経済産業省
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IT化の進展と我が国産業の競争力強化に関する研究会(第1回) 議事要旨

日時:平成19年1月22日15:27~17:00

場所:経済産業省本館17階西3国際会議室

議事要旨

甘利経済産業大臣からの挨拶の後、座長より挨拶があった。また、本研究会は、議事は原則として非公開とし、会議終了後、議事概要を経済産業省ホームページにおいて公開することが了承された。

次に、資料に沿って事務局による説明が行われた後、委員による自由討論が行われた。

委員からの主な発言は以下のとおり。

  • 製造業は「モノづくり」の産業であるが、同時に「ソフトづくり」の産業としての性格を強めてきている。また、サービス業でも、「ソフト使い」の巧拙が業績を左右するようになってきている。産業におけるIT、特にソフトウェアの利活用あり方そのものが、経済全体の生産性を大きく左右する。(村上座長)
  • ITは、人類の様々な知識を累積的に蓄積するスピードを上げるツール。何故自前主義にこだわるのかを十分に理解することが必要。事務局資料に書かれていないさまざまな要因があるのではないか。(中馬委員)
  • この10年、家電がアナログからデジタルに移行する中で、かなり技術内容が異なることから技術の見える化が進むまでは自前でやっていかざるを得ないところがあった。また、新商品開発で先頭を切るにあたって、既存モジュールを集めるだけでは不十分だった。ハードウェアと同様に、ソフトウェアでも研究開発に投資が集中し、生産性は二の次であったことは否めない。ソフトウェアについて様々なところがだいぶ見えてきたこともあり、どうフェーズを変えるのか考るべき時期になった。(津賀代理)
  • 問題意識は大臣のお話のとおりだと考える。企業の競争力維持のために、他社に先駆けて新しい技術を導入することが大変重要であり、例えば、車両制御ソフトウェアや生産管理システムのようなコアコンピタンスの部分は囲い込みにならざるを得なかった。しかし、急速なIT化によって、高級車に使われるCPUは100近くになっており、ソフトウェアの開発コストは企業経営を圧迫する重要な経営問題となっている。協調できる部分と競争領域をきちんと分けて、同業者が共同でモジュール開発することは大変重要となっている。一つの例として、JASPARの取組があるが、コスト削減だけではなく、我が国がグローバルスタンダード化に貢献するという意義もある。(張委員)
  • 3つの選択肢の戦略的使い分けはそのとおり。我々製造業の競争力は、スピード、品質、コストに加え独創性であるが、これらは仕事のやり方で差が付くところであるため、囲い込み戦略を指向しがち。これを越えていくためには、例えば、信頼できるパートナーシップの確立が重要ではないか。(下村委員)
  • 携帯電話の世界も急激に変わりつつある。第3世代でソフトウェアが複雑化し、情報量が巨大化。より高性能なCPU、アプリケーションが求められている中で、端末価格の引き下げ、製品開発期間の短縮、高機能化を全て満たすために、プラットフォームの統合の動きにある。世界には非常に強いベンダがいる中で、我々はどのように生きていけばいいのかという大きな課題を抱えている。(中村委員)
  • コンピュータソフトウェア協会の参加企業はPCを通じてオープンプ化・統合化の中で成長してきたので、選択と集中、役割と分担、部品化・標準化が比較的当初からできた産業であり、そういう中で約100社の企業が上場できた。部品化されたものがそのまま製品化され、市場に出ている。国際競争力という観点では商品ごとに温度差がある。事務局の資料は、教育面など色々なことを含めて、実際に行われていること、今後の課題など、参考になる。(和田委員)
  • 金型の設計・試作のために90年にCATIAを導入したが、もともと航空機用ということもあり、金型には向いていなかった。93~98年にかけて、経済産業省の支援を受けて金型用のCAD/CAMを開発したが、実際には、飛躍的な工程短縮や生産性向上のためにはCAD/CAMだけではダメで、いかに設計から金型までをつなげていくかが重要であり、CAD/CAMは要素技術の一つ。2000年には、顧客の工程を短縮するサービスを開始し、今や売上の半分になるまで成長している。設計から試作、金型という工程は、モノは違っても同じ動作、共通のものでありプラットフォームとなりうる。工作機械、CNC、金型などモノづくりは日本が強い分野であり、モノづくりのプラットフォームを握ることが大きなポイントではないか。(山田委員)
  • ソフトウェア化とモジュール化の進展と重要性はそのとおりだと思う。欧米は水平分業型でずっとやってきており、生産管理パッケージや研究開発パッケージ、設計ツールなども水平型でやられてきた。IT事業者サイドも反省すべき点があるし、ユーザーも現場主導という流れの中でパッケージを使おうとしなかった。これからどうするのかと言えば、欧米と同じところではなく、例えば、組込ソフトウェアなどにおいて、現場ノウハウと密着した形でのパッケージ化あるいはノウハウの集約化が重要。モジュール化、プラットフォーム化ということで、これらをきちんと構えていくべき。情報大航海など情報検索の分野でも、センサーネットとつなげてリアルをどのように検索していくかがポイントではないか。我々が強みと考えているものをベースとしたプラットフォーム化が重要ではないか。(篠本代理)
  • 業務管理システムは、自社開発・作り込みが基本であったが、これは、作る人が自社の業務は特別だから特別なものを作らなければならないというような職人かたぎ意識と、パッケージは使い勝手が悪いという意識によるもの。モジュールに体や業務を合わせるくらいの意識でやることが必要。他社との共同開発や自社開発モジュールの他社展開については、その部分が企業の業務上の機密なのかどうかを考えなければいけない。業務プロセスを効率化し、統制をきかせてプロセスを進める部分については、共同開発で開発コストを下げる方向で考えるべき。既に海外は三菱商事、国内は三井物産と一緒にやっており、コスト削減、ひいては企業の競争力強化につながっている。(島崎委員)
  • 当社の売上の半分以上はソフトウェアモジュールの輸出。20%くらいの利益率で納税、雇用にも貢献しているが、ソフトウェア単体の売上では、金額が小さく、日本全体のソフトウェアの輸出も約90億円と非常に脆弱な産業。現在の売り先は、ほとんどがモトローラやサムソンで、これらへの四半期の出荷台数はドコモの年間出荷台数に相当する規模。我々の取組みが国内の携帯電話産業が海外で活躍できない原因を作ってしまっているような状態になっている。日本のセットメーカーに強くなってもらわないと外貨を稼げない。セット製品の方が利益も売上も大きい。これはソフトウェア産業がきちんとしていないからではないか。組込ソフトウェアの会社で上場しているのは、全世界で十数社。日本では数えるほどしかない。自動車や電子機器業界では系列や下請の部品メーカーが育ってきたが、IT産業の下請のほとんどは労働力を提供する会社になってしまっている。産業として大きくはなったが売るものがない。会計基準にも問題があって、ソフトウェアは完成品でないと資産化できず、それまでは費用として計上する。儲かっているうちはよいが、資産化できないのは障害。また、自社用は資産化できるが、外販用は資産化できない。こういうリスクを負わなければいけない。もう一つは、メーカーが持っているソフトウェア資産を出したがらないことが問題。これは鶏と卵の関係で、出すと敵に塩を送り、出さないと共通化できず、価格競争力が得られない。こういうことをきちんとコーディネートする機構が必要。「情報サービス産業 and ソフトウェア」みたいな言い方で、部品としてのソフトウェアを売る産業としてとらえるべき。ソフトウェア産業そのものをどういう戦略で行くのかというところが国として貢献できるところではないか。(郡山委員)
  • 当社のソフトウェア製品の数は最大であるが、その中で経験しているのは、よい品質、高い機能のものが売れるわけではないということ。ドキュメントの品質、障害が起きたときの対応、ユーザーの要望へのフィードバックの仕組み、ディーラーとの関係など、こういったものがきちんとしないと売れない。海外では、必ずじも品質がいいわけではないが英語の世界ということもある。我々はもっと研究すべき。当社の生産パッケージは、海外ではすんなりと受け入れられるが、国内は大きなカスタマイズが必要となる。SAPでも日本ではカスタマイズが必要。SAPは儲かるが、カスタマイズをしている当社は儲からない。オーダーメードはカネがかかるのだという文化がもっと必要で、この文化がないとパッケージはリスクが高く、誰も売りたがらない。(秋草委員)
  • DVD、携帯電話などのアジアの人は絶対に作れないだろうと思われたすり合わせ型の製品がたちまちのうちにモジュラー化されて、簡単に作られて、価格低下と収益悪化が起きている。アーキテクチャーをモジュラー化しているのは組込ソフトウェア。マイクロプロセッサーと一緒になって、90年代から技術革新の流れが急速に変わってきた。日本だけでなく、米国でも、PCの世界では80年代からモジュール化が進展し、ビジネスのモデルが変わってしまった。モジュールを組み合わせたビジネスモデルや、周りのモジュールを全部取り込んだプラットフォームにより、ようやく90年代の中ごろに新しい収益モデルが確立したと考えている。これは、日本のIT産業の利益率が減少した90年代半ばと奇しくも一致している。松下電器などは、囲い込み戦略とモジュール化・外販戦略を巧みに組み合わせている印象。日本の勝ちパターンはどうあるべきか、国際標準をどう使うのかなどを考えることが必要。(小川委員)

甘利大臣の退席に際して以下のとおりコメント:

  • 三つの視点について冒頭の挨拶で述べたが、ではどうするのかを考える必要がある。最先端の製品、組込ソフトウェアは競争力そのものであり、囲い込みが必要だということは理解。一方、ある部分、プラットフォーム化を通じて、戦いやすい環境を作ることも重要。また、出した後、自社の製品の上でどのように差別化していくか、バージョンアップといった先のことも考えた戦略を考えていく必要があるのではないか。今回のテーマは日本の競争力全体に関わる重要なものであり、是非皆様の英知を結集していただきたい。

その後、事務局から今後の進め方について簡単に説明し、引き続き議論。

  • モジュール、すり合わせという言葉を技術的に何をやっているのかという定義をきちんとしないといけない。製品の作り手と使い手で指標が異なる。モジュール化と言った時に、何に対して機能を切り分けているかについて混同がある。すり合わせという言葉の中には3つ、4つの要素が含まれている。話が混乱しないように、きちんとした定義が必要。(藤村委員)
  • 業界(例えば、組込型、業務系ソフトなど)によって競争力を如何につけるかというポイントが変わってくるのではないか。その形や産業別ではなく、オブジェクト化の中での本質を見た時の共通性をいかに取り出し、どのように対応するかを考えていくということではないか。(和田委員)
  • モジュールの開発者へのインセンティブを考えるべき。当社では理解ある顧客のもとで、開発に要した人工(にんく)ではなく、ソフトウェアの機能で対価が決まるファンクションポイント法を採用している。モジュールの組み合わせであっても、何ができるかで金額が決まるファンクションポイント法を広めることを検討してはどうか。また、人材育成が非常に重要な問題で、大学との連携、どうイニシアティブを取るべきか、そういったところをきちんとしていかないと、就職のイメージが悪くなって、相変わらず悪いサイクルに入っている。こういった点をどのようにすべきか考えることが必要。(服部委員)
  • 自動車の場合は、トヨタが海外に出て、デンソーやアイシンも出て行くという戦略。携帯電話の場合は、メーカーが出て行かないのでこうした戦略が取れない。例えば、ハードが難しいのであれば、おサイフケータイと言ったサービスとソフトモジュールがセットで海外に出て行くという形もあるのではないか。ソフトウェアモジュールメーカーだけ出て行くのでは、海外セットメーカーに利するだけ。セットメーカーと組んで出るのか、サービスと組んで出るのか、日本としての産業政策が必要。(郡山委員)
  • 信頼関係や現場のリアルな情報を活用するという話があったが、つまりは、ITを使ってどうコミュニケーションの効率を高めるかが重要。そのために、例えばモジュールにするとか、お互いによりわかりやすくするとか、情報の粒度を上げても、皆がその背景知識を共有できるようにすることが考えられる。日本人独自のコミュニケーションシステムとITをどう合わせていくか、コミュニケーションシステムの設計という視点からモジュールを考えることもあり得るのではないか。(中馬委員)
  • モジュールとかプラットフォームを全般的に議論するのではなく、日本として握るべきモジュールやプラットフォームは何かに絞って政策を考えるべき。(山田委員)
  • モジュールについては、きれいに定義されているかどうかは別にして、なんとなくの概念は共有されている。では、プラットフォームとは何か。Linuxみたいなプラットフォームもあるが、系列にとっては親会社もプラットフォームであり、信頼関係で情報共有している。系列とはコミュニケーションのツールであるとも言えるのではないか。例えば自動車であればトヨタというプラットフォームがあって、初めて自動車の部品産業ができた。こういった技術でないプラットフォームが本当は必要なのではないか。(郡山委員)
  • モジュール化によって部品産業側へのノウハウ流出のおそれがある。そのときに、バイヤーの指標と作り手の指標が一対一であるものと、市場でどうすり合わせていくかというマトリクスになっているものがあるが、モジュール化の上部にこうした一対一になっていない見えない層を設けるといったアーキテクチャーを考えればよいのではないか。このときにソフトウェアはどのように使えるのかという議論をすれば、産業横断的に集約できるのではないか。(藤村委員)
  • 銀行にとってプラットフォームとは事務そのもので、これがコアコンピタンス。そのためには、しっかりしたシステムが必要であり、競争力の源泉は自前主義でやっている。地銀との共同化やシステムの外販もやっている。地銀システムの共同化では、ソフトだけでなく、事務のやり方等、人の教育まで含めて行っている。最近ではウェブサービス等を使って、他社のシステムとの連携もやっている。日本版SOX法により企業の業務の透明性と人の介在を無くすことが求められており、企業と銀行のシステムでしっかり連携し対応することも必要と考えている。(天野代理)
  • 携帯電話は新しい産業で、キャリアが前に出て引っ張り、また、ベンダーからの提案も採用してきた。それに対して、ノキアなどが採算が合うようになるまではなかなか新しいものを出してこない中で、日本の携帯電話は高度化した。しかし、デメリットとして性能は高いが世界に通用しないということになってしまった面はある。一方で、新しいものをいっぱい作ってきたので、部品メーカーは大きな世界シェアを持つようになり、先行性はあったともいえる。第3世代になり、第4世代へ新しくなっていく中で、日本としてどうするか。今から標準パターンの電話機だけ作ってノキアやモトローラに勝てるのか。先に行かなければいけない部分とのバランスをどうするかが難しいところ。(中村委員)
  • IT産業への要望がある。日本ユーザー向けのソフトウェアといえども、市場を日本だけに限定するのではなく、最初からグローバルな視点で開発することが重要。外販モジュールについては、ユーザー企業各社特有の事情に合わせるため、カスタマイズしやすいインタフェースの開示が必要。ソフトウェアは完全なブラックボックスではなく、オープンアーキテクチャーとカスタマイズ支援ツールの整備が重要。本日は、我々製造業のみならず、IT産業の方、業務関係企業の方、大学の先生方、色々な方々が集まって、大変有意義な議論ができた。是非これを成功させて、日本の国際競争力の強化に結びつけていきたい。(張委員)

座長から以下のとおり総括。

  • プラットフォーム化、モジュール化を進めなければいけないというコンセンサスが全産業共通に存在していることが確認できた。一方、解は産業ごとに異なることも明らかになったと思う。この問題を考えるためには、make or buyだけでなく、make or buy or sellを考えなければならない段階にあるという認識が必要であろう。ブラックボックス化するものと、オープンにして外に出すものとの境界線を戦略的に設定することが重要。問題の深さがよく分かったと思う。

最後に、事務局から、次回の日程(2月下旬から3月で調整)について説明。

以上

 
 

最終更新日:2007年5月23日
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