経済産業省
文字サイズ変更

産業構造審議会環境部会地球環境小委員会・中央環境審議会地球環境部会合同会合(第19回) 議事要旨

日時:平成19年7月6日(金)15:00~18:00

場所:砂防会館「利根」

出席委員

茅地地球環境小委員長、鈴木部会長、青木委員、秋元委員、浅岡委員、浅野委員、飯田委員、石坂委員、猪野委員、植田委員、潮田委員、浦野委員、及川委員、大塚委員、角田委員、鹿島委員、勝俣委員、木下委員、黒田委員、河野委員、小林委員、佐和委員、塩田委員、鈴木(正)委員、須藤委員、住委員、関澤委員、高村委員、内藤委員、中上委員、永里委員、長辻委員、新美委員、西岡委員、馬田委員、森嶌委員、原沢委員、山口(光)委員、横山委員、米本委員

議事要旨

1.エネルギー起源CO以外の対策、その他の対策

資料1は経済産業省、資料2及び3は環境省、資料4は農林水産省、資料5は経済産業省及び環境省から説明が行われた。

茅委員長
  • 資料4について補足したい。資料4は前回会合で委員より質問があり、私が事務局と相談して回答する旨を申し上げたことを背景として、事務局より提出されたものである。二酸化炭素の排出原単位について、電気事業者が京都メカニズムを使ってクレジットを取得し、その原単位を自主行動計画として引き下げること自体は問題ない。しかし、自主行動計画の中で他の電気の原単位に反映されるのはダブルカウントにならないかとの質問があった。これはエネルギーバランス表と同じであり、経団連全体としての自主行動計画の総和を見るときは電力の発生分はカウントせず最終分でカウントするため、当然クレジットの分をカウントしないとトータルが合わなくなる。したがって、各産業の自主行動計画におけるCO原単位には電気事業連合会のクレジットが反映される。
  • また、この問題を法律的にどう扱うべきか、たとえば、温対法で排出原単位をどう扱うかべきかとの問題がある。これはトータルとして合うか否かとは別問題であり、環境省が説明した結果となる。法律上の問題、統計上の取り扱い、そしてそれに絡む自主行動計画の取り扱い、それぞれが別である。

2.委員の発言及び質疑

  • 代替フロン等3ガスについて、この分野は自己完結的に処理して頂いている印象があるが、ここでも国民の努力という要素が必要である。国民運動の議論はCOの分野に集中しているが、代替フロン等3ガスについても国民運動に結びつける必要があるということは忘れないでほしい。
  • 廃棄物処理について、循環型社会の基本計画の見直し年に当たっているので、目達計画との連動を考える必要がある。それぞれバラバラに取り組むのは適切ではない。
  • 自主行動計画について、経団連には2008年から2012年までの平均を目標として計画を立ててほしいと要求しているのであれば、目達計画についても2008年から2012年までにおいて、その進捗が管理出来るような計画にする必要がある。そのためには毎年のデータが速やかに入手できる必要がある。現在は速報値でも頑張って半年、確定値においては2~3年遅れとなっているが、それでは毎年の評価ができない。早急にデータを入手できるシステムを作ってほしい。中間報告に盛り込むことは困難だと思うが、しっかり検討して最終報告には盛り込んでほしい。

  • バイオ燃料について、ここで検討されているグレイン系についてウェル・トゥ・ホイールで見てどの程度のCO削減効果があるのか、あらかじめ評価されて実証事業に入っているのか。資料ではセルロース系は2030年頃に大幅な生産拡大と書かれているが、セルロース系はもう少し早いと思う。いまさらグレイン系を行うのはタイムフレーム的に遅いのではないか。
  • エタノールの利用を考えた場合、途上国と日本との関係をにらんだ国際戦略の中で取り組む必要があるが、その点、縦割り的な対応となっていないか。
  • CO原単位については、競争上フェアなのかについて説明してほしい。電力会社はどこのお金を当ててクレジットを購入したのか、規制部門もあり、公共政策上フェアであるかを考える必要がある。現在は独占電力会社に小数の弱小PPSが存在する状態だが、将来的に分割されていった場合、このような仕組みはなじまないのではないか。

  • フロン等3ガスについて、優等生のように見えるが、最初の見込みが過大であったと思う。経産省の資料1の最後に、生産量及び排出量が減っていると書かれているが、過去にどれだけ国内に蓄積されているのか、排出量はどれだけか、回収・破壊された分はどれだけか、それらのマス・フローが十分解明されていない。不明分が結構あると認識しており、これをはっきりさせていく必要がある。どこに取り組めば効果的に削減できるのかを明らかにする必要がある。
  • 3ガスの問題は、途上国、特に中国等での3ガスの問題と日本がどのようにかかわっていくのかが重要な点である。

  • CO原単位については、電気事業者のCO排出係数は、電気の消費に伴うCO排出量の計算に用いられることになるため、その値は消費者の排出量に影響することになる。家庭でもCO排出量の計算において電気のCO排出係数が用いられるが、ヒートポンプ等の高効率機器の導入を促すベースとなる数値となる。CO排出係数は、エネルギー選択、高効率機器の選択に影響し、結果として日本全体の排出量に影響を及ぼす結果となってきている。電気事業連合会としては、この電気の排出係数を低減する目標を掲げ、エネルギーセキュリティに配慮しつつ、京都メカニズムを補完的に活用し、トータルで目標達成を目指しているところである。なお、京都メカニズムは、地球規模でCOを削減する方策として国際的にも認められた制度であり、日本の目標達成計画にも活用できるものである。したがって、温対法上の電気事業者別排出係数に反映して「見える化」を図り、それを消費者のCO排出算定に広く活用して、省CO型エネルギー、省CO型機器を促していくことが、京都議定書の目標を達成するための効果ある方策になると考えている。

  • CO原単位について、これだけの努力をしているのに係数に反映させないとのロジックはどこにあるのか。法律を変えるなり解釈を変えるなりして、実態的に努力が報われる形にしてほしい。

  • 代替フロン等3ガスについて、取り組みが進んでいることについては評価するが、目標値が過大になっているのではないか。したがって、更なる削減ができるのではないか。対策の深掘をしながら目標を更に見直していくことが必要である。例えば、発泡剤や断熱材の処理をする段階でのHFC等の回収徹底とか、冷媒使用機材の冷媒充填の漏れ防止を徹底していけば、更なる削減は可能と考える。
  • 廃棄物対策については、廃棄物の減量化の視点が中心となっている。地球温暖化対策との視点がない。意識改革を行うことでまだまだ削減効果が出てくるのではないか。
  • CO原単位については、電気事業者が取得するクレジットの意味・評価について更に検討してほしい。

  • 国産バイオ燃料について、原料の拡大を進めなければならないが、この前宮城県で飼料米を生産すると不利になると聞いたが、法律的にそのようなことがないようにしてほしい。
  • 廃棄物について、資料では取り組みが進んでいないとあるが、これは2004年のデータを使用したためなのか、この点を確認したい。

  • 代替フロン等3ガスについて、目標設定の問題はあったと思うが、近年かなり厳しく掘り下げ、目標設定の引き下げ等を行い、成果も上がっている。製造過程での努力に合わせて、業務分野での目標を設けるのも一案ではないか。
  • 廃棄物について、発生抑制が重要かつ効果的な対策であると考えているが、補足の説明があれば御願いしたい。

  • 廃棄物について、廃棄物抑制が重要と考えているが、これは国民の生活と密接につながっており、国民運動との関係がどうなっているのか伺いたい。
  • CO原単位について、資料5の2頁で「二酸化炭素排出原単位を1%程度改善」とあるが、以前質問した時は2~3%との回答であったが、どの数値が正しいのか確認したい。

勝山経産省オゾン層保護等推進室長
  • 目標設定については、今般、産構審化学・バイオ部会において透明度高く議論を進めているところであり、ご期待に沿えるような目標設定ができるよう努力したい。
  • 同部会では、誰がどうやって努力すれば良いのかの議論になってきている。ライフサイクル的には製造、使用、廃棄と並ぶが、こういった分野において、誰にどうやって問うていけば効果的かについて、引き続き化学・バイオ部会等において議論していきたい。
環境省廃棄物・リサイクル対策部企画課長
  • 現在、循環基本計画の見直しを進めているが、3Rのうちリサイクルは進んでいるが、リデュースとリユースをもっと進める必要があると考えている。こういった流れの中、計画見直しにおいて発生抑制の取り組みも視野に入れており、またご指摘のあった地球温暖化との有機的なつながりをどのように図っていくかについても視野に入れながら見直しを行っていきたい。昨年改正した容器包装リサイクル法や今国会で大改正した食品リサイクル法でも、発生抑制を徹底させている点では共通である。
  • 国民運動として取り組んでいくとの点については、その通りと考えているが、例えば一般廃棄物処理については有料化ガイドラインをこの6月末に提示しており、国民運動的なものに加えて、有料化等のスキームを使って発生抑制の対策に取り組んでいきたい。
  • 産廃事業者との関係においても、様々な研修会等の場を通じて一層対応して頂くよう普及啓蒙を図っていきたい。
  • 廃棄物の取り組みが進んでいないと見えるのは2004年のデータを用いているからな のかとの質問があったが、まだ2005年のデータは出ていないが、それほど数値は変わらないと思われる。客観的にこのような数字であるということを念頭において、排出抑制を含め徹底した取り組みを進めたいと考えている。
農水省大臣官房環境政策課長
  • バイオ燃料に関して、グレイン系の今の事業のCO削減効果についてはご指摘の内容を測った上で事業を進めている。ただし、使う技術をどう組み合わせるかによっていろいろと変わるので、野心的に効率の良いものを使っていこうと思っている。
  • 農作物を作る段階において、食べることを前提としないので、農薬の使い方などが異なることで、新しいことができると期待している。
  • セルロース系については、現在も大阪の事例などを行っており、来年、再来年で実用的なものは進めていきたいと思っているが、実用的かつ大量に作ることを考えると、日本の国土において、グレイン系でも課題があることが分かってきた。技術があることと、大量のエタノールを作ることとの間には、解決しなければならないことがあると考えている。
  • 国際戦略や各省との連携については、今回は農林省から説明したが、農林省の事業遂行には資源エネルギー庁の流通部門の協力なしでは全く進まず、常に協力して進めているところである。バイオマスについては、バイオマス日本総合戦略における関係省庁会議もあり、間に落ちないように進めていきたい。
  • 宮城での飼料米の生産について質問があったが、基本的に国の制度でご指摘のようなことはないと認識している。食用の米より安くなるのは仕方がないと思うが、飼料米を作ることが不利になることはない。一点、地域で産地作り交付金という支援策を講じている場合に、地域毎に考えか方が異なる場合はあるかもしれない。もし問題が起こっているようであればご相談頂きたい。
後藤資エ庁電力基盤整備課長
  • 料金の問題について、クレジットを取得して償却すると税制上、あるいは企業会計基準の取り扱いでは損金算入されて最終的には原価回収されることになる。この手続きに差があるわけではなく、有利・不利という問題は発生しない。
  • クレジットの比率の違いについては、2005年に目達計画を作ったときの需要の伸びと2006年のフォローアップで見直した需要の伸びは異なっており、当然需要の伸びの違いによって出てくる排出量の量も変わってくる。結果として電気事業者の方でクレジットを積み増して目標達成を図っているとの流れになっており、新しい数値の方がより正確になっているということである。
小川環境省地球温暖化対策課長
  • CO排出係数に関して、法律、統計、自主行動それぞれの趣旨において整理されており、それぞれの考え方に従っていくことになる。電気の排出係数については、温対法の公表制度では、一般の排出者をどう扱うかの問題もあり、全体の整合性をとって整理する必要がある。
  • 目達計画全体の指標化について、2008年から2012年に進行管理できるようにとのご指摘があったが、今後の課題としたい。
環境省フロン等対策推進室長
  • フロンの回収率の状況についてご質問を頂いたが、実際の回収率は都道府県の数値を集計しないと分からないものの、破壊量のデータについては17年と18年で比較すると14%増加している状況である。

3.その他の論点(国内排出量取引制度、環境税)

(1)国内排出量取引制度

資料6に沿って、経産省及び環境省から説明があった。

  • 3つの視点を申し上げたい。第一に、排出量取引制度の導入を拒否し続けることは出来ない時期に来ており、具体的にどのように制度設計するのかの議論を始めなければならないこと。第二に、EUのパイロットケースの経験から、排出量取引は望ましくないとの指摘があるが、この点につき回答したいこと。第三としては、具体的な制度設計としてポリシー・ミックス的な観点から議論をしなければならないこと。
  • 第一の点について、温暖化は加速的なため、世界的に温暖化対策を強化し加速させる流れが出てきていると思われる。今回のG8、資料にもあるEUの調査、自分も2001年に排出量取引を最初に導入した英国に調査に行ったが、ヨーロッパで導入されたこのような制度が、米国でも東部、西部の主要な経済力を持つ州において具体的な取り組みになってきている。日本の中でも東京都が頑張ろうと言っている。排出量取引制度を選択した一番大きな理由は、排出削減をしなければならいないこと、これを受け入れられるかどうかである。大規模排出事業者はどの国でも少数あるが、そのような産業、発電部門に対して、単なる規制をするよりも、取引の自由さ、生産量を増やすことも含めた対応もできるという意味で柔軟性のある選択として実施しているのが現実である。日本においても、このような対策を行っていかなければ、事業者にとっても望ましくなく、今後の国際的な日本の役割においても問題を残すと思う。2013年以降の枠組み交渉において、日本としてきちんとした準備ができるかが重要となる。日本企業の蒼々たるところはEUの排出量取引制度に参加している。そうした企業の経験を国内に持ち込んで制度設計の議論を始めてほしい。
  • 第二として、EUのケースはあまり削減効果が上がらなかったとの指摘があるが、目標をどのレベルに置くかによって効果は決まる。今回のパイロットケースは、導入ということもあり、緩い目標であった。そういう中で効果が十分でなかったのは当たり前である。十分な削減効果を望むのであれば、それに応じた制度目標を設ければ良い。実際の導入において初期割当をどうすべきかが大きな論点として指摘されているが、確かに容易ではないと思うが、だからこそそうした議論を今後しなければいけない。日本においては算定・報告・公表制度が今年から始まるが、経産省では94年から詳細なデータを事業所から入手しており、それを活用してほしい。その他批判があるが、要すればキャップが嫌だという指摘に聞こえる。そのような指摘は乗り越えていかなければならない。
  • 第三として、ポリシー・ミックスの問題については、他の委員からもご指摘があると思うので譲りたい。

  • 資料7-2-1について、第1約束期間に目標を達成しないとどういう問題が生じるかについてはスライド2に書かれた通りである。温室効果ガス排出量について2005年度3.8%増という数字が出ているが、目達計画の達成が不確実な情勢になってきている。産業部門のエネ起CO排出量8.6%減、業務部門については15%増という状況において、横断的な施策が必要となっている。
  • 環境政策の実効性・効果性・合理性の観点から、ポテンシャル削減策が基本となってくる。排出量取引制度がそのための一つの制度となってくるが、我が国では自主参加型排出量取引が環境省において細々と行われているが、世界的には義務的な排出量取引が主流である。
  • EUでは、この排出量取引が費用対効果の高い制度と認識されている。まだ第1フェーズの途中段階だが、2005年度のCO排出量は配分された排出総量を下回ったという点では、相当な効果があったと言える。
  • 排出量取引についてはいくつかの批判があるが、その点について申し上げたい。第一として、排出量取引といった経済的手法を導入する必要性がどこにあるのかという指摘。第二として、これが統制経済ではないかとの指摘。第三として、初期割当をどうするかとの指摘。第四として、下流割方式の下でのモリタリング・検証コストがかかるのではないかという指摘。
  • 第一の指摘については、政策の費用効果性の観点から必要と言える。また、アナウンスメント効果の観点からも重要である。排出量取引制度の利点としては、一つには目標達成の確実性、二つ目は金融市場の俊敏性を使えること、これにより経済社会全体での達成への動機づけが生まれる点が重要である、三つ目として規制的措置にはない柔軟性があるということ。我が国において排出量取引制度を導入する必要性については、義務的排出量取引制度が欧州や米国で導入されることによって、排出量取引に関する世界市場への我が国企業の参加が遅れるとの不利益が予想される。特に、費用効果性のある取引を喪失する、クリーンテクノロジー開発へのインセンティブが失われるとの問題がある。我が国の国際競争力を維持する観点も重要である。
  • 統制経済や経営の不安定につながるとの批判に対しては、EUではそのような批判はなく、外国からの排出枠やCER等のクレジットを購入できればそのような問題は起こらない。新たな生産費用が追加されたのと同等と考えればいい。価格が上がることの懸念があるのであれば、セーフティ・バブルを準備するとの選択肢もある。
  • 初期割当について、過去の排出量・販売量を基礎とした無償割当が既得権保護になるとの批判があるが、過去の排出量・販売量ではなく、自らの宣言や合意に基づくこと、新規参入者に対してはあらかじめ排出枠のリザーブ等をして配慮すること、可能な限りベンチマーキングを取り入れる等の考慮をすることで対処できる。個人的な意見としては、自主行動計画のある業界については、自主行動計画の目標を基礎とすることが考えられ、それ以外の業界については、ベンチマーキング方式か、修正されたグランドファザリング方式を使うのが適切であると考えている。更に、初期割当の際に、国際競争力に配慮することも可能である。
  • モニタリングコスト・検証コストの批判については、申請前に第三者の検証人に検証させる、その後は自己申告を基本として、サンプリングで監査することにより、低減化することは可能である。
  • 岡・山口論文について、18頁にフルコストの問題が出てくるが、初期配分がフルコスト価格付けの影響を通じて生産量を増加させる可能性があると指摘しているが、それが限界削減費用の最小化をゆがめるということになるのかは、必ずしも証明できていないと思う。利潤最大化を前提とした企業行動をこの論文では否定的に捉えているが、そうであればそれ以外の企業行動を描写するモデルを提示する必要あると思う。そうでないと、どのような原則で利潤率が決定され、あるいはCO削減量が決定するかが分からなくなる。二つ目として、そもそもこのフルコストの価格付けモデルが標準的な完全競争モデルと比べて優れているのかという点が必ずしも論証されていない。

  • 世界の粗鋼生産量は着実に伸びている。特に中国の伸びが著しい。そのような中でエネルギー原単位の各国比較を見ると、同じ鉄を1トン作るのに日本が100のエネルギーを使用するとした場合、EUは110、中国・米国は120である。中国のエネルギー原単位が日本の鉄鋼業並になると、日本のCO排出量の12%相当が削減される。
  • 資料(3)において、世界の主要鉄鋼メーカーを生産量で並べてCOの排出制約があるか無いかを色分けしている。アルセロール・ミッタルがダントツであるが、グローバルに製鉄所を持っているため、EU内での生産量は3分の1であり、したがって排出制約があるのは3分の1である。しかしながら、EU内で生産調整は可能であり、実質的に排出削減義務を負っているのは日本だけである。
  • キャップ&トレードを日本に導入した場合の日本鉄鋼業への影響については、日本は世界最高のエネルギー効率を有しているが、自主行動計画達成のため、2800万トンの排出権を購入している。米国、韓国、中国は、京都議定書による削減義務はなく、対策の負担は負っていない。中国の鉄鋼業は、世界全体の3分の1の生産規模を有しており、更に生産能力を拡大中である。EUの鉄鋼業については、国内排出量取引制度の適用を受けているが、極めて緩いキャップにより排出権を売却して相当大きな利益を得ている。エネルギー効率の高い日本鉄鋼業にキャップ&トレード制度が導入されると、コストアップ、研究開発の遅れ等により、国際競争力の喪失、効率の悪い中国等への生産シフトにつながることになる。国益の観点から問題である。
  • 国際鉄鋼協会では、今年5月7日、ポリシー・ステイトメントを公表しており、2つのことを言っている。一つは鉄鋼業界のコミットメントとして、既存技術を普及していこうということ、技術革新は徹底的に追求していこうということ、グローバルなセクトラル・アプローチを追求していこうということ、そのようなことを公表している。2つ目として、同時に政府への要請も挙げており、そこでは、キャップ&トレード制度を、CO排出面でもっとも効率の良い製鉄企業が発展し最も効率の悪い企業が衰退するような政策に置き換えるべきと述べている。欧米の業界も入ってこのような要請を提示している。
  • 今年のサミットの前に日本EUビジネス・ダイアローグ・ラウンド・テーブルが開催されたが、排出権取引については、キャップ&トレード型の排出権取引制度については、公正かつ公平なキャップを設定することは困難である、また、企業にとっては事業活動を厳しく統制する仕組みであり、長期的視野での技術開発や設備投資が損なわれる恐れがある、更に、生産拠点の途上国への移転を加速させることにもつながり、地球規模での温室効果ガス排出量を増大させる炭素リンケージの危険性もある、従って、キャップ&トレード型排出権取引制度を国際的枠組みとして位置づけることは不適切であると結論付けて、EU側と全く同意見で提言書を提出した。
  • EUへの調査報告書について、金融や仲介者などが主たる市場参加者であり、制度の対象となっている事業者間の取引は稀であるという点は特に指摘しておきたい。
  • まとめとして、一点目として、過去の省エネ努力の成果など、エネルギー効率を反映していない国別キャップの下では、各産業・企業に対するキャップも不公平となる。二点目として、炭素リンケージの可能性が出てくる。三点目として、設備投資や技術革新を停滞させ、成長戦略の障害となる。四点目として、これが一番大きいと思うが、公平なキャップ設定は困難である。五点目として、官僚統制的となる。六点目として、消費者の意識や商品・サービス選択等の行動の変化につながるような効果は期待できない。これらの理由から、排出量取引制度は問題が多く、この制度を我が国にそのまま持ち込んでくるのは不適切であり、キャップ&トレードには反対である。

  • 排出権取引について様々なコメントがあったが、なぜいまの自主的手法でダメなのか分からない。世界において全ての産業を含めて国全体でキャップ&トレードを行っているのはEUだけである。我が国の自主的手法を、このような手法でもできるということを世界に示していくべきである。
  • 排出権取引の本質は総量・個別規制である。統制経済ではないとの意見があったが、今年の4月のFinancial TimesにEUの一員であるチェコの現職の大統領が「危険なのは温暖化ではなく自由だ」との投稿をしている。共産主義下にあった国の元首の言葉なのでそれなりの重みがある。
  • 効率性について、キャップ&トレードが効率的と言うのであれば、日本の60程度ある対策の効率性になぜ触れないのか。産業部門のキャップ&トレードというが、他の部門の対策もある中、産業部門の対策とそれ以外の部門の対策との効率性比較の議論が当然あって然るべきだが、そのような議論は一度も聞いていない。シンクの問題、京都メカニズムを含め、効率性の観点から全体としてどう扱うべきかを議論すべき。
  • 資料の4頁目、5頁目は、EUの例だが、部門別および発電部門における各種対策コストと削減効果の関係を示しており、できるだけ安いところから優先的に対策を進めようとしている。このような考え方をとらずに、ただ産業部門にキャップ&トレードを導入すれば効率的だというのは視野の狭い議論ではないか。
  • 6頁目は理論面から排出権取引の効率性を検討したものだが、完全競争であれば、オークションでもグランドファザリングでも効率的になるが、現実には完全競争ではない。ヨーロッパでは最近、この効率性に疑問を持った論文が沢山でている。その中でクールノーモデルを使って寡占市場を検証すると、唯一効率的になるのは、100%オークションか生産量に依存しない1回限りの初期配分の場合のみである。しかし、EUは生産量に依存しており、効率的ではない。さらに我々の研究では企業行動がフルコスト価格付け原理の場合には(特に排出権取引対象業種はこうした原理で動いていると思われるが)、排出権価格分が製品に転嫁されず、省エネと生産減を含めた限界コストが均等化せず、従って効率的ではない。
  • 環境効果について、キャップ&トレードを入れないと目標を達成できないとの論理が分からない。目標達成とキャップ&トレードは別である。自主的なものではダメで法律で縛るべきと主張するのであれば話は通じるが、そうであっても例えば日本の自主行動計画は相応の効果が出ており、罰金がなければ実施できないという主張は事実をもって覆されている。日本企業は海外からクレジットを購入しているが、このような行動も短期の利潤極大では説明できない。産業部門対策をもっと強化すべきか否かの議論は別の話である。もし強化するのであれば、業務部門など他部門との関係でどうしたらよいか、国際競争力の観点からどうしたらよいかを検討する必要がある。なお、ヨーロッパの政策のほぼ全てには国際競争力に配慮する旨が書かれている。また、産業界が自主的に強化すると言った場合はどうするのか。
  • 初期配分が可能かという点については、政府は納得感のある配分ができるかが問題となる。初期配分は財産権の配分であり、直接規制よりも困難である。直接規制と比べるのではなくて自主的規制と比べるべきである。ヨーロッパでこれが出来たのは、実績排出量ベースでの配分であり、排出権は恒久的財産ではなかったからである。一番大事なのは、ヨーロッパでは、国全体の排出量の中で産業部門への割り当てをどうするか、産業部門全体の割り当ての下で各業種の伸び率をどうするかなどを、PRIMESというみんなが納得するモデルを使って行っている。日本でそのようなみんなが納得するモデルを用いて行うことができるか。要するに、モデルに対する絶対的な信頼感がなければできない。米国では、ある業種については出来ても、全経済ではできない。
  • 効率性も高くない、環境効果も同じ、衡平性の観点からは初期配分が困難であるのであれば、自主行動計画が納得出来るものであって、その目標が達成できる限り、排出権取引制度の導入は必要ないと考える。

  • 排出量取引は、英国がロンドン市場で始め、カーボンエコノミーに金融市場が入り投機対象となった。その後、他のヨーロッパに広がった。今後は、企業格付けにもCO削減が使われる。
  • かつて、ISO9000の規格に対して、日本はJISがあるのでいいではないかと考えたが、実際にはISO9000をクリアしていないという理由で日本企業は大いに損をした経験がある。グローバライゼーションの世界で、カーボンエコノミーの中で日本が生き残るとすればどうすれば良いかを考えるべきである。自主行動計画は高く評価するが、自主行動計画をカーボンエコノミーの中で格付けを評価する論理を提示できるか、また排出量取引との違いを説明出来るかがポイント。
  • 世界はカーボンエコノミーに向かっており、理論武装して本当に真摯に議論しないと、アメリカや欧米にふんだくられることになる。そうならないよう本会合でも検討すべき。

  • なぜ排出量取引が必要なのか。それは6%の目標達成が厳しい状況にあるからである。現時点で対策が打ち出されているわけでもない。また、2050年半減という目標を実現するのは容易なことではない。実効性のある対策を今の段階で打ち出す必要がある。このように考えると、ある程度実効性が確認されている炭素税、排出量取引の導入につながるのではないか。温暖化対策に一本の柱を通すのであれば、CO排出をコストとして社会の中に位置づけるため、環境税と排出量取引の早期導入が欠かせない。排出量取引は市場原理を活用して最小コストで温室効果ガスを削減できる、あるいは経済合理的な削減ができることを考えれば、一部で言われている統制経済につながることもないと言える。
  • 排出量取引が企業の文化や考え方を変えて、自社のCO排出量を認識してCOを排出することはお金がかかるということを認識させることもできる。また算定・報告・公表制度が導入されているので、導入コストも低く抑えられると考えられる。
  • なぜ排出量取引が必要かの一つに、この制度が世界の流れになっているということがある。EUでは本格的に実施されている。米国ではシカゴ取引所で民間企業が自主的に参加する市場が動いており、州レベルでも導入されている。また、オーストラリアでも一部の州で導入しているなど、各国で排出量取引の導入に関心が高まっている。一方で、日本では東京都が導入の方針を最近明らかにした。このような状況の中、日本だけが排出量取引制度で取り残されていいのかという点について、真剣に考える必要がある。
  • では、どのような方式を取るべきかについては、EU-ETSのような基本的なキャップ&トレード方式、グランドファザリング、下流割当方式、それから直接排出で行うのが良いのではないか。排出量取引がカバーされない部門、例えば業務部門・家庭部門等には環境税等を組み合わせるのが適当ではないか。
  • 排出量取引導入には気になる点はある。例えば、価格が乱高下した、トレーディングに慣れている金融機関がぼろ儲けしたという批判があるが、温室効果ガスを出している企業が制度に沿って排出削減を行っていけばそのような問題はなくなっていくのではないかと思う。排出量取引制度は実態のないマネーゲームであるとの批判を避けるため、必要な規制は行うべきと考える。また、日本の国際競争力が損なわれないように配慮することは当然である。
  • 政府と産業界が排出量取引制度を導入すると決めた場合、国民も一人一日1kg削減しなければならないと思い、国民運動に弾みがつくはず。

(2)環境税

資料8にそって、環境省から説明があった。

4.委員の発言及び質疑

  • EUでの数年間の経験があり、世界の趨勢だから日本で導入すべきというのは納得できない。EU-ETSの特徴は、(1)試行的段階であること、(2)EUという超国家組織は、もともと単一の共通市場の実現のための組織であり、その権限から事実上、環境税の選択はない中で、EUの権限拡張に合致し導入された側面がある。酸性雨対策の蓄積もあり、EUの排出量取引がどういう制度であるか、実績をじっくり分析すべきである。市場化することが良いか、慎重に考えるべき。

  • EUのキャップ&トレードは産業界に対して行われているが、そのEUの産業界が反対している。その理由は、この制度がCO排出削減にとって実効ある効果が出ていない、また、甘い排出枠の設定の中で取引内容が金融取引となっているためである。効率の良い会社をより伸ばし、効率の悪い会社は淘汰するとの基本原則に反している。ヨーロッパの鉄鋼会社を見てみると、ヨーロッパ内でCOを排出する生産工程を止めると言っているところもあるが、結果として他の国でやることになりCO削減に何ら影響はない。
  • 全ての国が参加した中で、しっかりとした国際ルールに基づくのであれば、選択肢にはなるが、現在の非常に少ない参加国の中で、日本のように非常にエネルギー効率のいい国でキャップ&トレードを行うことは国益にはならない。少なくとも第一約束期間において、キャップ&トレードを行うことは全く意味がない。

  • 日本の効率は圧倒的に良く、効率の悪いEUや米国などが規制や国内排出量取引制度に取り組むのは当たり前である。
  • 政府を挙げて、業務・家庭部門の対策を強化しようとしているが、国内排出量取引制度は、直接的ではないにせよ業務・家庭部門で機能するのか疑問である。また、排出枠の割当について、政府の裁量によって決められる場合、大きな政府になる。また、炭素リンケージの問題もある。
  • このよう問題は、ポスト京都において、少なくとも全ての主要排出国が入って成熟した市場ができるなどの諸種の条件が揃って始めて選択肢の一つとして考えられる。次期枠組みがどうなるか、慎重に見極める必要がある。

  • 6%を決めた時点で国益を損なったと考えるが、地球温暖化の問題は長期的な問題であり、ここで排出量取引や税を入れて上手くいかなくても困るので、もう少し時間をかけて議論を行うべき。また国益を損なうことにならないようにしてほしい。
  • 排出量取引はどうしても大企業にフォーカスが当たってしまう。アナウンスメント効果は指摘されるが、一般国民にとって、大企業に任せておけばいいという状況になることを一番恐れている。自分の専門分野は業務・民生であるが、必ずそのようなリアクションになるのではないかと思うので、是非ともそのようにならないよう、幅広いところで議論を行うべきである。

  • 国際的な流れをみて対応する必要がある。国際的なルール作りは最終的に欧米が握ってしまう。ポスト京都に向けて準備しておくべきである。国際的に再び乾いたタオルを絞ることにならないようにすべき。
  • 環境税については、私は世界のいろいろなところで議論したが、かなり共通的に出てくるのは、これだけエネルギー価格が上がった状況において、環境税を課したから使用が減るということを過大評価すべきでないということ。問題は財源の使途であり、その点を集中的に検討すべきである。日本のエネルギー課税は国際的にも高い水準にある。そこで新たに環境税を課すのではなく、既存の道路財源やその他の財源をどのように使うかを検討することが、国際競争上の観点から言っても当たり前である。
  • ポスト京都に向けて、いろんな選択肢を議論し、交渉の過程で必要な時に日本から提案できるようにしておくことが重要である。“cap & trade”や“歴史的実績の反映基準”等も排除しないで検討しておくべきである。

  • 事務局資料6-1で記載されていたメリット、デメリットについて補足したい。メリットの三点目は、言い換えれば、同じコストで削減できる総量が増えるということを意味する。CO排出に伴うコストを内部化する手法であるという点は明確に認識すべきである。
  • 山口委員のプレゼンで指摘する現行予定されている対策の限界削減費用と削減可能量の比較の重要性は全く同感である。特に排出量制度を導入するに当たって比較するとの観点から、事業者間あるいはセクター間で費用にどの程度バラツキがあるかが分からないと費用対効果も分からない。大規模な排出セクターに限っても良いので比較をしてほしい。
  • 2050年半減との大きな道筋が示されたが、IPCCの報告書の中でも、ボランタリー・アグリーメントが少数ではあるが費用対効果の高い方策として言及されている。他方で、5月のIPCCの意見交換では、大幅な削減にはあらゆる可能な政策オプションが検討されなければならないとの指摘もあった。そういう意味では、EUの排出量取引制度を国内で実施していくには時間がかかることを考えれば、目達計画を見直して終わりではなく、上手くいかなかった場合のオプションの作り込みもいまから始めておいた方が良い。

  • 企業経営の実態感覚を知って頂きたい。EU-ETSのような制度を導入することが経営者の意識を変えるとの話があったが、日本の場合、それよりも高次元の自主行動計画を進めており、CO排出量を日常的に把握しているのは勿論、どうすれば自主行動計画を達成できるか躍起になって努力しているところである。日本の省エネは大変な努力と費用をつぎ込んでおり、やり尽くしている。これから更に省エネを進めるには莫大なコストがかかるという意味では、経営においてCO削減は最重要課題として取り組んでいる。

  • 自主行動計画を行っていればいいという意見もあるが、日本の産業界はグローバルを意識して商売を行っており、世界がどう思うかを念頭において考えた方が良い。自主的に出来るのであれば、なぜ排出権が悪いのかという議論は出てくると予想される。不透明なロジックでは対抗できない。

  • 国内排出量取引であれ、環境税であれ、環境省が及び腰であると思う。今日の議事においてもその他の論点となっており、このような大事なことはちょっとした議論で行うものではない。もう少し早く議論を行うべきであった。環境省のリーダーシップが足りない。
  • 公平な配分ができないとの指摘があるが、水など他の環境規制で公平な配分の経験がある。そのような例を参考にしてほしい。

  • EU-ETSと日本の自主行動計画とでは部門が大体マッチしている。どちらが効果があったのか、明確に評価してもらいたい。排出権取引制度の結論が書かれているが、日本の産業界としては、このような制度を京都議定書の枠内で行ったら必ず失敗するということを言い続けている。
  • これまで合同会合で議論をしてきて、比較的上手く言っている部門とそうでない部門について、ある程度コンセンサスが出来てきているのではないか。業務・家庭部門対策が重要との認識が出来てきて、国民運動に発展させるべきとの議論に踏み込んできた。これまでは産業界だけ叩いていればいいとの議論が緩んで、進歩してきたと思っていたが、またエネ転・産業部門だけ行えばいいという議論に舞い戻っている。

  • 地球温暖化対策という地球危機のレベルの話を経済発展の維持というレベルの話と同列に議論されること自体おかしいと思う。レベルを再確認してもらいたい。
  • 6%削減は大前提であり、これを今更言っても仕方がない。
  • 自主行動計画と国民運動で6%削減は達成できない。確実に削減出来る制度設計が必要である。
  • 国内排出量取引と自主行動計画のメリット、デメリットを再整理してはどうか。国際競争力に影響があるとの指摘があるが、自主行動計画を厳格に行っていけば、同じく国際競争力への影響は出てくるはず。
  • 初期割当の公平性について指摘されているが、より複雑な水の割当の事例もあり比較的に簡単にできるのではないか。
  • 家庭・業務部門の排出量が伸びているが、その責任の一端として、これを推し進めている産業部門の責任も認識すべきである。

  • 公開の場でこのような議論を初めて行ったことに意義がある。現実的にものを考えるべきである。抽象的な議論でなく、第一約束期間の5年間にこの排出量取引制度を導入すべきなのか検討すべき。具体的にどのように導入するのか。自主行動計画の深掘・拡大や業務・家庭対策の強化を行おうとしている中で、今導入する方法論があれば示して欲しい。業務・家庭対策として有効なのか、現実的に考えなければならない。
  • ポスト京都の枠組みを作る際にこの制度をどうするかも検討すべき。ポスト京都の枠組みでは、アメリカ、インド、中国を入れることが重要。理論と現実のギャップがある。
  • この議論はどこでどの程度詰めて、いつ頃までに決めるのか。これは政府が決めなければならない。

  • 国内排出量取引や環境税が議論に乗ったという点に意義がある。経済学的にはコストを製品価格に転換できることを前提として市場を通じて全体が調和することを予定している。産業界が製品価格にオンできるのかによって、業務や民生の動きも変わってくる。産業部門だけで済む話ではないという認識を持つべき。価格にコストをオンできるか否かは、市場の状態、産業の競争力によって異なってくる。いかに産業間で公平に行う場を作るか、国際間で公平な場を作るかが大きな課題である。キャップ&トレードは規制になるというが、自主行動計画はある意味自主的にキャップをかけている状態である。コストを減らす方策として排出権取引を行うのであれば、行えばいい。海外からの排出権購入はトレードであり、それと同じことを行うのであれば、第二約束期間で米国、中国、インドを入れて総量規制をやらないと世界的に不公平になる。日本はそのような主張を行うべきである。
  • 世界全体が排出権売買に動いていることに注視しておかないと、日本は乗り遅れることになる。しっかり議論をして、第二約束期間の枠組み議論において、日本は提案していくべきである。排出権取引を市場に任せると不安になるのであれば、政府が介入し、最もコストが安くなるメカニズムを提案していかなければならない。この場でもいいし、他の政府の場でもいいので、徹底的に検討していくべきである。

  • 中長期的にどのようなCO削減策を講じていくかとの観点だと思うが、その場合、短期的なキャップの設定では運用だけ、金融取引でという傾向になるので、長期的な技術開発等にインセンティブが働かなくなる。革新的な技術開発をいかに進めるべきかが重要であり、その意味で高効率ヒートポンプ、ハイブリットな自動車などの革新的な方策を取っていくことが大事であり、それが国際的にも通用するものである。
  • 国際的問題は重要であり、日本のエネルギーセキュリティ政策上、また環境政策上、中国・インドをいかに巻き込むかが重要なのであって、米・欧に同調するのでなく、そこと組んでいかに国際的な提案をしていくかが求められる。そのためにも省エネ技術がものをいう。
  • 業務用・民生用について、徹底的な省エネを行うことが重要であり、徹底的な電化を図ることが必要であり、そのためには徹底的に原子力を推進していくことが一番有効であることは論を待たない。

  • この議論が開始されたことに意義があると考えており、是非続けてほしい。
  • 山口委員よりなぜ自主行動計画ではダメかとの指摘があったが、現在の自主行動計画は8.6%減になっておらず、そもそも目達計画を達成できるとは思えないからである。また、2050年50%削減をベースに考える必要がある。
  • 排出量取引だけで良いわけではない。経産省が現在考えている国内CDMとか、税とかも検討する必要がある。産業・業務といった大きなところだけで良いのではなく、全ての分野で行うべき。
  • 炭素リンケージや国際競争力の問題があるが、自主行動計画でも同様の問題は起きうる。排出量取引の問題ではない。
  • 排出量取引で重要なのはlearning by doing。すぐに始めようとしても慣れるまで時間がかかる。したがって、出来るだけ早く始めた方が良い。個人的には、セクトラル・アプローチに賛成である。
  • 短期のキャップ設定が問題であるという指摘があったが、これは2012年以降の将来枠組みがはっきりしないことが問題なのであって、排出量取引の問題ではない。長期的に排出量取引を行うことが明らかになれば制度的なインセンティブは働くはず。
  • 初期配分については、自主行動計画をベースとして行うこともありうる。

  • 排出量取引も環境税も強力な武器であり、やり方によってはCO排出量を激減させることは可能である。いずれ具体的検討を行う必要がある。しかし、第一約束期間でこの劇薬を入れるべきかについては時期尚早と考える。国民的に広範な納得を得ていない施策を導入してもなかなか成功しない。世論を見ていると、京都議定書の枠組みで中国やインドが入っていないという問題がある限り、日本が独自に劇薬を入れることに広く国民の納得は得られないと思う。中長期的課題として検討すべきと思うが、短期的課題ではないと思う。

  • 排出総量を大幅に削減していくことが必要で、何が良い方法かという議論をしている方向性は共有されていると考える。したがって、排出権取引だけではなく様々な政策の比較検討が必要である。政策の組み合わせ、すなわちポリシー・ミックスが一つの手段であるが、そのためには一つの評価基準が必要となる。効率性や環境効果も重要な基準であるが、国際的に説得性をもって、国内的にも合意が得られることが大事である。
  • EU-ETSは制度途上であり、評価のベンチマークとしては正確ではないと思う。理論上の利点が現在のEU-ETSでは実現していないからダメというのではなく、現状より良くなるなら良いという議論もできる。企業の行動モデルをどう設定するかが、評価する上で重要。
  • 炭素市場をどう評価するかが大きな問題であり、確かに炭素市場はやっかいな問題はあるが、だからと言って市場と付き合わないということは得策ではなく、むしろ炭素市場と付き合ってどうすれば上手くいくかを考えるべき。

  • 経団連としてEU調査に参加したが、理論的にはCO削減効果があるとするキャップ&トレードについて、いまのところ理論と現実は異なるということが分かった。排出枠の過剰割当が目立っており、実質的な削減にはつながっていなかった。マーケットについては、金融関係の仲介が入っており、余剰枠のために価格が乱高下してしまった。長期的な投資・技術開発につながっているかも議論がある。また、訴訟も多く発生している。企業だけでなく、国もEUを提訴している例もある。したがって、今までのところでは機能しているとは思えない。
  • 米国でも、USキャップなどが議論されていると聞いているが、米国の産業界の多くはキャップ&トレードに反対している。USキャップ推進派はまだ一部である。米国でSOxの削減が排出量取引で有効であったという話があるが、日本では排出量取引によらず、もっと早くにはるかに低いレベルに下げた。
  • 技術開発、自主努力、税控除を組み合わせていくことが解決につながる。キャップそのものを規制として行うのでなく、自分たちで最大限できるところを決めていきたい。

  • 排出量取引については、環境省の自主参加型の排出量取引をもう少し拡充するとか、東京都の取組の知見を集めるなど、そのようなところから行っていってはどうか。
  • 税について、石油・石炭税を見直すべき。日本は僅か180の事業所で全体の約半分のCOを排出している。産業部門だけを見れば効率的とは言えない。その上、石炭火力は1990年から約2.5倍の1億2千トンであり、天然ガスと価格差が同じくなるよう石炭従価税を課すべきである。そうすれば約1.5兆円の増税となるが、この点は法人減税等で税収中立にする。思い切った政策をしてほしい。抽象論の環境税ではなくて、具体的にやれるところをやってほしい。
  • 日本は自然エネルギーで市場が崩落している状況。太陽光ですら、昨年純減している。きちんと普及できる温暖化対策としての自然エネルギー政策に取り組んでほしい。この点、東京都が近々新しい制度を発表するようなので、これをモデル事業として国レベルで進めていくべき。

  • 目標達成計画の中の包括的施策のところで、ポリシー・ミックスの活用という項目がある。一つ一つのパーツを取り出して議論するとどうしても欠点が見えてくる。個々の政策をどうやって上手く組み合わせるかが重要。目標達成計画では、トータルで考えるべきことが述べられている点を忘れないでほしい。
  • 自主行動計画は効果があったと考えるが、そのことについてもう少しきちっと整理する必要がある。もしいまの自主行動計画が本当に自主的に合理的に総量削減に直結する形で設定されているのであれば、参加業界はキャップ&トレードをタダでやってあげていることになる。まじめにやる者が怠け者の分をかぶっていることになる。この点について、排出量取引と比較してメリット、デメリットがどのように異なるのかも含め、きちっと整理してほしい。最終報告書を作るまでには議論すべき。

  • 自主行動計画でなぜいけないのかとの指摘に対しては、自主行動計画の目標が納得できるものであって、達成される限りという前提が重要である。自主行動計画の目標が納得できるものか否かについて、十分な情報が提示されるべきだが、業界全体でしか議論されず、各事業者については明らかにならず、事業所についてはましてや不明である。この排出量取引制度は事業所単位で行うものであり、全く違う仕組みである。この問題は、長期的な視点で、2050年に向けた政策的な議論を行っているのであり、政府も企業の責任者もそのような観点から賢明な選択を行うべき。
  • ポリシー・ミックスの一部として、国の算定・報告・公表制度に加えて、各事業所に対して東京都で取り組んでいるようなことを国としてもやっていくこと、自主行動計画の協定化を図っていくべきことなどを議論していくべき。

  • カーボンエコノミー確立の必要性を、そのまま排出権取引の必要性に読み替えようとするのは短絡的過ぎる。脱炭素を進めていかなければならないが、環境のような複雑系に固定的な縛りを持ち込むこと自体が自己矛盾であると考える。排出権取引はどうしても初期配分という問題が避けて通れない。排出権取引の柔軟性は動物園の檻の中での柔軟性であり、檻の中で動けるだけであり、発展的社会を固定的な檻に閉じ込めようとすれば、いずれ身動きが取れなくなる。現実にEUでも紛争が続発している。市場性と言うが、産業活動に結びつかない金融制度を作ってもモラルの低下を招くだけであり、実際に金融ブローカーしか入っていないような排出権マーケットしかできていないのが、これを実証しているのではないか。
  • ヨーロッパは制度作りが上手であり、制度の中にヨーロッパの国益や商略をふんだんに盛り込み、その制度を世界に広めていくところにヨーロッパの国益がある。
    日本は制度作りは下手だが実地に効果を上げている。GDPあたりCO排出率は日本が世界で最も低い。この日本の得意技を広めれば、世界の脱炭素に大きく貢献出来る。日本の国益につながり、産業も元気の出るような政策を進めていくことを御願いしたい。
  • 環境税の問題は、何度も議論されているが、エネルギー価格がこれだけ上がりながらエネルギー消費は減っていない。抑制効果がない事がはっきりした。産業競争力にも影響が出かねない新税を、あまり新しいアイデアもないのに年中行事のように持ち出すのは意味がないのではないか。環境対策のために財源が必要なら、インセンティブも含めてもっと大きな所から議論すべき。

鈴木部会長
  • 温暖化が進行していることに反対する方はいないと思う。総理が表明した2050年半減は、地球全体の目標であり、一人当たりのCO排出量は多く見積もっても0.4トン/年である。現在日本は2.5トン/年排出しており、80%以下に下げなければいけない。80%削減に向けて、長期的に考えていくべき課題は沢山ある。
  • 当面の短期的、そして中長期的に、それぞれポリシー・ミックスをどう考えていくのか、その中で一つの分野としてEU-ETSの話が出たが、これもスタートしてまだ2年あまりであり、いろいろなトラブルが明らかになり、フェーズ2に向かってどう活かされていくかとうい段階である。
  • 税の問題も、道路財源等、国の税を根本的に考えていかなければならない問題である。そこにはカーボンを巡るマーケットが生まれてくるが、そこに日本としてどのように対応していくのか。
  • CDMも含めてどのようなポリシー・ミックスを考えていくのか、それをこの場で考えるのか、中環審でやるのか、産構審でやるのか、一回、二回で結論が出る問題でもなく、その辺はもう少し検討に時間を頂きたい。
茅委員長
  • 今後の政策手段に対する議論について、審議会は何かを決める場ではなく提言をする場である。政策手段で合意が取れるものは提言することもあり得るが、意見が大きく分かれる場合は、意見分布を示すことが審議会の役割である。本日、排出権取引の議論を伺って思ったことは、かなり意見が異なっており、この合同会合で一つの意見にまとめることは不可能であろうと思う。その場合は意見分布を示すに止めることが審議会の姿勢であると思う。
鈴木部会長
  • 当面は中間報告を整理し、秋の段階で再度御議論頂いて、年内に最終報告を行いたい。
小川環境省地球温暖化対策課長
  • 本日の議論に対して追加のコメントがあれば一週間後の13日(金)までに事務局に提出してほしい。また議事概要は一週間程度で送付させて頂きたい。
  • 次回は7月25日(水)の午後5時から、虎ノ門パストラルで開催し、中間報告について御議論頂く予定である。

文責:事務局

 
 
最終更新日:2007年8月8日
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.