経済産業省
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デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会(第1回)-議事要旨

日時:平成22 年3 月17 日(水) 17:00~18:30
場所:東海大学校友会館「阿蘇の間」

出席者

安達 俊雄、足立 直樹(前田 幸夫構成員代理)、阿刀田 高、内山 斉、相賀 昌宏、大橋信夫(柴崎 茂構成員代理)、小城 武彦、金原 優、北島 義俊(高波 幸一構成員代理)、喜多埜 裕明、佐藤 隆信、里中 満智子、渋谷 達紀、末松 安晴、杉本 重雄、鈴木 正俊、高井 昌史(牛口 順二構成員代理)高橋 誠、徳田 英幸、長尾 真、楡 周平、野口 不二夫、野間 省伸、三田 誠広(桐原 良光構成員代理)、村上 憲郎、山口 政廣
(敬称略)

議事概要

1. 三省の副大臣、政務官による挨拶

  • 中川文部科学副大臣より以下のとおり開会の挨拶があった。
    • 文部科学省、総務省及び経済産業省が中心となって政治主導で会を設けた。各省がそれぞれの課題に取り組みながら、この場で新しい権利調整をしながら時代を作っていきたい。
    • デジタル化・ネットワーク化が急速に進展している中で、このまま何もしないでいると世界の潮流の中に取り残されてしまったり、海外からの新しい波にさらわれてしまう可能性がある。
    • 出版物のデジタル利用を巡る動きに対応した形でそれぞれの立場から意見をいただきながら、方向性を見い出したい。
    • 懇談会では、著作権に関する権利処理、利害の調整については文部科学省が、フォーマットの標準化等については総務省が、新たなビジネスモデルの構築については経済産業省がそれぞれ中心となって関係者の調整を行い、新しい形に持っていきたい。
    • 国会図書館において進められているデジタル化の取組みをどう活用していくか、どのようにして関係者との調整をしていくのかについても議論を重ねていきたい。
    • この懇談会では落としどころを用意していないため、まずは自由闊達な意見交換をしていただき、その中で論点の整理がなされ、民民の関係で調整が進み、一定のところに収まっていくことを期待している。
    • 内藤総務副大臣より以下のとおり開会の挨拶があった。
    • 三省庁が協力して政治主導で一つの懇談会を立ち上げることができたのは大変喜ばしいこと。
    • 私が懇談会を立ち上げようと思った問題意識は、(1)表現の多様性の確保、(2)知のインフラの整備、(3)世界に負けないビジネスモデルの構築の3点。民間のビジネスモデルであるべきこの分野に国が取り組む理由は(1)、(2)があるから。
    • (1)に関して、一部の資本力を有する者だけに書籍流通市場の独占を許してしまえば、表現の多様性を毀損することになりかねない。資本力の多寡に関わらず、どんな出版社でもこのデジタル書籍市場に参画することを可能にする環境整備を進めることは、表現の多様性の確保という観点で国の責務であると考えている。
    • (2)に関して、「知のインフラ整備」について、ご存じのように例えば国会図書館には膨大な書籍が所蔵されている。しかし残念ながら、地理的な条件故に、その膨大な知のインフラにアクセスできる方は国民のほんの一部に過ぎない。ブロードバンド時代の今日、国会図書館が有する膨大な知のインフラに国民の誰もが容易にアクセスできる環境を整備することも国の責務であると考えている。
    • 懇談会では、前向きで建設的な議論を通して、新しい成果を作り上げていただくことを期待している。
    • 近藤経済産業大臣政務官より以下のとおり開会の挨拶があった。
    • 傍聴者が多いことからも分かるように、この問題については関係者の関心が大変高く、この懇談会も極めて重要なものだと考えている。
    • 出版物がデジタル化され、国民に広く利用されることは非常に大事なことであるし、出版業界においても民間ベースで積極的にデジタル化に取り組む動きが出てきたことは歓迎したい。
    • ただ、デジタル社会における出版物の利用はこれまで日本の知識を支えてきた知の拡大再生産の仕組みを大きく変えてしまう可能性があるため、関係者との調和を図りながら取組みを進めることが極めて重要。
    • 懇談会では、デジタル社会における出版物の利用と知の拡大生産の仕組みの確保との調和をいかに図っていくのかについて丁寧な議論を行っていただきたい。

2. 「日本電子書籍出版社協会」についての説明

  • 野間株式会社講談社副社長より以下のとおり説明があった。
    • 今年2月1日に「一般社団法人日本電子書籍出版社協会」が設立された。今月24日に設立総会等を経て、出版社31社を社員として正式にスタートする。私が代表理事に就任する予定。
    • 日本電子書籍出版社協会では、著作者の権利・利益の確保、読者・消費者の利便性の向上、紙との共存・連動等を目的として、日本ならではの電子書籍市場を構築していきたい。
    • 今後の課題は、(1)出版者の権利、(2)官民の役割分担、(3)文化の多様性の確保の3点。
    • (1)に関して、出版者のこれまで果たしてきた才能の拡大再生産という役割は、流通媒体が紙から電子に変わっても変わることはないと思う。こうした役割に対して、出版者にも何らかの権利を認めることを考えていただきたい。
    • (2)に関して、過去の出版物のデジタルアーカイブ化については、国会図書館でどんどん進めていただきたいと思うが、配信に関しては民間レベルで実現できる話だ3と考えている。電子書籍市場の発展のために国の力は借りたいと思うが、官民の役割分担ははっきりとしていただきたい。
    • (3)に関して、日本と米国では、出版市場の環境に大きな違いがある。我が国として出版文化をどのように位置付けていくのかという点に留意しつつ、健全な日本独自の電子配信市場を作るための努力をしていきたい。

3. 国会図書館における取組みについての説明

  • 国会図書館の長尾館長より以下のとおり説明があった。
    • 今回、国の主導でこの問題が議論されることになったのは大変ありがたい。
    • 国民の知る権利を保障するためには、知の総体に対して上手くアクセスできるようにしなければならず、その意味で国会図書館の役割は非常に大きいと考えている。
    • 誰もが出版物にアクセスできるようにするために、図書館としては、「貸出」という概念をはっきりと位置付けていく必要があると考えている。
    • 市場入手困難な書籍に関しての市場流通についても議論が必要。
    • 国会図書館では、平成21 年度に127 億円の補正予算をいただき、計画的にデジタル化を進めていくことを予定しているが、再来年以降については予算の確保ができていないため、何とか予算をいただき、少しずつでもデジタル化を進めていきたい。
    • デジタル時代の国民の知る権利を保障するための図書館貸出のモデルを考えていかないといけない。ただ、無料の貸出を電子的にやると出版界が成り立たなくなるというのも事実なので、貸出すたびに必要最小限の利用料金を徴収して出版者や権利者に還元するモデルを考えるべき。私としては、そのための機関をNPO 法人として作るモデルを考えたが、それにこだわるわけではなく、出版者、利用者、図書館全てが健全に育っていくモデルを作っていきたい。

4. 意見交換

  • デジタル化が進む中で、いかにしてこれまでと同様に質の高い出版物を作り続けるのかという視点が重要。これまで、作家、出版関係者、製本業者等の幅広い関係者の努力によって出版文化が作り上げられてきたのであり、デジタル・ネットワーク社会においてもよりよい出版物を作っていくという点に常に留意しつつ議論を行うべき。(阿刀田構成員)
  • 我が国の豊かな出版文化を次代へ着実に継承するということが最も大きな目的。デジタル化と知の拡大再生産とは矛盾する可能性も孕んだものであり、この二つを両立できるような仕組みを作ることによって国民の知る権利を保障しているという構造になっているのではないかと思う。(佐藤構成員)
  • デジタル化によって出版物が広く流通し、幅広い国民に利用していただくのは良いことだと思うが、それによって現在のビジネスモデルが崩れていく部分もある。デジタル・ネットワーク社会における新たな仕組みを考える際には、良質な出版物を流通させるという観点からも、これまで我が国の出版文化を支えてきた出版関係者への配慮が必要。(金原構成員)
  • デジタル化した出版物を幅広く流通させ、様々な人々に多く利用してもらうためには、国からも一定の予算上の配慮が必要。(金原構成員)
  • これまでずっと図書館問題が置き去りにされてきた。文化の発展への寄与を考慮して図書館における貸出については著作者の権利が制限されているが、図書館ではベストセラー本等の現に書店で販売中の本まで無料で読めるようになっている。デジタル化に際しても、図書館における利用に関して、著作者、出版者の側が疲弊しないような仕組みを考えていただきたい。(里中構成員)
  • 本はタダで読めるものということが常識として植えつけられてしまうと大変恐ろしいことになる。長い目で見たときに文化を育てる力と結びつくかどうかということを見据えて、丁寧な議論を行うべき。(里中構成員)
  • 図書館は非常に多数の種類の書籍を保有しており、それら種類の異なる書籍について一緒に議論をするのは難しいのではないか。(杉本構成員)
  • デジタル化により、出版物を必要に応じてダウンロードして入手することができれば、情報格差が解消される可能性がある。(杉本構成員)
  • 知の総体ということを考えた場合には、どこか頼りになる機関がきちんとコンテンツのソースを保有することが必要。学術分野のビジネスモデルである「ムービングウォール」のように、最初の何年間かは出版者がお金儲けをするために保護するが、それ以降は別の方法を取るということも含めて、方策を検討していきたい。(杉本構成員)
  • 図書館がベストセラー本を読む場所になっていることもあり、本屋にとっては図書館が近所にあると商売が非常に厳しくなる。現に、地方を中心に書店はどんどん減っている。デジタル化を進めていく中では、いかにして本屋と共生していくのかということについても検討すべき。(柴崎(大橋構成員)代理)
  • この懇談会では、ゼロサムの議論ではなく、プラスサムの議論をすべき。我々には、デジタル化を契機に、どうすれば紙とデジタルの総体として市場が増えるのかを考える責任がある。今後、色々な知恵を出し合いながら、紙とデジタルをいかにハイブリットにしてお客様に提供するかということを必死に考えていくことになるが、国としては、その民間の活力が出しやすい環境を整備していただきたい。(小城構成員)
  • 今後、電子書籍ビジネスを進めていくに当たっては、ハードとソフト(コンテンツ)のコラボレーションが非常に重要。(安達構成員)
  • 出版物関係の情報にはストックの情報とフローの情報の2つがあるが、それぞれによって官民の果たすべき役割も異なるのではないか。(安達構成員)
  • アメリカという激戦区で仕事しているが、実際にやってみて大変多くの課題とチャンスを見つけた。日本では電子書籍端末が大きく取り上げられているが、アメリカでの実際の購入者はお年寄りが多い。理由は操作が簡単で、字を大きくできるということ。いずれ、テキストの読み上げ機能の権利等の扱いについても、議論をして欲しい。(野口構成員)
  • 電子ペーパーのメリットの部分をどう生かして、どう後世に伝えていくかを考えていかないといけない。他のコンテンツと比較すると、テキストには長い歴史があり、しっかりと後世に伝えていくべき。また、デジタルだからこそ、より著作権を守りやすいという面もある。(野口構成員)
  • 既存の書籍のストックを有効活用するだけでなく、これから書籍を生み出す人間が出てきやすい環境を整えることも重要であり、そのためには著作者の権利を見つめ直すことが必要。(楡構成員)
  • 携帯電話事業者としてデジタルコンテンツをインターネット上で配信するに当たっては、クリエイターの創作したコンテンツの価値を維持しつつユーザーに届けること、その価値への対価をきちんと還元することを重視してきた。デジタルとアナログは二者択一ではなく、共存によってよりプラスの方向に導いていけるようなビジネスモデルを作っていくことが重要。(高橋構成員)
  • 紙とデジタルの知的融合により新たな需要を起こせるような新たな出版物の形について議論し、ハイブリット型の新たなメディアを考えていければと思う。(徳田構成員)
  • デジタル化をするに当たっては、幅広い権利者の許諾が必要となるが、権利処理について新しい仕組みを作らないと許諾が取れず全く話が進まないため、デジタル化を図る前提となる著作権の問題をクリアする方策についても検討していただきたい。(金原構成員)

問い合わせ先

経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課(メディアコンテンツ課)
TEL:03-3501-9537

 
 
最終更新日:2010年6月24日
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