経済産業省
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サービス産業のイノベーションと生産性に関する研究会(第2回) 議事要旨

日時:平成19年2月19日(月)15:30~17:00

場所:経済産業省第3特別会議室(本館17階西1)

出席者

牛尾座長、秋草委員、新井委員、伊藤委員、小林委員、 斎藤委員、桜木委員、西本委員、橋本委員、村上委員

議事概要

(肥塚商務情報政策局長より配布資料についての説明。その後、討議。)

  • 人材育成のところで、大学の学部や学科でサービス産業のカリキュラムが出来ていないという分析はその通りなのであるが、サービス産業は各論的な面があるので、サービス産業に合ったカリキュラムを揃えるのも難しい。大学におけるカリキュラムはディシプリンであって、そこに各論的なものを持ち込むよりは、それがきちっと存在することが重要で、更に重要なのは、そこからどのように各論を抽出できるかという仕組み作りだ。
  • 大学のカリキュラムを変えることよりも、例えば専門学校等にサービス産業のカリキュラムを揃えることが非常に重要。例えば、医療人材の分野では、科学技術振興調整費などが数年間の単位でついているが、サービス産業の人材を育成する事業に活用してはどうか。
  • また、ニーズとシーズの間をマッチングして、トランスレーションができるようなシステムが、非常に重要。協議会で、民間がベースになってトランスレーションの重要性を大学に持って行く、あるいは大学の人間が協議会に入ることによってトランスレーションを行う仕組み作りを行う、などの取組が行われればよい。
  • サービス消費においては、品質が事前にチェックできないという本質的な問題が存在するため、「信頼性」を事前に訴求できるかどうかが、極めて重要である。資料で示されている「信頼性向上のための仕組み作り」という点が、本当に鍵になると考える。
  • ITの分野では現在、「信頼資産の醸成」ということが非常に重要なテーマ。付加価値を作る場が、企業の内部から顧客接点に移っていっているため、顧客から信頼されることが企業活動をするうえでの至上命題になりつつある。
  • 信頼性はコストではなく、資産だという考え方が出てきているが、サービス産業にはその考え方が非常に重要で、信頼性をどう作り込むかが鍵になる。
  • 具体的には、「民間による認証の導入」が1つの鍵だと思うが、既に民間による認証の導入が動き出している産業と、そうでない産業とがある。協議会で認証導入に取り組む時には、複数の認証が併存する状況になるだろう。認証するからには悉皆(しっかい)性が大事なので、あるものは全部認証できるような仕組みにしていくべき。そのためには、協議会で行う認証と、民間で既にある程度行っている認証とどういう関係になるか、認証機関の認証機関、認証の認証の仕組みを事前に考えていくことが重要。
  • ギルド的コントロールが大事だが、難しいという問題提起があった。日本の業界団体は企業を単位にして組織を作っている。1970年代の英国には、何々インスティチュートと呼ばれる組織が多数あった。例えば、コーポレートプランナーのインスティチュートは、企業や大学のコーポレートプランニングの専門家が作った団体で、業界に対する強い影響力を持ち、転職の機会も創出していた。インスティチュートで高い評価を得た人は、無名の企業から他の有名な企業に移ることができるという例も多くあったようだ。
  • 企業のみならず、個人のプロフェッショナリティーを認証することができないだろうか。認証機関による認証と、マーケットによる認証が併存できるとよい。
  • 優れた事例を表彰するとともに、それを標準化していくという仕組み作りが重要。優れたものについては、業界でその業務プロセス自体を標準化する取組に発展させるというチャネル作りを施策のアクションパッケージの中に組み込むべき。
  • 科学的・工学的手法のサービス産業への適用は、長期的に見て重要。いろいろな手法が別の業界にはあり、サービス業に製造業のノウハウを適用するという取組はとても重要。もともと、「製造業のサービス化」、「サービス業の製造業化」の2つがこれから進んでいくだろうと考えているが、その製造業で何を行ってきたかというと、ほとんどが「QCFDのPDCA回し」だ。「QCFD」はQuality,Cost,Flexibility,Deliveryであり、これを評価指標として、「PDCA」、Plan,Do,Check,Actionを行うということ。ここで言うアクションとは、今まで行ってきたことを標準化、定着化していくことを指す。
  • サービス業でも、まず個人が、次に組織がやってきて順番にレベルを高めていくことが必要。しかし、サービス業ではその評価指標が必ずしも多くない。特に、クォリティの評価指標について、個別の企業から業界、そして業界間で、決めていくことが重要である。
  • 注意しなければならないのは、製造業はモノを作ることを中心にやってきており、顧客に好まれるかどうかはそれほど考えてこなかった面もあった。製造業と同じ失敗を繰り返さないためにも、サービス業では、「顧客満足度」という視点、顧客側でのQCFDは何かという視点を導入すべき。ただし、製造業における失敗はもうなくなっているということを併せて付け加えておきたい。
  • 特に地方において特徴的なのは、サービス産業が地域そのもの、中小企業そのものだということ。今日のことを今日行い、明日のことを明日行うという保守的色彩が見られるが、それが今、競合環境の変化等により、苦労しているというのが現状。
  • 業態によっては、それではどうしたら良いのだろうかということがわかっていない。これは、教育されていないことと同時に、誰に相談すれば良いのかわからないという問題から起こる。先程の大学の話ではないが、専門学校等も含め、システムを作り、サービスの当事者に対して様々な情宣をしてサービスの当事者の意識を変えていくという取組が重要だと考える。
  • 意識改革だけでは何も行えないので、何を使って行えばよいかというと、一つ目にはITの活用があげられる。他国での先行事例を参考にしてブラッシュアップを行い、日本に合うように応用して業界全体で変えていくという取組が必要だ。
  • 一方、サービスの受益者がそれをどのように評価するかだが、例えば、アメリカでは、生産性は高いかもしれないが、クォリティは我々が満足できるものではない。
  • 従って、サービスを提供する側のインセンティブと受益者のインセンティブの折衷案を考えねばならない。すなわち、評価基準、評価指標を、提供側、受益側の二枚看板で業界をあげて一緒に作りあげていくことが重要。その際には当然、産学官の連携を行いつつ、取り組んでいく必要がある。
  • サービスは、生産と消費が同時におこるものだが、日本の場合は無限できりがない。「サービス」というものは何か、商品・パッケージとして何かという定義がはっきりしない、させないという問題がある。
  • 例えば、コールセンター。1回のコールで2時間~3時間も電話対応しているケースがあるが、その大半はコールセンターのオペレータの対応が悪いというクレーム。また、旅館の女将の挨拶に代表されるような「もてなし技術」、ホスピタリティもはっきりしないものとなってしまっている。これはやはり、サービスの商品・パッケージの定義をはっきりしないまま行ってしまっているところに色々な原因があるのではないかと考えている。これがはっきりすれば、生産性を上げるために先進的な構造に変えたり、工場で使われている手法を採用することが可能になり、初めて、「質」も向上する。
  • 日本版CSIは必要。CSIで商品・パッケージについての定義をはっきりさせることが重要だ。
  • 狭義のサービス業では、対事業所サービスと対個人サービスがあるが、対事業所サービスにおいては、依頼主の目的も生産性向上の場合がほとんどなので、お互いに効率性を高めるという取組が有効に働く。
  • 対事業所、あるいはアウトソーシングによるBtoBのサービス業においては、製造業ノウハウを活用することによって格段に生産性を上げることが可能。協議会等で、研究開発を行い、これをサービス産業に応用することで生産性は格段に改善するという道筋は見える。
  • 対個人サービスについては、イノベーションをどう起こすか、新しいサービス産業をどう作るか、あるいは別の角度から市民の役に立つサービス産業にしていくためにはどのようにすればよいか、などというテーマも重要で、生産性向上ということだけでは産業を発展させる事はできないと考える。その際に、人材育成や教育を考えると、やはり大学の中にサービス産業を研究する部門を作っていくことが必要。もう1つは、経済産業省の管轄にある個々の業種ではなくて、もう少し広くカバーしている団体を使うというのも1つの手段。例えばスポーツ産業でいえば、スポーツ産業団体連合会というところがあるが、こういったところに人材育成の分科会を作り、横断的に情報交換を行ったり、先生を招いて情報共有を図っていくというのも教育の1つの手段であり、すぐに始めるべきだと考える。
  • スポーツ産業にとっては、例えばホテル業、観光業等と共有できるところは多々ある。大学の観光学科の教授にはホテル業のGMのOBや社長経験者がおり、数十人で団体を作っている。フィットネスや介護でもこういう取組を行うのも1つの手だてだと考えられる。
  • 純粋に若い頃から学問をしてきた研究者による研究のみならず、実際に実践してきた人の「経験」を取り入れた学問体系を開拓し、大学にも理解を求めて分野を作っていく取組も必要。これが、業界団体の研修等の努力とも相まって、生産性を高めるのにプラスに働くと考える。
  • 今後の具体的なアクションを見ると、3つの要素が書いてある。1つ目は、科学的・工学的アプローチに取り組み、製造ノウハウを導入していくというもの、2つ目は、認証制度といった環境整備について、3つ目は人材であり、これはよく整理されている。
  • ただし、これは、学問的に言うと、スタティックなピクチャーであり、現実問題としてどういうメカニズムでダイナミックなイノベーションを起こすかということが重要。何かブレークスルーになるものを現実問題として考えておかなければ、絵に描いた餅で終わってしまう。
  • 誰がやるのかということを考えてみると、サービス産業は非常に幅広い業種から成っており、参加している現場にいる人の数がとにかく多くて、その1人1人が動いていかないといけない。そこの議論を深めなければ資料に書かれているようなことは生きてこないと考える。
  • 思いつきの話になるが、資料にある3つの分類は製造業にも当てはまる。製造業でも技術はまず必要で、当然市場整備やパテントといった市場整備も必要。それから人材も必要である。では何故、製造業が進んでいるかというと、外国に良いものがあって、それを見て刺激を受けて、成長したのだと考えられる。金融もこれと同様だ。
  • 以上を踏まえると、ベストプラクティスのようなものをどのようにインプットするかを考えれば、もう少し見やすくなるのかと考える。ただ、サービス産業は非常に幅広い業種から成るため、全部の分野を一度に動かすのは難しい。ある程度取捨選択をして取り組み、ダイナミックなピクチャーとして見せる方が説得力もあるかとも考える。
  • サービス産業に従事する者として、「生産性」、「効率性」という言葉には、正直、抵抗感を感じる。これらの言葉には、「標準化」のみを追求するイメージがある。 サービス産業を評価し、信頼性向上のための仕組みを今後作っていく中で忘れていけない視点としては、サービスの品質の評価であり、いかに社会や消費者に対する付加価値を生み出しているか、独自性・新規性を持っているかという観点であると考える。 この2つの観点が重要であり、前者だけでは、サービス産業は語れない。
  • ただし、「標準化」、「生産性」、「効率性」といった製造業ノウハウを移植するのは非常に重要であり、今のサービス産業を見ても出来ていないところなので、それは最優先事項として取り組まねばいけないと考える。
  • サービス産業が一緒くたに語られているが、その中身は千差万別である。無形性、同時性、新規性という横断的取組も大事だが、業種毎の軸も大事である。
  • 製造業を移植するという観点から言うと、弊社では社長を製造業から迎えた。社長が交代してまず行われたのは、今までは、事業毎に細々と行われていた研究開発に資本投下が行われ、人が割かれるようになったということ。また、制作工程の改革も行われた。製造業の工場見学にも行ったが、そのベースにある「間締め」の手法はすぐに我々ソフト産業にも導入することができた。このように製造業では当たり前のことでサービス産業では行われていなかったこともあるということも付け加えておきたい。
  • サービス業の共通項として、「無形性」、「同時性」、「新規性」があげられているが、他に人によってサービスのクオリティが異なるという「属人性」もあると考える。
  • 経済産業政策を行う上では、「企業に対する視点」と「ヒトに対する視点」という両方が重要。特にサービス産業においては、「ヒトに対する視点」あるいは「個人に対する視点」が非常に重要。したがって、サービス業の産業分類を行う際には、「企業」、「事業」についての分類の他に、「職業」についての分類が大事である。新しいサービス産業が出来る毎に、新しい職業ができるということを意識して、職業についての適切なネーミングを考えていく必要がある。
  • 例えば、「派遣」というエンジニアは、「派遣エンジニア」という新しい職業になる。しかし、この「派遣エンジニア」というネーミングで正しい姿を理解できるかというと理解出来る人は稀だ。一般人でも理解できるようなネーミングの仕組みを世の中に作り、これを社会的にオーソライズしていくことが重要。このような取組も業界標準という考え方につながり、プロフェッショナリズムを世の中に醸成することにもつながるのだと考える。
  • 当然、新しい職業も淘汰され、世の中に必要な職業だけが残っていくことになるが、そこではやはり「生産性」が鍵となると考えている。
  • 例えば、BtoBの企業において顕著だと思うが、サービス産業だけでなく、サービス産業のユーザーとなっている企業の生産性を上げることに寄与できるかという視点が重要。これが、各論になると、業界標準の取組となるのかもしれない。
  • 「サービス」を議論する際に生産性とか効率ということに抵抗がある人はやはり多い。日本人は、ホスピタリティやサービスの質については非常に前向きだが、生産性や効率性についてはそれ程でもないだろう。
  • 産業のあり方をダイナミックに考えていく場合には、やはり先進国に指標がある。例えば、アメリカの自動車や住宅とかは非常に夢のようなもの。これを目標にするのは良いのだが、その一方で、レストランやショップのサービスを見ると、アメリカにサービスを学びたいとは思わなかった。
  • やはり、日本人は日本人のサービスが良いと思い込んでいて、それは全く経済問題ではないというような部分があり、その切り替えがまだできていないのではないだろうか。
  • ヨーロッパのサービス業でもどこに行ってもなかなか感動するものはない。一方、タイやフィリピンに行くと「心温まるものがある」と感動する。このように、何か日本人の「独自性」があるわけで、そこにサービス業を議論する時にダイナミックになれない理由がある。
  • サービスの効率を上げる方向に行くと、何でも自分でやるとか、きれいな包装にしないとか、余計なことを一切言わないとかいうようなことでコストを下げるという議論になる。実際、これがサービスという感覚になってしまっているので、根本的に我々の求める理想的なサービス業とは何かを追求する必要がある。
  • 男女共稼ぎで保育やベビーシッターの話になると、アメリカでは家にカメラを付けて、ベビーシッターを監視するという話ばかりが入ってくる。サービスの質を議論する際に、もっと成果があがり、良い意味で生産性が上がる、しかも顧客が喜ぶ視点は何かということに対しては、やはり先進指標がないという問題にあたる。
  • サービスの代表例である福祉等の思いやりの世界は、小さな政府で掲げられているものと正反対になる。これから無駄なことはやめようという方向と、もっと優しい社会にしようというのは全く話が違う。
  • 従って、この議論を行う際には、我々の考えている理想的な10年後、15年後にどのような社会を求めているのかということを明確にしなければならない。つまり、基本的にダイナミックであるためには、どのような社会を求めているのかを明確にする必要があると考えている。
  • ものづくりと異なり、サービスは先が全く見えていない。しかし、便利になればなるほどサービスレスであることが進歩になるといった側面もあるので、人間の哲学的な部分も相当考えなければならない。
  • かつて終戦直後に我々が何もかも失った時に社会福祉を議論し、「幸福論」を読んだ時期があった。武者小路等の本を読み、「幸福とは何か」ということについて考えた。ここを出発点にして会社経営に入ったので、特に日本では、従業員共同体といった考え方の経営が進んだ。しかし現在では、このような考え方がなくなってしまい、福祉政策もお金を出して、住む所を提供するということのみになってしまっている。
  • 社会福祉をこれから効率化するのであれば、何を残すべきであって、何を捨てるべきかということに対するフィロソフィーを持つ必要がある。会社の経営でも同様で、何が会社と従業員にとって幸せかということを考えた上で合理化することが非常に重要。単にコストだけを変えるのであったら、幸福論からスタートしていたかつての日本の経営とは異なるものとなってしまう。このような議論が、最近の議論から抜けてしまっていると考える。
  • 近年、幸福論というと考え方が甘いという批判もある。そのために、政治学も哲学から入らず、制度論になってしまっている人もいる。しかし、何を削って何を残すかについては、哲学が必要になる。
  • 確かに、根底にあるものが何かということは非常に重要。例えば、日本の提案制度も、昔、アメリカで行われていたサジェスチョンボックスが全く違う形になって根付いたもの。これを更にアメリカが逆輸入した。
  • 外国で行われている例をそのまま持ってくれば良いという訳ではなく、日本の中に導入する際には心がなければならない。これは大前提なのではあるが、今、我々が何を悩んでいるのかというと、サービス産業の生産性が総じて停滞しており、悪い方向に停滞しているということ。これをモビライズする方法は3つしかないと考えている。
  • 1つ目は、構造改革。例えば、IT業界においては、ADSLに繋げるという決定をしたとたんにブロードバンドが広まった。また、不動産の証券化・流動化を決定した際にも大きな影響があった。このような宝物のような例は沢山あるものではないと認識はしているが、それが一つ目だ。
  • 2つ目は、技術革新や、高齢化といったような社会構造の変化が起こった際に、それに否応なく併せざるを得なくなること。しかし、これも何か他人任せのようなところがある。
  • 3つ目は、やはり外からの刺激だろう。これは、外国の真似をしろと言っている訳ではない。コンビニを例にとってみると、コンビニは日本でアメリカとは全く違う形で発展した。外のものをそっくりそのまま持ってくるものには限られず、色々なケースがあるだろう。グローバル化の時代背景も踏まえれば、タイ、東南アジアなどからも学ぶべきものあるだろう。
  • くり返しになるが、どこをモビライゼーションのきっかけにするかを考えておかなければ停滞してしまうのかという気がする。
  • モビライゼーションのきっかけといった面から考えると、産学連携が絶対に1つのエンジンとなりうる。例えば、電子カルテをとってみても、工学的には非常に簡単である。しかし、理工学者にとってみると、どういうニーズがあるのかわからないという問題がある。ニーズとシーズのマッチングの行えるトランスレーターの存在が極めて重要。かなりきめ細かく作らなければならないのだが、そのような人材を育て、それをつなげると能力のある人はたくさんいる。しかし、一方で、何をやっていいのかわからないという研究者はたくさんいる。産学連携においては、中小企業も多く、地域活性化にも役立つ。この点から、地方の大学の工学部等を利用した産学連携の取組は非常に重要。
  • 現在色々な大学に産学連携本部があるが、例として、ある工学部の例を挙げると、産業界からコーディネーターを連れてきて、シーズとニーズのマッチングを行って、非常に良い取組が行われている。私自身、商社系のサービス業との産学連携を行っている最中であるが、おそらく先方にも背後にユーザーがいる。ユーザーがいて、トランスレーションしてもらわないことには、我々として受けられるものがないので、個々の技術者、研究者が出ていく前に、全体を見渡せて、企業と大学との間に入れるトランスレーターとなる人材が非常に重要だ。そのような人材が存在することによって、大学で使われていないファンクションの部分が十分活性化できるので、そのような人材を如何に育成するかが重要であり、そこにダイナミックなエンジンとしての可能性がある。
  • 現在、大学のTLOで「見える化」、「最適化」や「新しいサービスを作り上げる方法」をまさに考えているところ。
  • 「モノを作る」ことと「サービスを作る」ことは、100%同じではないが、共通部分は相当ある。工学系の人も、サービスに限定する必要はないが、「価値を作り出す」という意味で貢献する場は多くあると思う。その際には、工学系だけでなく、様々な所とコラボレーションを行っていくことが大事で、今の大学は制度的にもやりやすくなっており、将来的にも期待ができる。
  • 幸福論の議論の他に、現在生まれてきている新しいサービス産業をとってみると、生産性や付加価値というところで議論すべきところはたくさんある。
  • シンクタンク・コンサル業界で言うと、40年くらいかけて産業の形になってきた。そのプロセスでいくつか売上、利益の上がる瞬間があったのでご紹介したい。
  • 当初は、顧客に徹底的に合わせた調査研究を行っていた。その頃は、生産性は何かを考えてもいなければ、生産性という言葉自体がなく、良い仕事をすれば将来があると考えていたが、自立した産業とはほど遠かった。
  • そこで、アメリカのマルチクライアント方式の調査研究を行い始めた。これは、受け手ではなく、出し手の都合に合わせるもの。相対的に安い料金ではあるが、出し手のできることのみを提示し、良い企画であれば参画を促すことができ、生産性という意味では大きな転換があった。これは、アメリカの真似をしてうまく行った例だ。
  • このマルチクライアント方式が陳腐化してうまくいかなくなった次のステージでは、受け手であるお客様にやってもらうということを始めた。すなわち、お客様が変わっていくのを支援するということを始めた。
  • 現在では、この3つの手法を持っているが、60年代にこのモデルを持っていれば、産業として自立するのはもっと早かっただろうと考えている。
  • BtoBサービスでは、少なくとも受け手に合わせるもの、出し手に合わせるもの、相手にやってもらうものの少なくとも3パターンがあり、やればやるほど生産性が上がっていくものと考えている。
  • こういった生産性向上の多様な経験が、サービス産業生産性協議会の場で共有されていくことが出発点。
  • ソフトウェア産業は、学生に評判が悪く、人気がなくなってきていて、若い人に夢を持たせられないということに対して非常な危機感を持っている。3K(帰れない、給料が安いなど)という言葉も生まれてきてしまっているほどだ。そのため、幸福論とも関連するが、「幸せであるべき職業」は何かといったことに昨年来、取り組んでいるところ。
  • ITや教育等による効率性の追求も重要。お客様の意識改革や社内での意識革命、業界そのものなどのテーマがあって、これは非常に挑戦的な課題だが、何が何でもやりたいと考えている。サービス業では「幸せであるべき職業」というのも確かに重要な視点だと考える。
  • サービス産業で働く人をいかに幸福にするかという視点はやはり重要だ。新しい産業で働く人々は結果的に新しい職業に従事していることになるので、そのような新しい職業を公的にネーミングしてオーソライズすることも従事者の幸せに繋がるのではないかと考える。
  • 例えば産業分類表とリンクした形で新しい職業分類表を公的なオーソライズを持って作ってもらえるだけでも、新しい産業に踏み出すきっかけを与えられると思う。
  • 健全な業界で働くことも働く人の幸福に関わる。特に人材ビジネスを考えたときには、どの業界のどの会社に行けば安心して働けるか分からないという状態は極めて不健全。従って、新しい業界団体を立ち上げ、お客様の安心と同時に、この業界の中で安心して働けるようにする取組を行っている。これも「幸福」という視点につながると考える。
  • 業界の健全化という意味では、アンフェアなところを摘発してほしい。これは行政に期待したいところでもある。だが、法整備が追いついていない状況では、業界団体は、法整備がなされてなくても実態ベースで、働く人、顧客に安心を与えられる手段になりうる。
  • 社会構造が変化し、実際に人口が減っている。また、世界で5%のGDP成長を行っているのに対し、日本は2~3%の成長しかしていない状況を踏まえ、全社挙げての生産性向上、業務の「見える化」に徹底的に取り組んできた。
  • 「見える化」ができると、工夫の手だてがわかる。例えば標準化、効率化という議論があったが、この部分は絶対に必要であり、避けて通れない。
  • 業務を定型と非定型と分けて、定型の方を徹底的に標準化、効率化し、これまで定型について対応してきた人に非定型のことをやってもらうなど、クォリティを幅広く高める試みも行う必要がある。色々な大小のサービス産業があるとは思うが、おそらく本質は同じではないか。
  • 外からの刺激も重要だが、社会構造の変化の中で、こういった対応はサービス産業の従事者は自ら主体的に取り組んでいく必要がある。
  • コンビニは、サービス産業の中で一番IT導入など効率的になっている。しかし、30年前に日本に持ち込まれたアメリカのコンセプトは、当初全く日本に合わなかった。そこで日本に合うようにコンセプトを大きく変更した。この日本のコンセプトはアジアにはすんなり受け入れられた。しかし、この日本のコンセプトをアメリカに再輸出しようとする試みはうまくいっていないと聞いている。このように求められる中身が国によって違うことは認識しておくべきだ。
  • 生産性の定義をもう一回思い出すと、分母に労働者数×労働時間、分子に名目GDPが来るが、どうしても我々は分母に注目しがちである。すなわち、コスト、合理化という分母的なもの、イノベーション、需要創造といった分子的なものを比べると、どうしても我々は生産性向上の達成の為にはてっとり早い分母的なものを対象に選ぶ傾向がある。異論があるかもしれないが、生産性に関する学問においても、分母的なものを計量化し、数値化するというところから、最初に発展してきたように思う。
  • しかし、サービス産業でイノベーションをおこすためには、分子的なものをどう学問化していくか、協議会においてどう取り組むか、またそこに対する刺激が重要だ。
  • 先程製造業から社長を招いて改革をしたという話があったが、製造業の人間を入れれば必ず成功するとは限らない。その企業がすばらしかったのは、分子的なものに注目した改革をしたことだと思われる。
  • 工学系の技術とサービスとが十分、相互に促進する要素がある。また、工学に限らず、領域を超えた接合の中に新しい創造がある。異分野の組み合わせがサービス産業の質を高めることは十分ある。異分野連携により質を高めることはこれまでの日本の縦割り社会では非常に難しかった。だが、例えば大学では独立行政法人化で縦割りがやや崩れつつあって、学部間の連携が行われ、企業から様々な希望が出てくるという時代になってきた。
  • 一方、行政サイドにおいては縦の壁は依然として高い。教育でも医学でも工学的なものがもっと入ればもっと簡単にレベルがあがる。でも古い許認可制度ではそういう取組を許可しない。
  • 狭義のサービス業の市場規模は200兆円ほどで、そのうち政府そのものが占めるのは40~50兆円。さらに政府が関与して影響力の持つものを入れれば100兆円が政府のサービスである。そこには縦割りの世界が蔓延している。そういうものを潰すのは工学的な発想とか技術革新的な発想である。政府自身も重要なフェーズに来ている。そう言う意味でサービス産業はいろいろな側面があるが、これから協議会を中心に生産性向上に向け、作業していきたい。

以上

 
 

最終更新日:2007年3月9日
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