経済産業省
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IT化の進展と我が国産業の競争力強化に関する研究会(第2回) 議事要旨

日時:平成19年3月16日7:30~9:00

場所:グランドアーク半蔵門(富士の間)

議事要旨

座長より挨拶の後、島崎委員、重松代理、小川委員よりプレゼンテーションが行われた。

プレゼンテーションの概要は以下の通り。

議事概要

座長より挨拶の後、島崎委員、重松代理、小川委員よりプレゼンテーションが行われた。

島崎委員

1999年に着手したSIGMA21プロジェクトは、経営システムの構築と基幹システムの再構築から構成される。経営情報システムは部長以上のマネジメントに対して、連結ベースで組織情報をタイムリーに提供する。基幹系システムは、経営情報に必要な情報を同一レベルで収集すること、商品部門毎に異なった業務プロセスを標準化し、営業システムを共通化することを目指した。システムを再構築する際に、パッケージソフトの採用を検討した。この時に、ドイツ・SAP社から当社の業務要件を組み込んだ商社流通業モデルを共同開発し、製品化したいとの要望があり、共同開発を開始した。

こうしたソフトウェア開発IT企業との共同開発はユーザー企業にとっては、自社開発に比べて開発期間の短縮、開発費用の削減、将来のバージョンアップが保証されるため保守・運用コストの削減、ITの最新技術に対応できるという利点があり、IT企業にとっては製品メニューの拡充によりパッケージソフトの競争力を高めることが出来る利点がある。

そして、開発したシステムが同業他社に展開されると、システムを導入した企業と共同してIT企業に対して要望の発言力を上げるという効果もある。

また、IT企業とではなく、同業ユーザーとシステムを共同開発することによって、両社の業務分析、システム開発のノウハウを共有し、効率よく開発することが出来、実際に開発期間を約半年程度短縮し、開発費用も40%程度削減できた。

重松代理

車両用の電子制御システムは爆発的に増加しており、個々では対応できないために標準化活動が色々なところで動いている。

地域の特性があり、欧州ではメーカーとサプライヤーの関係がはっきりし、1対1で対応していないために自動車メーカーがはっきりと共通のものをサプライヤーに提示して標準化している。対して、北米では大体1社について1社に大きなサプライヤーがおり、マスメリットを生かすと言う戦略をとっている。日本の場合は自動車メーカー、サプライヤーがバラバラに提示しているため、標準化がうまくいっていない。

欧州ではAUTOSARという標準化の動きがある中で、垂直統合の時代からどこかで水平分業化する時代になると考えている。JasParをどのように進めるべきか。欧州のようなモジュールだけではいけないだろう。従来のすり合わせだけでも良くない。モジュール化されたすり合わせの新しいルールが必要ではないかという概念で、JasParという取組みをスタートした。

しかし、「非競争領域」、「よいもの」、「みんな」という言葉は総論では通じるが、各論になるとサプライヤーやそこに納めている半導体メーカーなどの立場が全て違うためにきれいごとでは済まなくなり、まずはきれいごとで済むところからということでスタートしている。

FlexRayの団体に対する日本としての貢献は、用途と詳細なスペックを具体化して、物を作って協力すること。彼らは標準の仕様は決めるが、物づくりは余り上手でない。中長期的には経済産業省の協力の下で、インターフェース、ソフトウェアのプラットフォーム、開発プロセスの標準化を進めていきたい。

また、AUTOSARの体制ではトヨタが自動車メーカークラスにいるが、ベンダー群には日本の企業がいない。2007年度は具体的なソフトウェアベースを作ることと、ベンダーをどうするかが課題。

小川委員

1980年代から現在までの営業利益を比較すると1995年まではエレクトロニクス産業も他産業と同様に経済変動の影響を受けて変化しているが、10年前から違っており、この違いがプラットフォームと関係があるのではないだろうか。

コモディティになるときに、付加価値はセット側ではなく、必ずモジュールにシフトし、その時に大量普及を担うのが先進工業国ではなく、キャッチアップ工業国である。プラットフォームを構築した先進工業国が強力な影響力を持って、磐石な利益の源泉を作ってビジネスを構築している。

このプラットフォームは、自社の技術ノウハウを内部に封じ込めた基幹モジュールがオープン環境で周りを統合しながら構築されていく。完全にブラックボックス化するのではなく、一部を必ずオープンにして業界全体のイノベーションを全部自分に引き込むという構図になっている。この時に、技術知識のない国、企業がオープン環境で流通するモジュールを組み合わせて完成品ビジネスに参入し、強烈な価格競争が起きる。

日本の家電産業はいろいろなところでプラットフォームを作ろうとしてきたが、基幹モジュールに留まり、プラットフォームの構築には至らなかった。日本は素材から完成品までのフルセット型の企業が非常に多い。それらを持たない海外企業が大変なコストをかけて得るセット側のノウハウを社内に蓄積しているため、理論的にはプラットフォームを構築しやすい環境にある。これを経営戦略として積み込み、プラットフォーム化していくことで、強力な利益構造を作れるのではないか。


次に、資料に沿って事務局による説明が行われた後、委員による自由討論が行われた。

委員からの主な発言は以下のとおり。

  • 基本的な問題は、なぜ日本企業発のプラットフォームをうまく生み出せないかということである。半導体産業などで発展を遂げている海外企業には、ユーザーやサプライヤーの情報が上下からうまく入ってくるポジションをキープしているところが多い。そのような有利なポジション取りができている理由には、歴史的な偶然が幸いしたケースと、自らが意図的に行ったケースがある。多くの場合、後者だと思われる。テクノロジーや市場の複雑性が増大すると、自社内では処理できない膨大な情報量に直面することになる。そのような難点を克服するためには、膨大なデータの中に大局的あるいは局所的な規則性(仮説、理論)を見い出し易くするための新たな工夫が必要となる。プラットフォーム構築とは、そのような工夫の一つである。ところが、的確なポジションが取れていないと、必要な情報が迅速に流入しないので、なかなか皆に受け入れられるプラットフォームを提示できない。(中馬委員)
  • デジタル家電では、年に2回の新機種発売のために、非常に短期的な視点でビジネスをし、ゆでガエルという状態になっている。一方、モジュール化やプラットフォーム化は長期的な視点で、規模、複雑度の大きな領域を定めて、どうするのかということ。年2回の新機種発売、価格下落という短期的な時間軸での対応が必要とされる中で、うまく作りこむ必要のある商品に対して、プラットフォームや共通化を長期的な視点で進めていく。(津賀代理)
  • 当社はビジネスの応用技術を活用している。中国、ベトナムなどの海外に進出し始めている最中だが、特に言語の問題を強く感じている。また、国内での競争が非常に激化しすぎて、消耗戦となり、国際的な戦略を立てられるほど余裕がないという面もある。日本の強みとしては、ユーザーがうるさく、ユーザーによって鍛えられるため、それを生かして、どう展開していけるかが大切。(和田委員)
  • プラットフォームをどうして作ることができないかが基本的な問題。ユーザーとサプライヤーの話がなかなかつながらず、技術のコンテンツ同士の話になると利益相反の問題が生じてしまう。コンテンツを開示してどこで切り分けるかという話では利益相反になるため、どういう基準で技術を選ぶのかという背景の哲学という上位概念を整理・共有するということが重要ではないか。資料4において、インドのIT企業のコメントとして、日本人は抽象概念で考えることが苦手とあったが、非常に重要なポイント。(藤村委員)
  • 短期と長期の話があったが、プラットフォームは短期と長期の対立している部分を解消する一つの方法とも考えられる。例えば、半導体のASSP(Application Specific Standard Products)に関連する話であるが、システムメーカーが日本のデバイスメーカーに頼む場合、自社内の様々な情報を詳細に提示して仕様を詰めていく手間がかかることが多いという。ところが、米国などの(ファブレス)メーカーの場合、そのような手間をかけないでも、システムメーカーの要求に対して提示されたソリューションの中から選択できる度合いが大きいという。そのようなことができるのは、幅広いユーザーやサプライヤーにまたがって良いポジションを確保しているからだと思われる。そういうポジション取りができている会社は、さらに頼りにされ、有用なマーケットの情報が流れ込む。その結果、短期のビジネスと長期のビジネスとをより効果的に結びつけることができる。プラットフォームとは、そういう結び付きを容易にしてくれるツールだと思われる。プラットフォームを通じて流入してくる様々な情報を利用することにより、短期・長期のビジネスを遂行していくために不可欠な理論仮説を効果的に生み出せるからである。(中馬委員)
  • 日本では、半導体やセット側が社内内部で分業化されており、半導体側がプラットフォームを作って外部展開しようとしても、対立するセット側のために身動きができないケースもある。大手の企業は、上から下まで社内にあるため、内部で全部クロスできるのに、そのメリットを生かせていないのではないか。(小川委員)
  • プラットフォームは成り立ちが2つあり、1つは天才的なアーキテクトが作って、一気にグローバルスタンダードにしてしまうもの。もう1つはいろいろな経験を蓄積して、中から共通的なものを選ぶというもの。1つ目は、学校での教育、企業での教育に絡むので難しいが、日本の企業は2つ目を考えるべき。国内のユーザーの経験を共通化してプラットフォーム化することはしてきたが、それではグローバル化できず、IT企業としてグーバル化に遅れてしまったことは反省している。現在はグローバルなユーザーのノウハウを集めて、新しい創造が出来るように取り組んでいる。(古川委員)
  • 半導体がますますファインになるとシステム屋と半導体屋の区分が難しくなってくる。システム屋と半導体屋の融合の中で半導体が出来るため、もっと密な関係になってくる。そこからさらに進歩するため、半導体屋がセット商品を作ってしまうくらいの技術をもっていないといけない。チップを作ると言うことから、いかにしてコンテンツを組み込むかという方向が重要。また、プラットフォームをいかにコントロールし、成長させていくかが重要。海外企業は全ての知見を自分の財産としていく一方で、我々は知見の集め方、回し方が下手。さらに、日本で開発し、日本で作って権利を押さえ、売るというモデルはそろそろ変えなければならない。インドのバンガロールでは、工場の中にシスコハウスといったベンダーに特定のビルがたくさんある。外注ではなく、海外に拠点を持って行って、向こうの工場の中でやってしまっている。日本の中で悩んでいてもしようがなく、そこまで乗り込むことも必要ではないかと考えている。(秋草委員)
  • 金融機関としても、同じ時代の中でいろいろな製品を同じようにコストをかけるのではなく、システムの共同化プロジェクトに20年ほど取り組んでいる。本研究会の論点はグローバルな競争力という中でのプラットフォームだと思うが、一言にプラットフォームと言っても、次元がいくつかある。一つは私ども金融機関や島崎委員からあった業界としてのプラットフォーム、それから製品別プラットフォームがある。我々の業態を越える技術革新の世界的なプラットフォームもあるが、米国の軍事技術ぐらいの膨大な投資が必要で、10年に1度くらいのプラットフォームみたいなものもある。どういうプラットフォーム、どういうチャンスがグローバルな国際競争力という観点で必要かを整理して議論する必要があるのではないか。議論が大きく拡散したり、問題の捉え方ができないことをやろうとしたりする恐れはないだろうか。(畔柳委員)
  • プラットフォームによってコストの削減や競争力の付与などがもたらされるが、最終的には最終製品やサービス全体がどういう競争力を持つかということが一番効いてくる。プラットフォーム化というときに、どういう目標を持って戦略的に組み立てていくかで大きく違ってくる。プラットフォーム化に際しては、最終市場がそれなりに大きく、競争力を持ち、それらとどれだけリンケージしているかに意味があり、そこは政策、戦略、ナショナルプロジェクトかと思う。最終市場がどういうものであるかを常にスコープに置いた戦略がプラットフォーム戦略では重要。(伊東代理)
  • 業界別にいろいろとあるのではないか。業務、経営の改善というだけではなく、1品生産のCADなどの分野でのIT化は少し違う部分もあるのではないか。また、プラットフォームを作ることも重要だが、それらプラットフォームをつなぐことも重要で、その能力をいかに人材的に高めていくかも重要。また、税制や会計基準に関連して、プラットフォームを作る努力を国としてどう支援するか。最初に作ったものを経費で全部落とさなければいけない会計基準もある。昔あったプログラム準備金は良い制度であり、もう一度そういった支援を考えることも必要ではないか。(服部委員)
  • 日本の大学には、世界的に見ても、インドを含めた各国の事情を古代から現代に至るまで丁寧に研究している(社会学、文化人類学、歴史学等々の)研究者が数多くいる。グローバル化の中では、そういう人たちの保有する知識の社会的な有用性が急増している。しかも、彼らの知識は、ビジネスの視点からも相当に有用だと思われる。ところが、現状は、依然として彼らの知識が有効活用されていない。非常にもったいない話である。急速なグローバル化に直面した現在、日本中の様々な英知を結集するというプラットフォームも必要ではないだろうか。(中馬委員)
  • 先ほどからの議論では、プラットフォームという言葉で、グローバルスタンダードであったり、製品の標準化などいろいろなものを含んでおり、絞り込む必要がある。日本はソフトウェアとITだけで世界に勝てるレベルにはないが、ものづくりは非常に強いので、ものづくりとIT、ネットワークを合わせれば、強いプラットフォームを作ることの出来る可能性があるのではないか。海外のパソコンや携帯電話を作っているメーカーは台湾、中国の会社にスケッチを渡して、設計、金型製造、生産準備、量産をすべて任せており、これらを競争力と見なしていない。しかし、商品のライフサイクルが短くなる中、設計、金型製造、生産準備という開発部分のスピードをあげることができれば競争力となる。設計から金型製造、生産準備という開発の工程をつなぐプラットフォームというものを1つの例として絞り込むことが重要でないか。(山田委員)
  • 海外企業がスケッチを渡してしまうとあったが、日本の問題はスケッチを出すことによって競争的なコンテンツがすべて出てしまうと恐れていること。スケッチを出すことの出来る企業はどうして出すことができるのか。なぜ、競争力を維持できるのか。(藤村委員)
  • 世界の分業化が進んでいる中で、本当に日本の製造業が全部自社で持たなければいけないかという問題は考えなければならない。競争力が余りなくなっているところを日本はいつまでも競争力と思っているかもしれない。競争力とはどこかを考える必要がある。販売のネットワーク、プランニングは競争力。すごく凝った技術の中のプランニングは競争力ではなくなりつつあるのではないか。(山田委員)
  • 考え方によっていろいろなプラットフォームがある。プラットフォームがない場合にも、ユーザーにとって必要であれば作られるようになるのであり、顧客主義がすべての根底にあるのではないかと感じている。(和田委員)
  • プラットフォームとは何かというと、我々の英知を結集するためのコミュニケーション・ツールだと思われる。プラットフォームを媒介としてコミュニケーションが円滑に行われることにより、市場が適確に見えて求められる製品を早期に生み出せるというロジックである。コミュニケーション・ツールとしてのプラットフォームがうまくできていればいるほど、ユーザーやサプライヤーの情報が、プラットフォーム提示企業を中心に効果的に循環するようになると理解すればよい。(中馬委員)
  • 海外企業は開発も量産も競争力とは思っていない中で、開発は日本の競争力になりえるため、そのプラットフォームが必要ではないかと考えている。(山田委員)
  • 研究会のメインテーマには、ソフトウェアモジュールがあり、それがプラットフォームの形に組み立てられるというレイヤー構造の中で、ソフトウェアモジュールがなぜ日本の産業には生み出しにくいのかを議論のスタートとしている。これまでの議論は、プラットフォームというひとつ上のレイヤーで行われているが、モジュールそのものがなぜできないのか、課題はどこにあるのかというところも出発点として重要であり、ここに議論の焦点を置いていただきたい。(村上座長)
  • 米国企業の多くはどこのポイントであれば市場が獲得できることを知っていたり、そういうところに客を導く工夫をしており、そこを勝負のコアと考えている。つまり、製品機能を実現するための要素技術の組み合わせは競争のコアではないと考え、オープンにしても構わないと考えている。一方、この研究会で話されていることは要素技術と製品機能をどうすり合わせるかという部分のプラットフォームを構築するかであり、ここに競争力があると思っている限りは利益相反があり、プラットフォームが構築されない。従って、顧客とのインターフェースに競争力を持っていると考えるか、要素技術側に競争力を求めるかでモジュールの見方が変わるのではないか。(藤村委員)

座長から以下のとおり総括。

  • すべてすり合わせの組み立て製品というこれまでの日本企業が得意とした世界から、汎用的なプラットフォームが生み出され、プラットフォームとすり合わせの組み合わせで競争力が形成される世界への転換が求められている。更にプラットフォームは、オープン化できるソフトウェアモジュール部分と、競争領域としてブラックボックス化しなければいけない部分の切り分けが必要である。今日の議論では、プラットフォームをめぐる議論のレベルでコンセンサスができたが、そこにモジュールの議論の突破口もあるのではないかということかと思う。今日の議論においては、まずは、プラットフォームの基本的な方向性、立ち位置の重要性の認識についての問題提起があった。次いでいわゆる「ゆでガエル」問題について、短期で回している限りは、モジュールを作り、プラットフォームを組み立てるモメンタムが出てこないという指摘があった。長期の視点が重要であることはわかりながらも、それがなかなか出てこないところが本質的な問題である。それに対して、経営者サイドからは、問題をどう認識し、トップダウン、ボトムアップ双方でどう全体を回していくかという戦略の重要性についての指摘があった。要は、放っておくとソフトウェアモジュールを共有するという動きは出てこない。プラットフォーム化とかブラックボックス化をいかに戦略的に進めるか、短期ではなく長期につなげる議論をどう作るかが重要である。それらすべては、結局はグローバル競争をどう展開をするかというところに議論が帰着するという御指摘をいただいた。グローバル化には、米国等ですばらしいものができ、それが全世界に展開されるという通念があるが、モジュール化やプラットフォーム化の議論では、異なった地域や異なったレイヤーのノウハウやコンテンツを、企業間・産業間でどう共有する仕組みや場を作り出すかというところが鍵であることから、世界中のいろいろな地域を探索して最適な経営資源を結びつけるメタナショナルなアプローチが重要。しかし、場づくり、コミュニケーション作りが如何に難しいかについては、すでに頭が痛くなるほど問題、課題が出てきている。次回はそこをどう突破するかをご議論いただきたい。

最後に、事務局から、次回の日程について説明。

以上

 
 

最終更新日:2007年5月23日
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