経済産業省
文字サイズ変更

ZEBの実現と展開に関する研究会(第4回)ー議事要旨

日時:平成21年7月15日(金)15:00~17:00
場所:経済産業省国際会議室

出席者

坂本委員長、合場委員、稲塚委員、大岡委員、片倉委員、川瀬委員、久世委員(竹内代理)、栗山委員、黒田委員(植田代理)、佐藤委員、田辺委員、中上委員、野浦委員(栗尾代理)、長谷川委員(佐藤代理)、廣岡委員、松丸委員、村木委員、森本委員、米川委員

議題

  1. ゼロ・エミッション・ビルの実現と展開に関する論点整理(案)について(事務局より説明)
  2. テナントビルにおける取組、ビル群でのZEB化、都市における未利用エネルギーの活用など
    • 合場委員からのプレゼンテーション
    • 片倉委員からのプレゼンテーション
    • 村木委員からのプレゼンテーション
  3. 自由討議
  4. 今後のスケジュールについて

議事要旨

坂本省エネルギー対策課長より、資料3に沿って「ゼロ・エミッション・ビルの実現と展開に関する論点整理(案)」について説明。その後、合場委員より資料4、片倉委員より資料5、村木委員より資料6に沿ってプレゼンテーション。その後、自由討議。

我が国におけるテナントビルのZEB化に向けた課題

  • テナントビルのZEB化に向けては、オフィスは「人が働く場」とし、サーバー等は専用の施設へ移し、徹底的に集中したエネルギー管理が必要だという話があった。その際、企業によっては、セキュリティポリシーの関係からマシン管理のアウトソースに消極的であることが課題ということだったが、実際にビジネスをしていると、セキュリティ面はそれほど大きなハードルになっていないのではないかと感じている。セキュリティ面での問題以外に何か問題点や懸念があれば教えていただきたい。
  • テナントへの省エネに対する協力要請において、実際にどのような「壁」があるのか。
     テナントビルには、共用部とテナントの専用部があるが、共用部のエネルギー消費が占める比率は全体でみるとどの程度なのか。また、共用部における省エネの取組について教えていただきたい。
  • テナントへの電気料金徴収の課金システムついてお伺いしたい。特に中小ビルにおいては、オーナーがテナントに請求する電気料金が、必ずしも電力会社の料金体系に合っていないという話を聞く。家庭以上に高い料金を支払っているテナントもいるのではないか。このような実態は、省エネに対するディスインセンティブとなる。このような状況に対して、電力会社からの指導を仰ぐことはできないか。
  • 東京都心部と地方部では、ビルの賃料も大きく異なることから、ビルのコストに占める光熱費の割合が変わる。例えば、丸の内界隈と地方都市では省エネの意義も異なると思うが、これに関して社内や業界内で議論があれば教えていただきたい。
  • クラウド・コンピューティングの話は、省エネを考える上でこれから日本でも大きな課題になると思うが、サーバーが遠隔地に行ってしまうことで、テナントが確保できなくなることも考えられる。この問題に関してはどう考えるのか。
  • 新築ビルにおける再生可能エネルギーの寄与度に関して、太陽光発電で賄えるエネルギーが新築ビル全体の0.1%程度というプレゼンテーションがあったが、相当小さい。太陽光発電の設置状況や屋上の占有率等について教えて頂きたい。
  • 東京都のCO2排出量の36.4%を業務部門が占めている。さらに、約1,400件の大規模事業所がCO2排出量全体の約4割を占めており、非常に集積度が高い。東京都の方針としては、2010年度から2014年度までに8%、2015年度から2019年までに17%のCO2排出削減を義務付け、さらに一定規模以上のテナントに対してはCO2排出量の報告を義務付けている。東京都によると、上記規制の説明会に約4,300人が集まったとのことであるが、こうした東京都の規制が実際の業務に与える影響やテナントの意識の変化はあるのか。
  • データセンターにも色々な種類があると聞いている。自分たちから1cmでも近い方がいいというテナントもいれば、北海道にあってもいいというテナントもいる。丸の内に限定して考えると、外資系金融機関を中心に、トレーディング等で各企業が秒単位で競っている環境であり、メンテナンスの要請も考慮に入れるとより近くにデータセンターがある必要がある。
  • テナントへの省エネに対する協力要請の壁については、例えば、夏場の空調設定温度を高めにするようお願いすると、このビルにはいられないと言い出すテナントも現実にはいる。このため、ビルオーナーの立場からは、お願いはできるが強制はできないという現実がある。
  • ビルを運営・管理する立場として、色々な部分に口を出したい気持ちもあるが、ビルの専用部に関しては、セキュリティが厳しくなってきており、専用部の内部にはなかなか入り込めないのが現状である。
  • 共用部と専用部に関しては、エネルギー使用量の割合からみると、テナントが専用部で約60%~70%を使っている。共用部の省エネ対策に関しては、ビルの収益にも直結することなので、現在ある技術は基本的に採用しており、運用面においても極限的に省エネを実施していると認識している。
  • テナントに対する電気料金の徴収方法について、電力会社の料金体系よりも高値で請求するオーナーがいるのではないかという指摘があった。テナントに請求する料金には、受電設備の導入コストやメンテナンスコストを含めている場合もあり、一概にそれをもって、オーナーが電気料金徴収で儲けているということはできない。この場合には、ビル設備費の分が電気料金に乗っていることから、賃料が安くなっている可能性もある。
  • 東京都心部と地方都市における省エネの意義の違いについて、地方都市において不動産に環境投資をすることは経営的に難しいのではないか。賃料に占める光熱費の比率は地方都市の方が都心部に比べて圧倒的に大きいのは事実であるが、賃料が安くテナント数が少ないことから、費用対効果の面で大きなハードルがある。
  • 太陽光発電の設置状況について、本日の論点整理(案)の中でも記述されていたように、日本は狭い土地に高密度にビルを建設しているため、太陽光発電パネルを設置するスペースはどうしても限られる。建物の階数にもよるが、丸の内パークビルの場合、屋根面積の約3割に太陽光発電パネルを設置している。しかしながら、屋上利用には様々なトレードオフが存在する。例えば、100mを超す高層ビルの屋上には緊急用のヘリポートを設置しなくてはならない。屋上緑化との折り合いも課題である。さらに、環境省が推進しているクールルーフの設置スペースも確保しないといけない。ビルの屋上スペースは様々な使い方があり、一面に太陽光発電パネルを敷き詰めることは現実的でない。
  • 昨年度、自社所有の2件のビルが東京都から表彰されたが、それらは20年ごとの改修期間にたまたま当てはまったということで、タイミングがよかった。一方、これらのビルのCO2削減率は5%程度にすぎず、東京都の2010年度から2014年度までの目標である8%に達していない。東京都の業務用ビルに対する規制の根拠は、2020年までに東京都全体で2000年比でCO2排出量を25%削減するという上位概念に基づくものであり、実現可能性に関する検討は行われていない。また、エネルギー消費の6~7割程度がテナントの専用部によるものである。テナントのエネルギー使用を制限することによって、ビルの資産価値が下がってしまうことも考えられ、ビルのオーナーにとっては死活問題である。テナントにとって働きやすいオフィス環境を提供することが我々の責務であり、働き方、使い方までは介入できないという現実がある。

ZEBの普及に向けた啓発やインセンティブ

  • フラッグシップモデルとしての省エネビルという話があった。消費者からの理解を促すため、建築物の環境性能評価と格付けに関して国土交通省が主導して実施しているが、このようなラベリングを行う上で何か問題点はあるのか。
  • ラベリングに関しては、政府等においても積極的に進めて欲しいし、ディベロッパーとしても積極的に進めていきたいと考えている。不動産業界全体でみた場合、業界の一部は前向きであるが、事業者によってできるところとそうでないところに歴然とした差がある。このため、環境性能によるラベリングをビルの価値尺度にすると、有利なところと不利なところが出てくる懸念もあるので、業界の代表としての立場からは発言に慎重にならざるを得ない。ただし、総論としては賛成である。
  • 環境不動産が市場で評価されていないという指摘は大変重要な視点である。CASBEEとの関連性も含め、今後の研究会の中でも検討していく必要があるのではないか。米国のLEED等の動向もある。物理的な取り決めだけでなく、市場から受け入れられる対策も、併せて考えていく必要があるのではないか。

ZEBの実現とヒートポンプの可能性等について

  • ヒートポンプという技術に大きな省エネ効果が期待できるというのは、頼もしい限りである。家庭でのCO2削減にも効果があるとのことだが、値段がネックになっていると聞いている。業務用に使うとなると、コストダウンの問題があると考えられるが、ヒートポンプを使った場合の省エネ効果と、将来のコストダウンの可能性についてお伺いしたい。
  • 家庭用の冷暖房に使う空調機に関しては、現在は一般の空調機とほとんど価格に差がない。同じような機能で値段に差があるものに関しては、効率の点で差があるが、総じて大きな差はない。家庭用の給湯器に関しては、ヒートポンプ給湯器の方が一般の給湯器に比べて若干高いというのが実状であるが、ランニングコスト削減によるメリットを加味すれば、1年程度で投資を回収できる。
  • 業務用については、多少難しい問題もある。エネルギー供給会社が各々どのようにバックアップしていくかが今後の課題ではないか。日本の市場は小さく、多くのメーカーがひしめきあっているという競争事情がある。米国メーカーが東南アジアで販売しているヒートポンプの価格は、日本の約3分の1である。この要因としては、米国メーカーは国際市場をターゲットとしており、規模のメリットによる原価低減を実現しているためであると考えられる。国際化が進んでいけば、近いうちに世界的な標準レベルの価格で利用することが可能となるのではないか。

ZEBの実現とエネルギーの面的な利活用について

  • エネルギー消費量を50%削減できるという話は、熱源を持っているビルを前提に考えているが、エネルギーの面的利用の場合、熱源に関して個別のビルによる省エネ努力は関係ないことになる。今後ZEBの検討を進めていく上で、エネルギーの面的利用を実施している場合の省エネ量の配分の仕方に関する評価指標が必要ではないか。
  • 「面的」という言葉の意味、定義に関してコメントさせていただきたい。地域冷暖房と建物間の融通を合わせてエネルギーの面的利用といっているが、地域冷暖房のシェアが日本でどれだけあるのか。日本で地域冷暖房によって熱を供給している床面積は5,000万m2程度、150地区であり、日本全体からみると3%程度にすぎない。さらに、熱供給している建物全体からみると、熱源としては0.6%程度である。エネルギーの面的利用によるCO2排出削減については、極めて少ない割合の部分について議論していることを認識しておく必要がある。建物間の融通に関しては様々な制限があり、なかなか前に進んでいかないのが現状である。
  • 未利用エネルギー、再生可能エネルギー、排熱利用は個別のビルでは上手く使えないものを面的にやると効率化できるということが最大のメリットである。しかしながら、導管の整備費など単独の事業としてはとてもできず、なかなか普及していないのが実態であるから、制度的な支援策が必要である。
  • エネルギーの面的利用に関しては、エネルギーを面的に利用すれば、すべての問題が解決されるというわけではない。また、熱供給料金の約3分の2が主として導管に関わる固定費であり、コスト削減に向けた努力が必要である。
  • エネルギー面的利用による省エネ効果の評価方法に関しては、非常に重要な課題であると認識している。本日の論点整理(案)にも設計段階と運用段階のZEBそれぞれについて触れられていたが、CO2が実態としてどれだけ削減できたかということが重要であり、実効効率も含めた評価指標を確立していく必要がある。
  • 地域冷暖房は、元々、大気汚染対策という側面から普及してきた。今後は、CO2削減という新たな目標に向かった普及方策を検討していく必要がある。ビル単体でのエネルギー効率向上も必要だが、色々な対策を積み上げていかないと大幅なCO2削減はできない。エネルギーの面的利用にはある程度コストがかかるが、将来の都市部におけるエネルギー供給インフラの整備という観点から、未利用エネルギーや再生可能エネルギーの活用も考慮に入れたエネルギーの面的利用の促進方策を政策的に考えていかなければならない。

我が国におけるZEBの概念、評価方法について

  • 同一ビルのテナントでもエネルギー消費量が10倍違うという話があった。そうすると、ビルの性能がまったく同じでもあるにも関わらず、入っているテナントによってZEBになるものとならないものが出てくる可能性がある。ZEBの概念についてどう考えるべきか。ZEBのBを「ビジネス」として捉え、ビルの性能に関して評価するのと同時に、ビジネスの形態についても評価する必要があるのではないか。ZEBがビルの性能のみに基づくものと認識すると実態と合わない。テナントや業態の違いを評価できるような仕組みが必要ではないか。
  • 業務用ビルには、オフィスビルだけでなく、商業施設などが入った複合用途ビルもある。同一のビルでも、テナントによってエネルギー消費量が大きく異なるということであれば、テナントの業種構成等を明記しておく必要があるのではないか。ビルのエネルギー消費量は、ビルの省エネ性能だけでなく、テナントの使い方による影響が大きいにも関わらず、最終的な評価指標がエネルギー消費量だけであると、ビルの省エネ性能が悪いのではないかといったミスリードを起こす可能性がある。
  • 異なる業種のテナントを、床面積あたりのエネルギー消費量のみで評価することに無理があるのではないか。エネルギー消費量を床面積、稼働時間、デマンドで原単位化して整理するとよいのではないか。
  • テナントによってエネルギー消費量が10倍違うというのは事実である。都心部を国際金融センターにしていこうとする動きもあり、海外との競争を勝ち抜くため、24時間働く人たちをサポートするようなオフィスを作ることも重要である。一方で、こうした動向は低炭素化に逆行する。低炭素化を実現するために、経済活動を抑制することになってはいけないと考える。省エネやCO2削減の側面だけでなく、生産性向上のような効果を評価指標に組み入れていくことが必要ではないか。ビルを単体だけでなくビル群としてみることや、都心部と地方都市との関係も絡めて考えていくことが必要ではないか。

以上

 
 
最終更新日:2009年7月31日
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.