経済産業省
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企業財務委員会(第23回)-議事要旨

日時:平成24年12月3日(月曜日)10時30分~12時
場所:経済産業省本館17階国際会議室

出席者

佐藤委員長、清水氏、加藤委員、英氏、安田氏、阿部氏、渡辺氏、岩田氏、野崎委員、磯部氏、高橋委員、山田氏、逆瀬氏、松尾氏、砂川氏、大草委員、高畑氏、角田氏、井上氏、山内氏、加賀谷WG座長

議題

  1. ジェローム・アス氏によるプレゼンテーション
  2. 欧州の動向 等

議事概要

1.ジェローム・アス氏によるプレゼンテーション

ジェローム・アス氏からのプレゼンテーション概要は以下の通り。

  • 本日は、フランス及び欧州のIFRSに対する見方について、基準の中身とプロセスという2つの問題点をお話ししたい。
  • IFRSの基準の中身について、国際社会では皆遠慮しているので、面と向かって批判する人はあまりいない。しかしIFRSの基準はあまりに抽象的で、実務上の契約と、IFRSの概念のギャップが大きく、問題である。このギャップは広がっており、憂慮すべきリスク。
  • 11月に、IFRS財団のアジア・オセアニアオフィス開所式において、ハンス議長は4つの誤解について講演を行ったと聞いた。内容を聞いて、これはパリに向けて語りかけている内容かと思ったが、東京で行ったと聞いた。いずれにせよ、納得できる議論ではなかった。
  • 最近のプロジェクトについても、欧州はいやいやながらIFRS10をエンドースしているが、最近のプロジェクトやIFRS11、12は、どういう理念があるのか理解できない。危機の経験が生かされていないと感じている。IFRS9も問題が残っている。
  • また、リースプロジェクトは問題が大きく、どうしてそうなっているのか、理屈が分からない。あまりに概念的になりすぎている。こうした悪いプロジェクトは止めた方がいいと思うが、IASBの動きはあまりに鈍い。無駄なところにばかりエネルギーや時間が費やされ、肝心なところにかけられていない。アジェンダ・コンサルテーションも一向にフィードバックがなされない。
  • IASBがこのように鈍いのは、変えたくないからだと思っている。IASBはトップダウンが過ぎて、ボトムアップが足りない。このような組織において、グローバルスタンダードを作ることはできない。
  • ヨーロッパでは既にIFRSを適用しており、IFRS自体を放棄するような批判はしにくい。しかし、日本とヨーロッパ、そしてアメリカ及びその他いろいろな人たちと共同戦線を組んで、IASBにより真実を伝えるべきと考えている。
  • 中身について重要な軸として、フランスは英国等と連携して、ビジネスモデル・アプローチを提示しようとしている。会計は企業の実態を反映するものであるべきという考えで、キャッシュフローの蓄積がどのような期間で行われるかということが基本。IASBのビジョンは過度に理論的であり、これとは正反対である。
  • IFRS側の議論として、経済にボラティリティがある以上、会計にボラティリティがあるのは当然だという意見があるが、これは間違っている。会計はあくまでも定常的なビジネスを反映すべきものであり、それとは無関係の金融商品のボラティリティに左右されるのはおかしい。いずれにせよ、我々は具体的な提案をまとめるべく作業を行っている。
  • 開示フレームワークについての提案も出している。これは英国と共同で出したものだが、14の原則が列挙されている。必要最低限の開示を要求するという趣旨である。我々はこれをIASBに提案している。IASBがこれを受け入れれば、世界はよくなると思う。IASBには迅速な動きを期待する。
  • プロセス面については、NSS(地域・各国基準設定主体)はこれまでもIFRSとの関係で作業に貢献してきたが、IASBはNSSとの連携に関して新たな提案を出した。しかしこれには様々な問題がある。
  • 我々は、ドイツ、英国、イタリア、日本の方々と協力して、グローバルパートナーシップという提案をまとめた。各国の基準設定主体と協力し、各国のニーズを考えるというもので、ボトムアップを実現するもの。IASBはこれが実現すると困るために、代案を提出してきた。我々としては、さらなる反対提案を出そうと考えている。
  • また、IASBはリージョナルアプローチを好んでいるが、各地域により性質は異なるし、そもそもリージョナルな組織は人為的な機関であるため、間違ったアプローチである。欧州には、IFRSのエンドースに関しアドバイスを出す機関としてEFRAGが存在する。本来EFRAGは、欧州の各国基準設定主体のことを考えるべきであるのに、欧州のニーズを考えるよりIASBのサポートに回ってしまい、もはやうまく機能していない。そこで、欧州の4つのNSSと連携して、EFRAGの改革も提案している。これは欧州閣僚理事会でも議論となっている事項でもある。
  • IFRS/IASBとして、グローバルな基準を作るためにNSSの協力を得たいというのであれば、リージョナルアプローチを押しつけるのは不適切。リージョナルアプローチはあくまでも補完的なツールにすぎず、各国の当局から権限を委譲されたNSSが基本となり、地域別の問題を地域ごとに解決するというものとなるべき。
  • 欧州としては、日本がIFRSの経験を踏まえ、同じ実験を行ってほしいと思う。同時に、参加していないのはIFRSに問題があるからだということも理解している。欧州とともに、IASBに対し意見発信を行ってほしい。
  • こうしたことを通じ、IFRSが改善されれば、真の意味でグローバル化することができる。今後とも日本と協力していきたい。

これに対し、委員からは以下の通り質疑があった。

加賀谷WG座長
日本はグローバルに品質の高い会計基準を作るという目的そのものは共有しているが、概念フレームワークの報告や具体的な施策、基準策定の方法について同意できていないというのが現状。欧州で国際会計基準を導入されて、総括として何が得られたと考えるか。また、何を失ったとお考えか、お伺いしたい。
アス長官
IFRS導入の結果として得たものとしては、世界に先駆けてヨーロッパがどこより早く走ったということが一つあげられる、また、連結について等、IFRSは特定の分野では強みがあった。しかし、プラスの点よりマイナスの点の方が大きかったと思っている。公正価値は大きな問題を惹起している。かといって、革命を起こしてIFRSを辞めるかというと、それもやりたくない。議論を通じ、IASBに再考を促したいが、時間がかかると思う。
野崎委員
製造業からすれば、ビジネスモデルをベースとして純利益を重視するという話は同意できる。一方、基準を1つに統一することが重要というのも理解できる。IFRSとのつきあい方として、外から対話しながら変えるアプローチと、中に入って変えるアプローチと2つ方法が考えられると思うが、貴殿としてはどちらが望ましいと考えるか。
アス長官
欧州がIFRS適用を決定した10年前には、欧州は今の日本や米国ほど、しっかり考えていなかった。企業が政府に申し入れる形で適用は行われた。しかし、その後、説得にやってきた企業のリーダーたちが再び政府のもとに訪れて、IFRSではうまくいなかいと訴えてきた。そこで、IFRS9については、2009年に提案されていたものの、結果としてエンドースすることはやめた。こういった一つのプロセスだけでも満足のいく形でやりきることは大変。米国では、IFRS適用はコストがかかるためやらないと言っているが、欧州は既にIFRSを適用しており、やめるともっとお金がかかるという構造。日本はこの中間に置かれている。私としては、日本がIFRSに入るのは今提起されている問題が全部解決されてからと宣言することを提案する。中に入ってレバレッジを強めるのは難しい。あえて中に入るよりは、外から働きかける方がよいと思う。米国も入れて、全世界が合意できる基準を目指していくべき。NSSは現場の問題を一番よく把握しており、日本からもハイレベルの提案を送っていただき、共同していきたい。
山田委員代理
共感できる内容が多かった。今回のIASBの提案書では、ASAFに参加して意見を出すには「修正なしのIFRSのエンドース/アドプションの促進に最善の努力をすること」をコミットして中に入らないといけないという方向を打ち出していると思われる。これに対し、どういう対応をすればよいと思うか。
アス長官
ASAFの提案書の英語だけ見れば、そこまで強いコミットを求めている文章ではないかもしれないが、そもそも、このようなことを求めること自体対してとまどいを覚える。IASBはあくまで民間団体であり、公的な性格も持っていない。それにも関わらず、このようなコミットメントを求めるということ自体、IASBはそういう(問題ある)機関であることが分かる。

2.欧州の動向 等

各種開示フレームワークと欧州の動向について、事務局より下記の通り説明。

  • (資料4)欧州、フランス、英国で我々が知ることのできた文書等を紹介している。最近では、アス長官が先ほど述べられた開示フレームワークについてのディスカッションペーパーが発出されている。これに加え、イギリスとEFRAGからは会計基準の影響に関するポジションペーパーが出されている。また、EFRAGは、グローバル会計基準に向けた動きに関するEUの視点というペーパーを発表している。
  • フランスでは、8月に会計基準庁がリサーチシンポジウムの開催をスタート。EFRAG、英国とのディスカッションペーパーは先ほど述べたとおり。
  • また、イギリスでは、開示の議論とともに、ケイ教授がとりまとめた所謂「ケイ・レポート」が公表されている。ここでは開示のあり方、あるいは投資家としてのあり方が問題提起されている。
  • また、IFRS関係では2月に発表したモニタリング・ボードと評議会の見直しに関する最終報告書に基づき、デュー・プロセス・ハンドブックの改定案が出され、11月には先ほど長官の話にもあった各国の会計基準設定主体をプロセスに組み入れるためのフォーラムの提案がなされている。そのほか、リースの暫定合意案が提案されたり、米国が発表したSEC最終レポートに対する反論ペーパー等が発出されている。
  • (資料6)IASBが概念フレームワーク討議用の文書として発表。IFRSに関する誤解として語られる論点が左に載せられ、これに対するIFRS/IASBの見解が示されている。これは、来年から再開される概念フレームワークの議論の土台になるものであり、企業の方々におかれて注意されることが必要。
  • (資料5)開示フレームワークについては、基本的には、財務報告の注記量が膨大になり、整合性がとれなくなってきているという問題意識から、米国及び欧州からそれぞれディスカッションペーパーが公表されている。
  • 米国のペーパーにおいては、将来のキャッシュフローに影響する項目に関する説明は開示すべきということを基本的な考え方として、今ある脚注を分析している。このペーパーは注記のみが対象とされており、基準設定主体がこれから注記の話を決めるに当たっての質問事項をおいている。これらの約20の質問に答えることで、開示すべきか否かを判断すべしというもの。
  • また、開示規定の柔軟化ということで、産業ごと、階層ごとに違う要求事項をつくることや、あるいは企業側に全部任せるという考え方が提示されている。
  • 開示に関して、企業がどのように判断すべきかについても提案がなされており、基本的には、先ほどの基準を作る側が考えるべき質問を参照しつつ、企業の意志決定についても示唆を与えている。
  • この提案では、要求事項の内容とともにフォーマット(形式)についても考え方を示している。このペーパーは、意見を求めるためのものであり、日本の基準設定主体であるASBJでもコメントをまとめている。
  • EFRAGのディスカッションペーパーについては、開示の質を改善するため、注記について合理化すべきであることが述べられている。注記は、財務諸表に書いてある事項について説明し、必要な情報だけに焦点を絞るべきであり、将来の情報を過度に見るより、現時点で認識されている、あるいは現時点で生じている事象について焦点をあてるべきであると述べられている。これも、利用者のニーズに焦点をあてた提案といえる。このディスカッションペーパーについても、ASBJがコメントを検討中。

欧州の動向等に関し、委員からは以下の質疑があった。

大草委員
リースのプロジェクトについて、不動産(の貸手)は適用除外になったので、欧州、米国、日本の不動産業界では、目立った反対はない。(発言者注:日本の不動産協会は、不動産の貸手同様、借手についても適用除外を求めている)ただ、FEIやリース協会が、全部ひっくり返すことを求めた場合、現時点の案では不動産の財という特質を理解してもらっているようだが、また全く異なる、作成者にとって使えないものが出てきたら困ると、複雑な心境。欧州ではどういった状況か。
アス長官
今提案されている基準については、我々もとても混乱している。欧州でも討議は進んでいるが、方針に苦慮している。フランスではこの基準について怒りさえ生まれているが、反対するにも時間もコストもかかる。企業も、本業はロビー活動ではなく社内の商売が先決であるから、もう諦めようということにもなりかねないが、それはリスクが非常に大きい。本プロジェクトはあまりにもころころ内容が変わるため、一番最新のものが何かわからず、テクニカルな問題についての討議はあまりなされていない。
佐藤委員長
アス長官は、ヨーロッパではいろいろなところでご講演されており、現場の取引実態をみた上で会計基準を作るべきだということを発言されており、日本の会計基準の思想とも通じるところがある。こういった視点からIFRSを見ると、どうしても抵抗感のあるところが随所に出てくるという印象をもっている方も多いと思う。
逆瀬委員代理
IASBとFASBの双方の暫定合意のアナウンスの仕方は正確ではないと感じている。ASBJでは、リースの暫定合意ではフェアバリューを用いて会計処理方針を選択する際の判断に用いる、あるいは貸し手の一定の要件の場合にフェアバリューを用いた測定を行うと理解されている。ところが、設例の方では、貸し手の会計処理に関し、割引金利はリース約定に織り込まれたリース割引率を用いている。以前FASBの議長が日本で講演した際、この矛盾について質問したところ、暫定合意で使っているフェアバリューというのは正しいメッセージではなかったという話だった。IASBとFASBの話が食い違っており、何が正しいのか分からない。
アス長官
IASBとFASBは合意できていないのだと思う。特に貸し手サイドの話として、合意ができていないということ。一つの問題は、借り手と貸し手の処遇を同じにするかということで、自分は同じにすべきだと思っている。しかし、これは全員が同じ意見というわけではない。リースプロジェクトには根本的な問題があり、意味をなさないプロジェクトだと思う。フランスではもっと困ったことがあり、暫定合意がなされる前に、IASBからフランスの企業に対し、電話をかけてヒアリングを行ったが、出てきたものは全く違うモデルだった。こういうプロセスこそ変えてほしいと思っている。こういう実情を見ると、中に入ってもやっていくのは難しいのだと、お分かりいただけると思う。

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最終更新日:2013年2月1日
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