経済産業省
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新流通産業研究会(個別企業プレゼンテーション)(第4回)-議事要旨

日時:平成19年1月18日(木)14:00~16:00
場所:経済産業省本館2階西8共用会議室

議題

個別企業プレゼンテーション

議事概要

株式会社伊勢丹からのプレゼンテーションに対して、メンバーより以下の質問・意見があった。

  • 人口30万人未満の都市の百貨店は苦戦しているように思うが、これは購買行動が変化したからと思う。伊勢丹のやり方が成立するのは限られた地域でしかなく、百貨店の戦略は今後あるのか。

    →百貨店の業態定義が明確でない。ならば、狭い商圏で百貨店が成立する手法はあると考えている。99年から、新宿本店と支店は違うことを明確にしている。支店は、以前は地元から『新宿の伊勢丹』を要望されて出店したが、顧客に満足してもらえなかった。新宿本店は商圏が大きく東京外からの来客が相当数だが、例えば、浦和店は商圏2km範囲内での顧客の買上額が多い。こうした所では、顧客に週6回来店してもらいたいが、そのための商品政策が欠落していた。浦和店は狭域の商圏のモデル店舗として昨年リモデルを行い、売上は順調に伸びている。

  • 仕入等でリスクをとる部分ととらない部分をどのように組み合わせているのか。どのように個性を出しながら各店舗をタイプ分けしているのか。

    →「百貨店は、もともとは『今日は三越、明日は帝劇』と言われた様に資力、所得、文化的な知識をお持ちのお客様を対象にした事業を領域として発展してきたわけです。しかし第二次世界大戦後の大量生産、大量消費の時代には「誰にでも」「何でも」売るのが百貨店という時代になり、店舗立地の良さで、売上規模も巨大になり総合小売業の王様と取引先からも持て囃さされました。その後、時代が経過し、生活が豊かになればなるほど、消費は多様化し、さらに規制緩和が拍車をかけ業態開発は進んで行きます。しかし無競争の時代に作り上げたあまえの構造から抜けられず、顧客ニーズがわからなくなる。百貨店の本来の事業領域を忘れて、市場が変化しているにもかかわらず総合小売業の王者としての気分だけをずっと持ち続けた結果が、取引先主導の同質化した百貨店であり今の姿だろうと思います。この悪循環からの脱却についてリスクの負い方を考えるべきだと考えています。
    その意味で負うべきリスク分は、仕入だけではない。伊勢丹のメンズやハンドバックや靴は、他の百貨店にはない商品が35%並ぶ、こうした商品のリスク、販売に対するリスク、お客さまのニーズをつかむ仕組みの精度を上げるにはシステムのバージョンアップや、伊勢丹らしさを構築するため通路や壁面など環境や、プレゼンテーションに対する投資リスクなど色々です。
    支店等の品揃えも、約30%は本部でコントロールして揃えた独自商品です。とにかく、お客さまに信頼され、行きたいと思うような店にならなければいけないということです。

  • 百貨店は店舗を作らずにイメージで勝負できるのではないか。

    →そのとおり。だからこそ、各グループはマザーストアにお金をかけてアイデンティティを明確にしようとしている。今後もグループの核となる店舗には徹底してお金をかけていくと思う。また、顧客のアクセスを考えると、ネットビジネスは今後拡大すると思う。米国のニーマン・マーカスは昨年度7億ドルをネットで売り上げ、30%ずつ伸びている。日本の百貨店はクリック&モルタルなので、信頼関係も作りやすい業態。そういう意味で今後はネットビジネスへの進出も増えていくだろうと思う。

  • 小売業の場合、今後、人件費比率が非常に深刻な問題になるのではないか。ハンドバックや靴は取引先の派遣社員ではなく伊勢丹の店員なのか。人件費比率が上がり労働生産性が下がることについてどう対処しようと思うのか。

    →靴、ハンドバックも取引先からの販売員が非常に多い。彼らの不満は、労働時間が長く、給料が安く、休みが少ない、社会保障がないことだ、伊勢丹社員は40年来有給休暇を完全消化している。そういうことを解決しなければならない。また、スキルアップの希望も強い。かつてメンズ館や婦人靴でクレームが来て、社員も取引先のパートナーも、クレームを受けた人が先生となり、朝礼で全員に説明することをした。これを通じて販売員のスキルが上がったのは事実。スキルアップができる、キャリアを積むことができることに非常に評価を頂いている。お買い場に来る顧客に最大限満足がいくサービスをするには、一人の顧客に全員が効率的にコンタクトをとって良いサービスができるようにしなければならない。そのために指揮して何かしてもらいたいというと、優越的地位の濫用に抵触する。これができれば、労働の生産性の質とアップの話では、一人の生産性について、人数が減り、額が上がり、給料も上がる構成を作れるのではないか。

  • 展開分類基準を7年に1度見直すのでは、時代や嗜好の変化から取り残されるのではないか。メンズ館の2階以上は専門店だが、見直しは、アイテム毎に顧客ニーズをあわせて戦略的にやるのか、専門店の選択で戦略をたてるのか。

    →時代やライフスタイルの変化からお客さまを分類し直し、ターゲットとする顧客を明確にすることでの修正、ターゲット顧客は変わらないが今来店顧客のニーズとの乖離を修正するという2つの修正があると思います。7年に1度の修正は、前者のことです。この修正は、新しく設定した分類機軸がチーム全員に浸透して、仮説検証を繰り返し道具として使い切れるようになり、その結果、新たな時代、ライフスタイルの変化と現状の分類軸との差を実感して新たな仮説立案が出来るまでに経験上、大体7年かかるということです。
    展開の問題ですが、3階のプラダ、グッチ、5階のゼニアなどのデザイナーブランド以外は基本的にブランドショップの壁を取り払っています。これによって、違ブランド間を自由に見て廻って、商品を選んでもらうことが出来ます。また、見た目には同じブランドの塊になっていますが、そのブランドの中身の35%がよそのお店にはない商品が並んでいます。当社だけの商品をそういう意味でのリスクは存在しますが、このリスクを乗り越えないと顧客は二度と来ない。

  • 他の業態に出て行くことについて、どう考えているのか。

    →ここ3年間は、関係会社毎のグループ内の役割を明確にした上で、選択と集中で百貨店本業の補完事業を整理してきました。但し、旅行、レストラン事業は、整理後もサービスは店舗内に残し、メニューや商品開発は顧客の要望に応えられるよう、資本の34%は残し66%を専業の事業者に売却した。バーニーズは完全に売却。今残っているのは、スーパーマーケットでクイーンズ伊勢丹です。高質廉価、販管費がかかっているが、伊勢丹本支店の一次商圏、二次商圏に集中的に出店してきた。今後は出店範囲の拡大も検討している。SCへの百貨店出店については、検討は行っているが、具体的な案件はまだ無い。当社は臆病な会社で、先に商品のコンテンツを作りあげてから、出店することにしている。現在は5千m2くらいの規模は、完全にオリジナル商材、オリジナル運営で展開できるので1万~1万5千m2までの規模は顧客がみて他の店とは違うというSC型の新フォーマット構築可能なところまで来ていると思う。

  • 電鉄系百貨店は業態ミックスで沿線地域を押さえる、呉服系百貨店は個性化・高級化が今後生き延びていく路線といえるのか。

    →「誰にでも」「なんでも」が成立しない中、確かに顧客を絞り込んで行かなければならないと考えるが、高級化という言葉が相応しいとは思わない。顧客の人生の中での関与率を高めていくのが今後の方向。その人にとって必需品、定番商品も必要。

  • 外商部門はどういう形で戦略的に活かしていくのか。

    →個人顧客と密な関係を築くことは重要である。以前は個人外商の顧客は外商口座を持ち、担当者がついていたが、今はアイカードに統合し、請求書や回収の仕事をアイカード社が一括して行っている。外商、アイカードの顧客統合を図った上で、購買額、購買頻度の高いお客さまに本当に必要なサービスは何かを続けて探っているが、開発したサービスは有料化を考えている。これで顧客との関係を別の形に作り直したい。

  • 客単価や来店頻度はどうなっているのか。売れ残りリスクと売り逃しロスとの兼ね合いをどう考えればいいのか。

    →売上は、来店頻度と買い回り頻度で決まる。1人の顧客の購買単価は上がってきている。来店時の滞在時間を引き上げ、2カ所、3カ所と買い回ってもらうことが最大のテーマ。これにより1回の購買単価を上げることが伊勢丹のやり方。高額品を買ってもらうのではない。来店頻度は、伊勢丹アイカード売上高の5%の145億円を占める顧客は1890人いて、年間70回来店する。来店頻度を高めるため、直接コンタクトをとっている。来てもらった顧客には必ず買ってもらいたい。入店客数とレジ客数の割合は、支店は2だが、新宿本店は0.9ぐらいで入店したら必ず買ってもらっている。支店は1週間に5日来てもらう施策をとっている。商品寿命は基本は50日で意思を持って何日で決める判断は必要。その商品寿命の中に、紹介期、最盛期、整理期とあり、売逃しロスを防止しなければいけないのは最盛期で、売れ残りロスがない様に単品別に整理期前に価格調整を行い売り切って行く。94年までは値引きするには社長まで判子を必要としたが、失敗は本人が一番わかっているし、伝票を回す間に4日間のロスも出るので、95年以降は、値引きは商品を買い付けたバイヤーの責任とし、自分で持ち越し在庫はゼロとするとした。人材育成で最も育つ期間は店頭にいるときと思うが、そういう意味でも、バイヤーに売価を変える権限を与え、その決裁で早急に処理するやり方を取っている。


株式会社阪急百貨店からのプレゼンテーションに対して、メンバーより以下の質問・意見があった。

  • スーパーマーケットなどとの業態ミックスはどの業態にも競合がいて大変なのではないか。

    →競争の中で戦っていくのが私達の使命、少子高齢化の中でパイは減っているのだから、大変だと言っていられない。業態間の競合の中で、業態をミックスさせることで挑むのも戦法の一つだと考えている。

  • 市場の情報をグループ全体でうまく生かす仕組みは考えているのか。

    →仕組みの一つとして、食品事業の子会社を統括する中間持ち株会社を設立した。その会社に下に、食品製造会社、仕入会社、販売会社のスーパーマーケットがぶら下がる型だ。その会社では情報を一元化、事業計画の立案や、調達の効率化、あるいは資金の有効活用を策定することになる。

  • 業態ミックスを進めると、阪神圏をグループ全体で押さえるような考え方もあるのか。

    →私達は関西に基盤を置くローカル百貨店である。関西圏、阪神間はドミナントエリアとしてグループで制覇したいと考えている。

  • 人材育成について、ビジネスが多岐にわたっていることから、一人の従業員が一つの領域内で深堀りをする教育はやりにくいのではないか。

    →ビジネスはあくまで小売に絞っている。その範疇の食品、衣料、リビング関連であるので、あまり問題はないと考えている。

  • 販管費率が下がった理由は何か。人件費か、IT活用で在庫予測度が高まったのか?特に、店舗在庫の適正化について、IT化などで売り逃がしや在庫を減らす工夫をしたのか。

    →人件費が減ったのは、機能を分離して子会社を作り、本体、子会社双方の生産性をあげた。経費削減は百貨店という業態の経費構造が着ぶくれの状況であったから、ある一定のレベルまで削減は可能だ。
    また、店舗在庫の適正化は、店頭在庫と商品センター在庫をIT化により一元把握できるようになったり、店舗間での商品在庫の振りまわしがIT化により容易になったことで、在庫水準引き下げに役立った。

  • 坪効率が上がった大きな要因は何か。本店がフルに開店した後もこの坪効率を維持することは可能か。阪神百貨店との統合で役割分担を考えているのか。

    →坪効率が上がったのは面積減からの、お客様の離反の課題に対し、自店のロイヤルカスタマーを大切にした品揃えや、サービスが精度高く実施できたからだと思う。
    阪神との業務提携のスタンスも、阪神さんは阪神ファンのお客様に支えられて、なりたっていることがベースにある。阪急も阪神も自店顧客に最大限の満足が得られるMD、サービスを愚直に実行したらいい。お互いがいいとこどりして、くっつけても1+1=2には絶対ならない。競争関係が成長を生む。又、新たな創造がないと縮んでしまう。

  • 電鉄系百貨店は業態ミックスで沿線地域を押さえる、呉服系百貨店は個性化高級化が今後生き延びていく路線といえるのか。

    →両方ともできないとダメだと思っています。

  • 外商部門はどういう形で戦略的に活かしていくのか。

    →外商に過去は、あまり注力していなかった。顧客には2タイプあり、売場でコンサルタントは求めるが、カードがあれば自分で買い物したい顧客と、自分の家の中に外商員に入ってきてもらって、自分のことや家族のことをあれこれしてもらいたい顧客がいる。戦略的には、M字型の社会にこれからますますなり、消費の2極化から高額品マーケットには、外商の役割は必要と考える考え方もあるが、これから先の時代の人はどこまで外商を必要とするのか疑問。外商は否定しないが、値引や人件費で、店舗販売の倍以上のコストがかかる。顧客政策とエリア戦略の両面から、外商の活用を見極めてやっていきたい。

  • 客単価や来店頻度はどうなっているのか。売れ残りリスクと売り逃しロスとの兼ね合いをどう考えればいいのか。

    →人口減少や高齢化で、来店客数は必ず減る。消費力を人口動態でみれば、阪神地区は昭和50年代後半がピークであった。以降、顧客に自分の店と思ってもらえる形の固定客づくりを進め、品揃え、サービス、環境の向上を図ってきた。その結果、客単価のアップ、来店客の買上比率の上昇、買上点数を上げることにつながった。本店はファッションにウエイトをおいて客単価のアップ、支店は食品にウエイトをおいて来店頻度アップを図る。ロスの問題は、MDのサイクルをいかに組み立てるかによって変わってくる。

以上

 
 

最終更新日:2008年8月15日
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