経済産業省
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BOPビジネス政策研究会(第1回)ワーキンググループ-議事要旨

日時:平成21年9月8日(火)10:00~12:00
場所:経済産業省17階西3 国際会議室

出席者

委員
(座長)
水尾 順一     学校法人 駿河台大学大学院 経済学研究科 教授 経済研究所 所長
(委員)
荒木 光弥     株式会社 国際開発ジャーナル社 代表取締役・主幹
大野 泉        国立大学法人 政策研究大学院大学 教授
黒田 かをり   CSOネットワーク 共同事業責任者
佐藤 寛        独立行政法人 日本貿易振興機構 貿易開発部 上席主任調査研究員
新谷 大輔     株式会社 三井物産戦略研究所 国際情報部 海外情報室 研究員
高野 剛        独立行政法人 国際協力機構 民間連携室 副室長
内藤 英雄     株式会社 日本政策金融公庫 国際協力銀行 国際業務戦略部 次長
中 博一        社団法人 日本貿易会 経済協力委員会 副委員長
星 亮           パナソニック株式会社 渉外本部 国際渉外グループ 企画チーム 参事
(オブザーバー)
横尾 賢一郎   社団法人 日本経済団体連合会 国際協力本部 本部長
(五十音順、敬称略)
METI
片瀬 裕文     大臣官房審議官
小山 智        貿易経済協力局通商金融・経済協力課長
服部 崇        大臣官房企画官
篠田 邦彦     貿易経済協力局資金協力課長
星野 岳穂     貿易経済協力局技術協力課長
岸 敬也        貿易経済協力局貿易保険課長
新居 泰人     貿易経済協力局貿易振興課長
宮崎 貴哉     貿易経済協力局通商金融・経済協力課政策企画委員

議題

  1. 開会
  2. 経済産業省挨拶・座長挨拶・委員自己紹介
  3. 研究会の方針・進め方について
  4. 議題
    • BOPビジネス普及拡大に向けた課題と対応の方向性について
  5. 閉会

議事概要

事務局による上記4.議題「BOPビジネス普及拡大に向けた課題と対応の方向性について」の説明を踏まえ、各委員より主に以下に示す意見交換が行われた。


論点1.BOPビジネスの位置づけ・BOPビジネスが有する可能性

(1)BOP層の捉え方
  • 「第1回研究会(8/4)議事概要」には「BOP市場はボリュームゾーンである。」との記載がある。しかし、経済産業省によると、ボリュームゾーンとは、一世帯の可処分所得が年間5,000ドル以上35,000ドル未満の中間所得層のことであり、年間所得3,000ドル未満であるBOPと現在のボリュームゾーンとは明確に異なる所得階層である。研究会での委員の発言は、「BOP層は将来のボリュームゾーン」というものであったと記憶しており、このように「将来」という形容詞をつければ、用法としては問題ないと考えられる。本年9月30日開催予定の経済産業省「BOPビジネスフォーラム」のタイトルには「ネクスト・ボリュームゾーン」という言葉が使われているが、これはよいネーミングであると考える。BOPやボリュームゾーンの概念に関して混乱が見られるようであり、一度整理する必要がある。
  • ボトム層40億人5兆円をひとくくりにして良いのか。例えば最底辺層に対して、企業が本業のビジネスとして取り組むのは現実的でない。経済産業省としてはどの層に対して取り組むべきと考えるのか示す必要がある。
  • 日本企業がより短期で市場と捉えうるのはBOP層より所得レベルが上のMOP(ミドル)層で、その意味では非従来型のセグメントで中長期の潜在的市場としてのBOP層に加えこのミドル層も視野に入れ、それぞれに適ったタイムスパンで、検討することもできるのではないか。
  • BOPに関しては、経済産業省としては、資料にあるように、潜在的ボリュームゾーンと捉えている。BOPビジネスは、新たなボリュームゾーンの創出、という理解になる。
(2)BOPビジネスの概念
  • 経済産業省の説明ではBOPビジネスに対する必要な企業の基本スタンスとして「社会課題の解決」を挙げているが、この記述が企業の参入を妨げるのではないか。産業育成が目的であれば、企業は社会課題のことは考慮する必要はなく、企業の営利事業と社会課題の解決が結びつくような役割を官が担うというのがあるべき姿ではないか。
  • 企業の立場からBOPビジネスの対象地域とセクターを俯瞰すると、援助に近い分野と企業活動に近い分野とが混在しており、どのようにBOPビジネスを捉えるべきなのかがわからない。
  • 貧困国・途上国の社会課題解決や市場開拓は、民間企業に任せきるにはリスクが大きすぎる。官民連携の促進のためには、ある程度の保障を与えるためにODAを活用するという考え方が必要ではないか。
  • 社会課題解決を先に示してしまうと企業は参入しにくくなるかもしれない。しかし例えば女性支援を目標とするNGOと消費財を売りたい企業とを結びつけることで社会課題の解決につながるのではないか。それぞれ目標は異なるかもしれないが、両者をつなぐ仕組みがあればうまく機能するのではないか。
  • BOPビジネスの担い手として、大企業だけではなく、社会起業家という存在を意識するべき。近年のBOPビジネスに関する論調は、大企業によるものだけでなく、社会起業家によるものも展開されている。
  • BOPビジネスの中におけるCSRの位置づけが難しい。BOPビジネスをやったからといって社会的責任を果たしたことにはならない。よって両者の関係性を整理する必要がある。
  • BOPビジネスは2つの議論に整理することができるのではないか。1つは日本の大企業が作る良い製品をどう海外で売っていくか、という技術を念頭に置いたもの。もう1つはBOP層のエリアでどのようなビジネスを構築していくか、というビジネスモデル創造型の発想である。

論点3.BOPビジネス普及拡大に向けた課題、対応策、関係者の役割

(1)BOPビジネス普及拡大に向けた課題・対応策
1-1)対応策検討における留意事項
  • 日本のODA全体の中におけるBOPビジネスの位置づけを考える際、経済産業省と国際協力機構(JICA)の住み分けを知りたい。経済産業省が企業の途上国ビジネスを重視することは理解するが、国際協力機構(JICA)におけるBOPビジネス支援も日本企業支援を中心にしたいのか、地場企業・組織支援も対象にするのか、理解したい。関係者の役割分担を考えるうえで、日本全体としてBOPビジネス支援に取り組む対象・範囲につき共通認識を作る必要があるのではないか。
  • 途上国市場全体の中のBOP層とのビジネスを考えるにあたり、広範な政策領域の中でODAの枠組み、ODA以外の経済協力の枠組み、経済協力よりもさらに広い枠組み、の全体の中での、それぞれの間の効果的連携やODAの効果的役割を捉えることができるのではないか。
  • 国際的な援助潮流から見ても、経済支援のプロセスを見直すべき。従来の支援範囲は技術協力までで、その先の生産拡大段階である事業化やマーケティングは現地の企業に任せていた。しかし現地産業はまだ未成熟であるため、ビジネスとして成り立つまで支援範囲を拡大する必要があるのではないか。
  • BOPビジネスが新規産業育成分野に近いということは、失敗可能性が高いということになる。例えば、F/S支援、技術協力など、失敗リスクを軽減する支援が必要ではないか。
  • BOP層を今後の成長市場として捉えるときに、どの程度のタイムスパンで考えるべきかを示すことが有効ではないか。
  • 日本企業の海外進出を支援するのなら、制度設計については柔軟な形でスピードを大切にするべき。企業とリスクシェアも考えるべき。
  • 途上国による民間セクター開発と日本との連携を考えたとき、日本企業の進出が地場の企業にどのようなインパクトを与えるか、という現地の競争環境への影響を見る必要がある。官民連携の強化に当たって、途上国の政府や地場の企業に対しても見え方・貢献度を印象づけられるようにすると、日本のブランドも高まる。
  • 第1回研究会において、「国益」というか、国際社会における日本のプレゼンス向上の必要性に或る委員が言及されたが、全く同感である。途上国での援助や企業活動において日本の顔が見えることが重要である。BOPビジネスと国連ミレニアム開発目標は表裏一体の関係と言うことができ、欧米企業は自社のBOPビジネスが成功するとそれをCSRレポートに載せ、ミレニアム開発目標への貢献をアピールしている。2015年のミレニアム開発目標達成期限が到来した際に、万一達成されなかった場合にその責めを日本が負わされることがないよう、政府だけでなく企業もミレニアム開発目標を見据えた取り組みをする必要がある。そのために、BOPビジネスやミレニアム開発目標に関する情報発信、啓発活動においてマスコミは重要な役割を担う。
  • 企業として新市場に入る際には、技術をどのようにBOPビジネスに当てはめるか、新技術を育成するか、という経営戦略の視点からもNGOとの協働、社会起業家等との共有の場が必要である。
  • 実態調査をすれば日本の地方には優れた中小企業は多いと思うが、具体的な実態がわからない。どこにどのような比較優位を持った企業が地方にいるのか、しっかりと調査するべき。
  • 日本の持つ技術がどのBOP層のニーズにつながるかどうかを見極めるのが難しい。
1-2)対応策に対するご意見等

事業検討段階

  • アジアであれば大企業が調査部門をもっていたり、日本貿易振興機構(JETRO)の存在もあるが、アフリカも含めた現場での情報提供の制度が不十分なのが現状である。DFID(UK Department for International Development)などがアフリカ数カ国で設置を予定しているような仲介機能センターを国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)が担うなどの仕組みづくりが必要ではないか。
  • ローカルなマーケットや情報ネットワークの中から潜在的な需要、ビジネス活動の萌芽を見つける必要があることから、NGOの存在は重要であり、日本のNGOに加え、現地のNGO等の活動を支援する必要がある。日本のNGOと企業の連携を強化する、あるいは現地のNGOと連携のある日本のNGOを支援する仕組みがあっても良いのではないか。
  • BOP層のニーズを感じている人は多くても、共有する場がない、あるいは閉じられたネットワークで情報の共有が終わってしまっている。仲介となる人やセンターも必要だが、インフォーマルな形でNGOが情報共有でき、その中に国際協力機構(JICA)や社会起業家も入れるような仕組みがあると良い。
  • BOP層のニーズ顕在化のためには情報提供のみならず、継続的な担保が必要ではないか。具体的には所得政策、社会保障制度、健康保険といったニーズはあるが顕在化できないものがある。こうしたBOP層ニーズの顕在化を応援する役割を国際協力機構(JICA)に期待できるのではないか。
  • 最近では起業家を目指すBOP層出身者も多い。彼らは自国の技術・ニーズを良くわかった上で地元でビジネスをしようとしているので、彼らへの支援を通じて、ビジネスモデルを学ぶのも一つの方法である。

事業化段階

  • 今後の日本貿易振興機構(JETRO)の取り組みとして、情報提供をしようとしている。BOPなど考えたこともない企業に、自分たちの技術がBOP層に貢献できるかもしれないと考えさせるために、途上国のニーズを広報していく。具体的には保健医療、栄養衛生、教育、農林水産、エネルギーの5つの分野を想定している。
  • 民間ビジネスを前提にすると、当初の段階ではいきなり民間企業がBOPビジネスとして途上国に大規模投資するのは難しい。BOP層を潜在的な市場として見る場合、投資協定や経済連携を結び、当該国において投資資金が安全に確保されることを約束することが、官の役割としてまず必要ではないか。
  • 投融資のツールを現段階でBOP層に適用するのは早急ではないか。最初は融資よりも先に技術協力を徹底し、カウンターパート育成まで考えた上で、投融資を始めた方が良いのではないか。国際協力機構(JICA)で試験的事業、試験的融資事例がある。これを参考にしてはどうか。
  • 社会起業家がここまで盛り上がったのは、彼らを支援する人がいるためである。アショカ財団、アキュメンファンドなど様々な財団やファンドが存在している。彼らが資金提供のみならずマーケティング支援もする中で社会起業家が育つというスキームができている。こうした事例も参考になるのではないか。
  • マイクロファイナンスで言えば、MFI(マイクロファイナンス実施機関)を介して農民にお金が回っている。こうした仲介的な組織の必要性を考えている。
  • 海外企業がBOP層を生産者、販売者として捉え、業界他社や関係企業と参加自由なパートナーシップを組んで、ビジネスと開発効果のスケールメリットを出す例もある。例えばアパレルでは政府支援も得てアフリカ零細綿花農家の研修・育成に資金を出し合い、質の高いものを長期的、安定的、大量に確保し、改善した品質に対するプレミアムを地元零細農家に払いWin-Winの関係を築いている事例がある。こういうスキームには開発援助機関も入りやすい。
  • 現地の人材育成については、従来の公的人材の能力強化に加え、途上国の民間セクターの人材育成に更なる貢献の余地があるのではないか。
  • マーケット対象はコスト負担が一日1ドル以下ですむような層である。そのためビジネス発掘の次の段階では、現地NGOがみつけたコア・ニーズに合ったものにスペック変更できるか否かが重要である。技術支援や試作品に対するF/S支援等することに官の役割があるのではないか。
1-3)議論のまとめ
  • 官の立場として方向性の明示が重要である。合わせてサーバントリーダーシップ(官が各プレーヤーを支援する役割)も大きなポイントである。一方で日本貿易振興機構(JETRO)や国際協力機構(JICA)が持つ現場のニーズに関する情報を民間に提供して欲しい。官は、そうした機会の場を作って欲しい。また企業にどのような技術・ノウハウがあるのかを整理することも必要。官・民・NGOなどあらゆる組織がSR(社会的責任)の視点からODAに取り組むことが期待される。その意味から今後、SR-ODAは日本が果たすべきキーワードとなる(ただし、その前提は実施する企業や国家と、受ける地域社会の双方がWIN-WINであるべきことは言わずもがなである)。大枠の国家戦略の中で位置づけ、官がオーガナイズすることを望んでいる。

以上

 
 
最終更新日:2009年10月6日
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