化する方法で対応する方法が検討されている。やり方はいくらでも検討の余地がある。
  • 炭素リーケージは重要な問題だが、排出権取引の問題だけでなく、海外に進出するのは人件費等々の要因もある。価格上昇の問題も指摘されたが、ある種のセーフティバルブのようなものを検討するなど、制度設計の仕方の問題。

  • 日本の経済活動である生産や消費は市場で担われている。したがって、市場が温暖化防止機能を持つことが重要。価格を付けることが一番分かり易い。削減技術は市場があることにより活かされる。また、その市場があることが次の技術を作ることの動機にもなる。EU-ETSは、そのことを机上の議論ではなく、実際にみることができるという意味で意義がある。制度の利害・特質も、一般論では出来ず、具体的な制度設計の下での制度を見ないと分からないことが分かったのは重要。
  • キャップの必要性について、総量規制としてキャップをかける必要があるか否かで意見が分かれたが、世界全体でキャップがかからないと温暖化防止はできないことははっきりしている。キャップをかけた上で取引する制度を作るのか、キャップを割り当てて実行していくのかが問題となるが、割り当てて実行させる方法がワークするのか疑問。割当は一種の配分である。価格を付けることが資産を生み出す側面がある問題、価格の不確実性の問題もある。理論的に可能性のあるものについて、現実の制度が改善することでどれほど理論に近づくのか、あるいは初期の目的にどれだけ近づけることができるのか、また近づけた制度が他の制度と比べて良いのか否か、これらを考える必要がる。市場の意味は、業種・企業を越えて、横断的に市場のシグナルが働くこと。
  • 排出量取引は、金融商品的側面を持つという点に留意する必要がある。グローバルな炭素市場が出来てくることにも関係する。排出権取引制度は国内での取引を作り出す制度であり、資金が国内に貫流するとの側面もある。外から買ってくるよりも国内経済上は良いこと。

  • 11月14日に経団連としてのフォローアップを発表したが、2006年度の実績では、1990年比でマイナス1.5%の成果を上げている。マイナスになるのはこれで7年連続である。今回のフォローアップでは17業種が目標の引き上げを行った。持続的にエネルギー効率を向上させる動きがはたらいてきている。税や規制的措置ではない自主行動計画本来の温暖化防止効果が現れてきていると理解している。
  • 産業界の取り組みが上手く機能して実績を上げている日本への排出量取引の導入は必要ないと考えている。
  • 産業界だけではなく、排出量が伸びている業務・家庭の方も十分取り組んでいく必要があるが、長期的視点に立った革新的技術の開発が重要。排出量取引制度では、本来技術開発に投資すべき資金が排出枠の購入に流れる。企業の技術をベースとして、地球規模での排出削減を進めていくべき。

  • 長期的な視野が必要。革新的技術によるだけでなく、現在又は近い将来に可能なもので何とか取り組んでいくというIPCCの流れをよく理解して取組を立てるべき。日本だけが独自の時間空間を持つとか、国際的な話とは別に日本だけで出来るということであれば、産業界の意見も当てはまるが、地球規模ではそんな余裕はない。もっと視野を広げて、過去の実績にこだわらず取り組んでほしい。キャップについては、活動量が増えても排出量は減らす必要があるということを念頭に置いた政策の議論が必要。
  • 欧州はlearning by doingで対策を進めている。未知の分野には、時間がないので、取り組みながら制度設計を進めている。日本の産業界からは「具体的なプランを示してほしい」との発言があったが、そのような受け身の姿勢は残念。
  • 公平性、初期割当の問題が指摘されているが、自主行動計画においてきちんと配分ができているのであれば、割当問題はそれほど議論にはならない。しかし、そうはなっておらず、取り組んでいる業種が負担をしているとの問題があると考えている。この点、透明性が確保されておらず、自主行動計画は評価できない。日本政府は省エネ法に基づく詳細なデータを有しており、訴訟が起こらない仕組みを作ることは可能。価格暴騰の問題、トレードの仕組みなど、我々は学ばなければならないことが多い。EUのモデルやアメリカの法案の事例もあり、また政府は排出実績についても詳細なデータも持っているので、十分キャッチ・アップは可能。

山口東京大学先端科学技術研究センター特任教授
  • 上流規制の意見は全く出なかったこと、各委員とも2013年以降の話をしており、現実的に2012年までの第一約束期間では実施出来ないことが確認できた。また、国際動向は変化するもの。
  • 自主的な手法は総量規制でないと思っている人が多いが、総量規制である。経済界で約束しており、政府が入ってこの審議会でも議論している。直接規制と自主的手法の絶妙な組み合わせになっている。総量規制をやらないで自主的なのはおかしいとの意見は誤り。
岡福井県立大学経済・経営学研究科教授
  • EU-ETSと自主行動計画の両方とも理想的な制度ではない。自主行動計画は、目標を高める、あるいは原単位目標を総量目標にするなど、改善の方向が見える。EU-ETSの改善の方向は、全量オークションによる配分ができるかどうか。もしEUが電力を除く部門に全量オークションを導入したら評価できる。
諸富京都大学大学院公共政策連携研究部准教授
  • 一部委員から具体案がないとの指摘を受けたが、「脱炭素社会と排出量取引」との本を日本評論社から出版しており、そこで詳細な具体案が提示されている。参考にしてほしい。
明日香東北大学東北アジア研究センター教授
  • どれだけ減らすべきかとの認識が異なるということ。IPCCや首相の話を無視するのであれば、自分は何もする必要はない。世界は日本を優等生とは思っていない。国社会の現実、首相の意見を聞いて、日本が2割、3割の排出量を減らすのに本当にトレードは必要ないのか。企業に100人聞いたら、100人トレードがあった方が良いと言うはず。総量規制を行いどれだけ排出量を減らす必要があるかとの前提で、トレードが必要か否かを聞いてほしい。
高橋環境省市場メカニズム室長
  • 自主参加型排出量取引について、国内排出量取引の知見を蓄積するために2005年度から実施しているが、これまで150社が参加している。基本的には補助金を交付して目標を約束して取引をしてもらうが、一部補助金なしでも参加したいとの企業もある。今後はそのような企業の参加も含め、知見の蓄積を進めていきたい。
藤原経済産業省環境経済室長
  • 京都クレジットの取引について複数の委員からコメントがあったが、国、民間企業ともにクレジットの取得が進んでいる。税務会計の問題、登録簿の改善の問題、金融関連商品としての問題などについては、大塚委員を座長として、今月から京都クレジット流通基盤整備検討会を開催しており、環境省と金融庁にもオブザーバーとして出席して頂いて、検討進めているところである。
茅委員長
  • 委員の意見は自主行動計画かキャップアンドトレードかの2つに分かれているが、審議会としてこの段階でまとめるのは不可能だと思う。ただ、明確にすべきことは、これは第一約束期間、2012年までの話ということ。自主行動計画は2010年をターゲットとしており、それより先の議論になると話が異なってくる。
  • 自主行動計画が十分か不十分かについては、自主行動計画の評価をこの会合で行っており、その結果は事務局側から示してもらえばよい。排出量の多い電事連、鉄鋼連盟については、いまの段階では目標未達成ではあるが、両業界ともCDMの購入でこれを埋めると約束しており、それを信用すれば自主行動計画は目標を達成できる。
  • キャップアンドトレードのキャップの決め方について、今回の会合ではあまり意見を聞くことが出来なかった。一部委員から、現在の自主行動計画のラインをベースにする案が示されたが、それでは自主行動計画とほとんど一緒になってしまう。キャップはキャップとして設定する必要があり、具体的な設定方法を示してもらう必要がある。一番難しい問題である。
浅野部会長代理
  • この合同会合は、第一約束期間にどうするかを議論する場であると認識している。
  • 自主行動計画については、この合同会合でも、評価するということでは一致している。更に効率性を高めるためにどうしたら良いかについて、自主行動計画の中でのトレード、また、既に経産省が考えている、大企業が自社で削減できない分について中小企業に援助することで削減した分を自主行動計画の中で評価できる仕組みを設けてはどうかとの議論もある。新エネについても、事実上排出量取引と同じ仕組みもある。このような内容について、第一約束期間で考えなくて良いという総意があったとは思わない。一部委員からも、第一約束期間にできることがあれば考えなければならないとの指摘もあった。

5.各省庁からの関連対策の検討状況ヒアリング(環境省(環境税の導入(重要検討項目)を含む。))

環境省から資料9に沿って説明があった。

6.委員の発言及び質疑応答

  • 新エネの仕組み系の追加対策は検討しないのか。新エネは長期的に支援する仕組みがないとサポートできないとの認識を環境省にもってほしい。
  • 石油石炭税について、これまで三段階で上がってきているが、今後どうするのか。

  • 環境税については長い間の議論があるが、ヨーロッパではかなり前から排出量取引と共に炭素税の話はあり、両制度とも検討を進めてほしい。
  • 資料9-1の13頁で、「中間報告に記載のある対策のうち法制度による対応が考えられる項目」を上げているが、省エネ法は今般改正が見込まれているが、省エネの問題と省CO2の問題は若干ずれるところがあり、省CO2の観点からの対策も引き続き検討してほしい。

  • 廃棄物発電が伸びていない。未だにゴミ焼却との発想しかなく、熱回収との発想で、環境省で更に推進してほしい。
  • 家庭部門の対策について、国民が排出抑制に資する製品・サービスを例えばエコマークのような形で表示するとの発想を是非御願いしたい。
  • 地方自治体の問題として、例えば地域版の目標達成計画を各都道府県に作らせ、それに対する権限と指導能力を発揮できるような法的な位置づけを是非配慮してほしい。
  • 第一約束期間は来年から始まるが、是非これについての検証とフォローアップを厳正に行っていくことを明記してほしい。

  • 環境税に反対する人の理由は3つ。一つは経済成長を低下させるとの理由。これについては税収中立として、個人及び法人の所得税減税を行えば、プラスとマイナスの効果は相殺され、どうなるか分からないが絶対値としては小さくなる。税は、家計・企業から政府への強制的な所得移転であり、その移転した税収を政府が上手に利用すれば、トータルで見た場合にはGDPにネガティブな影響があるわけではない。効果について、効果がないとの意見が多いが、短期的な効果は小さいが、例えば自動車の走行距離を減らすことはないが、新しい車を買うときには燃費の良い車を買うことになるので、中長期的には効果がある。国際競争力を損なうとの批判もあるが、軽減措置や、輸出する時には水際で税を払い戻し、輸入するときには水際で税を取るとの水際措置を講じることが可能である。

  • 資料9-1では、まず「国民運動の実施」の項目が出てくるが、政府は広報としてテレビやインターネットを通じて情報を流すべき。国民の環境意識を高めるためにはマスコミ対策が重要。

  • 環境税について、資料では中小企業に配慮していると記載されているが、原油高騰の中、原価は上がっても転嫁はできない状態。反対である。

  • 法制度の追加的対策について、現行の省エネ法は排出削減の実効性があまりなく、確実な排出削減のため、省エネ法の執行を確実に行ってほしい。
  • 電気事業者の排出係数に京メカを使うだけでなく、国内の排出削減を進めるインセンティブを与えるためにも、グリーン電力証書など、算定・報告・公表制度の見直しも検討してほしい。
  • 目標達成計画の進捗状況管理が重要。毎年行うとともに、5年間を見通して行う際に、統計値の見直しの際に時間がかかったり、過不足があったりする。是非、次回までに確実で早い進行管理の枠組みを提示してほしい。

  • 環境税の最大の目的は、産業構造、エネルギー構造、消費構造を変えるということ。財源を集めて省エネ部門に使うというのは次の段階。産業構造、エネルギー多消費型産業構造、化石燃料依存型産業構造を変えるために環境税が必要。
  • 2012年までの5年間、すぐに対応できるものは環境税しかない。したがって、これを即刻導入して、6%削減を実現することを堂々と目指すべき。
  • 自主行動計画と排出権取引について、ここは国民の立場で目標達成計画を議論する場であり、産業界の立場で反対の声を言う場ではない。もっと国民の立場で議論すべき。

浅野部会長代理
  • この会合は合同会議であり、産業構造審議会としてのミッションもあることは理解する必要がある。最後の議題について発言漏れがあれば、後ほど事務局から説明はあるが、書面でコメントを提出してほしい。
  • 一部委員から発言はあったが、最初の取りまとめの段階で、5年間どうやって達成しつつあるのかをチェックできるシステムが必要である。その点どうするか、次回、事務局より示してほしい。

  • ここは目標達成計画を議論する場であるが、目標達成計画に関する政策を議論するところである。現在は自主行動計画と省エネ法その他の仕組みで取り組んでいるが、その後により厳しい目標が出てくるであろうことを踏まえて目標達成計画の達成を考えると、政策を議論する場としては、今の段階で排出権取引の議論を行わないというのではなく、賛成・反対の意見を含め、検討を進めていくことは可能ではないか。
茅委員長
  • 自主行動計画は第一約束期間までの目標しか定めていないため、それ以降のことについては比較できないということを言いたかった。当然、それ以降のことを議論して頂くことは可能であり、キャップアンドトレードの議論を行うのも結構である。

7.その他

徳田環境省地球温暖化対策課長
  • 本日のご発言に追加すべき質問・コメント等がありましたら、12月7日金曜日までに書面にて事務局まで提出頂きたい。また、本日の議事概要については、事務局でとりまとめの上、数日中に、委員の皆様に案を送付したい。皆様に送付後、1週間で環境省及び経済産業省のホームページに掲載する予定である。諸事情により一週間内にご返事を頂くことができない委員分についても、いったんは暫定版としてホームページに掲載させていただき、後ほど、修正があれば差し替えたい。
  • 次回は、12月7日金曜日の9時から、大手町サンケイプラザにて開催する予定。経済産業省、国土交通省からのヒアリング及び重点検討項目として「サマータイムの導入」「断熱強化など、住宅・建築物の排出削減対策」についてご審議頂く。

文責:事務局

 
 
最終更新日:2007年12月27日
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