経済産業省
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産業構造審議会産業技術分科会基本問題小委員会(第4回)‐議事録

日時:平成21年2月18日(水)15時~17時
場所:経済産業省第4特別会議室(別館3階)

出席者

木村小委員長、飯塚委員、伊藤委員、宇佐美委員、岸委員、鴇田委員、中村(道)委員、夏梅委員、橋本委員、春山委員、丸山委員、渡邉委員

議題

  1. 産業技術政策に関する今後の検討

議事概要

議題1 資料4、5に基づき事務局より説明。

資料4について自由討議

  • 委員
    研究開発小委員
    会で実施したアンケートの結果で、人材の質の問題を企業がいかに評価しているか明確でない印象を受けた。企業が人材に求めているのは質と考えるが如何か。
  • 事務局
    人材の質については自由記述としたが、アンケートの回答率は高くなかった。
    産学の関係者の方と今後の人材育成について意見交換している場では、産業界の声として、従来修士卒に期待しているレベルが学卒のレベルに落ちているというように、基礎的な学力や自分で物事を考えて行動する人間力といった能力が落ちているのではないかという声が8割以上になっている。さらに、ゆとり世代の教育を受けた学生が、後数年すれば卒業していくということで、今後に対する危機感は大きい。
  • 委員
    日本の長期にわたる不調はグローバル化への不適応にある、という意識が産業界では非常に強い。国際的な分業の中でビジネスがうまく構築できていない。バリューチェーンを国際的に構築する競争の中で負けている。今、日本の一番の困難は、同じ、あるいは同等以上の製品がはるかに安いサービス、コストで国内に入ってくることにある。
    人材育成についての産学連携小委の資料2頁目のあたりに(1)から(6)まで論点があるが、このような議論の中にグローバル化に対応できる人材をいかに育てるか、獲得するかという議論はなかったのか。私は危機感を持っているが、人材についての論点でグローバル化という視点が全く無いので驚いている。
  • 事務局
    「イノベーションを担う人材」の中に、グローバル化に対応できる、さらに新しいビジネスモデルを構築し今までなかった価値観を創り出せるような人材ということで含めている。その点をMOT的な視点も含め、分かり易く書き込みたい。

資料5について自由討議

  • 委員
    1点目は言葉の使い方で、資料5-2の2頁に「基礎科学技術分野と、出口を見据えたイノベーション政策では、ミッションが異なる」とあるが、この言葉では研究者は誤解する。その2行上に「基礎研究は引き続き重要であり、出口への貢献が期待できる」と書いてあるように、出口を見据えたイノベーション政策に重要な研究として、基礎研究がある。「基礎科学技術分野と出口を見据えた」と分けてしまうと誤解を生むので、「基礎科学分野と出口を見据えた科学技術分野」と書くべき。
    現在、日本においても優秀な研究者がいないのではない。ただ、この優秀な研究者が、基礎科学分野に偏在していることが非常に問題で、今後は基礎科学分野の優秀な人材を、いかに出口を見据えたイノベーションに繋がるような科学技術分野に持ってくるかということが大変大きな課題。したがって、言葉遣いはしっかり使い分けておく必要がある。
    アメリカでは、基礎科学分野から驚くほど急に人材が動いている。エネルギー長官になったスティーブン・チューが所長を務めていたローレンス・バークレー研究所の太陽エネルギー研究センター副所長が日本に来ており、アメリカのエネルギー関係の研究の情報を得たが、基礎科学分野でノーベル賞候補、あるいはノーベル賞をもらったような研究者が予想以上の勢いで出口を意識した分野に入って来ているとのこと。スティーブン・チューはその代表例だが、明らかにイノベーション、出口を意識した研究に取組んでいる。しかし、彼らは出口自体に取組んでいるのではなく、やはり基礎研究を行っている。
    さらに驚いたのは、アメリカ人の若い学生、優秀な大学院生がこの分野にどんどん入って来ていること。アメリカでの基礎科学分野の研究者は大半がアジア人だったが、二、三年前から、今回の金融危機の前から大きく変わったとはっきり言っていた。優秀な人材は金融界に流れていたのだが、地球規模の問題が随分分かってきて、優秀なアメリカの若手がエネルギー分野の基礎研究分野にどんどん入って来た。まさに今、我々が目指さなければならないことだが、まだその方向に向かっていない。優秀な基礎科学分野の研究者をいかにこの分野に引っ張ってくるかが大変重要な課題。
    そのための課題は幾つかあるが、例えば、パーマネントのポジションが大学や研究独法で減っていることがある。3年ないし5年のプロジェクトで雇用できる競争的資金は増えているが、パーマネントのポストはどんどん減っている。アメリカでも同様だが、やはりアメリカのようなモビリティの高い社会と、日本のように落ちついて研究に取組む社会とは違う。最近の経済的な危機で特に顕著になってきたが、優秀な学生が非常に浮き足立っている傾向にある。今修士の1年生が、来年の就職を考えて就職活動を始めようとしているところだが、彼らはすごく浮き足立っている。やみくもにパーマネントを増すべきと言うのではないが、現在大変な勢いで減っているという事実は知っておく必要がある。
    資料5-3の2頁目の「ピンチをチャンスに」の中に事例が幾つかあるが、安全に対する科学技術が非常に重要。高付加価値型のサービスを提供できる製品を考えた時に、食の安全や新型ウイルス対策等、安全はキーワードになる。物にあふれた富裕層も、安全を守るためであればお金を使うことは明らかなので、この切り口も例示として入れておくべき。
  • 委員
    日本の大学や研究所の実力は大きいと評価しているが、効率という点で見るといささか問題がある。出口からの落とし込みで、その基礎科学が存在している比率が少ないのではないか。カーネギーメロンの研究者等と話をすると、アメリカには出口がない基礎研究はないとのこと。これも極端な印象もあるが、我々にとっては大変にショッキング。
    もう1つ問題は、企業の中でも基礎研究、我々は先行研究といってすぐには商品にならない研究や材料の研究等に取組んでいるが、これが十分うまく回っていかない。研究、R&D、実用化までのプロセスをバトンタッチしていく仕組みが企業の中でも弱い。ましてや、国という大きな組織になった時、大変大きな課題。朝原が素晴らしい400メートルリレーを走ったように、日本の国民特性としてのチームワークを活かし、バトンタッチをしていって、必ず出口に繋げていく日本の科学技術の仕組みを構築すべきで、そのためにはプロジェクトマネジャーのようなキーパーソン、制度を整備すべき。
  • 委員
    資料5-3の5頁からかなり精緻に技術戦略のモデルが書かれている。その中で、サービスが一番上位にあって、機器、デバイス、エレメントというように整理されており、これは大変重要なこと。特にサービスという観点がしっかりと書き込まれており、このような形での整理は、まさに出口を見据えた研究の1つの流れとして大変重要。
    ただもし可能であれば、このサービスのバリューチェーンにおいて社会でどういうコストが発生して、誰がそのコストを負担するのかという、ある種のお金の流れ、ビジネスモデル、大きな産業イメージを描いて欲しい。例えば既存産業はここにあって、今回のサービスは、既存産業と半分は一致しているが、残り半分で新マーケットが生まれるといったイメージ。健康の予防で言えば23兆円の医療経済の5%程はこの領域に移る等、大まかな図があると今後の儲けのフロンティアが大変分かり易い。そうすると、恐らく国の政策のレバレッジが効いて、社会全体で10倍程の様々な市場創出効果が発生するのではないか。
    さらに、先程のコンテスト型の新しい仕組みにおいては、ビジネスモデル的な絵を書いて、マネジメントをする人材にプレゼンをさせるのが良い。その人材に一定のリソースを一任して、チームを作らせ、2、3年任せてみる。上手くいけば、その人材はベンチャーを作っても良いし、人が見える形でコンテストを開いて、その人材を中心にサポートするシステムも面白いのではないか。
  • 委員
    資料5-3の5頁に「先進診断・予防」とあるが、大変良くまとまっている。例えば疾病リスク予測というのがあるが、ゲノム解析を使ったそのようなサービスが既に存在している。デコード社という1990年の末頃に設立された会社で、アイスランド国民全員のゲノム解析をして、そこから疾患遺伝子を割り出すことを始め、2年程前から「デコード・ミー」というサービスを始めている。これは良いネーミングだが、人をデコードするということ。頬の上皮を少し削って、封筒に入れて送ると、27の疾患について病気のなりやすさと、生活指導のサービスが返ってくる。入会金が大体100ドルで、毎年お金を払うと、健康のコンサルタンシーを受けられるというサービス。
    この話と資料5-3の5頁を見て、なぜ我々にはそのようなことが考えられないのだろうかと思う。1つは、サービス業なので複眼的な物の見方が必要。日本はシーケンサーの技術等は非常に強いが、それをサービス業と結んで横展開するビジネスが弱い。またデコードサービスは、ウェブサイトを使った契約で個人情報にアクセスさせる形になっているが、個人情報をいかに守るかといったことや、諸々の倫理問題からすべてひっくるめて最初からハードルを高く考えてしまうと、このようなサービスは怖くて始められない。サービスを始めてから諸々の問題を考えようという発想もあるのではないか。このように横に連携することや、そのための人材を育てコミュニティを作ることが必要。
  • 委員
    ビジネスモデルを伴った技術戦略が極めて重要。ある電機機器会社では「グローバル・テクノロジー・アウトルック」という技術戦略ドキュメントを毎年作成しているが、これに取組むと何ビリオンダラー生むのかといったことを聞かれるため、調査してその市場の何割を自社のビジネスとするのかを考える。ビジネスモデルを常に頭に入れて、ここは幾らになるのかということを考えながら進めることが大切。
    その意味では、資料5-3の中にある絵は、若干個別の技術に落とし過ぎている嫌いがある。むしろ社会システムとして、共通に使えるような技術があるのかを思考実験しては如何か。モデリング技術や最適化技術、社会システム技術といったものがあるのではないか。
    2点目は、人材モビリティについてで、私は今の若者の問題を逆に捉えている。実はモビリティの余りない研究所が多いために、本来縮小されるべき分野の研究者が多く残って、新しい人材が入ってくるのを拒んでいるのではないか。むしろ既存の研究所のモビリティを高めることによって新しい人材が多く入れる仕組みができれば良いのではないか。
  • 委員
    資料5-3の5頁の絵は、重要なことを提案している。水処理で言えば、膜が一番下の部材、その上がキット、それからシステムがある。日本が弱いのは、例えば都市計画の下水処理システム等、ビジネスとしてサービスを立ち上げるところ。ものづくりとなるとどうしても下のレイヤーにある部材やデバイス、あるいはモジュールになってしまう。ビジネスモデルでは、特にシステム、サービスが重要であって、この領域をいかに強化していくか、またこの分野の人材をいかに育てるのかが重要。
    個々の事例は例に過ぎないが、このような形で取組むのは非常に重要。さらに、サービスのこの分野を強化していくという国家レベルの産業政策と合致すると、非常に良い成果になるのではないか。
  • 委員
    社会システムや1つの文明を変えるような大きなことに取組もうと思うと、大変なエネルギーが必要。今までは自然発生的に内燃機関が発明され車になって、ハイブリッドができて、何年もかけて産業が出来上がって来たのだが、それを意図的に仕組むとのことなので、大きなエネルギーが必要。
    資料5-2の2頁の上から4行目に「これまでも自動車産業と家電産業の成長と社会システムの現出は一体」とあるが、恐らくITS等を念頭に置いているのだと思う。ITSは自分たちのビジネスエリアが広がるという考えから出発しているが、この技術によって安全や環境、車の渋滞といった問題が緩和され、社会的な大義が達成される可能性も高い。
    このようなことを実行する時に、国、官と民が取組まなければならないことがある。民は競争領域があるため、現状のビジネスエリア、あるいはビジネスの世界を頭の中に置いて、これは競争領域だから自分たちのビジネスにしたいという意見がすぐ出てくる。しかし、かなり先の未来のことを目指すべきで、社会的大義の錦の御旗が必要。その課題をクリアすれば、民の統合、つまり「ここは協調領域で、ここは競争領域にする」というのが必ず出来る。
    2つ目は官の努力で、ITSで一番困ったのは各省の縦割り。お互いにネゴシエーションしながら、4省、5省が絡んでいるが、恐らく日本の中で一番上手くこなしているのは自動車業界と電機業界で、常にコミュニケーションの場を持って進めている。このような場も必要だが、それだけでは不十分。先程言ったように、基礎研究から出口まで持って行くには、1つの資本で動いている企業の中であってもなかなか上手くいかない。それを上手く出口まで持って行くには相当なエネルギーが必要で、そのエネルギーを出すのは人。ただ人を動かすのに、今の総合科学技術会議だけではまだ不十分ではないか。R&DのRにお金を入れても、Dをどうするのか、技術をいかに普及させるのかを考えなくてはならない。そのためには科学技術だけではなく、インフラをどうするか、政策的なインセンティブをどうするか、様々な規制緩和の課題を解決していかなければならない。結局、各省庁の仕事を全部束ねて出口に持って行くことが必要で、この複雑な問題を旗振りする人、あるいは部署が必要。
    民間は民間で社会システムに向かって十分議論する場を自ら設けなければならない。そして官はその上に立って、縦割りを上手くクリアしなければならない。さらに、R&Dからアプリケーションまで引っ張っていく国の制度を構築することも必要。
  • 委員
    今回、サービスまで視野に入れて書いてあるのは非常に良いが、一番下のレイヤーにある素材、部材、要素技術は、大半がナノテクノロジー・材料。先ほど、材料は日本が強いという紹介があったが、ナノテクノロジー、あるいはナノエレクトロニクスについては、アメリカやヨーロッパが今大変な勢いで力を入れており、むしろ日本の企業もアメリカやヨーロッパに依存、あるいは人も移すという動きになってきている。現在、ナノエレクトロニクスの共同開発拠点を提案しているのは、このような背景がある。日本の強い領域をどこにするかという議論が必要。
  • 委員
    資料5-2の3頁に、新しい研究開発型の先端的ベンチャー等を活かすということで、中小企業やベンチャー、異業種の参入を促す枠組みに触れているが、従来の枠組みでは上手く行かない。例えば、新たな税制や積極的にベンチャーを支援するクラスター等、協調を促進する新しい枠組みを構築する必要がある。
    また、グローバル化の視点が全体的に薄いのではないか。例えば今、日本に進出してきた外資系の大手製薬会社の研究所は大半がチャイナシフトしている。日本で海外の大手製薬企業等も巻き込んだグローバルレベルでの研究開発が必要。
    高齢者が元気に暮らせる社会システムとして、予防、治療、ロボットが挙がっているが、この間に創薬そのものという大変重要な分野が抜けている。ライフサイエンスが日本で研究開発を進める重点業種の1つであれば、抗体医薬を日本の製薬会社が数千億円で海外へ買いに行く実態を直視して、この分野の研究開発は少なくとも日本初で進めるべき。創薬は分子化合物から始まって、ペプチド、抗体医薬、核酸、その次に再生や移植があり、その重要度のウエート付けをして整理し直す必要がある。
  • 委員
    資料5-3の2頁にある「ピンチをチャンスに」の事例が、例示として挙げているのか、世の中を網羅的に捉える視点で挙げているのかにも依るが、「安全・安心」等キーワードが幾つか抜けている。
    また各省庁と話をすると、同じテーマについて、それぞれの省庁が違う立場から同じ議論を繰り返しているように感じられることがある。省庁連携という言葉が盛んに言われているが、議論も縦割りではなく省庁連携して行うべき。
  • 委員
    グローバルの視点は非常に重要。グローバルに通じる人材と同時に、グローバルの人材、つまり外国人をいかに教育して日本の中に植えつけるかという点が資料に反映されていない。その時一番大きな問題は英語で、この点も検討すべき。
    2つ目の課題は、基礎研究の人材がシフトする点。今日もナノ分野の大規模なイベントがお台場で開催されているが、アメリカの強みは、基礎研究者の分厚い人口。人口の少ない日本は全部一緒に出来ないため、テーマをいかに絞るかが重要。資料では、ヨーロッパやアメリカと同様に、網羅的に日本も取組むという印象を受ける。テーマの絞り込みにいかに踏み込んでいくのか考えるべき。
  • 委員
    資料5-3の5頁は大変重要な図面だが、すでに明白なこと。日本はデバイス、材料分野では世界で非常に強いポジションを持っていながら、それでシステムを組み、大きなサービスに繋げるところが弱い。iPodの例では、ハードディスク等は日本のメーカーがしっかり押さえているものの、利益率は大幅に小さく、iPod全体を売っているアップルが大きな利益を得ている。さらにそれだけでなく、サービスでより大きな利益を別に儲けている構造は周知のこと。グローバルな中での付加価値の取り合いで日本は負けている。さらに今、デバイスや材料も怪しいと言い出している状況。したがって、この図面は正しいがもっと深めるべき。
    サービスは付加価値が圧倒的に大きい領域。実はデバイス等より遙かに大きく、デバイスよりも先に取組むべき。そのためには、国際関係、民族関係、文化までを良く知り抜いたグローバルなゼネラリストが必要。その人材をいかに育成するか、そこに取組むべき課題が非常に多くある。幾つか絞って検討しなければ、今まで各省庁で議論したことを別の観点から述べるに過ぎなくなってしまう。まさに今、産業界は付加価値が取れず悩んでいるのではないか。
  • 委員
    医薬品産業には、創造性の高い部分とコストメリットを追求しなければならない部分がある。大型の製薬会社は、確かに日本から移っているが、中国、インドにシフトしている理由は、コストを追求できる点。例えば、評価化合物を大量に安く作るといった場面では、日本では工賃が高いため海外に移っている。日本は同じ方向を追求しても意味がなく、付加価値の高い研究、上流の本当にイノベーティブな領域に取組まなければならない。
    そのためには、イノベーションは様々な情報が交錯する場で起こるもので、様々なバックグランドを持った人材、異なった考えの人材が集まるグローバルな拠点を作るべき。去年の夏にミュンヘンにある小さな抗体の会社を買収したが、1つの魅力は、マックス・プランクインスティテュートと同じ地域にあるという点。この地域はライブラリーを持つバイオベンチャーやマックス・プランクの研究者が多く集まる地域で、その交流の中から共同研究等が生まれてくる。したがって、外国人を引きつけるような魅力のある場所、サイエンスのレベルだけではなく待遇も含めて考え、日本に1つのセンターを作るべき。

以上

 
 
最終更新日:2009年3月24日
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