経済産業省
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デジタル・ネットワーク社会における出版物の利用活用の推進に関する懇談会 出版物の利活用の在り方に関するワーキンググループ(第1回)‐議事要旨

日時:平成22年4月20日(火曜日) 9時30分~11時30分
場所:グランドアーク半蔵門 3階 光

出席者(敬称略)

池田 隆夫、池田 政寛、牛口 順二、大久保徹也(山田 英樹構成員代理)、大橋 信夫(大川 哲夫構成員代理)、小城 武彦(服部 達也構成員代理)、加藤 嘉則、喜多埜裕明、佐藤 陽一、里中満智子、渋谷 達紀、島並 良、杉本 重雄、田中 久徳、徳田 英幸、新居 眞吾、楡 周平、野口不二夫(簑島 俊和構成員代理)、広瀬 英治、船本 道子、細島 三喜、三田 誠広、村瀬 拓男、矢田 泰規

議事概要

1. 中川副大臣による挨拶

  • 中川副大臣より以下のとおり開会の挨拶があった。
    • 先般、iPadが発売されたことがセンセーショナルにメディアで取り上げられ、アメリカでは、発売後、注文が殺到している状況。日本でもしっかりした論議の中で、次の時代を作っていくということが喫緊の課題。
    • 文部科学省、総務省、経済産業省で政治主導で懇談会を開催し、関係者が集まって、一緒に考えるプラットホームを作ることができた。これまでなかなか省庁連携ができなかったが、第一歩を踏み出せたことについては評価をいただいており、ここから新しい形が生まれてくるようにしていきたい。
    • このワーキングチームを利害得失の調整ではなくて、それぞれがウィン・ウィンの関係になる、新しいものを生み出していけるような創造的な議論をしていただきたい。
    • 目指すところは2つ。1つは出版を再生産し、価値あるものとして育て、また新しいものが生み出せる流れを作っていくこと。もう一つは、このデジタル化という局面の中で、国民の知へのアクセスの広がりをしっかりと作るということ。
    • この議論の中身を理解し、リーダーシップをとってしっかり方向性を作っていきたい。

2. 内藤副大臣による挨拶

  • 内藤副大臣より以下のとおり開会の挨拶があった。
    • 本懇談会並びにワーキングチームを立ち上げることになった問題意識は3つあるが、そのうちの2つは表現の多様性の確保及び知のインフラへのアクセスである。
    • アメリカではキンドルやiPadが発売され、出版界でも、電子書籍が一般的になる日が遠くない将来にやってくる。我が国においても、一部の資本力のあるところが縦割りのビジネスモデルを構築する可能性があるが、多様なプレーヤーが参画できる仕組みを確保する中で表現の多様性を確保していくべき。このための環境整備こそ我が国政府が責任を持って進めていくべき。
    • 我が国では国立国会図書館という膨大な知のインフラを抱えているが、アクセスできる人は、地理的な要件ゆえに一部に限られている。しかし、今やブロードバンドの時代であり、誰もが簡便な方法で知のインフラにアクセスできる環境整備に努めることは政府の責務である。
    • このワーキングチームでは権利処理の在り方、あるいは直接ビジネスモデルに関することが議論されると思う。これからの我が国の電子出版の世界を花開かせるため、表現の多様性をこれからも確保していくために皆様方のご議論に期待している。

3. ワーキングチームの検討テーマについて

  • 資料利1-3「「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会 出版物の利活用の在り方に関するワーキングチーム」検討テーマ(案)」に基づき、以下のとおり説明があった。
    • 「I.検討に当たっての視点」として、よりよい出版物が作られ豊かな出版文化が次世代へ継承されるべきこと、「知の拡大再生産」の仕組みの維持発展、国民の「知へのアクセス」の確保という3点を踏まえ、それぞれが果たすべき役割についての基本的な考え方を整理し、懇談会に報告することとしている。
    • 「II.検討内容」について、事項1として、作家、出版者等のそれぞれの現状における取組等についての確認を、事項2として、事項1での確認を踏まえた上で、Iに掲げた視点からそれぞれが果たすべき役割を果たす上での課題の整理を掲げている。
    • 事項2について(1)から(3)の各論点ごとにご検討いただき、最終的には政府、国会図書館、民間が果たすべき役割と、その実現のための方策についての基本的な考え方を取りまとめていただきたい。

4. 資料利1-4「電子書籍の著作権処理についての提案」に基づき、説明があった。

  • 一般に電子書籍には2つの種類がある。一方はキンドルなどの端末で読むことのできる本で、テキスト文章を使っている。もう一方は、Googleブックスで、これは画像である。
  • テキスト文章と画像、イメージ文章というものは全く違う。英語の場合は画像をテキスト文章に変換できるが、日本語の場合はできない。
  • アメリカと日本では様々な著作権に関するシステムが異なっている。1つは作家が本を出す場合に出版者と結ぶ出版契約というものについて。アメリカの場合は、契約期間が設定され、その期間は出版者が著作権を預かり、一定期間が終わったら、著作者に著作権を返す。日本の場合は、一般の出版物の著作権は著作者が持っており、出版する際に、複製権と、その複製権の譲渡権を出版者に排他的独占権として与える。ところが、日本においては、その契約という概念がほとんどないのが実情。
  • 現在の出版契約では単行本を出す際、その単行本に関する契約を結び、3年ぐらいたつとまた別の契約を結んで文庫本を出す。そのときに別の出版者から文庫本を出す場合は、文庫本を出す出版者が単行本を出した出版者と話合いをし、3%ぐらいのマージンを親本のところに払って文庫本を出すという一種の慣例ができている。ところが、電子出版ということになると、中に入っている文字情報をそっくり本にするので、文庫本を出すときと同じように、親本の出版者には何の権利もない。
  • 日本の出版者は、新人を育てるシステムを作って本を出している。売れる新人もあれば売れない新人もあり、トータルで出版者は経営が成り立つようになっているので、ヒットしたものだけを別の業者が電子書籍にすることが起こると、日本の文学は崩壊してしまう。日本の出版者を守るための対策が必要。・ 紙の本の場合、初版部数を3万部刷るという出版者に任せると、新聞広告等も出して売ってくれるという信頼感がある上、3万部に対する印税がすぐに支払われる。一方、電子書籍には初版部数という概念がない。・ 文学でいえば絶版になったような過去の作品を電子書籍として配信しているが、将来的には紙の本と電子本と同時出版、あるいは電子本だけを出すことも生じるであろう。
  • 既存の出版者が介在する場合には、電子出版をすることに関して、保証部数が必要。
  • 新たな業者が横から作家を引き抜くことを出版者の権威によって防いでいくことが必要であり、出版者が作家を守るという決意を見せれば、多くの作家がモラルを持って出版者とともに電子出版に臨んでいける。
  • 国会図書館の取組では、過去の著作物がデジタルアーカイブ化されて配信できる状態にあるところ、配信をするのであれば何らかの形で著作者にお金を配分する必要が生じてくる。
  • 著作権集中管理機構というものを国が作るべき。アーカイブそのものを国民の知る権利、本を読む権利、文化を享受する権利を保証するために国会図書館が税金でやっているので、この権利機構も税金を投入して対応していくことが必要。

5. 資料利1-5「デジタル・ネットワーク社会における出版物利活用の推進と国立国会図書館の役割」に基づき、説明があった。

  • デジタルアーカイブに関して、国会図書館が現在取り組んでいることは、過去の出版物のデジタル化の推進及びオンライン流通出版物の収集。
  • デジタル化資料の利用提供の枠組みの柱は、「保存のためのデジタル化」と「電子図書館サービス」。前者は、戦後の刊行資料や雑誌で、基本的に館内でのみ利用でき、物理的な本の代替として原本を保存するために行っており、同じ資料を同時に閲覧できる人数は、所蔵している冊数分に限られる。後者は、戦前期までに刊行されたもので、個別に権利の状況を調査し、権利が切れているか許諾をいただけたものについてはインターネットで利用できるような形にする。
  • 来年の3月までに約127億円(90万冊相当)の補正予算で行うデジタル化を完了する予定。今回の補正予算の執行が終わると、大体国内図書の5分の1相当のデジタル画像の作成が終了する見込み。
  • 「原本保存のデジタル化」について、図書館では原資料が痛んで劣化・損傷すると、その代替物、複製物を作るということが認められていたが、国会図書館に限定して、損傷・劣化する前にデジタル化し、原資料を保存するということができるという規定が平成21年著作権法改正によって新設された。
  • いずれ本は物理的に壊れてしまうが、それをどこかの時点でデジタル化したデジタル物の利用に切り替えることで、原資料も保存して、将来の閲覧も可能になる。
  • デジタル化した資料の利用は、現在、館内での提供ということに限定されるが、その利用の仕方に関しても利害関係者と協議で決めるのが前提。公衆送信を使ったインターネットでの提供には当然許諾が必要になるというのが現在の法律の状況。
  • 今年度中に納本制度審議会で、この民間で刊行されたオンライン出版物についての制度的収集についての答申をいただく予定。
  • デジタルの出版物についても図書館のサービスとしてどこまでやってよいか、やるためにはどういう利用のルールが必要か、費用をどう負担するかといった、全体のスキーム、利用の明確化が必要。
  • 図書館間の相互貸借について、国民が図書館を通じて、市場で入手できない本を見ることができるという仕組みをデジタルデータの場合に、どう実現するかが課題。
  • 画像データからテキストデータを作った場合、例えば視覚障害者の方へ読み上げ等の対応での使用や、本の本文からの検索といったことも可能になるので、この画像からテキストデータをどう作るかが課題。
  • 遠隔地で利用することが図書館サービスと商業サービスの区分けの中でどのように成り立つかということで、先日、有償配信のビジネスモデルを提案している。
  • 国民の知る権利を保証するという観点では、従来から公共図書館等が中心になってその役割を果たしてきており、商業的な配信サービスとどのように両立し得るかということがこれからの一番大きな課題。図書館として国民の知る権利を保証するといった立場から、(1)出版物の権利状態による利用の枠組みのルール化、(2)財政支援を通じた公共図書館等の電子出版物の契約利用の拡大、(3)「有償電子貸出」等のいろいろな組み合わせのルールを作ることによる広範なアクセスの確保を要望する。
  • 絶版(入手困難)書籍の利活用を進めていくためには、まず、国会図書館等でデジタル化していった資料を商業的に利用できるようにする、円滑な権利処理のための仕組みを作っていくことが必要。
  • 本文そのものも検索できると、その検索の精度が上がることになり、商業サイトとの公共的な検索サービスと連動する仕組みも考えられる。
  • 新刊電子書籍配信については、ルールを明確にすることで、図書館のサービスと配信というものとが両立する。

6. 意見交換

  • 出版契約は、当事者間の契約でいい。たとえ契約を個人ベースに任せて、当事者間の契約としたところで、その出版者の力が落ちて新人を発掘する能力、機能が低下するというようなことはあり得ない。
  • 著作権の集中管理機構は確かに必要かもしれないが、原稿料と印税という2つの収入があって、初めて専業作家という職業が成り立っており、原稿料は、作家の実績によって様々であるから、個人に任せたとしても、今の状態は変わらない。
  • 図書館側の主張としては、基本的人権として、経済状況にかかわらず、一定の基本的な知識や情報に対してはアクセスが保証されなければいけないというレベルの話であり、お金を払わなくても何でも読めるということを実現しようと言っているわけではない。
  • 公共サービスの範囲については、政治や法律で規定されるところであるが、商業的に有料のものを公的サービスの中で使っている分は、公費として負担することが適切。
  • 出版物をデジタル化して配信したいという業者は山ほどあり、デジタル出版の場合はストックや流通のコストがカットでき、思い切った売り方ができる。デジタル配信に係る決定権が出版者ににぎられてしまうと、著作権者には不利益となる可能性がある。
  • 最初に単行本を出した出版者が文庫本も出すべきであり、デジタル化、電子配信もそこでやるのが出版者を支える道だというのは一理あるが、それにとらわれ過ぎる必要はなく、出版に係る契約の在り方は多様であるべき。
  • 一律に何か型にはめるということは元より不可能だが、ベストセラー作家ではないけれども、一応プロだというような中間の人を想定して、いろいろなケースの参考になるようなガイドラインを作家と出版者が合同で作ったらよい。
  • 日本語の場合には画像データから完璧なテキストデータを作るのは不可能。全文検索するために隠しファイルとしてテキストデータが付随することについて、それ自体をユーザーが見ることができなければ問題はないと考えている。
  • テキストの読み上げに係るデータについては、点字図書館ではボランティアによる、音訳のデータを配信しているところもあり、そういうデータがあるものについては、それを優先して配信するようなシステムを検討してほしい。
  • 障害者への提供は、機械処理では当然不足。国会図書館でも障害者へ提供するものは、人が朗読して学術文献の録音事業を行っており、今後その他のものについても、基本的に必要なものは人が読み上げて対応する。
  • 日本語のOCRは、最終的には人間の目に頼らざるを得ないことが大きな問題になっており、そういった中途半端なものを蓄積してどれぐらいの意味があるのかという疑問がある。
  • 出版物の利用について考えるにあたっては、著作物以外の出版物のことを念頭に入れる必要がある。そうしなければ出版者の位置づけの問題があいまいになる。
  • 出版物の利活用といったときに、利用する側を議論に入れないといけない。著作権やこれまでの業界を守るということは非常に重要だが、そこにとらわれているうちに、音楽のときと同じように、機械だけではなくて、ビジネスの部分まで全部海外勢に奪われてしまうというのは問題。
  • 図書館と出版者あるいは著作者との間は対立じゃなくて、両方ともウィン・ウィンの関係に持っていくことが可能。
  • 日本のあらゆる地域において、デジタル流通によってコストを下げて、利用者にとって安くてハイクオリティーな電子出版物を楽しむための基盤ができることを期待。
  • 電子出版においては、コストを下げるということが論じられているが、コストが下がるという感覚はない。通常は取り次ぎに対して60%から70%ぐらいの掛け率でおろしているが、配信事業者に対しては50%以下、場合によっては40とか30ぐらいを提示される場合もあり、実際にはデジタルで流した方がこちら側の実入りが少ないという場合がある。
  • Googleブックスの和解案の中で、作家が中心となって版権レジストリーというものを作って、そこで集中的に権利処理をするというシステムが提案されている。日本で、同じようなものを作る場合には、国がある程度のお金をかけることが必要。
  • 国会図書館のアーカイブ事業について、数年間で現在までのアーカイブが完了するだろうが、これから電子出版をするという新しい本の領域とだんだん近づいてきて、どこかでぶつかると思う。その際はその間を調整するようなアイデアが必要だが、とりあえず1960年ぐらいまでの本を国会図書館が配信するということであれば、まだ緩衝地帯があるので、当面の問題は回避できる。
  • 電子出版に係る検討を行うにあたっては、サービスを送り出す側のクオリティ・オブ・サービスに対して、受ける側からすると、クオリティ・オブ・サティスファクションの観点も考慮に入れることが必要。
  • キンドルにおいては、3,000円の本が1,000円で読め、大変安いと言われているが、アメリカには再販制度がなく、元々コストの2倍ぐらいの定価をつけているとされる。日本には文庫本という非常に安い価格帯のものも提供されている。こうした点を踏まえ、アメリカの出版に係る状況と簡単に比べるのではなく、その違いを見きわめることが必要。

問い合わせ先

経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課(メディアコンテンツ課)
TEL:03-3501-9537

 
 
最終更新日:2010年8月8日
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