経済産業省
文字サイズ変更

デジタル・ネットワーク社会における出版物の利用活用の推進に関する懇談会 出版物の利活用の在り方に関するワーキンググループ(第2回)‐議事要旨

日時:平成22年5月17日(木曜日) 10時~12時
場所:三田共用会議所 3階 大会議室

出席者(敬称略)

池田 隆夫、池田 政寛、牛口 順二、大久保徹也、大橋 信夫、加藤 嘉則、喜多埜裕明、佐藤 陽一、島並 良、渋谷 達紀、杉本 重雄、田中 久徳、新居 眞吾(高瀬構成員代理)、楡 周平、野口不二夫、服部 達也、広瀬 英治、船本 道子(星名構成員代理)、細島 三喜、三田 誠広、村瀬 拓男、矢田 泰規

議事概要

1. 村瀬構成員から資料利2-1「出版社の立場から見た、デジタル出版物の流通に関する問題点」に基づき、説明があった。

  • 出版社の立場から、留意点、問題点を一般論として指摘させていただく。
  • 出版社の役割は、出版物の企画、編集作業、出版物の宣伝方法の検討、出版物を物理的に頒布する行為、また、次代の著作者の育成である。また、出版社は、印税等の支払いのため、発行する本の著者の情報を持っている必要があり、著作権情報の情報センターとしての機能も担っている。
  • 出版物というのは有料で回っているサイクルである。この有料で回っている出版物の流通をどう考えるかということを議論いただきたい。
  • 我々が考える論点として、図書館と書店のバランスがある。現状、図書館においては、他の人が利用していない本を借りて返却をするという手間のかかる行為を要求されることや、書店の立地状況、本の値段の設定などの中で、書店の有料サービスとのバランスがとれている。
  • 別の論点として、すべての出版物に、著作権が現存しているわけではなく、パブリックドメイン著作物も含め、読者のニーズに合わせて流通させることも出版社の役割。
  • 出版社は、現状では、著作権者から公衆送信権のライセンスを受けて、それをサブライセンスする形で、読者に対して配信を行っている。
  • 電子書店と電子図書館のバランスを考えた時、リアルな紙の世界と比べて決定的に電子のほうが利用しやすい環境にある。また、ネット上の情報、ネット上で流通するものは基本的に安い方向、ただの方向への圧力がある。
  • 現状、パブリックドメインであって電子化されたものに関しては無償で流通しているケースが多い。著作権の有無だけで流通ルールを整備することにより、パブリックドメイン著作物が出版物として流通しなくなる点は、懸念。
  • 電子出版物は、容易に複製が可能。DRMなどを施した場合でも、デジタルからデジタルへのコピーに関しては有効であるが、印刷物からスキャンされた場合には全く意味をなさない。
  • 流通するものがデジタルの場合は無形のデータになるため、所有や占有という概念を使えない。この電子データに関してどのような位置づけを行って、どのような権利関係を構築していくのかは、出版のサイクルを円滑に回すためには必要な要素である。
  • デジタルの複製コストは極めて安く、容易に違法コピーが出回る。現実には、紙の、特にコミックにおいては既に被害は甚大に発生している。そのような状況に関して、どう対抗していくのかも議論していただきたい。
  • 現状、出版界は、10年以上売り上げがシュリンクしている傾向にあるが、まだ辛うじて体力がある状況。今のうちに電子に関しての流通サイクルをきちんと回せるような仕組みを共有していきたい。

2. 質疑応答

  • 出版社に、例えば編集権なり版面権なり、何らかの隣接権といった何か権利が必要だとの考えか。
  • 今、そのように考えている。

3. 大橋構成員から資料利2-2「店頭試し読みシステム『ためほんくん』」に基づき、説明があった。

  • 日本書店商業組合連合会は、書店経営者による全国組織で、約60年を超える歴史をもつ。会員は47組合あり、その参加組合員数は、本年4月1日現在、 5,187名である。組合員数は、昭和61年の12,953名をピークとし、この四半世紀の間に減少を続けてきた。
  • 一方、売り場面積としては増えたという集計もあり、効率が非常に落ちている。日本書店商業組合連合会は、会員及びその組合員の公正な経済活動の機会を確保し、並びに経済環境をはかるという目的で活動をしている。
  • 今日、デジタル・ネットワーク社会における取り組みとして、デジタル化の有利な性能を利用して本を売ることを考え、「ためほんくん」の実験を行った。一般的には、コミックは、店頭においてはシュリンクパックし、中が読めないようにしてあるが、液晶の画面、テレビ画面をもった端末を店頭に置き、コミックの内容の試し読みを実施したものである。
  • 実証実験は、平成21年11月3日から本年の3月末日まで実施し、参加出版社は5社(講談社、小学館、集英社、秋田書店、白泉社)で、実験店舗は全国の11店舗、これらに13台の端末機械で実験をした。試し読み作品数としては、開始時に150点、終了時に約1,000点の作品をディスプレーに出るようにし、試し読みの効果ありとの数字的裏づけをこの試し読み期間でもった。
  • 様々な実験をしてその効果をみたところ、結果としては、「ためほんくん」によって売り上げが伸びるという特質があった。
  • 現在は、実証実験が済み、これから次のステップに進めるため、実用化へ向けての準備をしている段階である。今後これをどのように各書店に展開していくか、その費用はだれがもつかなどの問題点があるが、それらについて一つ一つ我々としては取り組んでいく。
  • 我々としては、でき得る限りデジタル技術を取り入れながら、紙の本が生き残れるような努力をしているので、デジタル化の利活用という点だけでなく、現在ある組織を大切にしていただきたいと考えている。
  • 取次が各書店に本を配付するという努力も含め、紙の本を流通させるために大変なシステムを今日までつくり上げてきている。このようなシステムを一気に一蹴してしまうのではなく、ある時期、電子技術と紙の本とが併用できるようにしていただきたい。

4. 牛口構成員から資料利2-3「電子書籍流通の取り組み~NetLibraryを中心に~」に基づき、説明があった。

  • 本日は、紀伊国屋書店が、利用者と制作者をつなぐ役割としてどのように電子書籍の流通にかかわってきたかということを、NetLibraryという機関向けの電子書籍サービスを例に挙げてお話しさせていただく。
  • 紀伊国屋書店は、店舗を通じての書籍販売のほかに、大学等の研究機関や図書館に対してさまざまな媒体での情報提供、その利用環境の整備の活動にも携わってきた。
  • 1972年には、業界に先駆けて、コンピュータによる文献情報サービスに着手。海外から提供される学術情報の多くは、既に電子ジャーナルやデータベースサービスなどという形で多くは電子化された情報である。NetLibraryもそうしたサービスの一つであり、2002年に、紀伊國屋書店が日本国内の代理店となり、販売を行ってきている。
  • 2006年の8月にNetLibraryのシステムが更新され、多言語対応の機能を取り入れたことを受けて、NetLibraryを通じた日本語の書籍の提供に取り組み始めた。その際、日本語で全文検索を行った場合の機能が不十分であったため、その改善をNetLibrary側に対して支援。
  • また、コンテンツを充実させるため、国内の出版社に対して働きかけを行ったが、当初は、日本語のコンテンツをデジタル化する場合のコストがかかること、過去の出版物をデジタル化する場合の契約の見直し作業の手間、従来どおりの冊子体の本が売れなくなるという懸念といった理由からなかなか協力いただけなかった。
  • そこで、NetLibraryの海外での利用実態や顧客のニーズを伝えるための説明会、研究会を何度も開催し、出版社が納得のいくビジネスモデルを提案できないか模索した。
  • まずは、デジタル化した際に要した投資を早く解消するために、市場のニーズのあるタイトルを投入してもらうことに努めた。
  • もう一つの側面が価格のモデル。米国の場合では、このNetLibraryで提供されている電子書籍と冊子体はほぼ同じ価格で販売されていが、日本語のコンテンツについては、初期コストがかかるため、冊子体よりも高めの価格を設定。
  • 当初はデジタル化の作業は各出版社で行っていたが、昨年からは、凸版印刷と協業の形で、デジタル化作業の段階から受託し、そのデジタル化に要したコストは売り上げの中から回収するモデルも提案している。
  • 間もなく 2,000タイトル達するところであり、採用機関も海外を含め180機関にまで拡大。
  • 搭載する際のデータは、コンテンツ自体のデータのほかに、利用時に不可欠な書誌情報であるいわゆるMARCデータを一緒に搭載。
  • 実際の利用にあたって、最も有効に活用されているのは全文検索機能の部分である。読むためというよりは、探すために使われている側面が強い。
  • さらに、単独での機能以上に重要なのが、他の電子コンテンツと連携した形での利用法である。各種のツールや情報源とつながって、その存在を積極的に知らしめる仕掛けをしないと、電子コンテンツは見つけてもらえないため、利用環境の整備は不可欠。
  • 図書館の蔵書目録とリンクさせるためには、電子書籍の蔵書データもその蔵書目録に搭載する必要がある。
  • 利用環境の整備という点で、いわゆる自然語による検索、非統制語による検索に慣れている利用者に、いかに有効かつ系統的、網羅的な検索手段を提供するかという形で、非統制語から統制語の世界への橋渡しの役割を果たすツールも登場している。
  • コンテンツの充実と利用環境の整備というのが両輪となって発達してきており、こうした状況は、これから広がっていくサービスにおいても同様にいえることだと考えられる。

5. 意見交換

  • 出版物は、学術書、文芸書、あるいは漫画では様相が違う。そのため、どの分野を議論しているかを明らかにしないと、議論がかみ合わない。
  • 漫画はキラーコンテンツとして重要であり、電子化し、DRMをつけて、海外へ発信出することは、これからのマーケットを考えていく上で非常に重要。
  • 利用者の視点を忘れると、デジタルライブラリでも、デジタルアーカイブでも、あるいは電子出版でもうまくいかない。
  • 書店数が減少しているが、利用者にとっては、欲しいものが手近にあり、できるだけリアルな環境の中でアクセスできることは大切である。
  • 書店が減少してきているので、例えば「ためほんくん」のようなものを発展させて、図書館、公民館、本屋に置き、また、場合によっては、本が入手出来る情報を付加するなど機能拡張するとより良いのではないか。
  • コンテンツが少ないデジタルライブラリというのは使われない。また、コンテンツ数が多いだけではなく、そこにアクセスする適切なナビゲーションアシスタンスが必要。
  • 出版物の流通を支えている書誌データ、DRMの情報なども含むいわゆるメタデータの基盤について、目的ごとに分断され、出版物の流通が妨げられている状況。このような基盤は、初めは公的に立ち上げないと難しい。
  • 日本の出版流通は、書籍、雑誌、コミックスという3つの分野で、業界、流通を含めて成立してきた。まちの書店の売り上げ比率で、雑誌、コミックスが約半分を占めてきた中で、1980年代からコンビニエンスストアという新しい流通が出てきて、雑誌やコミックスを扱った。そのような部分まで考慮すると、雑誌あるいはコミックスの流通は、総体では変わっておらず、むしろ増えているかもしれない。
  • 書籍を売る書店については、ここ数年、売り場面積が広がっている。読者が書籍を選びやすい環境になった部分もある。
  • デジタル化とは無関係のところで、出版業界自体の構造の変革があり、同時期にデジタル化の問題が出てきているため、すぐにビジネスモデルなどの話になり、根本的な部分の問題が議論されない。文字コードの問題、ファイルフォーマットの問題、著作権の問題等々含めたもっと基本的な問題というのがある。
  • 他国では、デジタル化のコストが低いが、日本の書籍、雑誌をデジタル化することには非常に費用がかかる。
  • 日本の出版社の立場が非常に弱いということを実感し、出版社には、何らかの権利が必要であるということを考えた。
  • 米国の場合、紙の本を出す場合に、契約期間内には著作権は出版社が管理することになっており、売れなくなった場合、絶版にして、著作者に著作権が戻ってくる。
  • 米国においては、作家と出版社の間の権利譲渡の慣習ができていて、出版契約によって出版社の権利や立場が保障されている。日本においては、出版者への権利の創設という方法もあるが、契約についてのルールを合意していくという解決方法もある。あるいはその相互の補完ということも考えられる。
  • 今新刊で出てくる紙の書籍の多くは、数年経つと入手しづらくなっており、そこの機能を果たすのは公共図書館なりという側面がある。これについては、利用者の観点からみたときに、何かルールが考えられるところではないか。
  • ベストセラー作品を図書館で長期間待って借りる状況がある。デジタル化によってこのような状況が促進されるのではないかと懸念。
  • 契約スキームではカバーし切れない部分があり、パブリックドメイン出版物に関してはそもそも契約の相手がいない。また、出版物がすべて著作物を出版物としているわけでもない。
  • 隣接権があることによって、結果的には正常な契約、妥当な契約の締結を推進しているという側面もあるだろう。
  • 基本、雑誌はフロー情報を扱っている。ストック情報として、アーカイブとして図書館が扱うことは、重要なことであるが、公共図書館で今の雑誌を読むということがどれだけ意味があるのか。
  • 日本の著作物を世界に発信して、マーケットとしてやっていくことから考えると、世界中で広く使われているプラットフォームに日本語の情報が載らなくなるということの弊害というのは非常に大きい。
  • 「ためほんくん」のプレゼンの中で、使われれば使われるほど該当した漫画の売り上げが伸びたという話は興味深い。別のサービスでもアクセスされる数が多く、ページが閲覧される数が多い本であればあるほど、オンライン書店の利用も多くなっており、売り上げの効果が出てきている。
  • 現在、異字体を完璧に表現出来る書体、フォントというものは極めて少ない。異体字を表示できる書体、フォントについて統一し、各メーカーや一般ユーザーに無償で提供されることを期待。
  • 50年前に出版された本は、実際はほとんどが著作権継承者不明であり、契約が出来ない。これを利用するためには、著作権継承者情報を一括して集めることが必要。
  • 恐らく9割以上の作家は、出版社に対して著作隣接権を認めていいとは言わないだろう。
  • 図書館における貸出しの上位は、ほとんどをベストセラー本が占めているのではないか。
  • 幾つかの図書館で貸出し実態を調べた結果、図書館側は、貸出しによる本の売り上げへの影響はないと断じたが、作家側から見ると大いに影響がある件数であった。また、どの作家の本が1年間にどれだけ貸し出されているというデータは無い。
  • 実際に販売されている本の数が減っているが、図書館の貸出し件数は増加しており、無料という大きな市場が存在している。
  • 労働というのは対価を払われてこその労働である。つくり手がいなくなったら不幸であることから、その点はよく考えていただきたい。
  • 異字体については、長期で考えたときに、非常に大事な問題で、出版物だけに関わらず、公文書からすべてに関わる問題である。公的なところでサポートしていただきたい。
  • 作家が作品を創作するには、通常、出版社が企画しており、作家が作品を書くにあたって、必要な情報も出版社が提供してできてきているにもかかわらず、今日、著作権は、作者だけのところにあって、出版社には権限がない。
  • 地方図書館では、娯楽本のベストセラー本を貸し出ししている。多くの本が借りられることにより、本が売れなくなるのは事実。経済の輪は残していただきたいと考えている。
  • これまで出版に関して契約がなかなか行われてこなかったのは、創作自体を契約で縛るというのは現実的ではないということが理由の一つにある。
  • 米国の場合は、本が仕上がってから店頭出すまでに長期のプロモート期間がある。日本の再販制度、委託販売制度のもとでは、書店に出して、店頭でプロモーションをする。そのような中で契約をするというのは現実には難しいし、これからも難しいだろう。

問い合わせ先

経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課(メディアコンテンツ課)
TEL:03-3501-9537

 
 
最終更新日:2010年8月8日
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.