経済産業省
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ナノマテリアル製造事業者等における安全対策のあり方研究会(第2回)-議事録

日時:平成20年12月25日(木)10時00分~12時40分

場所:経済産業省別館10階1020共用会議室

出席者

中西準子 産業技術総合研究所安全科学研究部門研究部門長

岸本充生 産業技術総合研究所安全科学研究部門持続可能性ガバナンスグループ研究グループ長

武林亨 慶應義塾大学医学部教授

福島昭治 中央労働災害防止協会日本バイオアッセイ研究センター所長

中谷内一也 帝塚山大学社会心理学部教授

新美育文 明治大学法科大学院教授

小川順 ナノテクノロジービジネス推進協議会社会受容・標準化委員会委員長

村松勝利 カーボンブラック協会環境・技術委員会委員

蒲田佳昌 日本酸化チタン工業会ナノ酸化チタン小委員会副委員長

庄野文章 社団法人日本化学工業協会化学品管理部部長

建部和男 日本無機薬品協会ホワイトカーボン部会委員

真柄光一郎 日本無機薬品協会亜鉛華部会委員

山本隆夫 ナノテクノロジービジネス推進協議会社会受容・標準化委員会委員

後藤芳一 経済産業省製造産業局次長

福島洋 経済産業省製造産業局化学物質管理課長

田端祥久 経済産業省製造産業局ナノテクノロジー・材料戦略室長

高田修三 経済産業省製造産業局化学課長

藤沢久 経済産業省製造産業局化学物質管理課長補佐

議事概要

  • 福島課長

    定刻になりましたので、只今から第2回ナノマテリアル製造事業者等における安全対策のあり方研究会を開催します。まず、前回ご欠席されていた先生方を紹介します。慶應義塾大学の武林先生、帝塚山大学の中谷内先生、明治大学の新美先生です。また、本日は、カーボンブラック協会の金井さんの代理として、村松さんにご出席いただいております。それでは、以後の進行を中西座長にお願い申し上げます。

  • 中西座長

    本日は、暮れも押し詰まった中お集まり頂きましてありがとうございます。傍聴の方々も多数ご出席頂きありがとうございます。それでは議事に入ります。事務局から配布資料の確認をお願いします。

  • 福島課長

    資料は、議事次第から資料7までございます。資料6は本研究会の検討対象について、前回配布したものをリバイスしたものです。資料7について本日はご議論頂きたいと思います。また、最後に付けておりますが、MSDSの例をいくつか配布しておりますのでご参照いただけますと幸いです。不足等あれば、事務局までお願い申し上げます。

  • 中西座長

    それでは、資料2の議事要旨案でございますが、事前に確認をしておりますので、特に問題がなければ、案を取らせて頂きます。

    (異議無しの声)

  • 中西座長

    それでは案を取らせていただきます。


1)ナノマテリアルに係る現状等について

  • 中西座長

    議題1「ナノマテリアルに係る現状等について」、まず「工業ナノ材料に関する自主的取組について」、産業技術総合研究所の岸本主任研究員から説明をお願いします。

  • 岸本氏

    本日お話したいことは、2頁目に集約されております。(2頁)まず、悪玉として、何が悪いか分かっている場合には、法規制という手段があるが、工業ナノ材料を典型とする新規で不確実なものについては、ガバナンスという枠組みで対応するべきだと考えています。ガバナンスとは、企業、政府、市民が様々な役割を果たしつつ、社会全体が適切にコントロールしていくものです。自主的取組というものは、ガバナンスという大きな枠組みの中で重要な役割を占めると考えられます。もちろん法規制もガバナンスの中の一つの手法ですが、あくまでも一つのパーツに過ぎません。自主的取組は多様であり、例えば、前回有害大気やVOCの例が紹介されたが、これらはゴールが決められた中で、大気汚染物質に対してどこまで減らすかということに関して自主的取組を行うというものですが、真の自主的取組としては、取組の内容や、取組を行うかどうかを自分で決め、その決定の理由を示すということが重要です。有害大気やVOCの例は、自主的取組の第一歩、初期的なものにあたります。自主的アプローチには様々な方法があり、知恵の絞りどころということになると思います。「重層的な」、というのは、国際的なものからローカルなレベルのものまで、製品レベルから企業全体の取組まで多層的に積み重なって、ガバナンスを形成しているという意味です。「戦略的に」、というのは、国レベルでは国際競争力を、企業レベルでは経営戦略というものであり、積極的に未知のリスクをとりつつイノベーションを進めるという意味です。「予防的」と「順応的」というのはセットで考える必要があります。これまで事故が起きてからかつ過剰な規制になりやすいため、事前に予防的に取り組むことが重要だが、それだけだとそれがまた企業の活動やイノベーションを阻害してしまうので、順応的というのとセットで考える必要があります。順応的というのは、最初は未知なので予防的に対応するが、情報が加わっていくにつれてそれに対してより大丈夫だと分かれば管理のレベルを緩めていく、もしリスクがより高いのであれば厳しい管理をするなど、日本の法規制ではこのようなものはありませんでしたが、フレキシブルに対応していくというものです。もちろんこの際には、透明性や客観性が非常に重要な要素と考えております。本日は、前回紹介があった米国、英国以外の事例の紹介をさせて頂きます。(3頁)自主的な報告制度について、まとめました。オーストラリアで2006年から報告制度が実施されて、現在第2回目が対象を広げて実施されており、他には欧州において化粧品を対象に情報収集が行われています。(5頁)地域レベルでは、カリフォルニア州バークレー市、マサチューセッツ州ケンブリッジ市などで報告制度があります。バークレー市の制度は、強制的な報告制度であり、PRTR制度に似た制度となっています。カリフォルニア州は、CNTに限定した報告制度を提案しています。(6頁)イギリスの事例の追加情報ですが、11月に発表された王立環境保全委員会の報告で、DEFRAの報告制度がうまくいかなかったので、強制的な報告制度を導入するべきという勧告が行われています。これがそのまま法制度に直結するものではありませんが、DEFRAにおける評価に影響を与えると予想されます。(7頁)アメリカにおいて、スチュワードシップを行うことにより企業の負担がどのくらい増えるかという推計が行われています。一企業あたり152.8時間、時給で計算すると約80万円となっています。(8-9頁)オーストラリアについても推計が行われており、ナノ材料一つあたり4時間とされています。(10頁)これらは、YESかNOかで回答させるために、このような短い時間で回答することができるようになっています。また、用途情報やライフサイクル情報については、ステップ毎にFREEかFIXかということだけ出せばいいので、非常に企業の負担が少なくなっています。一概に自主的報告と言っても数字を全て書かせるものか、2択で選ばせるのか、PRTRのように企業がもっている量だけを届出させるかによって、企業の負担は変化します。(11頁)カナダでも近々法的拘束力がある報告制度が導入されると言われており、計画が公表されています。(12頁)次に簡単な行動規範(コードオブコンダクト)というものが多く作られており、これはかなり重層的です。例えば、欧州委員会やスイス小売り組織、BASF等の個別の企業において行動規範が作られております。(14頁)リスク評価管理フレームワークというものは、非常に有名なDuPontとEnvironmental Defense Fundが開発したものです。DuPontが客観性を保つために、アメリカで有名な環境保護団体と組んで行うというもので、企業だけが行ったものではないため、うまい方法だと思います。もう一つは、常に先手を打つと言う意味で、スチュワードシッププログラムに第1号として翌日に登録する、ISOのテクニカルレポートとしてこのナノリスクフレームワークを出す、中国語版、スペイン語版を出して世界標準を狙うという姿勢が重要と考えます。(16頁)リスク評価のワークシートを示しましたが、特徴としては、ライフサイクル全体で評価する点と、特性プロファイル、有害性プロファイル、ばく露プロファイルという最低限必要な情報をベースセットとして提案しています。彼らは、マーケットに商品を出す準備段階で発表しているという特徴があります。(17頁)スイス政府が最近発表した予防的マトリクスというものがあります。これは、スクリーニング目的で様々な項目毎に3-4段階で点数をつけ、合計点が低ければクラスAとしてリスクが少なく、ある数値より大きいとクラスBとしてより詳細な調査が必要としています。(19頁)ご紹介だけだが、第3者機関による認証可能なリスクマネジメントシステムが提案されている。CENARIOSというのは、ISO9000に似ているのだが、民間レベルでの第三者認証という規格です。(21頁)もう一歩踏み込んで、Nanosafeという会社が、NANO TESTED PROGRAMというプログラムを開発しており、検査に通せばマークの使用の許可、レジスターへの登録などがあり、この際には、サマリーの公表が求められているようです。(22頁)また、ナノリスクチェックといって、専門家が工場で様々な項目をチェックして実行可能な対策を提案するものもあります。(23頁)ボランタリーな国際的ネットワークについても様々出てきております。(24頁)ICONについては有名なので省略しますが、IANHとして、in vitroとin vivoの試験の標準的プロコトルを同じ材料を用いて複数の研究者が試験をして、差があれば何が違うのか明らかにするという試験があります。(25頁)MINCharについて、アンドリュー・メイナード氏が中心となっているプログラムだが、ナノ材料キャラクタリゼーションのための最低限情報イニシアティブというものです。以上です。

  • 中西座長

    大変豊富な内容を分かりやすくまとめて頂きありがとうございます。ご質問などありますでしょうか。

  • 新美氏

    各種のコードオブコンダクトがあるということが分かったのですが、コードオブコンダクトが作成されるプロセスで、当局と相談する場合と、独自に作る場合があると思うが、どちらになりそうか。

  • 岸本氏

    今後は、そのような観点でも見ていきたい。

  • 武林氏

    スイスのマトリックスの考え方で、潜在的な影響としてどのような影響を想定しているのか。

  • 岸本氏

    追って回答したい。

  • 中西座長

    EPAやDEFRA等の報告制度において、データを保証するという役割がEPA等にあるのか。

  • 岸本氏

    報告された情報が情報を正しいという保証については、聞いたことがない。

  • 有川氏

    フレームワークやシステムが先行しているようだが、このような枠組みの中で、標準手法等の評価に関する技術的な開発について見いだされている例があれば伺いたい。

  • 岸本氏

    制度が進むことが研究を進めるためのシグナルになるのではないか。必ずしも、研究が進んでいないのに制度だけ進んでいるというようにはとらえていない。研究については、報告制度の中で取り組まれている訳ではなく、研究者のコミュニティーの中で進められるものである。

  • 中西座長

    補足させて頂くと、スタンダードが出てから対応するのではなく、自分たちがデータを出しながら世の中のスタンダードを作っていくという意味である。

  • 福島氏

    英国の王立環境汚染委員会の報告書について、それ以降政府としてどのような取組がなされるのか。

  • 岸本氏

    英国では、DEFRAの自主的報告制度の評価が10月頃に行われると言われており、間もなく公表されると聞いているが、その中で今後自主的報告制度を続けるのか、強制的な報告制度になるのか明らかになるのではないか。

  • 中西座長

    2004年に出されたロイヤルソサエティーの提案について、2006年にDEFRAは提案にどのように答えるかという報告書を出している。今回についても、DEFRAは検討の結果についての報告書を出すと予測している。


(2)ナノマテリアル製造事業者等における取組について

(フラーレン)
  • 中西座長

    次の議題、「ナノマテリアル製造事業者等における取組について」、まずNBCIの有川さんから説明をお願いします。

  • 有川氏

    よろしくお願いします。(3頁)本日はフラーレンについて説明させて頂きます。まず、定義、種類として一般的な情報を記載しております。(4頁)用途については、ゴシックで書いているのは製品として入手可能なものです。スポーツ用品として、ゴルフ、テニス関係などで新しい製品が出ております。電子材料については、有機ELの材料等があります。また、化粧品についてはかなりの種類が出ています。化粧品やバドミントンのラケットが使用者数としては多いのではないかと思います。(5頁)物質の性状について、嵩密度が0.6g/cm3ということですが、作り方で全く変わるので参考値です。普通の炭素材料については電気が通るというイメージがありますが、フラーレンは電気を通しません。これは様々な意味で性質に影響を与えています。また、昇華が可能という性質を持ちます。化学的性質として、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の非極性溶媒に溶けるという性質があります。(6頁)溶媒に溶けると、様々な色を呈します。カーボンナノチューブやカーボンブラック等の炭やすすの類とは異なり、溶解性を持つことが製造後の取り扱いに大きな影響を与えます。(7頁)分子の直径は1nmですが、これが単独で存在することは難しく、これが様々な形で結晶化したり凝集したもの製品となります。特殊な分子性結晶が一次構造体であり、さらに凝集して、二次三次の凝集体を形成し、製品の粉になっています。粒子サイズ、形状はある程度制御可能となっており、一般的な製品粒径は、数μmのものが一般的です。粒子の形、分布に関しては、運転条件によってチューニングすることが可能です。凝集性が強く、普通の方法では1μm程度のものしか検出できていません。全くナノ粒子が存在しないというわけではないが、検出はしにくい。測定方法は、レーザー回折型の粒度分布装置や、動的散乱方式の粒度分布装置があります。(8頁)写真に示す通り、フラーレンの作り方によって、いろいろな形のものが出てきます。特徴的なのは、ところどころ角柱型の結晶があり、分子性結晶の発達したものではないかと想定しています。(9頁)製造については、燃焼法とアーク法があります。資料には燃焼法の例が書かれているが、最初の合成の部分が燃焼合成かアーク合成かの違いであり、その後の処理は同じです。どちらも、フラーレンが入ったすすからフラーレンを抽出するために、有機溶媒による抽出を行い、得られた混合フラーレンから単離操作を行ってC60を取り出しています。乾燥機から出したところが、唯一粉体でオープンになる位置になります。結晶化については、薬品の製造と全く同じ物ですが、晶析条件をコントロールすることでサイズを制御でき、ナノサイズのものは少ないと考えております。(10頁)フラーレンは溶けるため、HPLCで純度を測定することができ、不純物の精製手法を開発の開発により、99.9%以上のものを製造することができます。粒度や残留溶媒の濃度、多環芳香族や無機物の混入についてチェックしています。海外から入ってくる物は不純物のチェックがほとんどされていないのが現状です。(11頁)生産量については統計をとっておりませんが、NBCIの推計として、国内は年間約2t、世界で年間3t程度ではないかと想像しているが、正確な統計データではありません。(12頁)安全管理については、局所排気を行いフィルターで捕集しています。排出水は、機器の冷却に用いているため、排水はないプロセスです。溶媒については、環境的な理由や経済的な理由から確実に蒸留・精製を行って再利用しています。廃棄物については、使用した容器や保護具等を含めて産業廃棄物として焼却処理されています。保護具としては、防塵マスクと専用の上着、ゴーグルを使用しています。(13頁)作業環境管理については、測定装置が高価なもので一般に入手できないため、国立環境研究所で測定したデータがあります。(14頁)フラーレンはかなり固まって出てくるため、ナノ粒子としては、自然由来のものとの区別がつきにくいという結果です。(15頁)安全性については、中西先生のプロジェクトでデータを取っていただいて、これはもうすでに公表されています。また、化学物質評価研究機構の久留米事業所においては、水生生物に対するテストをしていただいています。Ames試験で陰性であることを確認して研究開発を行っています。このほかにも様々な取組が進行中です。化粧品については、化粧品として使われる形態で、化粧品のプロトコルに従ったGLP準拠の安全性試験を行って出荷しているので、安全性は確保されているという理解です。また、不確定情報ではあるが、ロシアなどでは薬としての試験が行われていると聞いています。得られたデータはMSDSに盛り込んでいます。これまで公表のあった安全性に関する文献の例を示しています。

  • 中西座長

    ご質問がありましたら、お願い致します。

  • 福島氏

    不純物として多環芳香族が含まれるということだが、どのような構造のものが含まれているのか。安全管理について、防塵マスクはどのようなものを用いているか。

  • 有川氏

    必ず含まれているという訳ではなく、表面に付着している場合があるので、発がん性データが明らかになっているベンゾピレンなどの3環、4環のものにターゲットを絞ってチェックしています。製造によって出てくるというものではない。防塵マスクについては、従来は通常は通常の防塵マスクを用いていたが、厚生労働省の通知が出てからは、RL3に変更している。

  • 庄野氏

    作業環境管理について、外からの流入でバックグラウンドがあるという話があったが、具体的には何が邪魔をしているのか。

  • 有川氏

    自然由来のナノ粒子の数が多く、作業をしてもバックグラウンドとの差がよく見えないと聞いている。

  • 武林氏

    製品の目標モルフォロジーについて、顧客側に合わせて製造されるとのことだが、使用事業者はそのまま使うのか、それとも修飾するのか教えて欲しい。

  • 有川氏

    フラーレンそのものでは用途はないため、必ず混合、分散や化学的修飾等の処理が行われて実際の製品に入っている。

  • 武林氏

    使用事業者での処理の際のばく露の問題も考慮されているのか。

  • 有川氏

    十分考慮している。


(酸化亜鉛)
  • 中西座長

    それでは、次に酸化亜鉛について、無機薬品協会の真柄さんからお願いします。

  • 真柄氏

    ご説明させていただきます。(2頁)酸化亜鉛は古くから使われておりますが、ゴムの添加剤、塗料などに広範に使用されています。(3頁)酸・アルカリに溶解するため、表面をコーティングして用いられます。(4頁)一次粒子のサイズについて、ナノサイズのもの、大粒子のもの等があります。ナノサイズのものについては、TEM写真から画像解析で平均粒子径を求めると、15-60nm程度です。BET法で求めた比表面積は、17-70m2/gです。平均粒子径の測定方法は、公的に標準化されているものではないが、比表面積から球形と仮定した時のサイズとほぼ一致します。(5頁)製造方法については、金属の地金を溶融して、気化酸化冷却して製造するフランス法が主流です。(6頁)一方、少数派ですが、亜鉛鉱を用いるアメリカ法というものがあり、若干不純物が多くなるという特徴があります。(7頁)ナノサイズの酸化チタンは、一般品とは違って湿式法が用いられています。亜鉛原料とアルカリ原料を溶解して、中和反応、ろ過、洗浄して、焼成工程で粉状になります。粒子サイズのコントロールは、反応や焼成の条件で行われています。粉砕については、一次粒子の粒径を変える操作ではありません。(8頁)酸化亜鉛の性質について、30%濃度に調製した塗膜を用いた透過率曲線を示します。可視光で透過率が高いのは透明性が高いということで、紫外光で透過率が低いのは、紫外線カット性能が高いと言うことです。このため、ナノサイズの酸化亜鉛は、サンスクリーン剤等に用いられています。(9頁)一般品の生産量については、全体で75000 tであり、主にゴム、塗料、フェライトのバリスター用等の用途に用いられています。(10頁)ナノサイズの酸化亜鉛の生産量については、データがないため、東レ経営研究所のデータを使用しますが、ほとんどが化粧品用と思われます。(11頁)最終製品の形態について、包装作業時に舞い上がる粉末の大きさについてテストしました。(12頁)局所排気を止めてSEMの試料台をセットして、3分間ほどサンプリングをした。写真では、数μmのサイズのものが多く、できるだけ小さい物を探そうとしても0.1μmよりも大きな凝集体になっているものが多いと考えられる。ただし、この方法は何かで規定されているというものではないので、現在のところはやってみたものということです。(13頁)最終製品を水中で分散剤を添加し超音波で分散し、レーザー回折の粒度分布測定を行いました。分散時間を長くすると、粒子の大きい方のピークが小さくなり、粒子の小さいところのピークが大きくなります。20分-25分である程度飽和していると考えられます。大部分は100nm以上であり、100nm以下のものは4%程度であった。(14頁)最終製品の状態としては、一次粒子、アグリゲート、アグロメレートが考えられ、アグリゲートは強い力で凝集しており、容易に分散しないと推測されます。その次のアグロメレートは、アグリゲートが集まった凝集体であり、機械力によって比較的容易に再分散します。この他にフロッキュレートという状態もあるが、これはアグロメレートに含めています。以上3つの混合体であるが、ほとんどがアグロメレートであろうと考えられています。(15頁)安全管理について、基本的には可能な範囲で閉鎖性ラインにしておりますが、開放になってしまう場所については、局所排気装置で対応しています。排気は工場全体で集めて集塵機にかけて、粉じんをバグフィルタで回収しています。(16頁)作業者ばく露防止については、保護具を着用して作業しております。マスクについてはRL3を用いております。このほか、安全教育を定期的に実施しておりますが、これはナノマテリアルを扱っているからというわけではなく、通常のものです。(17頁)出荷時の梱包形態について、段ボールとクラフト袋があります。段ボールの場合は、ポリ袋の内袋に入れております。出荷の場合は、数段重ねてストレッチフィルムを巻いて出荷しております。出荷時には注意書き等の表示はしておりませんが、予めMSDSをお客様に配布しています。(18頁)廃棄処分方法については、ナノサイズ品も一般品も区別しておりませんが、可能な限り再利用し、それができないものは汚泥として廃棄物処分場においてバラ積みで処分しています。その際の飛散防止対策としては、搬送時にはウイングシート付きのトラックを使用しています。処分場では、その日のうちに覆土をして飛散しないようにしております。なお、ナノサイズの酸化亜鉛が付着したような着衣や包装資材については、処理業者に委託して焼却処分しております。

  • 中西座長

    ありがとうございます。ご質問がありましたらお願い致します。

  • 村松氏

    カーボンブラックの場合、アグリゲートとは共有結合で化学的に炭素が結合した状態を呼ぶが、酸化亜鉛の場合、どのような結合をしているのか。

  • 真柄氏

    アグリゲートは面による接触、アグロメレートは線による接触、フロッキュレートは点による接触という定義がある。アグリゲートは、酸化亜鉛の場合、粒子同士がシンタリング(融着)している状態のもの。アグロメレートは、一次粒子がファンデルワースル力で凝集したもので、超音波やビーズミルで若干粉砕できるというものである。

  • 山本氏

    出荷の際の容器については、ビニール袋のようなものにいれ、その後箱詰めされるというものなのか。その場合に、容器が破損して飛散するようなことはあるのか。

  • 真柄氏

    内袋に入れて封をし、段ボール箱に入れている。過去に、ポリエチレンの袋が破れて段ボールの中で飛散した例はあるが、外に漏れたという例はない。

  • 武林氏

    工程の中で生じる不純物としては、どのようなものを想定しているのか。

  • 真柄氏

    用途によって洗浄方法が異なるが、塩類が入っている場合があり、純度100%ということではない。原材料に由来するものもある。

  • 中西座長

    一次粒径の違いによって特性の違いが出ているのではないかと思うが、アグリゲートやアグロメレートになっても紫外線カット性能に変わりはないのか。

  • 真柄氏

    データとして示したのは、ビーズを使用して分散したものである。グラフには、一次粒子のサイズを記載しているが、結果的には、状態はアグロメレートの状態で、1μm程度になっていると推測される。

  • 中西座長

    塗料や化粧品等の製品の中で、どのくらいのサイズになっているというデータはあるのか。

  • 真柄氏

    我々は持っていないが、化粧品メーカーの方でデータがあると思う。最終製品の中では、0.1μm以下になっているものがある。

  • 中西座長

    アグリゲート、アグロメレートについては定義が難しい。3回の研究会の中で可能か分からないが、報告書を出すとき、あるいはその次のタイミングで、専門の方にお話を伺う機会を頂くことができないか。分子間力なのか、共有結合なのか明確化するべき。


(シリカ)
  • 中西座長

    次に、無機薬品協会の建部さんからお願い致します。

  • 建部氏

    シリカについてご説明いたします。(3頁)シリカは、工業的にクロロシラン類や珪酸ナトリウムなどから生産される二酸化珪素である。外観は白い粉や粒状のものがあります。(4頁)シリカには多岐にわたる種類があり、天然品としては、結晶質のものとして、石英、水晶、非晶質のものとして珪藻土があります。合成品としては、結晶質のものとして合成石英があるが、今回お話させていただくのは非晶質のシリカです。(5頁)合成非晶質シリカについては、乾式と湿式に大きく分類されます。乾式で作られる物はほとんどが、四塩化珪素やシラン類を酸素・水素炎中で燃焼させる燃焼法によるものです。これらは、ヒュームドシリカと呼ばれます。湿式では、珪酸ナトリウムを硫酸等で中和して作られる沈殿法があります。このほか、ゲル法やゾルゲル法で作られるものがあります。(6頁)主な用途と生産能力は、世界では湿式シリカが143万t、乾式シリカが15万t、国内では湿式シリカが6万t、乾式シリカが3万tです。シリカの特性として、補強性、チクソ性、吸油・吸水性があります。新聞紙の中に含ませてインクをにじまないようにするという用途もあります。また、合成ゴム、タイヤの充填剤として使われています。乾式シリカに限定すると、シリコンシーラントには必ず使われています。この他、粒子の形を利用したつや消し剤、プリンターのトナーにも使われています。(7頁)性状は、非晶質であり、比表面積は50-500m2/gです。一次粒子径は、球形と仮定して比表面積から計算すると、55-5nm程度です。一般的に使用されるシリカで平均的なものは200m2/gで、―次粒子径は12nm程度です。これらが凝集して数十-数百ミクロンに凝集しています。(8頁)凝集構造については、一次粒子が単独で存在しているとは考えておらず、一次凝集体、アグリゲートが数μm程度のものになっています。乾式シリカであれば融着し、湿式シリカであれば共有結合で結合しています。一次粒子が生成した時に凝集し、それが成長するので、通常見られる最小構成単位はアグリゲートであり、これが物理的に凝集してアグロメレートを形成しています。シリカは強く分散させても、一次粒子の大きさにはならず、アグリゲートかアグロメレートになっていると考えられます。(9頁)アグリゲートの写真を示しますが、乾式シリカは直線的につながった形状で、湿式シリカは球形に集まった形状です。この写真の一次粒子1つずつの大きさは20nm前後です。(10頁)製造工程については、乾式法はシランを千数百度で燃やして塩酸が通常副生するので、これを脱酸で除いて製品となります。出てきた物は25g/L程度の軽い粉であり、これを多少重くして製品とします。湿式法は、珪酸ソーダと硫酸を反応させ、中和して生成した沈殿をろ過・乾燥、粉砕して製品とします。(11頁)安全対策について、製造工程は基本的に密閉工程ですが、包装工程だけは密閉ではありません。湿式の場合はろ過に用いるフィルタープレス以外は密閉構造です。包装工程が密閉ではないといっても、ノズルがついた紙袋に入れるので、粉が見えるような状況で包装するわけではありません。それでも、粉じんが発生する可能性があるので、局所排気装置を設置し、作業員については防じんマスクを着用させています。一部、自主的に粉じんの環境測定を実施している企業もあります。また、シリカが通知対象物質であるので、MSDSは必ずお客様に配布しています。(12頁)出荷形態には、紙袋、樹脂溶融袋、ローリー車、フレコンで送る場合があります。樹脂溶融袋は特殊なものであるが、ゴムのメーカー等でミキサーへ袋のまま投入するような場合に用います。(13頁)工場各所に吸引ラインを設置しており、これをバグフィルタで集め、産業廃棄物として処理しています。最終的には、埋立てられたり、セメント原料に用いられるものもあります。

  • 中西座長

    ありがとうございました。何か質問はありますか。

  • 武林氏

    製造の条件によって、一定の割合で結晶質の二酸化ケイ素が混ざることはあり得るのか。

  • 建部氏

    基本的にはないと考えている。例えば乾式法では、結晶が成長する間もなく瞬時に生成する。湿式の場合は、結晶化する時間もなく沈殿させている。実際、X線回折で見ても、結晶質のピークは現れていない。

  • 中西座長

    結晶質シリカではこれまで様々な問題が起きているが、関係ないのか。

  • 建部氏

    結晶質シリカが問題になるのは、採掘現場等であり、天然由来の結晶性シリカである。例えば、空気中の砂ぼこり等のほうが危ないと考えている。

  • 中西座長

    非晶質のシリカというのは、あまり問題がないと考えてもよいのか。

  • 建部氏

    ナノサイズであるかどうかは別として、これまでのリスク評価では、結晶質と非晶質は別なものとして扱われている。


2)自主的管理に関する話題提供について

  • 中西座長

    それでは、自主的管理に関する話題提供について、中谷内先生からお願いいたします。

  • 中谷内氏

    よろしくお願いします。自発的な監視と制裁準備の申し入れによる信頼の改善について、心理学の話をさせていただきます。できる限り心理学の用語は使わないようにお話しします。(2頁)一般の人々、国民はどのような種類のリスク判断者か、についてです。ここにおられる皆さんは高い動機付けと高い情報処理能力、専門知識を持っており、リスクについて判断する場合は、自分自身でできる限り精緻な判断をしようとする存在です。それに対して、一般の人は、情報処理能力、専門的な知識があるわけではなく、動機付けにつきましては、ナノテクに関しての動機付けは低く、判断は直感的、感覚的なものになります。もっと動機付けが低くなると、自分自身では直接判断せず、信頼できる人の意見を取り入れる、信頼できる人がリスク管理しているなら安心できる、と判断すると思われます。(3頁)「信頼」という言葉の定義は、他の人に何かを委ねる、そのことによって自分はひどい目にあうかも知れないけれどそれでも大丈夫だと思って任せる、ということです。つまり「あの人の言うことは正確だ」と思っているだけではなく、「あの人に任せよう、任せる結果自分がひどい目に遭うかも知れないけれども、それでも大丈夫だ」と思って任せるということが信頼です。この信頼は何によって導かれるかといいますと、熟練、能力、権威、誠実さ、相手に対する愛着心や博愛精神,相手に対する思い、公正さ、正直、ケアなど色々な要因が検討されています。(4頁)そもそもなぜ一般の人が専門家を信頼しなければならないのかというと、知識がない、もしくは動機付けが低い、あるいはその両方であるかという要因が考えられます。広義の信頼とは、「相手にお任せして大丈夫」、という気持ちです。何によって、「任せて大丈夫か」と思えるかといいますと、一つは知識、情報処理能力、専門技術などといった、能力についての認知であり、本当に有能な人であっても、そう思ってもらわなければ任せられない、ということです。もう一つが動機付けであり、有能な人が誠実に真面目に取り組むのであれば、高いパフォーマンスが期待できるということです。しかし、能力認知と動機付け認知がしばしば混同されており、信頼改善を行う場合に、不適当なケースが見受けられます。例えば、能力認知で言いますと、野球選手を「信頼する」と言う場合は、動機付けが高いのは当たり前でして、技術は高いか衰えているかという能力についての問題です。一方、家内が女性問題に関して私を「信頼する」と言う場合には、裏切る気があるかないか、誠実に振る舞うかどうかという動機付けの問題です。何か不祥事があった場合に、一般の人は情報の隠蔽とか怠慢というかたちで、動機付け認知が悪化し、「あそこには任せておけない」などと思うのですが、信頼が崩れてきている組織は、「技術力が足りなかったのだから、技術的に高めればこの問題は改善できます、だから信頼して下さい」というかたちに持って行くのですが、それは少々不適当ということになります。動機づけ認知については、二つの要素があり、一つが抑止力の認知です。さきほどの例のように、家内が私を動機づけの面で信頼している場合に、例えば、腕時計で私の行動を完全にモニターできて制裁できるようなシステムになっている場合、これが抑止力の認知です。しかし、これは本当の信頼ではなく、「時計をしなくてもこの人は大丈夫」、というのが本質的な信頼です。(6頁)能力認知の低下に対しては技術力を上げるしかありません。難しいのは、技術や能力による不祥事・トラブルがあっても、動機付けの面について一般の人々は評価をします。動機づけの面について評価された場合に何ができるかといいますと、抑止力の認知を改善するということしかできません。つまり、自分が誠実だ、信頼できる人間であると言っても、一度信頼が崩れ出した場合によく行われるのは監視体制を整えることです。輸入食品の問題でも、より監視を厳しくする、何かあった場合には制裁が下されることにより抑止力を高めることで、動機づけ認知を改善して信頼を上げる方法があります。ここで問題なのは、抑止力の認知と本質的信頼は、トレードオフの関係にあるという考えがあり、北海道大学の山岸先生が主張されています。先ほどの時計の例では、時計による抑止力に慣れてしまうと、時計を外すことに対して怖くなる。本質的に信頼していれば、そもそも時計は必要ありません。山岸先生によると、日本人は集団主義だとか信頼が高いと言われるが、日本人は同質的な社会で相互監視してきたために、人が裏切ればすぐに制裁が下されるシステムにいるから、身内に対して信頼しているだけで、知らない人間に対する信頼はむしろ下がっているそうです。「抑止力があるから広い意味での信頼が培われる」というようなところに長くいると、本質的な信頼は損なわれる。耐震偽装問題では、民間の検査会社が偽装していたため、民間の検査会社を行政が検査しようかという話が出ていました。しかし、行政が確実に万全なチェックをできるかというと、それも怪しい。行政をチェックする第三者機関と、際限なくチェック機関が必要となり際限なくコストがかかります。しかも、かえってやればやるほど本質的な信頼が損なわれることになってしまいます。(7頁)この問題をクリアするために考えられたのが自発的人質供出のアイデアです。監視と制裁のシステムを自ら申し出ることで、信頼を高めることができるのではないか、という考え方です。人質供出と言う言葉ですが、たとえば、私が戦国大名で、隣国に自発的に私の嫡子を人質として差し出すと私から言った場合と、隣国から人質を出せと再三いわれて三男坊を出す。人質を出すということは同じですが、本質的な信頼というところではちがう。自発的に言い出した場合には、制裁を受けずに済むだけの自信がある。つまり、誠実さについて、動機づけについても、能力認知についても改善できるのではないかというアイデアです。(8頁)そのように考えて行った研究の中で、二つだけお話しします。前半の新聞記事は事実で、後半の条件は架空の話ですのでお間違えないようお願いします。いずれも不祥事を起こした後に、一番目は自発的、自主的に監視と制裁準備を申し入れる自発的な人質供出をする条件です。二番目が、外部の要求によって監視と制裁準備を受け入れる、強制的に人質を出すという条件です。三番目は、不祥事の後始末以外は何もしないという統制群です。この三つのグループの間で動機づけ認知、能力の認知がどのように変化するかについて見ました。まず、一つ目の事例であるビールの異臭事件は、健康被害はなかったのですけれども、異臭があったため製品が回収されたという事例です。自発的供出群は、監視と制裁準備の内容を自らが言い出した、自主的にこれらを申し入れた、という条件にしています。(9頁)大学の専門家、一般消費者からなる監視委員会を工場に受け入れ、その委員にはいつでも製造工程を立ち入り調査ができる権限を与える。調査の結果は関係機関やマスコミに伝え、また、会社の広報誌などにも掲載し、一般の人にも自由に閲覧できるようにする。ここまでがモニター、監視システムを受け入れる、ということである。もし、その上で、調査結果をごまかすようなことが遭った場合には、工場閉鎖を約束する。これは制裁準備の部分です。これを自発的に行った。次に、消費者団体や行政から強く指導されて受け入れた、最後に回収したというだけで何もしない、三つの条件で比較しました。(10頁)動機づけ(誠実さ)評価合成変数の得点比較とあります。これは誠実である、真面目であるとか正直であるとか、いくつかの評価項目をひとつにまとめた得点であります。一番左のVoluntary Hostage Postingは自発的に供出を行った群です。Trustworthinessスコア;誠実である、正直である、という評価が、強制的な人質供出群やコントロール群よりも有意に高くなっています。真ん中のForced Hostage Posting、強制的な供出群は、一番右のContorol、何もしない、ただ回収したという条件と有意差がありませんでした。ですから、同じ監視と制裁準備をととのえるにしても、自主的に申し出た場合にはそれによって信頼が上がるけれども、言われてから行ったのでは何もしないことと同じです。(11頁)同じことが、能力評価、能力認知の合成変数においても言えます。だいたい同じようなパターンが描かれています。監視体制をととのえる、ということがよく行われますが、あれは、言われたからやった場合には広い意味での信頼は結びつくだろうけれども、本質的な信頼は上がりません。(12頁)次の実験は、ファーストフードチェーンがタイから輸入した鶏肉を原料として使っていたということがありました。タイから輸入した時点では、それまで感染しないと言われていた鳥インフルエンザが鳥からヒトへ感染があって、しかも死亡率が高い、それらが判明した後に入手したものであったという事例です。ただ、農水省が止める前であって、違法ではなかったけれども、鳥インフルエンザで死亡者がでると分かっていた鶏肉を使用していました。(12頁)事前に好意度、信頼、能力を聞いており、この記事を読んでいただきました。その後に、自発的な監視と制裁準備を申し入れるグループと、強制的に受け入れたグループと、供出なしのグループに分けた結果です。このグラフは、事前に質問に対する回答からの変化を表しています。条件ごとの誠実さ評価、動機づけによる評価では、自発的供出はほとんど下がっていない。おそらく一回下に下がっているはずだが、自発的な供出によって信頼が改善されている、というように考えられます。ところが、強制的供出群は供出なしとともに、同程度に誠実さ評価が下がっています。先ほどと一貫した傾向である。能力評価についても同様で、自発的に供出した場合も、元よりは能力が下がっているものの、強制的に供出した場合、供出なしに比べればましでした。(12頁)それに加えて、事前に評価を聞いた際の好意的な被験者群と好意的でない被験者群に分けて分析しております。動機づけの面において、強制的条件と自発的条件の差が大きかったのは、事前の態度が肯定的だった群です。顧客であるとか、好意的な群においては、自発的に供出することによって誠実さ評価が改善されています。好意的でない群においては、自発的にやろうが強制的にやろうが、それほど変わりません。お客様にこそ、自ら監視と制裁準備を申し入れることが望ましい。能力についても、事前の評価が肯定的であった群は、自発的供出によって改善しています。(13頁)信頼回復についてのまとめです。不祥事があった場合には、監視と制裁準備を自発的に申し入れるべきであり、外圧を受けてからの人質供出は、信頼回復の面からは何もしないのと同じである。自発的人質供出は、事前態度の好ましい人への効果が高いということが言えます。(14頁)以上は、有る程度信頼が落ちた際の信頼改善策の話ですが、ナノテクに関して今どういう状況かと言うと、今年の1月から2月に行った全国調査では、ナノテクは52種類あるうちの下から7番目でした。上へ行けば行くほど不安が高く、地震、地球温暖化が最もたかく、最も低いのは家庭内不和でした。こういうときに自発的に人質を申し出ることが得策かどうかは分かりません。基本的には今後ナノテクが進展していくとするとトラブルが起こる可能性があるので、その際に後手にならないように先に準備しておくことが有効ではないかと考えます。

  • 中西座長

    どうもありがとうございました。何か質問はありますか。

  • 福島氏

    「安全と安心」という言葉を、「安全と信頼」と考えて、リスクコミュニケーション等を含めて考えるべきという主張があるが、「信頼」と「安心」との関係をどのように理解するべきか。

  • 中谷内氏

    「安心」という言葉は、「信頼」と置き換えても文章が通じることがほとんどである。なぜかと言うと、安全とは客観的に守られている状態であるが、安心というのはそのように納得できる状態である。例えば、ナノテクノロジーについては、自分自身では安全かどうかは判断できないが、製品を作っている人が信頼できるかどうかで安心できるかが決まる。信頼は、テクノロジーよりも人や組織が有能で真面目にやっているかで決まる。

  • 福島氏

    本質的信頼というものを「安心」と置き換えてもよいのか。

  • 中谷内氏

    本質的信頼は一つの必要条件ではある。例えば、ナノテクに関して、評価・監視している団体があったとして、誠実に行っているのであっても、能力が低ければ信用されない。どちらが大事かというと本質的な信頼の方である。能力が高く一生懸命やっていても、消費者ではなく業界の方を向いていると思われては信頼されない。能力の認知も必要であるが、本質的信頼がより重要であり、本質的信頼の方を得るのがより難しいということである。

  • 中西座長

    ありがとうございました。ナノテクの現状について、本当に不安が少ないどうかというと、良い印象が多いということだが、知られていないということはないのか。一度問題が起こったときに信頼が落ちることは否定できない状況と考えている。


3)ナノマテリアルの管理のあり方について

  • 中西座長

    ナノマテリアルの管理のあり方について、事務局から説明をお願いします。

  • 福島課長

    資料6及び7に基づいて説明させていただきます。資料6は前回お示ししたものに文章を加えているものですので、説明は省略させていただきます。お読みいただいて質問などあれば、事務局にご連絡いただけますと幸いです。資料7について、ご説明いたします。

    枠囲いで書いておりますのが、前回問題提起させていただいたもので、その下に黒い丸で書かれているのが前回のご意見や、事務局で検討を加えて具体的に書き下しているものです。

    一点目、ナノマテリアルの管理のあり方についてどうするのか、ナノマテリアルに関する科学的知見が不足しているという現状では、消費者からの不安はさほど高くないというご指摘もございましたが、一部危険性が指摘されておりますので、予防的な観点で当面は事業者の自主的な管理、有害性の知見の集積を行うことを前回書いております。具体的には、諸外国の先進的な事例について情報収集を行いながら、まずは自主的な安全対策に取り組んでいくことが必要ではないか。2点目は、事実関係の把握にとどまらず、有害性の情報についても、自主的な管理に必要な情報については積極的に収集してはどうか。3点目は、国の役割として、経済産業省としては研究開発により有害性情報の収集を引き続き積極的に行うとともに、ナノマテリアルのリスクの評価・管理手法について関係省庁と連携して進めていくべきではないかと考えております。

    「情報伝達のあり方」については。B to Bの情報伝達の推進に係るものであり、まず、製造事業者からユーザー事業者に対してどのような情報を伝達するべきか。ナノマテリアル自身は新しい材料であり、企業秘密に該当する情報も多いことから、企業秘密にも留意しながらできる限りの範囲内で特性、取扱の留意点、用途情報について双方向で情報共有するということが重要ではないか。どのような情報を提供するかに関しては、画一的に指定するよりも、事業者自らが現在製造しているマテリアルの特性、使用状況を踏まえて情報を提供することが必要ではないか。MSDSの表が示されているが、現在、関係法令又は自主的にMSDSが交付されているが、従前のMSDSに比べて、ナノについては項目が増えることが想定される。5頁に情報発信を行う項目(案)を示しているが、現行のMSDS、アメリカのスチュワードシッププログラム等の項目を網羅的に示しており、このようなものを念頭において検討するべきではないかと考えております。

    コミュニケーションのあり方について、1点目は、対国民、対消費者について、自主管理の透明性をどのように担保するべきかについては、できるだけ製造事業者が持っている情報については、企業秘密等に配慮しつつ積極的に発信する態度が必要ではないか。2点目は、表1に示す項目のうち、事業者が発信できる項目を選択して、まずは実践してみてはどうかということを書いております。

    政策的対応について、今般、経済産業省の研究会ということで委員の方にお集まり頂いている。今後の政策的な関与の仕方という点で、1つ目の丸のところに案を3つ書いております。案1は製造事業者がHP等を利用して情報発信を行うもの、案2は、案1に加えて、経済産業省に情報を提出して、経済産業省も役所としてHP等を利用して積極的に情報を発信するもの、案3は、さらに提供された情報を、専門家の方の集まる機関、第三者機関においてレビューを行うことにより、信頼性向上させるというものである。このような中で、ナノテクの政策的な関与をどのように考えるべきか。2つ目の丸は、OECDでもナノマテリアルに関する議論が活発に行われているので、研究開発の成果をOECDで積極的に発信したいというもの。3つ目の丸は、現在ナノマテリアルに関して評価・試験できる場所・設備が非常に限られているので、そうした中でナノマテリアルの製造事業者が情報収集を行うために、一つの例として、各社それぞれが試験装置を配備するのではなく、当面は、国がナノマテリアルに関する試験方法、評価方法を研究開発しながら、民間の方にもご参加いただいて、ナノマテリアルに関する試験データの収集を行ってはどうかというものです。

    今後の検討課題について、今後の情報発信等としては、逐次アメリカ・ヨーロッパを中心とした各種色々な取組について把握し、それを踏まえて柔軟に体制について検討していくべきではないか。また、使用者等における自主管理については、当面は製造事業者等における取組、取扱量、今後の使用状況を踏まえて、当面は製造事業者に限定したような自主管理というものを取り決めてはどうかと考えております。

    以上が前回ご議論いただいたものを肉付けしたものでございます。これにつきまして、ご意見をいただきたいと存じます。

  • 中西座長

    ありがとうございました。かなり具体的な提案が含まれたものになっているが、皆様のご意見・ご希望を頂きたく存じます。「政策的対応について」の1点目において、ナノマテリアルの製造事業者が情報発信するための考え方が書かれているが、皆さんが見て、どの辺りが良いか、あるいは問題があるかご意見があれば伺いたい。

  • 建部氏

    情報提供に関して、MSDSに追加的に情報を記載するというのは良いアイデアである。しかし、ナノマテリアルの危険性、サイズに起因する危険性というものが明確ではなく、我々は物質固有の危険性と掛け合わせて出てくるのではないかと考えている。そのため、すべてサイズでこのような危険があると言うことは、現実問題としてそれが発現するか分からない状況で、「ナノマテリアルは小さいから違う物性を示す可能性がある、細胞が取り入れる、細胞内に入っていく可能性がある」等と記載した場合に、ユーザーからの本当にそうなのか、どこまで防御すればいいのかという問に対し、製造側としては最大限防御するようお願いするのが一番確実なやり方だとは思うが、最大限の防御を行おうとすると、産業界の負担が大きい。これをそのまま記載することは難しいと考える。産業界の危機感を煽るだけで、実効性はないのではないかと考えている。よって、サイズに起因するものが何かあれば書くべきだとは思うが、現状で、ナノマテリアルはこうです、と一律に書くべきではないと考えています。

  • 武林氏

    国際的な動向を見ますと、最近ISOやOECDでも、どういう管理をするかという議論が欧州では始まっている。特に自主管理の中で、コントロールバンディングのような考え方も出つつある。何がナノの特性として有害性に直結しているかは分からないが、分からないなりに議論を始めようとしている状況である。このため、分からないから全部解決するまで情報を出さないということになると、国際的な競争力という観点から見ても遅れてしまうのではないかと感じる。また、MSDSというツールについて、本日添付されているMSDSは出来の良い物を集めているのだと思うが、「適切な防具を使え」という程度の表現のものがほとんどではないかと思うが、このような表現が受け取ったユーザーにとってどの程度意味があるものなのか。どこまで情報を書くかということは、自主管理のプログラムと関係することだと思う。また、MSDSのアップデートを誰がするかという問題もある。古典的な物質であれば記載する内容はさほど変化しないと考えられるが、新しい物質について、誰が最新の情報について責任を持って伝えるのか、ということも視野に入れるべきではないか。

  • 庄野氏

    今回の提案のあった当面の対応について、日本化学工業協会として基本的には異存はない。「情報伝達の考え方」については、サプライチェーンにおける情報伝達は重要なことと考えているが、上流の製造事業者がMSDS等に書くリスク管理やばく露防止対策については、このようにすると望ましいというリスクヘッジの部分が含まれている。下流の方は設備対応が実際にはできない場合もあるため、一方的に投げるだけではリスク管理はできないと考えている。情報伝達のあり方については、色々なコミュニケーションのあり方があると考えているが現状の知識の中で、コミュニケーションの密度(中身)を考えるべきではないか。

  • 福島氏

    今回の内容については大筋で理解できるが、基本的な考え方として、ベネフィットとリスクをどう考えるか。ナノマテリアルに関してまだ分かっていない中で、製造事業者が積極的に対応して、経済産業省に積極的に情報を提供してもらうことが重要ではないか。 例えば、医薬品の場合は許可が必要であり、副作用が起こった場合にはいち早く届け出るシステムで管理されている。コミュニケーションをどの対象にするか、一般の方の理解を得ることが必要だが、理解しやすいように情報を出す仕組みが必要ではないか。専門的になりがちであるが、一般の方からも分かりやすく情報提供する手法が必要でないかと思っている。また、ナノマテリアルについては国際的に連携して取り組んで行く必要があるので、積極的に進めて頂きたい。

  • 新美氏

    情報を共有していくことは大事だが、ナノマテリアルに関しては何を共有していくかが明確になっていないのが現状であり、経済産業省が中心になって情報を集約していくのが現実的ではないか。ある程度こなれたらこれをMSDSに記載したり、さらに深掘りするよう企業に協力要請等をすることが望ましい。政策的対応としては、案3を前向きに進めたらどうか。

  • 中西座長

    表1に示された情報発信を行う項目が、あまりにも多岐にわたると伝わりにくい場合もあるのではないか。経済産業省で情報を集約する場合、企業名や商品名を出して発信するか、抽出した情報を発信するか、皆さんのイメージとしてどうお考えか。

  • 有川氏

    小さな企業にとっては、開発中のデータも含めてチェックされずにそのまま公開された場合、誤解をされて使われるおそれがあり、また、開発が進むにつれて情報も変わるため、項目全てを網羅するのではなく、安全性や環境への影響が高いものを選別して公開していただく方が有り難い。情報のアップデートに関しては現在取り組んでいるが、かなり労力がかかるのが現実である。

  • 中西座長

    個別企業、商品名についてのデータを出すことには問題ないのか。

  • 有川氏

    今後の検討項目ではあるが、安全性情報に関しては、個別製品の使用される形態を含めた実際の状態が必要と考えられるため、製造者の情報が入らないとまずいのではないかと考える。

  • 中西座長

    例えば、「カーボンナノチューブ」の安全性はどうか、といった情報の出し方はできないはずなので、ある企業で作った個別製品のこのような条件での試験結果はこうです、というように示す必要があるということか。

  • 武林氏

    各企業の情報を集めることになると、結局公開できない情報を集めることにならないか。情報発信する項目として何を集めるかという問題になる。社会として、有害性情報、リスク評価に必要な情報が必要なのか、自主管理を含めたマネジメントに関する情報が必要なのか議論するべき。5頁に示された項目は、企業としては特許に関わる情報もあり、歯抜けの情報になってしまう可能性がある。自主管理は業界で行うのかもしれないが、そのような場合は専門家にとっては役立つが、社会にとって役に立たない情報になってしまうおそれがある。ここを分けて考えないと情報発信は難しい。

  • 小川氏

    自主管理をきちんと行っているということを強く主張するのか、材料そのものの安全性を伝えるのか、工業製品と最終製品によっても変わるので、自主管理の考え方について整理が必要だと思う。

  • 中西座長

    MSDSに記載しているのは、個別製品に関する独自の結果か。このような情報を、ホームページに掲載したり、経済産業省に提供するということに関してご意見はあるか。

  • 有川氏

    MSDSはお客様に対して、製品の安全性について必要な情報を提供するものである。ホームページで公開して、材料を使わない方がその数字だけで遊ばれることを危惧しており、私たちは公開していない。製品には必ず添付して、輸送業者等の製品をハンドリングされる方が、万一の際に最低限の一時措置ができるようにするというのが、製造業者の一般的なスタンスだと思われる。

  • 山本氏

    輸入・流通の事業者の立場から申し上げると、MSDSは一般公開せず、顧客のみに配布するものである。商品によってはMSDSにも非記載するよう海外メーカーから要求されているのもある。一律の対応として、名前を含めた情報提供は輸入業者の立場としては厳しいものと思われる。

  • 岸本氏

    情報収集と公開の目的をはっきりさせるべきである。イギリスの自主的報告制度については、政府が有害性やばく露の情報を収集するために行っており、何件集まっているかという数字しか公開していない。一方、アメリカは、基礎的プログラムと詳細プログラムについて情報提供した企業名を出し、公開可とされた情報については、PDFファイルにして公開している。情報収集と公開の両方狙うと大変な作業が必要となり、事業者を説得して出してもらうためには、提出することが事業者にとって得になり、かつ風評被害を招かないような制度設計を慎重に行う必要がある。情報を収集するだけなら、公表システムを作らずに行ってもよいのではないか。また、ナノマテリアルの性質は、一律にサイズだけで全て規定されるものではないが、情報が何もないときにはサイズによる一律の情報を記載して、その上で、製品に完全に練り込まれているから安全といった情報を事業者から出してもらうという考え方もあるのではないか。

  • 中西座長

    今日の提案は唐突であったため、なかなかご意見が出なかった印象がある。次の会までには意見をまとめて出して頂きたい。私の方から意見として、これだけナノについて多くの方が不安を持っている状況で、黙っていていいのか、安全性に関する情報を取扱業者に渡すだけで世の中は動くのか、一般の人が不安に思っていることで世の中が動くのではなく、積極的に一般の方に情報を出すべきではないか。製造事業者は、商品を出すからには安全だと思っているから出しているのだろうから、その理由を書けばいいのではないか。世の中にそれが認められるかどうかはその次の課題であり、それはまず公表しないと分からないのではないか。凝集体についての情報や、カーボンブラックは実はナノはないといった話もあるが、そう思っているならばその情報を出せばよいのではないか。事業者が現在の状態を黙って見過ごすというのは無策という感がある。今回の議論を踏まえて次回に具体的な議論できればよいと考えている。


4)その他

  • 中西座長

    最後の議題、「4)その他」について、事務局からお願いします。

  • 福島課長

    本日はどうもありがとうございました。資料7の論点等について、さらにご意見等ございましたら、来年1月9日までに事務局にお願いいたします。それを踏まえて次回の資料に反映させる等したいと考えております。次回開催につきましては、2月4日14時から、経済産業省別館11階1120会議室にて開催いたしますので、よろしくお願い申し上げます。

  • 中西座長

    本日はご多忙のところ、熱心なご討議をありがとうございました。本日はこれで閉会します。


以上
 
最終更新日:2009年3月6日
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