経済産業省
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企業財務委員会(第22回)-議事要旨

日時:平成24年10月29日(月曜日)15時30分~17時30分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

出席者

佐藤委員長、木村委員、松本委員代理、英委員代理、安田委員代理、四谷委員代理、山崎委員、本部委員、清水委員代理、磯部委員代理、尾崎委員代理、山田委員代理、湯浅委員代理、砂川委員代理、河原委員代理、高畑委員代理、山中委員代理、石窪委員代理、井上委員代理、山内委員代理、加賀谷WG座長

議題

  1. ジェーン・ディプロック氏によるプレゼンテーション
  2. SECレポートと米国の動向 等

議事概要

1.ジェーン・ディプロック氏によるプレゼンテーション

ジェーン・ディプロック氏からのプレゼンテーション概要は以下の通り。

  • 日本の経済動向は今後の世界経済にとって主要な決定要因である。
  • 21世紀には金融安定化、持続可能性という2つの大きな課題がある。
  • IIRC(International Integrated Reporting Committee:国際統合報告評議会)が進めている統合報告とは、企業の報告について、企業全体として管理・運営していくというもの。
  • 金融安定化、持続可能性を達成するためには、短期的は目標を満足しつつ、持続可能な長期的な成果も確約していかなければならない。
  • グローバルな形で効率的に動くためには、実効性の高い報告と透明性の高い開示が必要不可欠。
  • アメリカにおける株式保有は、1987年以降極めて短期保有になってしまっている。
  • これに対し、イングランド銀行のアンドリュー・ホールデンは、短期的主義、我慢できないマーケットはアンハッピーであると主張。
  • これを克服するためには、より簡潔かつ精緻な情報を投資家に届けることが必要であり、統合報告によってこれが可能になる。
  • 統合報告はある事業体に対し、価値創造のチェーンを見てもらい、それをベースに投資家に企業の価値を強化してもらうことであり、財務報告基準を変えるものではない。
  • アンドリュー・ホールデンは5月の中銀総裁会議において、「犬とフリスビー」という講演を行い、現在はいろいろな規制や開示の要請があふれており、意志決定のためには単純化・合理化が必要であると述べている。
  • 開示の問題は、量を増やせばいいというものではない。
  • IIRCでは、企業の負担を増やさず、社会経済、ガバナンス関連の企業のエレメントをわかりやすく報告してもらうことを考えている。
  • 企業は持続可能でやっており、簡単につぶれることはないということを、投資家に理解してもらいたい。
  • 短期主義の克服、明瞭性の向上のためには、世界がまとまって連携していくべき。
  • 統合報告とはツールキットであり、企業の一番根幹となる思考を理解しようとすること。
  • 現在、パイロットプログラムには世界の80のトップ企業が参加。価値創造に焦点を当て、何を報告すべきか、検討を行っている。
  • リオ+20で国連の持続可能な証券取引所イニシアティブに調印されたことをはじめ、統合報告は世界的な動きになってきている。

これに対し、委員からは以下の通り質疑があった。

佐藤委員長
開示のあり方について、世界では様々な開示のフレームワークが提案されているが、IIRCはこうしたフレームワークとはどういう関係になるのか。
ディプロック氏、ドラックマン氏
IIRCは前IASB(International Accounting Standards Board:国際会計基準審議会)の議長であったデビッド・トゥイーディー氏が創立メンバーである他、FASB(Financial Accounting Standards Board:米国財務会計基準審議会)のメンバーもIIRCメンバーに名を連ねるなど、様々な機関と協力している。一方、IIRCのメンバーもこうした機関の作業に参加しており、強固な関係にある。我々には、財務だけが中心になっている現状に対し、もっと様々な資本があるはずだという共通のテーマをもっており、それぞれの開示フレームワークの最終目的地がIIRCであると認識している。
山崎委員
統合報告というのは、具体的にどのように報告を行うのか。
ディプロック氏、ドラックマン氏
語りをまじえながら、企業の詳細情報、ガバナンス、PLをひとつとする会社の実情について報告することを想定している。ただし、まだ具体的な枠組みがあるわけではなく、概念があるのみである。来年の年末くらいには具体的なものを出せればいいと思っている。
山田委員代理
財務以外の資本に焦点を当てるといっても、実際にそのような統合報告を作成するのは容易ではないのではないか。企業が任意に選択することを想定しているのか、全体に強制することを想定しているのか。
ディプロック氏、ドラックマン氏
統合報告は、規制当局ではなく企業がひっぱっていくイニシアティブである。最近の、あまりにも近視眼的なものの見方では企業の価値は測ることができず、弊害が起きていることに対し、企業主体で立ち向かっていくもの。その性質からすれば、企業が自発的にやることが重要であり、義務化はされないと思う。
加賀谷WG座長
趣旨そのものには賛成するが、企業としてはビジネスでどういったベネフィットがあるかということが重要。
ディプロック氏、ドラックマン氏
パイロット企業も自問自答しながらやっており、企業の熟慮が必要。目的としては、投資家に長期的な観点から投資を決定してもらうため、投資家コミュニティの方に信頼してもらうこと。この件については、更にアカデミックなリサーチをすることが重要だと思っている。統合報告は通常の報告より量は少ないが、真実の情報がいっぱい入っており、企業自ら語りたかったことを真の情報として出すことにより、投資家の受け取り方も違うといえる。
井上委員代理
素晴らしい取り組みだと思う。ただ、利用者は誰でどう使うのか。投資家についてしか話されていないが、株主だけでなく地域住民、取引先、消費者にどう映るのか、幅広い人に適正に評価してもらうことが重要。そういった意味で、1つの制度としてやっていくのは難しいのではないか。企業が任意でやる方がよいと思う。
ディプロック氏、ドラックマン氏
投資家の信頼を取り戻し、長期的投資をしてもらいたいという趣旨から、主眼は投資家。ただ、幅広い読者を対象としたプロジェクトも近々立ち上がる予定。セクター別に報告書の雛形を掲載しているので、ぜひウェブサイトを訪問してほしい。
事務局
事務局からも1つ伺いたい。短期主義の克服、明確性(クラリティ)の向上、企業の価値が過小評価(アンダーバリュー)されていること、簡潔な報告(コンサイスレポート)等、企業をとりまく現代の課題を挙げておられ、我々としても同感。一方で、全ての課題がIIRCで解釈されると考えるのも現実的でない。こうした観点から、IIRC以外で、これらの課題に立ち向かう動きとして、CFOが見ておくべき動きがあれば教えていただきたい。
ディプロック氏、ドラックマン氏
これらの課題に対し、いろんな人が考えており、IIRC以外の解決策を考えている人々もいる。我々も、いろんな人の意見を聞きながら進めたいと思っている。IIRCについては、来年世界的なコンセンサスがとれると思う。これが固まるまでは、引き続き多くの人の意見を伺いたい。国際会計士連盟とMoUも結んでいるし、これからも増えると思っている。IIRCはツールボックスであり、万能薬ではないが、助けにはなると信じている。
佐藤委員長
日本でも、以前とは異なり極めて短期志向の社会になってきており、また、四半期開示並びにJ-SOXといった問題に直面している。IIRCのような概念を入れていかなければ、日本はますます企業の持続的成長を考慮しないような社会になることを危惧している。これを解消するには、政府当局が制度や法律を変えていく必要があると思っている。これについてどう考えるか。
ディプロック氏、ドラックマン氏
短期主義はよくないということを、お互い確認することができてよかった。企業が資本市場でちゃんと資金調達できるよう、投資家の方にも意欲を持っていただきたい。
問題は多く、決して容易なことではないが、今日この場でみなさんとお話ができてよかったと思っている。

2.SEC(Securities and Exchange Commission:米国証券取引委員会)レポートと米国の動向 等

SECレポートと米国の動向について、事務局より下記の通り説明。

  • 本レポートは、今年7月に発表されたもので既にそれなりの時が経っているが、(1)日本における会計基準制度のあり方の検討にあたり、米国の分析やポジションが重要な位置を占めていること、(2)IFRSが10月23日に本レポートに対する分析(IFRS Foundation staff analysis of the SEC final staff report)を発表していること等、今後の議論の鍵となる文書であるので、改めて内容を紹介する。
  • 今後の日本での議論の参考とするため、資料4はSECレポートのサマリーだけでなく、それぞれの章を精査し、大事だと思われる部分の原文を抜粋。これらをまとめる形で概要としたものがパワーポイントの資料。
  • SECレポートのexecutive summaryは報告書の目的が書いてあり、IFRS導入の潜在的影響が要約されている。
  • 方法論としては、調査、コメント募集、学術研究、他国の研究と幅広く行っており、これは日本においても参考になると思われる。
  • IFRSをそのまま取り込む方法は、支持が少なかったということで、その他の方法に重点をあてている。この背景として、他の法域と比較してもIFRSをそのまま適用している国はほとんどないこと、多大なコスト負担アメリカ基準が規制やの契約にも引用されていることを挙げている。
  • SECスタッフが考える高品質でグローバルな会計基準の条件として、網羅性、比較可能性、監査・執行可能性を挙げ、それぞれを検証している。
  • 網羅性について、継続しているMoUプロジェクトについては、本レポートでは焦点を当てていない。ただし、この過程で、IFRSと米基準の差は当初の想定よりも大きかったと述べている。
  • これに加え、基準としてのIFRSと米国基準の根本的な差異(fundamental differences)として、減損、非金融負債、資産の測定、在庫、棚卸資産、研究開発、法人所得税、有形固定資産を挙げている。
  • 差異の一つとしてIndustry Guidanceの存在が挙げられており、重要なガイダンスとして、料金規制業種、石油・ガス、投資企業、ブローカー・ディーラーの4つが例示されている。
  • 比較可能性については、22ヶ国、36業種で実務の分析をしており、IFRS準拠に疑問があったり、適用にバラつきがある点を指摘している。
  • 監査・執行可能性について詳細に分析している点は興味深い。
  • まず、米国ではIFRSの経験が少ないことを認め、EU等の現状を分析している点は日本にも共通する。
  • 監査については、6大監査法人がコントロールを強大にすることが示唆されており、これは米国らしいが日本では違う事情かもしれない。
  • 執行については、米国では毎年レビューを4000社以上、全体の40%以上行っているのに対し、EUでは1000社前後、20%以下と少ないことを挙げ、執行の一貫性の低下の可能性を示唆。
  • 次に、IFRSにおける基準設定プロセスを人員構成や資金調達に触れながら分析。この点は事実関係としてIFRS側からも指摘がなされているが、米国の意図がかなり明確に述べられている。その参考として、資料5・資料6にIFRSの機構、資金構造をまとめている。
  • 人員構成として北米代表というのはかなりの数がおり、これについてはSECは満足している。
  • モニタリング・ボードについては、新たに国内でのIFRS使用、財政的拠出という2つの要件が加わっており、この定義等の議論に積極的に関与していく旨が強く示されている。
  • 資金調達については、米国はかなり拠出をしているにもかかわらず、他の国が十分出していないこと、また、会計監査法人からの拠出が多すぎることを指摘。
  • 次に投資家の理解・教育について触れている。米国の投資家は品質を犠牲にしてまで国際的なコンバージェンスをするつもりはないと考えている。
  • また、投資家の意見を吸い上げることの難しさにも言及しており、これは日本でも同様かもしれない。
  • 規制環境については、産業規制関係や税、株式買い戻し制限など、SECの権限を超えるようなものにも言及している。これも日本でも同じ論点はある。
  • 発行企業へのインパクトについて、会計システム、統制、手続き、契約上の取り決め、コーポレートガバナンス、訴訟偶発債務等についても検討。
  • 小規模企業への影響にもふれており、任意適用含め、様々な適用の可能性について言及。
  • 米国出張については、SECレポート公表後、投資家や格付機関に意見を伺った。
  • 興味深かった点は以下4点。
  • 機関投資家は自分たちの方法論で分析・評価を行っているので、会計基準の違いは企業行動に大きく影響しない限り問題にならない。
  • 基準そのものよりも、開示を重視
  • 米国では大統領選もあり、ドッド・フランク法対応もあるため、IFRS導入を検討する優先順位は低くなっている
  • IFRSの今後の姿という意味では、会計制度が発達していない国において基礎となりつつも、適用は各国において異なる形になるのではないかとの意見が多かった。

米国の動向等に関し、委員からは以下の質疑があった。

加賀谷WG座長
中間的論点整理は発表されたが、米国で最終レポートが公表されたこともあり、日本も我が国としての受け入れ方を話し合う必要があると思う。金融庁の企業会計審議会などでは、こうしたことは話し合われているのか。
佐藤委員長
自分もそれは何度も発言しているが、今のところそういう議論が行われる気配はない。米国は大統領選後の半年後くらいまで結論は先延ばしになると思うが、その間に日本としての方針を検討する必要があると思っている。

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最終更新日:2012年11月22日
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