経済産業省
文字サイズ変更

クラウド・コンピューティングと日本の競争力に関する研究会(第1回)-議事要旨

日時:平成21年7月22日16:30~18:10
場所:中央合同庁舎第7号館1114共用会議室

議事概要

冒頭、事務局から資料に沿って、本研究会の開催趣旨およびクラウド・コンピューティングの検討項目等について説明。委員からの発言要旨は以下のとおり。

クラウド・コンピューティングの将来ビジョン

  • クラウド・コンピューティングの議論には、(1)クラウド・コンピューティングの的確な定義、(2)技術的なインパクトの明確化、(3)サービスの構造化についての共通認識が必要。
  • クラウド・コンピューティングの定義は多様なので、正確な定義を求めるよりもむしろどのようなビジネスや社会サービスにどのようなインパクトをもたらすことができるのかを考えるのが重要。
  • クラウドを導入すれば解決できる課題と経営やガバナンス等を見直さなければ解決できない課題があり、課題の本質を認識して議論を進めることが必要。
  • 些末な議論に陥り、大きな流れを見失わないようにしなければならない。サービスインフラとしてのクラウドが、ビジネスモデルの構造を変えるという観点が必要。
  • クラウドへの情報の提供や、クラウドサービスの受け手が将来は人間だけではなくセンサー、ソフトウエア、その他社会インフラと密接な関係をもってくる。その社会・物理インフラとの融合の中でどのようなクラウドサービスが実現でき、どのようなクラウドのエコシステムを作っていくのが重要になる。
  • 所有型から利用型へのシステムの使い方の変更が「クラウド・コンピューティング」の定義。現行システムの4割はクラウドへ移行し、6割がクラウドを利用しないと予想するが、双方を組み合わせるハイブリッド型も多くでてくる。運用技術の向上が必須。
  • インターネットは、CD、DVD、音楽、映画等のパッケージ流通の一部を、ネット流通へと移行させた。インターネットはコンピュータ同士が繋がるネットワークと考えると、コンテンツに限らずIT産業全体に大きなインパクトがあるはずであり、それが今、クラウド・コンピューティングという形で顕在化し始めた。
  • 現在、ユーザー企業からサーバー統合や仮想化の依頼はあるものの、コスト削減を目的としたものが多数であり、イノベーションにつながっていない。
  • クラウド・コンピューティングのインパクトと成長分野の観点から、検討テーマを絞り込み、戦略分野と位置づけるべき。

ビジョン実現に向けたロードマップ

  • クラウドの普及に関する障害、課題、懸案事項等を具体的に洗い出し、共通理解の上で具体的に議論したい。
  • クラウドのメリットは(1)簡単、(2)早い、(3)安い、課題は、(1)セキュリティ、(2)混在環境におけるパフォーマンス、(3)J-Sox等コーポレートガバナンス対応、(4)Lock-in回避。デメリットを解決できれば、クラウドの継続的な利用が促進される。
  • 現在は、スケールメリットを活かしたビジネスに取り組んでいる企業がクラウドを先導しているが、技術力、環境への取り組み、コスト面での競争力等の企業戦略が今後ますます重要になってくる。
  • システムは「時間」の概念が非常に重要であり、クラウド・コンピューティング導入の一つの価値。全てのシステムがクラウドへ移行することはないが、移行できるものも非常多い。
  • 現在、日本のデータセンターも省エネ、温暖化対策を進めている。データセンターとして他拠点とのバックアップ技術、仮想化技術の実証を通して、運用の実践的課題を検討。
  • 官庁利用を促進するには、予算、会計制度、ベンダーLock-in問題等の解決が必要。
  • OpenAPIはLock-inを解決する一つの手段。
  • クラウドは全ての階層における新しい技術の組合せ。クラウドは「新しい技術」であり、ユーザー発の技術。クラウドの主流はオープンソースで開発されたものの整備となっているので、ベンダー側は、付加価値をつけて、高コストでも競争できるかを検討する必要がある。
  • レガシーからオープン化、標準化による水平型モデルへの転換は、利用者へ高度なIT管理能力を要求した。一方、クラウドは過去に問題視されたレガシーモデルに類似した面を持つ。過去の経験を活かして、各々の問題点を踏まえた階層設計と政策的な対応を検討することが重要。
  • パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウド等、カテゴリ分けを意識したシステム・データの取扱いについて検討が必要。
  • パブリッククラウド、プライベートクラウドの技術は同じであるが、効用やメリット等は異なるため、プライベートクラウドの位置づけを明確にしておく必要がある。
  • 国家戦略と企業戦略の線引きを検討に入る段階では議論する必要がある。

利活用拡大に向けたガイドライン・指標等の整備

  • セキュリティや信頼性確保のためのガイドラインについては既存のものがあり、クラウドにおける課題に100%対応しているわけではないが多くはカバーしている。また、顧客リクエストに対応する形で進化している(ロードバランシング、オートスケーリング等)。また、相互運用性、Lock-inの問題についても、ガイドライン的な手法を技術的解決手段との組み合わるという選択もあるはず。
  • ミッションクリティカルなシステムとシェアードサービスの間にある中間層のシステムのクラウド移行は、技術的には問題ないが、セキュリティ監査、内部統制等の法規制が制度的にクリアされるかが懸念される。
  • 複数のSaaS、ユーザーの利用シーンを考えると雑多な認証やブラウジングの多画面問題などが顕在化する。今後、サービスレベルでの連携、標準化等の検討が必要。
  • 映像配信、無線の暗号化等ビジネスシーンにフォーカスし、安全安心を評価できる仕組み、セキュリティの格付け等の制度整備が重要。
  • カナダでは、政府機関がアメリカのクラウド・ホスティングサービスを利用することを禁止。米国法により米国内にあるデータセンター内のデータを閲覧可能としていることが理由。日本政府としても対応が必要なのではないか。
  • コンテンツ配信にフォーカスしたクラウドは放送的要素が含まれる場合があり、倫理規定や認定、認可、監査等の対応が必要となる可能性がある。EUの個人情報保護指令にもあるように、第三国へのデータ移行について何らかの保全措置が求められるような制度が必要。
  • 知財の扱いに関する日本版フェアユースの観点において、クラウド上のデータ共有、複写については現状グレーな部分があるのではないか。今回の研究会を通して対応を検討すべき。
  • 世界的要請である省エネ、CO2削減対応を通じて、日本独自のエネルギー消費技術、地震・災害対策を検討してきた知見を活かし、信頼性・安全性を追求するべき。
  • クラウド事業の成功はサーバー増設に直結する。段階的に増設できる柔軟なデータセンターモデル、且つ、PUEは世界最高峰の水準1.2xクラスを目指すべき。
  • インターネットは政府に依存しないグローバルな空間。課金や認証等の約束事を民主導でつくることが情報社会への貢献につながる。

IT産業の構造変革・グローバル化と事業環境整備

  • 日本IT市場規模は世界全体の10%を切っており、外資系企業にとって魅力薄。新しいモデルの否定は容易だが、結果として外資企業が日本市場を相手にしない可能性も出てきた。外資の技術に取り入れ、日本としての付加価値を加えることを追求すべき。
  • これからのIT産業の国際競争においては、海外の技術を吸収することで日本、世界へ貢献すべく、従来と取り組み方を変えていく必要がある。日本独自の世界を作り出すというよりも海外の良いものと日本の良いものをどのように融合していくのかが大事。
  • シンガポールや中国と比較し、日本はクラウドの拠点として、市場規模や電気代を含めたコスト面で不利な状況。電話とインターネットに対する規制のあり方を含め、国際的に見て日本にデータセンターを置きやすくする等、環境改善を図るべき。
  • 国際競争力と日本のユーザーメリットは必ずしも一致しない。日本の顧客は、信頼性に対して厳格であり、安心感に慎重。使い方によって認証レベルを変える等、ユーザーが求める信頼性のレベルを合わせ、国際競争力とのバランスを踏まえた制度設計が重要。
  • ユーザー企業の情報システムは、部門間、関連企業間でまとまっていないのが現状。組織構造変革、業務プロセス変革、IT変革に取り組んでおり、IT変革はクラウド・コンピューティング基盤を扱うことを検討している。ITベンダーとして最適な提案をするに当たって、今後は制度、組織、業務プロセスの改革と新しいシステム導入を合わせて進めることが重要。
  • クラウドは利用者の論理から出てきたビジネスモデル。調達コスト、ランニングコストを抑えることが競争力となる。中でも、1996年当時のデータセンターにおける1ラックあたりの供給電源量は10~15Aで十分だったが、現在は高機能化に伴い60A程度必要であり、熱処理(空調)にかかる電源も増加。すなわち、サーバー調達コストが下がる一方で電気代が高額化してきているということ。
  • クラウドの技術要素として、データセンターの消費電力を下げることには妥当性があり、それが日本の強みにもつながる。
  • アジアのデータセンター設置検討する際、日本には他国との比較の際に税制や電力等インセンティブを打ち出すことで優位性を確保して欲しい。
  • 日本は、安心で強固なネットワーク環境とコンピュータという良質なインフラを保有している。また、マーケットは安全なインフラを求めている。これらから生まれるサービスは国際競争において優位性を発揮できる分野になる。

次回予定:9月開催予定。

問い合わせ先

商務情報政策局情報政策課
TEL:03-3501-2964
FAX:03-3580-6403

 
 
最終更新日:2009年8月5日
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.